Metal Gear Fate/ Grand Order   作:daaaper

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おまたせして申し訳無いです
少々話の統合性とか小出しにするべき情報の修正などを行ったため、
先週中にはとか言っておきながら今週になりましたm(_ _)m

それと、今週は大学で用事があり(補講じゃあねぇ!)投稿は9月になりそうです。
けど9月中にフランス編が終わりそうなので、そこそこ待っていただけると幸いです、では本編をどうぞ。




邪竜百年戦争オルレアン 10

20世紀、そして21世紀を生きた人間。

文字に起こせばそんな人間はいくらでもいるしこれから増えていくだろう。

だがこの世界において存在する魔術の常識、何より英霊というシステムにおいてこれらの人間の殆どが残念な部類に入る、とされるだろう。

なぜなら現代において、魔術に関わるもの達が大事にする神秘というものは科学という相反するものによって薄れつつあり、それによって魔術は衰退している。それは同時に彼らの価値観においては非常に“残念な”ことだからだ。

だからこそ魔術師は一般人を下に見たり、選民思想的な思考から他の魔術師と比べたがるのが大変多いのだが……その話はここでは重要では無いので、読者個人がもし気になったら調べて欲しい。

 

さて、この場で重要なのは『魔術世界において現代人は弱い』という常識があることだ。

その常識はサーヴァントでも当てはまり、古ければ古いほど強いとは言えないが近現代生まれのサーヴァントは神秘が薄れているためにそもそも人数が少なく、何より強力なサーヴァントでは無いという認識がある。

たとえ神槍とあだ名される八極拳の達人でも、神話の英雄のように地形を変えるような力技を繰り出すわけでは無い……星の開拓者の場合は例外だろうが、そんな人物は人類史の中で極々わずかしかいない。

 

何より彼女には、ルーラーとして召喚されたジャンヌ・ダルクには真名看破というスキルによってそういった自身の脅威となりうるサーヴァントかどうか詳細に判断することができる。それにもう1人の方は全くなにも知らないが、竜の魔女として振る舞う彼女には聖杯から与えられた知識もある。その知識から、あのバケツの水をぶっかけてきた眼帯男の持つ武器は銃と呼ばれるものであり、それも20世紀後半に作られた銃であることもわかった。

 

あのマスターに付き従っていた他のサーヴァントならわからないが、たかが武器がなければ一般人と大差ないようなサーヴァントが一人でこの邪竜をどうにか出来るはずが無い、そう彼女は思っていた。

 

 

思っていた

 

 

だが実際は

 

 

「まっず——!」

 

 

自分が使役する邪竜は“体を持ち上げられ”

 

“真横に倒された”

 

グアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!?

 

再び砂埃があたり一帯に舞い上がり、そこにファヴニールの咆哮が聞こえる

 

だがその咆哮は驚きに満ちたものだった

 

その気持ちは当然ながらルーラーであり使役するジャンヌ・ダルクも同じだった

 

「……デカい化物相手は俺も心得がある、少しは本気を出したらどうだ」

 

その倒されたドラゴンの真正面にはただ立っている眼帯をつけた蛇が立っていた

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

「・・・やってやろうじゃないの……!!」

 

やられたからにはやり返す。

先ほどまでは先日ただ一方的にやられたことへの憎しみから殺すと言ったが、今の彼女の心には悔しいという感情で満たされ、目の前にいる男へ反撃に出ることしか頭に無かった。どう在ろうとも彼女は負けず嫌いなのだ。

 

幸いファヴニールは怯まされたり倒されたりはしているものの、ダメージはさほどなく全力で攻撃できる。そして自分自身も受けたダメージというダメージは無い、ならやることは1つ。

 

「その口を叩くだけのことはあるようですね、なら私も遠慮しません……これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮……!」

 

「!」

 

吼え立てよ、我が憤怒!(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)

 

味方であったバーサーカーが倒され、自分やファヴニールが受けた屈辱を糧としたことで威力を上げた自身の宝具を解放する、同時に令呪を切りファヴニールを強化しサーヴァントの宝具に近い攻撃を繰り出せるようにする。その間に彼女の宝具として空中に具現化した杭が正面に立つ男へと、スネークへと襲いかかる。

 

「宝具か……問題ない」

 

空中に現れたその杭の数は100以上

 

それらを全て視界に入れる

 

それら全てが一挙に降り注いでくる

 

 

まるで雨のように……だが雨はいつか止む

 

 

ジャンヌ・ダルクが放った杭が迫る

 

それら全てが段々と遅く感じる

 

視界がクリアに

 

迫る杭の全てが自身への直撃コースでは無い

 

周辺にばら撒かれるものも多い

 

それらは省く

 

スライディングでは確実に当たる

 

 

なら・・・・・・取り除けば良い

 

 

久しぶりに感じる反射(リフレックス)

 

 

反射状態(リフレックス・モード)に入った瞬間に体感時間は急激に遅くなる

 

 

そこに自分の武器を使う

 

 

迫り来る杭が右腕を穿つ……その直前に杭は自分の間合いに入る

 

 

右肩を後ろに捻らせ躱す

 

 

頭に落下してくる杭を左手で弾く

 

 

そこに10本以上の杭が来る

 

 

瞬時に前方へローリング

 

 

その先には杭が突き刺さりに迫る

 

 

「CQC」(クローズ・クォーターズ・コンバッド)

 

 

宝具解放:CQC

その効果は接近戦における圧倒的優位性を確保する・・・そんな物では無い。

本来はあらゆる武術を統合し昇華させた結果でしかなかった。

 

だがそこに“とあるモノ”が加わった。

 

 

その結果

 

 

自分の間合いに入ったものを思い通りに動かせることが可能になった

 

 

それが人であろうと高速で近づく杭であろうと制御下に置く

 

 

100本を超える杭は一挙に地面へと突き刺さり、その全てが一瞬で躱された

 

 

「なんで当たらないのよッ……!」

 

「そらっ、俺からもくれてやる」

 

 

するとスネークは自分の持つ突撃銃を背中に回し代わりに別の武器を背中から取った。

それは緑色の筒だったが一瞬でその筒をさらに伸ばし標準器を立てファヴニールの頭に向け撃った。

撃たれたのは銃弾なんかよりもはるかに大きい弾頭だった。

 

「そう何回もやらせるわけないでしょう!」

 

ただやられっぱなしなのは気が済まない。

再び具現化させた杭をその弾頭が描く軌道上に飛ばし、ジャンヌ・ダルクは距離をとる。

 

「やりなさい!!」

 

再び起き上がり、すでに強化しいつでも攻撃できる状態であったファヴニールが動きだす

 

胸に刻まれた青い紋章が輝きを増す

 

青い光は邪竜の口へと上がっていき急激に力が蓄えられている

 

そして爆発的なドラゴンブレスを——

 

「それは流石に死ぬからな、もう1発だ」

 

——吐かれると流石にマズイので事前に頼んでおいた仕込みを使う

 

使い捨てであるロケットランチャーを捨て素早くリモコン取り出しそのままボタンを押す

 

遠隔装置は誤作動なく機能しランプが点灯する

 

直後ファヴニールの背中が爆破された

 

「っ汝の道はすでに途絶えた!」

 

また何か仕掛けられたと思いつつもジャンヌ・ダルクは宝具とは別に新たに杭を数本出しスネークにぶつけ

 

それと同時に駆け出し腰に差した黒い剣を抜く

 

そんな相手が接近しているのを視界に入れつつ空中から向かって来る杭を処理する

 

数は6本

 

スネークを中心に円を描き一気に降り注ぐ

 

その隙間を縫うように体を捻り、それでも直撃する前方二本をCQCで後方へ去なす

 

「そこッ!」

 

だがスネークは二本の杭を去なしたために二本の手は正面に無い

 

その隙に剣を突き出した

 

突き出した剣先は相手の心臓

 

いくら化物みたいなサーヴァントでも霊核である心臓と頭をやられれば死亡する

 

それに突き出した剣を去なすことは出来ない

 

 

もっとも

 

 

「両手が使えなかったら躱せないとでも思ったか?」

 

 

確かに手を使わなければ去なせないが躱せないわけではない

 

 

脇の間では突きも意味が無い

 

 

スネークがやった事は極めて単純だ。

ただ両手を挙げたままの状態で剣幅分だけ腰を横に動かす事で上体を横にズラし、突き出した剣を脇に挟んだだけだ……と書くのは本当に単純だが、この動作を迫り来る杭を処理した瞬間の無防備な状態から一瞬で突き刺して来たのに対して、その一瞬より早くやったのだ。もちろんジャンヌの持つ剣の刃はスネークの左の二の腕と肋骨部分に当たっているが野戦服が出血を防いでいる。

 

「あんたバケモノなのっ……!?」

 

距離は50cmほど

 

すでに剣の間合いでは無くその剣が封じられたいま有効なのはナイフか体術の類だ

 

焦ったジャンヌは空いている左手でスネークの顔面を殴ろうと拳を突き出す

 

だがこの間合いにおいてスネークは遥か上を行く

 

スネークは脇を挟んでいない右腕で突き出された左手を内側へ弾く

 

すると弾かれた左手は身長差からやや斜めになっていた右腕の方へとスライドされ

 

その左肘が剣を持つ右手首の部分に当たる

 

同時に内側に動かした右腕で未だ剣を持つジャンヌの右手をはたき同時に剣を挟んでいた左腕を解放する

 

黒い鎧をまとい籠手もあるとはいえ十分な衝撃は生じれば手に持つものを落としてしまう

 

それがナイフだろうが剣だろうが神造宝具だろうがスネークには関係ない

 

ジャンヌの持つ剣を落とした事で彼女の姿勢は左腕がやや前にある状態で右腕に乗っかり、右に捻った前傾姿勢となった、その状態はとても不安定であり、言い換えれば大変投げやすい状態だと言える。こうなってしまえば彼女に支配権は無い。

 

そんな姿勢になった彼女を正面に捉えているスネークは広げた左腕で合わさっている彼女の両腕を、右腕を彼女の首に押し付け同時に押し出し自分の右側へと倒した。ジャンヌは両腕が重なったままそれなりのスピードと自分の体重が乗ったまま倒され左肩から地面へと激突した、当然受け身も取れないまま。

 

「ッ!!」

 

「お前がそれを言うか」

 

結果彼女は左肩を脱臼、鎖骨を骨折した、そう言う投げ方をしたのだから当然なのだが。

それでもフランスを恨み滅亡させんと実行している彼女の意思だけはとても固く、倒され激痛が走ろうとまだ動く右腕を動かし起き上がってやり返そうとする。

 

だがそうしようと右腕を動かした瞬間、彼女の体をなにかが持ち上げそのまま連れ去る。

 

「えっ、なに!?」

 

「嫌な予感がすると来てみれば……ジャンヌ、危ないところでしたね」

 

「ジル!?」

 

「聖処女よ……迎えに上がりました、此度は引きましょう」

 

それは突如現れた一体のサーヴァントが召喚した海魔だった。

その海魔は凄まじい勢いでスネークの後ろからジャンヌを回収した1体と、そのスネークへ奇襲をかけた1体の計2体がいたが、奇襲をかけた方はスネークがナイフを振り抜きハンドガンを撃つことで倒されていたがジャンヌの体は支障なく回収された。

 

「ッいいえ、あなたが援護してくれれば勝てるわっ!!

相手は2体のサーヴァントのみ、こちらはバーサーク・アサシンにファヴニールと——」

 

「残念ですがジャンヌ、アサシンはやられてしまいました」

 

「そんなっ——!?」

 

「どうにか仮初めの肉体だけ回収しましたが……とにかく、ここは引くしかありませぬ、態勢を立て直すためオルレアンへと戻りましょう」

 

「っけどあいつだけでも——!」

 

「……ジャンヌよ、ルーラーであるあなたならカルデアの援軍が来ていることがわかるはずです」

 

「っっっ!」

 

「あなたはあなたを裏切ったこのフランスという国を壊すことが目的のハズ、決してあのサーヴァントを倒すことではありません……竜の魔女よ、判断を」

 

「・・・どうやら冷静さを欠いていたようです、ありがとうジル、あなたにはいつも助けられてばかりね」

 

「いえいえ、不肖ジル・ド・レェ、あなたの手助けをすることしか出来ませぬ故」

 

「そう…………ではファヴニールはここで暴れさせて置いていきます、それとあなたの海魔を大量に置き土産としておいていきなさい、ワイバーンで逃げますよ」

 

「ええ、ではっ!」

 

突如あらわれたサーヴァントはその声に大きく頷き、手に持つ本を広げ先ほど召喚した海魔を数百体スネークの周りに召喚した。

 

「っ逃すかぁ!」

 

「悪いわね、アンタだけは殺したかったけどそれはまた今度よ」

 

ワイバーンを呼び出し逃げようとするジャンヌ達に向けて再びロケットランチャーを撃とうとするが召喚された海魔が肉壁となって標準の邪魔をし、さらにおまけとしてワイバーンがスネークの頭上から急降下して来た。

 

頭上の脅威に気付いたスネークはあえなくジャンヌの追撃を断念、目標を急降下中のワイバーンに変え撃った。その弾頭は見事命中しワイバーンは力なく落下する、そして生じた爆風は肉壁となっていた海魔を吹き飛ばしたため再びワイバーンにのるジャンヌ達の姿を見つける、だがすでに飛び立つ寸前だった。

 

「……ああ、それとずっっっと隠れていた聖女さまに言っておきなさい、あなたは所詮見て見ぬフリをしているだけってね」

 

「…………」

 

こちらに向けて発するその声は確かに聞こえていたが、返事をする気にはスネークはなれなかった。

その代わりとして背中から銃を取り飛び立つ寸前のジャンヌ達に向けて発砲する。

だがその弾丸はさらに召喚された海魔によって遮られてしまった。

 

「邪魔くさい!」

 

「どうぞ遠慮なさらず!数だけは無限にありますので!!」

 

その間にジャンヌの乗ったワイバーンは飛び立ち、一気に急上昇していく。

それを視界に入れながらもさらに増えた海魔を目の当たりにし、額に汗を流すスネーク。いくらファヴニールを持ち上げることができても、素手ではこの海魔を倒すことはできない。

それにCQCも触手を掴むこと自体難しく、そもそも対象が人型でもないため有効的ではない。

 

そう考える間にも残されたファヴニールは爆破からも復帰し、活動を再開してボルドーの街へと歩みはじめた。どうやらジャンヌは助けに来たサーヴァントに言われた通り、スネークを倒すことではなくフランスを壊すこと目的を達成するために、街で暴れるようファヴニールに命令したようだった。

 

「ッ流石に囲まれるか……ん」

 

百合の王冠に栄光あれ(ギロチン・ブレイカー)!」

 

海魔の包囲網がスネークを包もうとしていた中、ガラスの馬が海魔の中心に突進して来た。

その馬にのる馬主はスネークにまたがるようにジェスチャーで促すと、素早くスネークがその馬の後ろにまたがり、直後ガラスの馬は海魔の包囲網から飛び出した。

 

「おっと……助かった、どうやらそっちは思った以上に上手くいったようだが」

 

「ふふっ、だから言ったでしょう?私、耐久力には自信があるの……ところで」

 

「ああそうだな、こいつをどうしたもんだか」

 

空中をかけるガラスの馬の眼下には海と見間違える量の海魔が広がっており、さらにその海の横には巨大な竜がゆっくりと歩きながらボルドーへと向かっていた。

 

「トレニャーさんがどうにかできないかしら?」

 

「無理だ、ファヴニールだけならどうとでもなるが大群を相手にするのには向いてない、一応海魔もモンスターだろうが……キツイのには変わらない」

 

そう話しながらその大群より一足早く2人はボルドーの街の入り口へとたどり着く。

すると避難誘導をしていたゲオルギウスとジャンヌがその場にいた。

 

「避難誘導は終わったのか?」

 

「あれだけの騒ぎを起こしてくれましたからね、そのおかげで皆さん急いで逃げてくれました。

数名ほど転んでしまいましたが、全員軽症でジャンヌさんが手当てをしてくださりすでに全員避難しました」

 

「それで状況は……」

 

「まあ見ての通りだ、あと少しで仕留められたがジル・ド・レェが現れてジャンヌ・オルタを回収して逃げていった」

 

「なっ、ジルが!?」

 

「詳しい話はあとだ、そいつは置き土産に大量の海魔、ジャンヌ・オルタはファヴニールを置いていった。

幸い避難が終わってるからこのまま街で暴れられてもいいが……」

 

「このまま放っていくわけにはいきませんね」

 

避難誘導が開始されて約1時間半、ファヴニールが派手に暴れたおかげか住人達はすぐに避難を開始し、ジャンヌがパニックを起こさないよう誘導した結果、スムーズな避難となり、住人達の避難は予想よりやや早く完了した。

 

だが、召喚されている海魔を放置すればその避難している住人に追いつく可能性もあり、何よりファヴニールという巨大な邪竜を放っておいていいことがあるはずがなく、ここで仕留める必要があった。時間や被害といった制約がなくなったとはいえ、両方を仕留めるには今いる面子では火力不足だった。

 

《そんな君たちに朗報だ!援軍が到着したよっ》

 

《おうっ到着したぜぇ!》

 

そう無線機から聞こえると、また空中から何か落ちてくる。

よく見る前に落下して来そうだったので、スネークはスペースを空けた、その場所にクー・フーリンは着地した……が、その左腕にはマスターである藤丸が抱えられていた。

 

「ホイ到着っ……と、おいマスター?大丈夫か〜?」

 

「・・・うっぷ」

 

《うん、僕無茶だって言ったんだよ?自動車どころか英霊のなかでも早いってされてるクー・フーリンに抱えてもらって移動だなんて無茶だって……》

 

「いや……まあ普通酔うだろうな」

 

「鍛えてない割によく耐えたと思うぜ?」

 

「……とりあえず坊主、少し休め」

 

「……(コクコク)……」

 

「……それでクー・フーリン、お前あの海魔の大群をどうにか出来るか?」

 

「出来るぜ、手取り早く済ませたいなら俺の宝具を使えばいい」

 

「ならそれで行こう、ファヴニールの方は……本職は間に合うか?」

 

「おう、流石にいますぐ令呪を使うといくら何でも魔力の変化があるからな。それでも少し休めばすぐに来れるだろうよ」

 

「ならもう少し時間稼ぎか、なら海魔は頼む」

 

「ああ、任せろや」

 

「では私も海魔相手の手助けをしましょう」

 

「おお?けど俺の宝具を何回か撃てば終わるぜ?」

 

「それでもある程度的はまとまっていた方が良いでしょう、わたしには敵の意識を私に集中させるスキルがありますので」

 

「そうか、なら頼むわ、自前の魔力でも十分だが乱発しちゃマスターの負担になっちまうからな」

 

クー・フーリンはそう言うと朱槍を抱えながらその場で深く伸脚し、準備を始める。

一方でゲオルギウスは一足先に街から少し離れた場所へ海魔達を誘導するためにファヴニールとは反対側の方へ走り始めた。

 

「トレニャー!」

 

「ハイニャー!」

 

「あのデカいのをもう少し相手にするぞ」

 

「ニャニャ!狩りかニャ?」

 

「いや、狩り切るのは別のやつだが、あのデカいのが街に来るのを防ぐぞ」

 

「ニャー、ラオシャンロンと同じニャ?」

 

「そう言うことだ」

 

そしてスネークは地中から掘って出てきたトレニャーを呼び出し、時間稼ぎをするため、ファヴニール相手と再び戦うため移動を開始する。幸いファヴニールは地上を歩いているため移動は遅く、時間稼ぎなら十分可能だった。それに残るマリーとジャンヌは目を回している藤丸の手当てをしているため、ドラゴンブレスを放たれないようにすれば良いだけだ。

 

だが、そんな巨大な竜よりも早く海魔の波が街に届こうとしていた。

 

「では……守護を願う人々を私は守ると誓おう!」

 

その波をゲオルギウスが自身のスキルである守護騎士によって街やファヴニールがいる場所とは別の方向へと向かせる。

 

「おうおう、随分とまぁ群れてやがる……まぁ1匹だろうが外さねぇけどなっ……!」

 

そしてクー・フーリンは跳躍し手に持つ朱槍に全力の力を込め、思いっきり振りかぶりその大群へと宝具を放つ

 

「受けとんなぁ!突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ)!」

 

ゲイ・ボルグは本来必殺必中の因果逆転を起こすことができるという物では無い。

真価を発揮する本来の扱い方は特殊な跳躍術である鮭取りによる足からの投擲だと言う、それによりゲイ・ボルグは30の必中の鏃となるという。

 

もっともこれは伝説・伝承上の話であり、英霊としてランサークラスで召喚されたクー・フーリンが投擲を行う場合は手から投擲され、30の鏃になることなく、マッハ2で飛翔する1本の槍として炸裂弾のように一撃で大軍を壊滅させる対軍宝具となる。これは本人が言うには

 

『あーあの投げ方なぁ……いや、30どころかもっと分裂させられるぜ?威力も上げてな。けどアレなぁ……回収がめんどくせぇんだよ、いちいちルーン描くのがなぁ〜、俺の師匠みたく冥界に繋げる門があれば楽なんだけどよ』

 

とのこと。

 

だが対軍宝具に分類されている通り、一気に飛翔した朱槍は対象が誘導されていたこともあり、3つほどの塊となっていた海魔の大群のうちの1つの中心で命中、直後爆発しその塊は蒸発した。

 

「よっしゃ、あと2回で済むな」

 

「す、すごい宝具ですね……」

 

「まあなっ(まぁ師匠にバレでもしたら殺されそうだが……)」

 

「?何か言いました?」

 

「いやなんでもねぇ、それより嬢ちゃん、マスターはもう大丈夫か?」

 

「あっハイ、もう立てるかと」

 

「・・・フゥー、少し死ぬかとオモッタ」

 

「悪りぃなマスター、けどこれが最速だぜ?」

 

「そうだね、おかげでなんとか付いたしっと」

 

そう答えるとマスターである藤丸はヨイショと立ち上がり、右手をかざした。

 

「令呪をもって命ずる!ジークフリートさんっ来て!」

 

瞬間、藤丸の右手に刻まれていた令呪の一画が消え、その直後藤丸の右側の空間が歪み、そこから藤丸に名前を呼ばれたジークフリートが突如現れた。

 

《よしっ成功した!藤丸くんのバイタルも問題ない!》

 

「……まさかこのような所でまたこいつと会えるとは思わなかったが……これが私の役割だろう、一度で決める」

 

「おたくの因縁の相手なんだろ?そんな獲物を横から取ったりは俺はしねぇよ、早くあそこの2匹を楽にしてやれ」

 

「……そうだな」

 

その竜殺しの視線の先にはファヴニールの足元で懸命に足止めしている2匹が——

 

「膝だ!とにかく膝を壊せば大体時間は稼げる!」

 

「ニャァ!?そんな部位破壊あったかニャ!?」

 

「とにかく足を狙え!逃げないようにしろ!」

 

「けどこいつもう逃げようがないっていうか、逃げる気がニャい気が……」

 

「倒しきる直前に逃げられたら素材が剥げないだろっ!!」

 

「それは困るニャ!もっとヒザを壊すニャ!!」

 

「そうだぁっ!!」

 

——懸命に足を破壊しようとしている2匹がいた、ウン

 

「……もう、あの2人……2人?に任せれば良いのではないだろうか」

 

「いやっ……まぁ気持ちはわかるがな、あいつらがあのデカブツを仕留めきるには時間がかかっちまうし——」

 

「そうか、これ以上描写するのを省くために私が宝具を放つのが一番という訳か」

 

「そういう意味じゃねえよ!?」

 

「そうか……なら私の存在も意味があると言うものだ……!」

 

「なんでそうなんだよっ!?なんでカッコ良くなってんの!?」

 

「黄金の夢から覚め、揺籃から解き放たれよ……邪竜、滅ぶべし! 幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!」

 

「……いやっ、まああいつら欲で動いてるけどよ……」

 

もうどうでも良いやっどうとでもなれぇ〜、と言わんばかりの投げやりの態度でクー・フーリンは再度、投げ槍の姿勢へと変化させ後ろを見ないことにした。別にダジャレでは無い。

 

「!!トレニャー退避だ!」

 

「ハイニャー!!」

 

そして何故かカッコいい感じになってしまったジークフリートは、富の呪いにかかった邪竜を葬り去るために真名解放し、まだファヴニールの足元に味方がいるけど宝具を放つ。その放たれた方の2匹はすぐに危険を察知、トレニャーは地面に潜りスネークはファヴニールの巨体を盾にするためファヴニールの後方へと走った。

 

退避を始めて数秒の時が経ったあと、ジークフリートが放った宝具の青い光がファヴニールを襲う

 

伝説の再現は伝説の通りとなり、覆すことはできない

 

放たれた竜を殺す黄昏の剣気は邪竜を飲み込み葬り去る

 

そのことを理解しているのかファヴニールは直撃をくらい叫び続ける

 

「さらばだ邪竜よ……また会える気がするがな、それも別の形で」

 

因縁の竜に向かってそう声をかけると、竜も最後にまた叫び、そして力尽きた。

 

頭を垂れ、何もできなくなった邪竜はブレスを吐くことなくサラサラと魔力の粒子となった消えていった

 

こうして15世紀のフランスでドラゴン退治が達成された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニャニャ!?素材が!素材が剥ぎ取れず消えていくニャァ!?」

 

「まあ諦めろ、あれは魔力で縫われた仮初めの肉体らしいしな」

 

「けどオイラ、モンスターのお肉は攻撃すればするほどお肉は美味しくなるってどこかの世界で聞いたのニャ……もったいないニ——」

 

「急げトレニャー!まだ足の部分なら残ってるぞ!!」

 

「ニャー!!」

 

 

 

※ダメでした

 

 




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