Metal Gear Fate/ Grand Order   作:daaaper

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予想以上にお気に入り登録をしてくれるの方が多くて嬉しい作者です。
感想も1日足らずで4件も来るとは………

あと3話ほどは完成してるので、土日を挟んで投稿します。







炎上汚染都市冬木:1

「……ぁ、せん……ぱ………ぃ?」

 

『………………………………………』

 

「……ぁあやだぁ……死にたく……ない…………!」

 

『…………………!』

 

「っ!!」

 

 

あたりが燃えている

 

否、あたりが崩れ落ち、破壊され、燃えているといった方が正しい

 

 

人類を救うために集められたマスター適正者達は、人類を救うために2004年の地方都市冬木へレイシフトする…………ハズだった。

レイシフトのために各人専用の霊子筐体(クラインコフィン)というポッドに入った彼らはレイシフトによる人間シェイクを体験することなく体をシェイクされた。

 

具体的にはポッドの中が爆発し彼らの中身が混ざった

 

それと同時にカルデアの命とも言える発電区画、そしてレイシフトに備えていたカルデアのスタッフが一同に集まっていた中央管理室がまとめて吹っ飛んだ。

それによって何かが倒れてきた。

結果、レイシフトには直接参加する訳ではなかったマシュは爆発によって体も意識も飛ばされた後に潰された

奇跡的にも、その綺麗な顔と上半身だけは圧迫を免れたがそれは余りにも無価値で、命が尽きるのは誰の目にも明らかだった。

 

彼女が目を開けると、今回のレイシフトには参加しないハズの少年の姿があった。

恐らく自室から急いでかけて来たのだろう、大量の汗をかいていた。

 

 

いや、彼はとっくに力尽きていた

 

 

あたり一帯は炎に包まれている、すでに生存者など無く救助する対象など居ない。

 

……いや、彼女がいた

 

だが彼女の下半身は人が動かすには大きすぎる瓦礫によって挟まれ、マッシュされていた。

 

それでも彼女はまだ生きていた。

 

必死になって瓦礫を動かそうとした少年の手は傷だらけだった

 

だがひ弱な人間、ましてやこれと言って特徴のない一般人

 

彼に瓦礫を1人で退ける方法など持ち合わせて居なかった

 

かくして

 

 

 

《プログラムスタート、量子変換を開始します》

 

 

 

《レイシフト開始まで、3・2・1・・・・・全行程クリア、ファーストオーダー、開始します》

 

 

 

 

 

 

 

彼らはその場から焼却された

 

 

 

 

 

 

 

 

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……何だ、何かあったか?

 

 

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核か?

 

 

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……そんなこと出来るのか?

 

 

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出来るのか……ならあんたが止めれば良いんじゃないか?

 

 

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介入できない?

待て待て、なら実行犯はお前の邪魔が出来るって言うのか?

 

 

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そうか……で、俺にどうしろと?

 

 

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ぁあわかったわかった、早い話、要するにマスターと共に敵を倒せと。

 

 

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了解した、なら・・・って待て、俺はどうやってマスターとか言う奴の所に行けば良い?

 

 

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契約するのか……まぁ俺は上より下の方が性に合ってるしな、面倒事は勘弁だ。

 

 

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いや、俺がいつも面倒だと思うのはどちらかと言うと後始末の方でな……

 

 

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うるさい、とりあえずマスターと契約すれば良いんだな?

 

 

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向こうから呼びかけてからだと?

……まあ考えてみれば死んだ人間を呼び出すのに儀式のような物をするに決まっているか。

 

 

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その時、ある程度弱体化するのか。

まあ俺は接近戦さえ出来ればどうにかなるが……アサシン?勘弁してくれ、俺は殺し屋じゃ無い。

……そうなったらなったでどうにかするがな

 

 

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とりあえずは了承した、それに他の連中も参加するみたいだな。

誰なのかはさっぱりだが……まず俺がマスターの元に行けるかもこれだけいると怪しいがな。

だが準備しない訳にもいかんだろう、まずは戦略だけでも練っておくか。

 

 

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わかった、黙っていよう。

 

 

 

 

 

 

 

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「………ぁ……………!?」

 

少し寝ていたのだろうか、目を覚ます

 

同時に意識が覚醒する

 

意識を失ってはいたものの、少年……立香は寝ていたと一瞬勘違いする程度の意識消失。

体に痛みは無く怪我はしている感じはしない。

ただ頭がグラグラする……だがそれでも動くのに支障が全くない、五体満足の状態だった。

 

今はカルデア

 

……しかも爆発騒ぎで中央管理室に駆け込んだハズッ!?

 

そしてこの場が火災現場だと思い出しすぐに体を起こす

 

 

「……ここは……どこだ……!?」

 

 

だがそこは見た事もない場所

 

別に彼が記憶を消失している訳ではない

 

目の間には廃墟とかした都市……それも日本でよく見る様なビル群が崩れ落ち、燃えている

 

しかもそれが見渡す限り、全体に広がっていた

 

本当にここは一体どこだろうか?

 

どこでも見かける横断歩道に交差点、そして信号機

 

だが信号機は一切動くことなく、点灯することなく、黒いまま

 

そのまま空を見上げるとその空までもが黒かった

 

いや、どこか赤みがかっていて天候が悪くなりそうで……見ている自分の気分が悪くなってきた

 

空を見るのを切り上げて辺りを再び見ていると……骨があった

 

「ガイコツ……!?」

 

当然、道端に骨が落ちていれば驚く

 

それがほぼ人骨として骨格がほぼ完璧な状態で残っていれば余計に驚く

 

それが突如としてスッと立ち、ゆっくりと歩いて来たら……大体パニックになる

 

「……………………」

 

だが立香はどうやらストレス耐性が強いタイプらしい

 

パニックも一種のストレス回避方法だが、同時にそれは場所によっては生命を危機に落としいれる

 

多くの人は危機的状況のストレスからパニックに陥り死に至るが、彼はストレスのお陰で極めて冷静になれた

 

「……とりあえず、逃げよう」

 

そして事前に有能な後輩から聞いた魔術の話

 

それから察するにあれは何らかの怪異……バケモノ

 

であれば自分が倒せる様な代物では無い

 

「……ん?」

 

すると先ほどまで見上げていた空から一筋の赤い光が飛び出した

 

その光の先は特に赤く光っている

 

やがてその光はこちらに向かって来て…………

 

「おいおい……冗談だろ……!?」

 

一直線に向かって来た

 

どうしようも無いが一般人である彼に回避方法など無い

 

そのまま光が全身に突き刺さる

 

 

「……………………?」

 

 

かと思われたが

 

 

何かが赤い光を防いでいる

 

 

・・・違う、盾を持っている人が自分を守ってくれている

 

 

その盾を持つ者は随分な薄着とは裏腹に、その身長より大きい盾を支えていた

 

 

その髪は薄いピンクのショートカットで……

 

 

「マシュ!?」

 

「はい、ですが詳しい話は後です、先輩は今は伏せていて下さい」

 

「う……うん」

 

突如、薄着でメガネを外しとても大きい盾を支えて現れた後輩に驚きながらも、それ以上に先ほどから天から降り注いで来る赤い光のせいで動くこともままならない。

何よりマシュの盾から離れれば簡単に死んでしまうこと位は想像できた。

 

女の子の後ろに隠れるという男としては屈辱的な状況だったが、背に腹は変えられず。

この場を凌ぐために後輩の背中を立香は見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず撤退したみたいですね……」

 

「マシュ……その格好は一体……」

 

「あっ……これは……その……っ!?」

 

 

きゃああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

 

 

「今の声は!?」

 

「マスター、指示を!」

 

「うん、わかっ……マスター?」

 

「ええ、そうです、先輩だけが唯一マスター適正者としてレイシフトしたんです。

ですから私は先輩のサーヴァントとしてここに居ます、私たちでこの状況を、人類の絶滅の原因を解決します」

 

「……なんかまだよくわかんないけど、とりあえず声がした方に行こう、とにかく情報収集だ」

 

「了解ですマスター。

さっきの声から察するにだいぶ危機的状況なはずです、距離も近そうですから急ぎましょう」

 

そう言って盾を担ぎながら走るマシュ。

その後ろを追う立香だが、重い荷物となってるであろう盾を持っているマシュの方が圧倒的に早かった。

 

「……こりゃ、鍛えなくちゃいけないなぁ……」

 

人類の危機というピンチにも関わらず、彼は主人公らしく随分と呑気なことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁああもうっ!何で私ばっかりこうなるのよ!!」

 

そう言いながら射撃のような魔術によって骸骨の敵を倒す女性。

白髪のロングヘアーのカルデアの所長……オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア

 

彼女は現在、絶対絶命のピンチに陥っている。

何せどこぞの一般人とは違い、敵に対する対抗手段はあるものの数が多すぎる、何せ20や30はいる。

 

射撃は距離を保ちつつ攻撃するには一番効率よく、かつ安全な手段だが、多くの敵を相手取るには不向きだ。

それこそフルオート射撃が可能な現代のライフルなら可能かもしれないが、所詮魔術による射撃。

速射はできても連射することは、少なくとも彼女には出来なかった。

 

そのため、走って逃げつつ近い敵を倒す引き撃ちしか彼女には方法が無い。

……が、彼女の靴はヒールだった

 

「ああぁ!!」

 

ヒールでマラソンなど、いくら魔術師でも、むしろ肉体的鍛錬をしていない魔術師ではキツい。

走って逃げるまでは良かったが、彼女はあまりにも体が弱かった。

 

「……もうっ!誰か助けてよ!!」

 

そしてメンタルも脆かった。

人間、パニックに落ちれば危機的状況に陥る、そしてブレる。

 

 

心情も、

 

表情も、

 

標準も、

 

 

飛びかかって来た骸骨に座りこみながらも射撃する……が全弾が微妙に標的にズレていた

 

「嘘でしょ!?」

 

そして骸骨の得物が彼女を切り裂く

 

……かと思ったが、何かが彼女に振り下ろされた刃物を防いだ

 

「……マシュ!?」

 

立香より早く走れるサーヴァントとなった、マシュだった。

マシュは自分より大きかもしれない盾を担ぎ、ふりまわしながら周囲にいた敵を言葉通り薙ぎ倒していた。

 

「大丈夫ですか……って所長!?」

 

「あなた一般人枠の……っ何でここに!?」

 

「詳しくはわかりませんが詳しい話は後ですっ!ここから逃げますよ!!」

 

「っあんたに言われなくてもわかってる!」

 

「マシュ!一通り片付けたら逃げる!追加で敵が来るかもしれないから早めに!!」

 

「了解しましたマスター!」

 

マスターである立香に答え、マシュは盾でありながら骸骨達を粉砕していった。

その間に一般人はさっさとこの場から立ち去る、ヒールを履いていて少し足が痛かったオルガマリーも素直に走って逃げた、それが今は一番だということ位は貴族である彼女も理解していた。

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

「……で、あなたはデミサーヴァントになってよりにもよって一般人である彼をマスターに仕立てたのね」

 

「はい、それ以外に私や先輩が生き残る方法はありませんでした」

 

「それに関しては今は良いわ、戦力は多いほうが良いですもの……それよりロマ二、そっちの状況は?」

 

《カルデアの施設の8割が消耗、破損、職員も犠牲になりました。

47人のマスター達は危篤状態、幸い死には至っていませんが全員を回復する術はありません。

先ほど所長の許可を得られたので緊急凍結で保存しました、補給さえ得られれば回復できるかと》

 

「そう……これならまだ弁明はできるわね……レフは?」

 

《レフ教授は……爆発の中心に居ましたので……》

 

「…………今は私がどうにかしないといけない訳ね。

気にくわないけどロマ二・アーキマン、あなたにしばらくカルデアを任せるわ、復旧作業と補給は頼んだわよ」

 

 

粗方の敵を倒し、落ちついた所でカルデアからの通信が入った。

どうやら魔術と科学の融合で、過去に遡っていても現代と通信することは可能らしい。

 

だが、事態はそれどころじゃ無かったらしい

 

通信相手であるロマ二・アーキマンは立香の部屋で仕事をサボる常習犯だが、そんな彼は一介の医師。

カルデア医療部門のトップではあるものの、カルデアは別に白い巨塔では無い。

はっきり言ってマスター適正のある魔術師達の方が偉そうで、実際偉かったりした。

 

 

そんな彼が指揮を執る必要に迫られていた。

 

 

状況はそれだけ悪かった。

現在わかってることを簡単にまとめると

 

・マスター適正も無く、レイシフトも出来なかったオルガマリーが何故かレイシフトし冬木にいる事。

・副所長にも等しいレフ教授は即死したと思われたが現時点ではまだ行方不明。

・他の部門のトップはすでに死亡が確認され、多くの職員も犠牲になっており、動けるのは20名程度

・マスター適正者は48名中47名が瀕死・危篤状態(なお、凍結保存により今は命に問題無し)

・現段階では施設の通信手段までやられたため救援を得るのはすぐには不可能。

 

あまりにも損害が多すぎた。

 

しかし、カルデア所長でありアニムスフィア家の当主でもあるオルガマリーからすれば一族の名に泥を塗り、さらにカルデアそのものが奪われる恐れがあった。

それは彼女には屈辱以外の何物でも無く、何らかの成果だけでも挙げなければいけない状況だった。

 

 

「……では、これより藤丸 立香とマシュ・キリエライト両名を探索員として特異点Fの探索を開始します」

 

《わかりました、検討を祈ります》

 

「……どうせSOS送ってもあなたは何も出来ないでしょっ」

 

《それはそうですけど……》

 

そう言っても何も出来ないのは事実。

無線を切り盛大にため息を吐くことしかロマ二もオルガマリーも出来なかった。

 

「所長、大丈夫ですか?」

 

「……これが大丈夫に見える?」

 

「いえ、ですがこの特異点を調査しなければなりません。

それが人類継続保証機関カルデアの使命だと私は思います……違いますか?」

 

「……あなたに言われると随分と突き刺さるわね。

わかってるわ、とりあえずこの特異点を解決してさっさとカルデアに帰らなきゃいけない訳ね。

何もせずに帰るなんて選択肢は私たちには無いわ、当分救援も来ないでしょうしね」

 

「救助は来ない……俺たちだけでどうにかしなきゃいけないんですね」

 

「一般人がなに一人前みたいなこと言ってるのよ!!」

 

「ええ!?」

 

「じゃあ聞くけど、あなたはこの特異点の解決法は何かわかるのかしら!」

 

「えっ?……えっと、確か聖杯戦争とかいう聖杯を巡る儀式がここで行われてて、そんな魔術をよく知らない俺が聞いてもビックリするような代物が何らかの鍵なんじゃないかと思う……思います!」

 

 

「……………………………………………………よろしい」

 

 

全くよろしくなかった。

“どうよ、庶民のあんたより私のほうが(ry”

とここで自信をつけて、所長や魔術師としての威厳を見せつけようとしていた。

ついでに言えば、彼女の無意識下では誰かに何かしらの形で褒めてもらうだとか上に見られたいという欲求が彼女の行動や言動に影響を与える程度にその欲求は強かった。

 

それがフルスイングで弾かれた

 

もっともそれは優秀過ぎる後輩サーヴァント(その時はサーヴァントでは無かったが)が彼に懐いていたことと、それを彼女は全く把握していなかった事にあるがそれを知らない彼女は勝手に悶えていた。

 

 

〔ちょっと!?何で一般人で平民のこいつから聖杯なんて言葉が出るのよ!!

まるで私が格好つけようとして「あっそれ知ってます」って素っ気なく返されたみたいじゃない!!

このままじゃダメだわ……アニムスフィア家の当主として面目がつかないわ……!〕

 

 

実際には家の面目どころか立香からすればオルガマリーの事を単純に偉い人と認識しているため、むしろ彼女の目の前で寝た前科もあり足を引っ張っていないと少し安心していた。

そして、マシュに至っては自分の知識がマスターの役に立ったと喜んでいる。

 

 

PRRRRRR!PRRRRRR!PRRRRRR!

 

 

そこに再び通信が入る。

恐らくDr.ロマンこと、ロマ二からの通信だろうが先の通信から五分も経っていないにも関わらず再び通信が入ったことを不思議にも思わず、勝手に赤っ恥をかいたと思っていたオルガマリーはすぐに応答した。

 

「何よしつこいわね!」

 

 

《すぐにそこから離れて下さい!早く!!》

 

 

「何事よ!?」

 

「っ敵影反応!……サーヴァントですっ!!」

 

「マシュ、敵の距離は?」

 

その情報に青ざめたオルガマリーだったが、それより早く立香が対応に動く。

名前からもわかる通り藤丸 立香は日本人、そしてそれなりにゲームを嗜んでいた。

RPG・アクション・戦略シュミレーション・パズル、あらゆるジャンルのゲームはプレーした。

 

そして何事にもまずは正確な情報が大事だというのも頭では理解していた。

未だに明確な死を実感していないことも相まって、とりあえず素人にしては及第点は取れる指揮を執った。

 

「まだ距離はありますが……すでに捕捉されているみたいです、接敵まで3分ほどかと」

 

「敵の強さは……わかんないね、とりあえず逃げに徹した方がいい感じかな」

 

《……何だか所長より頼もしく感じるけど立香くん、逃げるアテはあるのかい?》

 

「………どうにかなるんじゃ無いですかね?」

 

そして素人らしくどこから来るのかわからない自信もあった。

これには通信先のロマニやオルガマリーは呆れた。

 

「どうにかなる訳無いでしょ!!あぁぁ……こんな時にレフがいてくれたら良いのに……!」

 

「どうします先輩、時間はありませんよ」

 

「うーん……せめてマシュ以外にもサーヴァントが居れば……」

 

 

「「「それだ(です)!!」」

 

 

「ええ!?」

 

《立香くん、すぐにマシュの盾を地面に置くんだ!幸い霊脈は所長の足元だ!!》

 

「えっ、ぁあマシュ!」

 

「ハイ先輩!」

 

「それでどうするんです!?」

 

《所長確か聖晶石持ってましたよね!?それを——》

 

「わかってるわよ!!」

 

青ざめた顔や見栄や他諸々をどこかに捨てたらしい所長は随分と輝いた石を立香の手に握らせる

 

《・・・OK、英霊召喚システムともリンクしてる!

これで英霊召喚が可能になった、あとはマスターが……立香くんがその石をマシュの盾に入れれば君に応えてくれる英霊が君に力を貸してくれるはずだ!》

 

「先輩、早く召喚を!」

 

「そうよ!敵が来る前に早く!!」

 

「待ってマシュ!敵はまだ遠いの?」

 

「……いえ、もうすぐ側まで来てます」

 

「ドクターロマン、召喚にはどれ位時間がかかるの?」

 

《わからない……けど1分もかからない……と思う!》

 

「時間はギリギリか……マシュ、盾無しでは戦えない……よね?」

 

「っいえ!マスターのためなら——」

 

「無茶よ!今のあなたはデミサーヴァントになったばかり、聖杯戦争で召喚された英霊と武器なしで戦える訳が無いわ!」

 

「私は短剣も装備してます!無茶じゃありません!」

 

「無茶よ!!」

 

「所長!それにマシュも落ち着いて!マシュは短剣で敵と戦えるの!?戦えないの!?」

 

「戦えます!!」

 

「ちょっと!」

 

「所長は射撃が出来ましたよね!?」

 

「それが何!?」

 

「ならマシュと一緒に敵を足止めして下さい!!」

 

「はあ!?私に戦えって言うの!!?」

 

「それ以外に俺たちが出来る方法は無いでしょう!!

それともこのまま召喚する前に敵に殺されるかマシュが倒された後に殺されますか!?」

 

「っそれは………!」

 

「女性2人を囮に使うのは男として最低だけど今はそれしか無いんです!!」

 

「・・・っああもうわかったわよ!!

マシュ!私は支援攻撃と簡単な回復くらいしか出来ないわ!しっかり私を守りなさい!?」

 

「わかりました!」

 

「あくまで時間稼ぎだけで良いです!2人とも無理しないで!!」

 

「ぁああもう!!何で私だけこんな目に合うのよぉ!!」

 

 

マシュは敵を感知した方へ、時間稼ぎのために走った

 

その走った方向へやけくそになりながらも必死に付いて走るオルガマリー

 

一人残り、彼女たちのために、この特異点を解決するために英霊を召喚する立香

 

とにかく今はこの場を乗り切るために特異点に送られた3人は初めて3人で力を合わせていた

 

 

 

 

だが・・・・・・1つ目の交差点を右に曲がった瞬間、敵はもう居た

 

 

 

「あらぁ随分と初々しい、新鮮な獲物がいたわねぇ?」

 

 

「「……………」」

 

 

「あらぁ、あなた宝具が無いみたいだけど大丈夫かしら?

私は無抵抗のお人形をなぶり殺す趣味は無いのだけれど…………まあ可愛がれるから良いかしらね?」

 

「所長、下がっていて下さい」

 

「マシュ、行ける?」

 

「問題ありません……私はサーヴァントです!先輩や所長を守るためなら戦えます!!」

 

「……そう、なら遠慮なく殺らせてもらうわよ?」

 

時間稼ぎはそう長くは持たないとオルガマリーは余裕が無いながらも察していた

 

何せ彼女・・・マシュの足は小刻みに震えていた

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

「早くしてくれよ……!」

 

一方、1人残された立香は焦りながらも英霊の召喚を待っていた。

 

《システムフェイトが起動した!あとは召喚を待つだけだ!!》

 

ロマ二からの通信が入る

 

だがその直後、近くから派手な音と射撃音が聞こえた

 

どうやら思っていた以上に接近されていたらしい

 

時間稼ぎが無かったら対抗手段の無いこちらはまとめて倒されていただろう

 

 

英霊召喚が始まった

 

 

聖晶石を吸収した盾を媒介にカルデアにある英霊召喚システム・フェイトが動き出す

 

 

聖晶石が光り出しマスターである立香ごと周辺を照らす

 

 

やがて光は1つに収束し天に突き刺さるように伸びていった

 

 

そこから光は再び強くなり、光の帯となっていく

 

 

「早く……早く来いよ……!」

 

 

目を閉じ手を合わせ、すぐに終わるよう願う立香

 

 

そのせいでサーヴァントのクラスを見る事が出来なかった

 

 

そして光によって目が潰されることも無かった

 

 

神々しい光は集束し……いつの間にか消えていた

 

 

「……終わったのか?」

 

 

通信に反応は無い

 

 

英霊召喚の影響で通信が上手く出来ないのかもしれない

 

 

 

 

 

「……ほう、どうやら俺は一番乗りみたいだな」

 

 

 

 

 

そして耳にした

 

 

 

「……体に異常は無いな、これならまぁ、どうにかなるだろう」

 

 

 

声は渋い

 

 

高い声でも無い

 

 

美しい訳でも無い

 

 

いたって普通の男の声

 

 

 

「……おい坊主」

 

 

 

それなのに

 

 

 

聞き入ってしまう様な声

 

 

 

「おい坊主」

 

 

 

全く知らないのに……信頼出来る頼もしさを感じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……念のために聞くが……お前が俺のマスターか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その問いに目を開けて

 

 

 

 

 

初めて少年はその男を……英雄をみた

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

「あらあらぁ、宝具も無しで勝てるんじゃ無いの?彼女を守るのでしょう?

なら私の槍くらい捌ききれないでどうするのかしらっ!」

 

「ッ!!」

 

「マシュ下がって!」

 

オルガマリーの攻撃は決してサーヴァントを仕留める事は無い。

それでも注意をマシュから逸らし、マシュが切り込む空きくらいは与えていた。

 

 

だが相手はサーヴァント、しかも聖杯戦争で戦い慣れた敵

 

 

マシュはデミサーヴァント、ましてや戦いの経験など今まで一度も無く今は扱う盾も無い。

さらに支援しているのはマスターですら無い魔術師、同じ様に戦闘経験などほとんど無い。

その状況で連携などまともに出来るわけも無く、どちらかが相手の気を逸らすのが精一杯。

 

マシュが必死になって敵を引きつけ、オルガマリーは牽制する“以外に”2人で出来る事など無かった。

 

その程度戦い慣れている人間なら誰でもわかる、ましてやサーヴァントなら一度の立ち回りで大方予想つく。

実際、2人が相手しているサーヴァントも1度目の攻撃で2人が即席のコンビだと見抜いた。

だが一度だけ、たった一度魔術師の攻撃が大した物では無いとわかり攻撃を受けたところ、一瞬だけ怯んだ。

その隙に短剣持ちのサーヴァントに吹っ飛ばされた。

 

咄嗟に短剣だけは防いだがそれ以降は手加減するのを辞め、徹底的にサーヴァントの方を狙った。

魔術師の攻撃も一瞬怯むだけで大したダメージは無い、怯んだところにサーヴァントが突っ込んで来てもカウンターで返せる様に槍を構えた。

 

その結果、マシュとオルガマリーは防戦一方の戦いから完全な逃走に移行していた。

 

「マシュ、怪我は無い?」

 

「はい、ですが長続きするとは……せめて盾があればっ!」

 

「喋っている暇はあるのかしらっ!」

 

そう言って一直線に槍をマシュに突き刺す

 

対してその槍先からひたすら距離をとるマシュ

 

「なかなかの動きだけど……」

 

ひたすら回避に回っていたマシュ

 

 

その選択肢は間違っていなかった

 

 

 

 

 

「残念ね、あなた弱いわ」

 

 

 

 

 

 

回避方法がランダムだと思っていても無意識にパターン化していなければ

 

 

 

 

 

「………え?」

 

 

 

 

 

決着は突然訪れる

 

 

 

槍を避けたと思った瞬間、すでに目の前に槍が当てがわれていた

 

 

「マシュ!!」

 

 

オルガマリーが術式を展開し構える・・・があまりにも遅かった

 

 

今から撃っても確実にマシュの頭を槍が貫いている

 

 

この光弾が敵に当たっても一瞬だけ怯むだけで今度は自分が貫かれる

 

 

 

 

だが撃たないという選択肢は無かった

 

 

 

 

発砲

 

 

 

 

だがそれよりも早く

 

 

 

 

 

マシュの頭は

 

 

 

 

 

 

 

 

槍によって・・・・・・貫かれず、相手はマシュから退いた

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ一体なに者!?」

 

 

「なっ何?」

 

「わかりません……いきなり敵サーヴァントがこちらを見てますが……」

 

「マシュ!」

 

「マスター!?」

 

息を切らしながらもマシュの盾を担いで来た立香がその視線の先からやって来た。

 

「……そう、どうやらあなた、中々腕の良いマスターの様ねぇ?」

 

「ッマスターはやらせません!」

 

敵サーヴァントの狙いが自分たちから交差点から現れたマスターに変わったのを受け、マシュがサーヴァントとして立香のカバーに入る、もちろんオルガマリーも共に。

 

「ちょっと!?あんた——」

 

「黙って下さい所長、すでに事態は動いてますから」

 

「っあんたね——」

 

「マシュ、悪いけどあの槍の攻撃を弾くだけに専念して」

 

「わかりましたマスター」

 

「お喋りは……終わったかしらね!」

 

10m以上はあった距離が一気に縮まり目の前に槍が再びマシュの前に構えられる

 

だが今はサーヴァントとしての武器がマシュにはあった

 

その突きを盾をもって弾く

 

この盾は単なる攻撃程度で壊れるほど柔な物では無いとマシュは直感的に感じていた

 

二撃・三撃と繰り返し、向こうが大振りの横薙ぎを繰り出す

 

 

 

その大振りをあえて盾を直接動かし側面で槍を止める

 

 

 

「しまっ……!?」

 

 

 

 

そして見事に空いた敵の真正面に盾ごと突っ込むマシュ

 

サーヴァント化した彼女の筋力と盾の質量から産み出される純粋な物理エネルギー

 

それは敵サーヴァントを吹っ飛ばすには十分だった

 

 

 

「私だって……サーヴァントです!」

 

 

 

必死に逃げている間、観察していたのは彼女も同じだ

 

そして付け足すなら彼女が時間稼ぎのために短剣だけで挑んだ行為が敵の油断を誘引していた

 

所詮、盾が加わった所で……という思考が強固な盾持ちに対して大振りを振るうという悪手をやらかした

 

 

 

「……初々しすぎるのも癪に触るわね」

 

 

 

だが所詮、先ほどまで少女だった体での攻撃

 

ましてやデミサーヴァントになったばかりの彼女のスマッシュは完璧ではなかった

 

あくまで相手を弾き飛ばしただけ

 

相手に致命的なダメージを与える訳でも、相手の体勢を崩した訳でも無かった

 

敵サーヴァントは飛ばされながらも体勢を立て直し大したダメージを受けることなく着地した

 

 

 

 

 

「それなら……まとめて相手にしてあげる!」

 

 

 

 

 

 

「っ下がってください!」

 

「何だこれ!?」

 

「触っちゃダメよ!」

 

敵サーヴァントが髪をかき上げた瞬間、その髪が鎖となって空中を飛ぶ

 

その鎖はまるで“蛇”の様に動き3人の周りを取り囲んだ

 

 

 

「さあ、狩場は整いました……これであなたたちは私のもの……!」

 

 

 

逃げ場は無し

 

四方は相手の思い通りに動く鎖

 

盾は一方向からの攻撃しか防げない

 

 

 

「まとめて私の髪で絡め取って上げましょう……!」

 

 

 

こうなればもう向こうの思うがまま

 

鎖の上で余裕で笑みを浮かべられても3人にはもう有効な攻撃手段も脱出手段もなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狩りは隠れながら行うものだ、素人が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間

 

 

 

 

 

敵の心臓……霊核……を貫く様に1発の弾丸が貫通した

 

 

 

 

 

 

「ガァッ……!?」

 

 

 

 

 

 

サーヴァントとはいえ首と心臓が急所であることに変わりはない

 

 

1発の弾丸でも頭や心臓部にある霊核を貫けばほぼ無力化されてしまう

 

 

だが地面に崩れ落ちたサーヴァントの霊核の大半が傷つけられただけで消滅には至っていない

 

 

 

 

 

「さっさと仕留めなかったお前が悪かったな」

 

 

 

 

 

1発の発砲

 

 

今度こそ弾丸は僅かに残された心臓部を完全に破壊した

 

 

 

 

 

 

 

「出直してこい、それと2度と戻ってくるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま敵サーヴァントは何も話すことなく光の粒子となって消えていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうやら倒したみたいです」

 

「って今のは狙撃でしょ!?」

 

「あっいえ今のは——」

 

「とりあえずは乗り切ったみたいだな、坊主」

 

『!?』

 

突然背後から渋い声。

振り返ってみると立香より背が大きい髭を生やし、片方に眼帯を掛けた男が立っていた。

 

「……あの、助けて貰ったのは凄く助かりましたけど……さすがに背後から来られるとビビります」

 

「そうか?……まあそこのお二人さんはそうか」

 

「ちょっふぁっぁあ!?」

 

「……さすがにこれは無いと思うが」

 

一難去ってまた一難、再び敵襲かと勘違いした彼女は

「ちょっと誰!?」と「ふぁああ!?」と「ぁあああああああ!!」が同時に出た。

……3つのうち後者2つは特に意味は無い。

 

「えっと……先輩の召喚した英霊でしょうか?」

 

「ああそうだ……そう言えば名乗ってなかったな」

 

そして何だかんだ優秀なマシュは冷静にその男に尋ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回の召喚に応じてやって来たスネークだ、色々と新参者でな、よろしく頼むぞ、嬢さん達」

 

 

 

 

 

 

 




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