オラリオの黒騎士   作:コズミック変質者

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お前らマッキー好きすぎだろ・・・。短編のランキング見たら2位とかビビったぞ・・・。
あと、感想欄にマッキースマイルって入れた人。喜べ、ネタとして入れるぞ(真顔)




てかどう足掻いてもマッキーがチートにしかならない・・・。


マッキーはチートです。

50階層で起きた『異常事態』はミハエルの手で幕引かれ、【ロキ・ファミリア】は予定通りに地上への帰還を果たそうとしていた。

 

上層に行くにつれ、彼らの足取りは軽くなり、口数も多くなった。自然と殆どの団員達は警戒を緩めていった。だが最後尾だけは他と比べ、口数が少なかった。

無理もないだろう。何せ一番最後にいるのは溶解液を吐き出す人型モンスターを一撃で『幕引いた』ミハエルがいるのだから。

 

ミハエルは一言も喋らず、同じ歩調で歩き続ける。ミハエルから溢れ出る威圧感やオーラが、彼等に話すことを許させない。

だがそのような状況でも、ミハエルに陽気に話しかける者もいる。

 

「マーキナー!」

 

真ん中辺りにいたティオナがいつも通りべートを弄り終えたのか、ミハエルのいる所まで走ってくる。最後尾の者達は「さすが第一級冒険者・・・」とこの状況でミハエルに話しかけられるティオナに舌を巻く。

 

ちなみに『マキナ』とはミハエルと親しいものだけが呼ぶ、ミハエルの渾名である。それに対してはミハエルが好きに呼べと言ったので、いつの間にか【ロキ・ファミリア】の幹部はミハエルの事をマキナと呼んでいる。

 

「あの時どこ行ってたの〜?」

 

あの時、とは50階層で起きた『異常事態』の時だろう。ティオナ達はカドモスの泉にある水を取ってくるという冒険者依頼を受けていたため、『異常事態』が起きたばかりの時はいなかった。

だがミハエルはその時、50階層のキャンプにも、ティオナ達との冒険者依頼組とも別れており、一人だけ違う場所へと行っていた。

 

「ギルドからの冒険者依頼。53階層にある鉱石を取りに行っていた。フィンから聞いたはずだが?」

 

ここで初めてミハエルが喋る。今まさにミハエルの声を初めて聞いたものがいたのか、少し得したような表情となる。ティオナはフーン、と納得した。相変わらず戦うことを最優先にしているアマゾネスの妹は、団長であるフィンの話をほとんど聞いていなかった。

 

「割と早く見つかったからな。間に合って良かった」

 

「ん・・・」

 

ミハエルが大きい手でティオナの頭を撫でる。ミハエルがフィンから聞いた話では、ティオナは自らの武器を損失しても、どんな傷を負っても戦い続けたという。

ミハエルは雰囲気とは裏腹に、同じファミリアの者には甘い。だからそれがどんなに普通のことでも、簡単なことでもミハエルはその事を褒め称える。

 

「ティオナ、前方にモンスターの群れがある。伝えてきてくれ」

 

「分かった!フィンに伝えてくる!」

 

ミハエルの言葉に、ティオナが前方にいるフィン達幹部の元へと疾風のような速度で駆けていく。ミハエルはダンジョンにいる時は常に周囲を警戒しており、長年の経験で培ってきた周囲への探知は、モンスターの種類までは分からなくとも、何匹いるかは大体は予想している。

 

少し進むとミハエルの言った通り、ミノタウロスの群れがいた。団員達は疲れた体に鞭打ってミノタウロスとの戦闘を始めようとする。

だがミノタウロスの群れは皆一斉に散り散りに逃げ出した。奥にいる怪物を本能的に感じ取ったのだ。

 

怪物———ミハエル・ヴィットマンを。

 

ミノタウロスは野生の直感ですぐさま逃げうせようとする。だがそれを逃がすほど【ロキ・ファミリア】は甘くない。第一級冒険者達は自らの全力で各々が追撃を始める。

 

ミハエルは追いかけずに上を目指す。ミハエルが本気で追いかけようとすれば、レベル7の怪物的な身体能力のせいで、地面は砕け散り一瞬の間に通路を破壊するだろう。

 

そうなっては団員達や他の冒険者達への多大なる迷惑になる。故にミハエルは上層では必要時以外力を発揮せず、持ち前の威圧感でモンスター達から逃れている。

 

ミハエルが早足で上の階層に行くとアイズの後ろ姿が見えた。アイズの目の前には奇跡的に上へ上がってきた、アイズの剣に斬られたミノタウロスの後ろ姿がある。

ミノタウロスが消えると、返り血を頭から思いっきり被った少年の姿が見える。

 

「うわああああああああ!!!!!!」

 

少年はアイズの顔を見ると泣きながら上へと疾走していった。ミハエルはアイズに近付き声をかける。

 

「あの少年に何かしたのか?」

 

「マキナ・・・何もしてないと思う」

 

その後ミノタウロスを討伐し終えた【ロキ・ファミリア】は、久しぶりに地上の空気を吸えることができた。

 

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オラリオ北部の街路沿いに、一つの巨大な館が建てられている。館には幾つもの塔が連なっており、一番高い塔には道化師の旗が付けられている。

 

【ロキ・ファミリア】本拠、黄昏の館。それがこの建物の名前である。

 

本拠につくと各々がこれからどうするかや、明日の予定などを語り合う。

男女二名の門番をしていた団員が、帰ってきた遠征組に敬礼した。

 

「今帰った。門を開けてくれ」

 

団長であるフィンの言葉で、開門される。フィンを先頭にし、ゾロゾロと敷地へと入っていく。

 

「おっかえりいいいいいいいいいいっ!」

 

まるでこの時間に入門することを知っていたかのように、一人の女性が館の方から走ってくる。女性は男性陣には目もくれず、女性陣の方へと頭から突っ込んでいく。

 

「みんなー!ウチは寂しかったでえ!」

 

女性は手当り次第女性陣に抱きつこうとするが、何度も避けられる。だが最後尾にいたレフィーヤは逃げ遅れ、女性に抱きつかれる。

 

「ロキ、今回の遠征での犠牲者はなしだ。到達階層は増やせなかったけどね。詳細は後で報告するよ」

 

「了解や。おかえりぃフィン。マキナも」

 

「うん、ただいま」

 

「・・・あぁ」

 

フィンはにこやかな笑顔で、ミハエルはいつも通りの無表情で、女性————【ロキ・ファミリア】の主神であるロキに、帰還を告げた。

 

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黄昏の館の再端にある塔の中に、ミハエルの部屋はある。ミハエルの部屋はこれと言って特筆する部分はなく、あるのは棚にある各地方から集めた酒が置いてあるくらいだ。

 

そんな部屋の中に、目立たない何故置いてあるか分からない物がある。黒い布に包まれた長方形の箱型のものが部屋の隅に綺麗に置いてある。

布の下には【ヘファイストス・ファミリア】に莫大な資金を与え、ミハエルの秘蔵の酒まで与え、ようやく作ってもらえた『不壊属性』が付与されたガラスのショーケース。

だが異様なのはそこではない。

 

ショーケースの中に入っているのは断頭の刃。それはかつて【ロキ・ファミリア】にミハエルと共に入り、決して長いとは言えない時間を共に過ごしてきた『戦友』の『形見』。

 

 

 

 

 

 

————ギロチン『正義の柱』

 

 

おかしな名前だと追う。人を傷つける道具が、名前に『正義』と入れるなど。ミハエルは着ていた黒い服を脱いで、クローゼットにしまう。

思いの外、ミハエルのクローゼットには結構な量の服が入っている。ミハエルは上層どころか中層でもマトモに戦える相手がおらず、下層でもない限り戦闘はマトモなものにはならない。

だからミハエルはあまりダンジョンには潜らず、地上で己の肉体を鍛えている。

 

「ミハエル、入っていい?」

 

扉の奥から聞こえたアイズの声。その声はどこか意気消沈している。長年、アイズと共にいるミハエルは大体の事は予想がつく。ミハエルは大して断る理由がないので部屋に入れる。

 

アイズはミハエルが用意した椅子に座ると下を俯く。アイズの手にはステイタスが書かれた用紙が握られている。

 

「ステイタスの伸びが悪いのか?」

 

「うん・・・」

 

ミハエルの予想通り、アイズが悩んでいたのは己のステイタスの伸び。ステイタスは上がれば上がるほど、伸びづらくなってくる。実際に、アイズはかなりの時間をレベル5として過ごしている。

 

アイズが知りたい、と言うよりミハエルから聞きたいのは解決法だろう。ミハエルもアイズと同じくらいの頃にステイタスの伸び代について悩んだことがある。だから助言を聞くのならばミハエルが最適である。

 

「最近のアイズは、走りすぎだ。一度、短くてもいいから、少しだけ止まってみろ」

 

それは終焉に、唯一無二の至高の終わりに向かって全力で走っていく男からの助言。ミハエルはその手で、ティオナにやった時と同じようにアイズの頭を撫でる。

 

(あぁ、落ち着く・・・。やっぱりマキナは、優しくて暖かい・・・)

 

レフィーヤが見たら確実にレベル差関係なく嫉妬している光景がそこにはあった。この光景は外側から見れば親と子の様な関係に見えるが、ミハエルの実年齢は『23歳』。ミハエルは偶に与える助言等から、年齢を信じてもらえない場合がある。

 

「マキナー!ステイタス更新するでー!って!ウチのアイズたんに何しとるんやー!」

 

ノックもなく扉を蹴破って入ってきたロキは、目の前の光景を見てマキナへと飛びかかる。が、ミハエルが一瞬のうちに取り出した酒瓶を見て、ロキはミハエルのもとへと向かうことが出来なくなる。

 

「そっ、その酒は・・・まさか・・・!」

 

「貴様が飲みたがっていた酒だ。変に騒ぐようなら俺とガレスだけで飲むが?」

 

「ぐぅっ!そっ、それだけはぁ・・・ッ!」

 

女と酒が大好きな最早親父のような存在である『超越存在』女神ロキは、酒を集めるのが趣味なミハエルに逆らえない。ミハエルが集める酒にはハズレがなく、ロキとレベル6冒険者であるガレスは、ミハエルに強請って毎回飲ませてもらっている。

 

ミハエルが酒をしまったのを見ると、ロキは項垂れてため息を吐く。だが意気消沈していると見せかけてアイズに抱きつこうとするが、軽く避けられる。

 

「近寄らないでください。今のロキは嫌いです」

 

「ア、アイズたぁ〜〜ん!」

 

ミハエルとの時間を邪魔されて少し、というかかなり苛立っているアイズ。ロキはいつも以上のアイズから発せられる拒絶のオーラに、さっき以上に項垂れる。

 

「ステイタスの更新をするんじゃなかったのか?」

 

「あぁ・・・そうやったわ・・・」

 

ゾンビのような足取りでフラフラとベッドの方へと向かう。ミハエルは上半身の服に手をかけるが、アイズに見られていることに気付く。

 

アイズはミハエルに見られると顔を赤くして早足で部屋から出ていく。その事にミハエルは特に気にせずに、服を脱ぎベッドにうつ伏せになる。

 

「ほな始めるでぇ」

 

ロキがミハエルのステイタスを更新していき、背中に書いてある『神聖文字』を羊皮紙に訳していく。

すべて訳し終えると、ロキはミハエルに紙を渡し、部屋から出ようとする。

 

「ほな、今日の宴会場は『豊饒の女主人』やから、マキナ遅れたらアカンで〜」

 

最後にそれだけ言い残してロキは部屋から出ていく。マキナは特に返答せずに、自らのステイタスが書かれた羊皮紙を見続けていた。

 

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ミハエル・ヴィットマン

 

Lv.7

 

力│SS 1134

耐久│B 742

器用│B 798

敏捷│S 965

魔力│SSS ーーー

 

永劫破壊│S

渇望│S

一撃│S

 

魔法

・創造『人世界・終焉変生』(マッキーパンチ)

付与魔法

詠唱式【自由を】【死よ—————】

詠唱式によって効果規模に誤差あり。

幕引きの一撃。

 

・マッキースマイル(無間黒肚処地獄)

相手は死ぬ。

 

スキル

・鋼の英雄

四肢での攻撃にステータス補正。経験値上昇。

 

・霊的装甲

強力な装甲を纏える。モンスターを一定数倒す毎に硬度上昇。

 

・死への渇望

至高の終焉を願っている間、経験値補正。


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