Metal Gear Fate/ Grand Order   作:daaaper

9 / 29
どうも皆さん、お待たせしました、daaaperです!
……えっ?お前じゃ無くて作品を待っていた?ですよね……

そんな訳で、7/30に行われた模試もひと段落ついたので,
《Metal Gear Fate/Grand Order第1章:邪竜100年戦争 オルレアン》を投稿していきます!

先月末ごろに投稿した際に「長すぎる!」というコメントを関係各所と読者の皆さんに頂いたので、
本日は、前回投稿したばかりの作品を含め、合計3本、約5,000〜10,000字程に分割したものを投稿します。

……未だストックが全然出来ていないので、八月中に終わる気がしなくて怖いですが、
中途半端でもこの1ヶ月間、この作品に付き合って頂けたら幸いですm(_ _)m
それでは本編、どうぞ。



第1章:邪竜百年戦争 オルレアン
プロローグ


…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ンニャ?

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

カルデアの管制室にて、現在の全戦力であるサーヴァント4人とデミ・サーヴァントであるマシュ。

そして人類の未来をあっさりと背負いこの場に立つマスターが集まった。

 

「さて集まったみたいだね、早速ブリーフィングを始めよう……って藤丸君、きみ大丈夫かい?

顔色、随分悪いけど……眠れなかったのかい?」

 

「あっいえ、むしろよく眠れたんですけど……なんか変な夢を見て」

 

「体調管理もマスターとしての仕事よ、ましてやあなたが戦闘ができる訳じゃ無いんだから」

 

「すいません……」

 

「本当に大丈夫ですか、先輩……?」

 

そんな6人を集め、今回のレイシフトを実行するにあたって事前の情報共有がなされる……のだが、肝心の彼らのマスターの顔色が悪かった。

さすがにぶっ倒れるほどの体調の悪さでは無いが、何やら悪夢にうなされた様な顔だった。

 

「……そうか」

 

「あーやっぱマスターなら見るかぁ〜」

 

「その様だな……スネーク、どうした?」

 

「……その……何だ……まぁ極限状態で寝れば変な夢の一つや二つは見るのは当然だ、生前俺も何度か見た」

 

今までの聖杯戦争の経験が豊富である三騎士3人組は、自分たちのマスターが何らかの“夢”を見たらしいと察しそれぞれそれなりの反応を見せた…………が、1名だけトラウマを思い出し何故かマスターに同情した。

 

 

これは心理学的推測でしか無いが、極限状態……特に生死の境……では当然ながら通常生活を送ることは出来ない、これは興奮状態による脳内でのパニックだと言うのは誰しもそれなりに想像つく。

 

だがこのパニックは言い換えれば《処理落ち》とも言えるという。

特に柔な新兵は恐怖で寝れず早死するのだが、これは過度なストレスが心を砕きそのまま身体を害した結果だ

一方、古参や生き残れる兵士はどんな状況でもそれなりに動き、それなりに食べ、最低限寝ることが出来る。

だがそれらは表面に顕著に現れていないだけであって実際には相当なストレスが常に掛かっており、脳内では常に興奮状態であったりするという。

 

この興奮は起きている時であればあまり影響は無いのだが、睡眠時の場合は意識の覚醒時よりも余計に影響を受けやすいという。

その影響がパニックのあまりキャパオーバーとなった脳の《処理落ち》によって夢を見る……らしい。

 

 

もっともこれは、スネークがある任務で医者から聞いた話だ。

スネークの場合は囚われた牢獄でコウモリに関する話が引き金となり、正真正銘の悪夢となった。

そのため、マスターが見た夢というのは、これからの戦いに対してのストレスによるものだろうとスネークは考えた訳だが

 

 

はっきり言って勘違いである

 

 

「……ちなみに藤丸君、具体的な夢の内容は覚えてるかい?」

 

「いや……なんと言うか……火焙り?」

 

『火焙り?』

 

「……なんか女の人が男の人に火をつけた、と言うか火がついたと言うか……周りにも人がいたような?」

 

「……少なからず私には当てはまらない内容だが?」

 

「俺もだ、火焙りなんざに縁はねえぜ」

 

「私も心当たりはない」

 

「……となると、スネークか?」

 

「何がだ?」

 

「ああ、まだ君には言ってなかったね。

マスターは契約したサーヴァントの過去を夢で見ることがあるんだ。逆にサーヴァントも見る可能性があるみたいだけど、藤丸君はこれだけのサーヴァントと契約してるからね」

 

「ちなみに聞くが、あんたが過去に見たって言う夢は何だ?」

 

「……わからん、ただ紅い世界でひたすらヒトではないナニカを殺して行く、……そんな感じだった」

 

「それは……また随分な悪夢だな」

 

「…………坊主、その周りにはどれ位人が居た、何か集会みたく何十人も周りを囲んでいたか?」

 

「うーん・・・何十人も居なかったと思うけど……せいぜい6人くらい、かなぁ」

 

「なら俺じゃない、仲間の手向けにダイヤモンドにする提案をしたらしいが、もっと大勢の仲間とだ。

6人程度の人数なら俺ではないな」

 

「……となると、一体誰の夢なんでしょう?」

 

「さあな、まぁマスターに害が無えなら問題ねえだろ」

 

「そのマスターの体調が悪そうなのだが?」

 

「あっいえ、問題無いです、動いてればそのうち治る程度です、わざわざ延期させるほど悪くは無いです。

と言うか、レイシフトに支障きたす程の体調不良なら起きる前にマシュやドクターにストップかけられますし」

 

「そうだね、数値としては何の問題も無い、多分精神的な面の問題だろうから、藤丸君が気にならないなら問題無いだろうね。……もちろん、こちらでダメだと判断した時は関係なくストップをかける」

 

「その時は従います、それがマスターとしての務めですよね、所長?」

 

「そうよ……まぁ今回は話してるうちに顔色も良くなってるみたいだし、問題無いわね。

それならロマニ、予定通りレイシフトの準備に入りましょう」

 

「わかりました、じゃあ予定通りブリーフィングに入ろう」

 

 

そう言ってロマニがパネルを操作し、カルデアの管制室のメインパネルを展開する。

正面には様々な情報が映し出され、全面に地図・地名・何らかの数値にグラフが描かれ、そして画面の一番上には《フランス・オルレアン》と大きく書かれていた。

 

 

「さて、今回の特異点だけど……場所はフランス、年は1431年だ」

 

「また随分な場所だな、もっとも私はフランスには言ったことないが」

 

「その年代だと……確か百年戦争の最中だな、しかもジャンヌ・ダルクが処刑された年か?」

 

「そうだね、一応正しければジャンヌ・ダルクの処刑から経った後だけどね。

……もっとも、レイシフトしないと本当に処刑された前か後かはわからないんだけど……」

 

「えっと〜……そもそも百年戦争とかジャンヌ・ダルクって誰ですか?」

 

 

現代生まれ、そしてそれなりの知識を有するスネークやエミヤはその年代を聞いてすぐに検討がついたが、それ以前にフランスについて詳しくない他の英霊や立香はその年に何が起こったかは知らなかった。

 

 

「マスターにわかりやすく説明すると、まず百年戦争ですが簡単に言ってしまえばイギリスとフランス間との戦争です。元々は王位継承問題に始まって複雑化し、領土問題にまで発展した戦争です」

 

「王位継承で百年間もずっと戦争してたの!?」

 

「いえ、何度か休戦もしてますし今回レイシフトする年もちょうど休戦中のハズですけど……どうなのでしょうか?」

 

「元々イギリスとしては領土の足がかりを作りたいってのもあったと思うがな、それに後年は大義名分としてしか使われてない、結果としては双方とも疲弊して君主が力を持つようになっただけとも言えるが」

 

「これだから蛮族はロクなことをしない」

 

「「お前がいうなっ!」」

 

「……色々あったんだな」

 

一人スネークから定期的に(毎朝)もらっているドリトスを一瞬で食べ終わったらしい暴食王は答えた。

実際、本来の彼女は大陸から渡ってきた野蛮人(ピクト人)を駆逐する最中の騒乱・荒廃で内政が荒れ、結果滅びた。その滅びを無きものとしようとしたIFの姿の一つとして横暴な暴君として君臨したブリテンの王が彼女だ。

 

そのため、彼女の発言は地味に重いのだが……暴君というよりジャンクフード好きの暴食者のイメージがあるため大して重篤に受け止められてない、実際彼女もそんな気は微塵もない。

 

「……なんかアルトリアさんの言葉には引っかかるけど、それでジャンヌ・ダルクって言う人は?」

 

「ジャンヌ・ダルクはフランス救国の聖女として知られて居ます。

彼女は単なる村の娘だったそうですが、ある日神様からのお告げを受けてフランスのために救国の旗を掲げ

立ち上がり、当時劣勢だったフランス軍は勢いを取り戻し、遂にはイギリス軍をフランスから追い出し講和にまで漕ぎ着けました。……しかし彼女自身はイギリスに囚われ異端審問にかけられ、様々な尋問を受け、最後には火炙りの刑に処せられたそうです」

 

「えっ……その人って村の娘って事は女の人でしょ?

戦争だから処刑はまだわかるけど……わざわざ火炙りにしてまで殺したの?しかも異端審問ってあんまり良いイメージが無いんだけど……」

 

「それは彼女が“聖女”として当時から見られて居たからだろうな」

 

「“聖女”として?」

 

マスターである立香の疑問にエミヤが答える。

 

「ああ、そうだ。

私やマスターは現代で生まれたおかげであまり印象が強く無いが、それでも神という存在は絶対的だろう?」

 

「うん、……まぁ神様や仏様には時々祈ったりはするけど」

 

「ましてや昔は神という存在は民衆にとっても支配者にとっても今とは比べものにならない程神聖な物だ。

それこそ宗教の扱いを間違えれば国が滅びる程度には、だ」

 

「うん、けどそれがどうジャンヌ・ダルクと繋がるの?」

 

「考えても見てくれマスター。

イギリスとしては普通に戦争をして居たのに、ある日突然一人の女性に戦局を覆された。

しかも彼女は『これは神のお告げです』と言っていたとしたら、イギリスの印象はどうなる?」

 

「……あっ、イギリスが神様に歯向かってるみたいだね」

 

「そういう事だ、実際にイギリス軍はジャンヌ・ダルクという“聖女”の存在で休戦とはいえ負けた。

ましてやそれが神からのお告げをもらった“聖女”が原因だとすれば、当時なら国民には隠し通せても国外や兵士には隠しきれない《イギリスは神に逆らったから負けた》と。

外交的にも内政も荒れるだろう、何せ神に逆らったというレッテルはあまりにも巨大すぎる。

何もかもが神罰だと捉えられる」

 

「……じゃあ、せめてその印象を払拭するために火炙りにしたっていう事?」

 

「もっと理由は複雑だ坊主」

 

ジャンヌ・ダルク

名前くらいは知っている彼女もまた英雄であり、英霊の座に至った存在だ。

だが生前の彼女の最後は利用されるだけ利用され、結果だけ見れば祖国に売られたと見れなくも無い。

それに関してスネークが補足する。

 

「色々と諸説はあるがな、実際にイギリスは彼女を捕らえて……まぁ酷い尋問にかけたかはわかってないらしい」

 

「そうなんですか?」

 

「フランスとしてもギリギリだった戦局が覆ったとはいえあまりにも疲弊していた、ジャンヌ・ダルクによって実質的に勝てたとは言え、戦争を続けることは不可能に近かっただろう。

良く女性としての尊厳を踏み躙る行為をされたと言われてるが、確かフランスから出た文書からは、

《なぜ彼女を蹂躙しなかった》という抗議文書があったという話まであると聞いた事がある。

……それが事実かどうかは判断できんが……少なくともフランスとイギリスの両国は戦争の継続は望んでいなかっただろう。

それに元は領土問題も絡んだ王位継承問題だ、フランスを悪く言うつもりは無いが……それだけの政治的な隙が当時あった訳だ。だがそれもイギリスという敵を倒せば、フランスは国民を統治する力によってその隙を埋める。

……だがジャンヌ・ダルクは兵士にとって神聖視されるほどの英雄だ、支配者としては好ましい相手じゃ無い

何せ神の言葉を聞きフランスを、自分たちを救った彼女の事を大勢の人間が尊んでる。

そしてイギリスはどうにかして神に背いた賊軍という印象だけは払拭したかっただろうしな、そこに敵に捕らわれた噂の“聖女”、双方ともに戦う余力は無い。

多額の負債と消したい存在だけが双方に残った、ならば……互いの利益になることを選ぶ」

 

「捕まって不憫な目にあっただけじゃ無いってこと?」

 

いつの時代も力ある者は人によって排除される。

戦士はその命を奪う力が人々の畏怖を誘い、信仰・崇拝に近い信頼を得た聖人は聖職者や貴族の妬みを生み、“危ない”と言う単純かつ最もそうな理由で処刑される。

 

ジャンヌ・ダルクの場合、一度捕まりはしたものの、直接イギリス軍に捕まった訳では無い

 

「確かに……フランスは身代金さえ払えば保護できたと思います、けど実際にはイギリスが身代金を払い、彼女の身柄を確保しましたし、その後の異端審問も彼女には当時から認められていた弁護士をつける権利があったにも関わらず、弁護者抜きで行われましたし……」

 

「そうなんだ………英雄って大変なんだね」

 

『・・・・・・・・』

 

「っいやちょっと……あんた妙な所で勇気あるわね」

 

自分たちのマスターは一般人だと頭ではわかっていたが……まさか自分たちが大変だったと言われる日が来るとは思わなかった、何せ否定の仕様が無い、だが頷く訳にもいかず。

 

というか、仮に一般人であっても

 

・人妻スキーや略奪愛人間によって崩壊していった円卓を抱えたり、

・寵愛を受けたいがためにゲッシュを用いて我が物にしようとした女によって殺され、

・正義の味方になろうと務めた姿を恐れられた為に殺され、抑止と言う名の掃除屋として使い殺されたり

等々の過去を抱えた者に直接「大変だったね」とあっさりと言えるかっ!と言う話である。つい最近カルデアに召喚された3体は特に思い当たることが大きかったのか、何とも言えない表情を浮かべていた。

 

「……いいか坊主」

 

「うん?何スネークさん?」

 

「お前が言ったことに間違いは無い。

もっとも俺は英雄だと思った事は一度も無いが……ここに召喚された奴らは間違いなく本物の英雄だ。

お前が持ってる以上の逸話に実力、それらと同じくらいに語られたく無い話もある」

 

「それは……スネークさんも?」

 

「当然だ、もっとも語りたくなんぞ無いがな、それに当然ながらここにいる連中も全員そうだ。

ただ、……その醜い部分を隠そうとも消そうとも俺らはしない」

 

「どう言う意味?」

 

「お前はジャンヌ・ダルクを含め俺らの事を苦労した人間だと思ってる。

その心は悪く無い、むしろ俺には出来ない心づかいだ……だとしても同情は決してするな。

こいつらは本物の英雄だ、こいつらが為してきた全てがこいつらの全ての情報だ。

例えそれが後世まで語り継がれた美談だろうと、人様に胸を張れるもんじゃなくともそれらがこいつらの今を構成してる、もちろん俺もだ。

だがお前の同情はその語り継がれてきた英雄達を殺すことになる」

 

「………………」

 

「そのっスネークさん、マスター……先輩の心遣いが間違ってると?」

 

「いいや、心遣いそのものじゃ無い、その扱い方だ。

坊主含めてそうだが、俺たちは綺麗な物に目を向け醜いものには目を背け瞑る、だが実際には目を背けようが気付かなかろうが存在している事に変わりは無い。

……だからな坊主、例え人様に胸を張れない事とも決して否定するな、それはこいつらを否定する事になる。

自分たちが為してきた事に責任を持たず、逃げるような奴は英雄に成れん。例えそいつが英雄と言われるほど強くともそれは単に独りよがりで強いだけだ。

残した結果を婉曲し否定するのは…………そいつの存在を否定し、殺すのと同じだ」

 

 

スネーク、真名BIG BOSS。

彼は自分の師を殺し、その師の理想を叶えようと動いた元上司の行為に共感できなかった。

実際には、その上司は“社会そのもの”を作り上げた……いや、作り変え人々の無意識に入り込ませ、国家に溶け込み全人類を基とした強大な社会基盤として君臨した…………だが、その社会基盤は“国家”を中心とした世界から、戦争を前提とした“経済”を基にした社会基盤として文字通り暴走した。

 

彼はその暴走が始まる前に“兵士”を基にした“国家”によって対抗しようとしたが、結局は殺され利用された。

 

 

思い返せば、全てが自分が最愛の人を手に掛けた事から始まっている

 

10年近くその師を想い、さまよっていた

 

その中で見つけた信念と組織は潰された

 

多くの犠牲者も出た

 

それでも“自分”は再び甦り、為すべきこと為に動いた

 

だが時代に殺され・・・利用され

 

 

そして再び甦った

 

 

その時、時代はもう終わっていた

 

仲間は自分だけを残して既に消えていった

 

あとは仲間が、蛇を名乗ったもの達が削りに削り、最後に残った1を無に還すだけだった

 

 

だからこそ

 

その行為を消すつもりは無い

 

なぜなら偽りの息子達は世界を破壊し、世界を救い、そして解放した

 

自分が半世紀前に作ってしまった世界を覆う檻を彼らは破壊した

 

それら全ての原因は、どう言い換え伝えられようとも、その元凶は自分だ

 

自分の師は自分に殺される前から時代に殺されることが決まっていた

 

 

そして

 

その師は

 

元凶は

 

後世に伝えられ無いよう社会基盤によって良いように・・・作り変えてあった

 

 

「俺はそういう意味で既に殺されている、だがそれは俺が負けたからに過ぎない。

だが少なくとも、ここにいるお前のサーヴァントは殺されることを望んではいないハズだ」

 

「じゃあ俺は皆んなに失礼なことをしたってこと?」

 

「あ〜・・・俺は気にしちゃいねぇけど……なぁお二人さん?」

 

「「……………………………………………」」

 

「これからお前が相手にする英霊も同じだ、例えそいつが俺らの敵だとしても同情はしてやるな。

俺らの敵だからこそ俺らは相手にする、相手取る力もある。だが、そいつの存在を否定する理由までは無い。

どういう訳で敵対するかはわからんが……自分の責任はそいつら自身でとるだろう」

 

このマスターは歴代の聖杯戦争を見返しても断言できるほど弱い、だが同時に強いと腐れ縁のある3人は直感スキルが無くとも感じていた。

もっともその内の2人は主にスネークの言葉に思うところがあったどころか耳を貫通して心に突き刺ささったのかクー・フーリンの言葉に頷くことも出来ず、顔を逸らしていたが。

 

そんなスネークにロマンが神妙な面持ちで尋ねた。

 

「・・・君はその……責任を取れたのかい?」

 

「舞台に立たせてくれた連中のおかげでな、だがそいつらは俺が蹴りをつける前に死んだ」

 

「……それでも、後悔してないのかい?」

 

「死にたいと思っていた奴は1人もいない、ただ俺たちが作ったモノを0にする為に動いた。

何事も無かったことには出来ない、それをすれば俺に関わった奴らの全てを亡き者にするのと変わらん。

そいつらの記録を記憶にも残さないのはそいつらを殺すことと変わらない、なら俺が生かすしかない。

それが償いになるとも思ってないが……出来る事をしない理由は無い」

 

「そうか……なら僕から言うことは無いかな」

 

そう言って静かに聞いていたロマンも、それだけ言って下がった。

ダ・ヴィンチもスネークの言葉を否定するつもりは無いらしく、同じように静かに聞いていた。

 

「……なんかよくわからないけど、悲しいことも嫌な事も忘れちゃいけないって事で良いのかな?」

 

「あんた、本当に勇気あるわね……!」

 

そして何となく理解したらしいマスターと、さっきから危ない発言にツッコミを入れる所長。

なんだかんだ一般人でギリギリ未成年である彼には完璧な理解は難しかった。

それでもその言葉が持つ意味を素直に理解しているだけ、十分だと書いておこう。

 

何せこの世界ではこんなハズでは無かったと無謀な夢を願った過去の自分を殺すと願い、

私が間違っていたと、自分自身の代名詞である剣を抜くことを無かったことにする事を願った、

そんな英霊が実は居たりする訳だ。

 

 

そんな英霊はスネークの言葉に当てはめれば……独りよがりな自殺志願者だと言えるだろう。

 

 

もっとも、片方は自分なりの答えを得たらしく、また今回の召喚は世界を救う戦いだと言うことで本人には珍しく乗り気でこの戦いに挑んでいたり。

片や本来の側面がどこぞの高校生に惚気たおかげで自分の為すべき型を見つけたらしく、自らを殺す事はこのカルデアでは起こらないだろう………まあどこの誰かまではここで書く事ではないので、詳細は読者に放任する。

 

「まっそれが俺らのマスターらしいけどなっ、そう気にすんな所長さん、お前も気にしちゃいねぇだろ?」

 

「まあな、素直に話を理解してるなら問題ない、その認識で間違いはないぞ坊主。

……それで、そこのエミヤとアーサー王はどうして黙ってるんだ」

 

「えっ……エミヤ先輩……?何で俯いてるんですか……?」

 

「……ぁぁ、気にしないでくれ」

 

「あっ、アルトリアさんもなんかプルプル震えてますけど……?」

 

「………………………………………」

 

「……嬢ちゃん、そっとしといてやれ、戦う時になりゃあ元に戻るだろうからよ」

 

「マシュ大丈夫だよ、俺もみんなが強いって事は知ってるし、わざわざありがとう」

 

「そうですか……まあマスターが言うのでしたら、私も心配しすぎでしたね」

 

「そうだよ、だってスネークさんが言ってたじゃないか。

英霊は逃げないって、ちゃんと責任をとれる人たちで独りよがりじゃ無いって」

 

「「……………………………………………」」

 

「と、とりあえずマスターよぉ!随分と脱線しちまったみてぇだし、この軟弱男の話の続きを聞こうぜ!」

 

「……まぁ確かに話がだいぶズレたしな、すまんなロマン」

 

「ん、けど重要な事だったからね、僕は気にしてないさ。

それに英霊で無くとも人として大切な所だと思うしね、それに時間はあるから問題無いよ。

さて、一区切り付いたみたいだし今回の目的を説明したら早速レイシフトに移るよ、問題無いかな藤丸君?」

 

「はい、みんなも問題無いかな?」

 

「鼻からその予定だしな、いつでもイイぜ」

 

「俺もだ、もっとも俺の場合は坊主をマシュと護衛するくらいだがな」

 

「ああ、私はいつでも構わないが?」

 

「付いていこう、マスター」

 

「……どうやら全員問題無いみたいだね、なら簡単に今回の目的だけ説明してフランスに行ってもらうよ」

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

 

《ブリーフィングから1時間後、管制室にて》

 

 

 

「・・・うん、レイシフトも上手く行ったみたいだね」

 

「前回のように爆破されて、コフィンにも入らず、突然のレイシフトでは無いからね。

これで失敗して意味消失なんてしたら笑いの種にもならないさ」

 

「…………本当に笑えないし、地味にあり得た事なんだから勘弁してくれ……」

 

「まぁそう気に病む事じゃ無いさ」

 

「これだから天才は……」

 

ブリーフィングを終え準備も完了した藤丸立香は、デミサーヴァントで霊体化できないマシュと共にフランスへレイシフトした。

幸い他所からの物理的・魔術的干渉もなく、無事に成功したらしい、数分のうちに連絡が来るだろう。

……もっとも霊子ダイブによる独特のめまい、もといダイブ酔いは避けられないと思われる。

 

「それに今の私の興味は彼にだいぶ割かれているしね〜」

 

「……彼って、スネークの事かい?」

 

「君も感じてるだろ、彼が特殊なことくらい」

 

「…………まあね。わざわざ隠し事が有るって認めてるし、だからと言って誰とも話さないわけじゃ無い。

むしろ反転した騎士王と普通……かはわからないけど、少なくとも問題はなさそうだ。

それに何というか……想像していた以上に人間味があるよね」

 

「まぁ〜かのアーサー王が女性だった訳だし伝承の印象と本物が違うのは良いんだけどね〜」

 

「じゃあ君は何が気になってるんだい?」

 

「そうだなぁ、ロマンにもわかるように言えば……彼の在り方さ」

 

「……何が言いたいのさ」

 

珍しく、という訳でも無いが、それでも随分と真面目に語ったダ・ヴィンチにロマンも真面目に向き合う事にした。

幸い藤丸達が活動するまでは僅かながらも時間はある、他の職員も気になったのか2人の話に耳を傾け、パネルが発する音が幾分か小さくなって行った。

 

「まあ近代どころか純粋な現代の英雄なんて私自身びっくりなんだけどね。

エミヤみたく、抑止力との契約者ならまだわかるけど、まさか本当に私達と同じ英霊になれるとは流石の私も予想外だったけれど、彼の存在自体が独特じゃないか」

 

「……まあ、他の英霊と比べても随分と芯がしっかりしてる気がするけど……」

 

「何を言ってるんだい?むしろ彼の存在自体は真逆じゃないか」

 

「真逆?」

 

そう質問すると

 

いつもの様に何でも達観してわかってる余裕からか。

 

はたまたそんな事もわからないのかロマン君、とでも煽りたいのか。

 

カルデアのサーヴァントであるダ・ヴィンチは一杯コーヒーを飲んで満足そうに微笑んでこう言った

 

 

 

 

「だってそうだろう?彼の発言した内容、在り方はまるで幽霊そのものじゃないか」

 

 

 

 

 




何かご意見・ご感想があれば、作者の参考にも励みにもなります。
何かありましたら、感想欄にてお知らせくださいm(_ _)m

※次の投稿は 本日の12:00です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。