Metal Gear Fate/ Grand Order   作:daaaper

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どうも、5月になったけど執筆時間が習慣化出来ておりませんdaaaperです。

……大学の授業って難易度の偏りが激しいんですねぇ……もうテストがありますよ(遠い目
おかげで、次話は出来ておりませんm(._.)m
詳しくは少ししたら活動報告をあげようと思いますのでそちらをご覧ください。

注意!

一応ホラー……かも、苦手な人は注意をお願いします



邪竜百年戦争オルレアン:5

ねぇ、どうして……ねぇ?

 

ねぇ、どうしてみんなを〇・・〇○の?

 

ねぇ、どうしてあなたは・・・・・

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

気が付くと街が燃えていた、そこに俺は立っていた。

しかもこの街には見覚えがあった、“あの街”だ、黒いジャンヌと会ったあの。

しかも見た時とは違う、まるで特異点Fの冬木のように建物が燃えていた。

 

 

 

けど徹底的に違うのは

 

 

 

「まって!その子だけは殺s——アアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

女の人の声が在る、どうやら目の前で子供を殺されたらしい

 

 

「はっ、ハハッ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh」

 

もう壊れた男が在る、その声もやがて喉が裂けて声にならなくなっていた

 

 

「…………………………」

 

ヒトが有った、ソレに左腕は無く顔には大量の破片が刺さっていて右眼は潰れてる

 

 

そして俺が立っている、ただ立っているだけ。

周りには人が在って、ヒトが有った。

 

そんな人やヒトが沢山ある、そこら中に溢れている。

けど誰が動いているのか、壊しているのか、殺しているのか、まるでわからない。

そんな中で俺はただ立ってる、立って見逃されている。

 

 

「ねぇ、どうして」

 

「えっ」

 

 

そんな事は無かった。

 

そんな事は無かった。

 

ただ一人、いつの間にか目の前に立っていたのか少女がこっちを見ていた。

その間にも時間は流れているし、周りの建物は炎に包まれているから頰が熱い、

当然どんどん人は死んでいく。

 

「ねえぇ?どうしてぇ?」

 

「……えっ?」

 

でもその子と俺は変わらない。

いつの間にか立っていた少女に今度は目を向く。

淡いピンクのワンピースらしき服に赤い靴、ただ片方の靴がどこかにやったらしい。

それにワンピースの袖口も焦げて……

 

「こわい、こわいのぉ……」

 

「そうだっ…よ……ね……?」

 

その少女は泣き出しそうな声で呟いた。

 

 

慌ててその子の顔を見て目を合わせようとして・・・その子に目は無かった

 

 

「ねぇ、どうして」

 

 

その少女には目が無かった。

 

 

「どうしてみんなしんでるの?」

 

 

眼球が無かった。

 

 

「ねぇ、どうしてあなたは・・・・・・生きてるの?」

 

 

ただただ黒かった。

 

 

「ねぇねぇ・・・・・・なんであなたなんかが生きているの?」

 

 

自分の体が彼女へ引きずりながら近く。

 

 

「ねぇ、ねぇ、ねぇ、・・・・・・なんで?

 

わたし、なんで目が無いの?

 

・・・・・ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、

 

ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ

 

ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ無ぇ

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無ぇ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただゆっくり

 

 

 

 

 

何も無い空間に引き込まれていく様だった

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

《……うんバイタルも問題ない、脳波も睡眠時のものに戻った、けど一体どういう……》

 

「あれだけの死体を見たんだ、極度のストレスによる夢遊病……だったら良かったが、どうにも干渉を受けていたみたいだな」

 

《っ!?観測データからも、そもそも君が彼を見ていても変化は無かっただろう!?》

 

「それだけ偽装が上手いらしい、俺も今わかったくらいだ、もっとも確証って程じゃないが」

 

《……それで藤丸君は無事なのかい?》

 

「それはデータ通りだ、もう終わったらしいが」

 

 

翌日の行動も決め、話が終わり寝始め数時間後、すでに翌日になった。

その間にマシュも仮眠(藤丸のサーヴァントとして中々寝ようとしなかったが)させ、見回りは相変わらずクー・フーリンにエミヤ。

そして女性陣は思いっきりガールズトークに、スネークは罠設置に走った。

ただアマデウスだけは普通に寝ていた。

 

だが明日の予定が今日の予定になった頃、藤丸は突然テントから出た

この時マシュもたまたま起き出して来たので、声を掛けたのだが返事がない。

寝ぼけているのかと思ったが、女性陣も無視してゆっくりと歩く様子が不気味に感じた直後、ロマンから通信が入った。

 

曰く藤丸君の脳波が少し変なんだけど大丈夫かな、と。

 

ロマンやカルデアからすれば寝ているはずなのに脳波から覚醒状態の兆候があったらしい。

それも何か気になるなぁ程度の物で、マシュが起きたからついでに、という程度だった

……が、嫌な予感がしたマシュは急いで女性陣に助けを求めた。

 

話を聞いた騎士王はとりあえず声を掛けるがこれも無視。

確かにおかしいとなり、ゆっくりと歩き続ける藤丸を持ち上げ無理やり座らせた。

話をしようと(マシュが声を掛けた時も開いていた)目を見ても、焦点が合わず黒目がただ広がっているだけだった。

その間にスネークが話を聞きつけ戻ってきた途端、スイッチが切れた様に首をカクンとさせ本当に寝てしまった。

 

一瞬マスターが死んでしまったかと思ったマシュだが、騎士王から息も脈も有ると言われ、先ほどロマンからも問題ないと言われてホッとしていた。

 

それはこの場にいる誰もが多かれ少なかれ感じていたことでもあるが、とにかく落ち着いた所で今度は藤丸を持ちあげ、マシュに託した騎士王がスネークに尋ねた。

 

「……それで、何故貴様がマスターが干渉を受けていたとわかった?

そもそも誰からの干渉だ、魔術的な干渉なら私の対魔力スキルでわかるぞ」

 

「私もアルトリアさん程じゃありませんけどわかるわよ〜?」

 

「私もルーラーとしての力はあまりありませんが、魔術的な干渉ならすぐにスキルでわかります……魔術が行使された感じは有りませんでした」

 

「一応僕もキャスターだから最低限わかるけど、そんな感じはしなかったけどね」

 

「あらアマデウス、起きてたの?」

 

「もちろんさ、もっともこれだけの騒ぎがあれば流石に体を起こすさ」

 

もっとも寝ながら少女たちの声をタダで、しかも間近で聞けてそれに妄s——(以下略)

な事をしていたが、そんなことを言った瞬間に聖剣のサビになりその頭部に風穴が開く気がしたので一切余計な事は話さないが。

 

「それで、貴様は何故わかった?」

 

「俺のスキルで坊主にくっ付いて、いや取り憑いていた奴を引き剥がした。

……まぁ正しくは別の所にいかせたのかも知れんが」

 

《・・・もしかして、死者の加護かい?》

 

「まぁな、“奴”が勝手に現れて坊主に近づいた後に坊主が寝たからな」

 

「うん、さらっと流したけど君随分と物騒な加護を持ってるんだねぇ……」

 

「名前だけだ、効果は俺の知り合いが死んだ奴を適当にするってだけで俺自身がどうこうする事はできん、令呪を使えばある程度頼めるがな」

 

「思った以上に適当だね!?」

 

「……ではスネークさんは死んだ人々が見え、今回は藤丸さんに“いた”のが見えたと?」

 

「まぁ俺のスキルで勝手にどうにかしてくれただけだ、実際に何をしたのかはわからない

わかるのは坊主に近づいたのがいた事だ、坊主が憑かれやすいかもしれん。

あと今回のやつは随分とうまい奴だったらしいって事くらいだな」

 

「出来ればその藤丸さんの所に来たオバケさんに会って見たかったわね」

 

「それはやめた方が良いと思うよマリア、勝手に彼を何処かに“行かせよう”とした奴なんだから。あと君、そもそもゴーストとは相性悪いだろう?」

 

「……それで、先輩は大丈夫なんでしょうか?」

 

「基本的には問題ないはずだ。

まず坊主本人がどう思ってるか、何を見たかにもよるが、幸い一人じゃ無いからな。

それでも心配なら、起きたら後ゆっくりお前が聞いて見てやれば良い、それだけで効果的だろう」

 

「……なるほど、わかりました。

では先輩が起きたら私から先輩に聞いてみます、時間があるときにゆっくりと」

 

「そうしておけ」

 

実際、その坊主も喜ぶだろうしな、とは伝えない。

余計な事は言わないのが吉なのだ、特に女性相手には。

今現在、マシュマシュな太ももの上に頭を乗せられて寝ている少年とその少女。

 

邪推でもありお節介でもあり下世話でもあるアドバイスだが心の中で思う分には害はない、本音と建て前だ。

 

 

そんなやや深刻そうなトラブルも一転して淡い様相を呈してきた。

それを見守るのはフランス王妃に聖女、男装の麗人として認識された騎士王、

おまけで変態クズの音楽家とほぼ40代で眼帯持ちの傭兵とやや偏った面子ではあるが。

 

 

 

ガザガサ

 

 

 

「やっとヒロインと主人公ッポクなったニャ」

 

「フォーフォ(早くくっ付けば良いのに)」

 

……偏った面子だった。

 

 

 

 

 

 

《そんな空気を壊すようで悪いが敵襲だ!しかも数が多いぞ!!》

 

だが淡い色というのは思いのほか他の色に染まりやすく、そしてすぐに風化してしまう

焦った声でロマンが通信機から吠える。

 

《こちらである程度迎撃する、だがワイバーンがいくつか抜けるのは間違いない》

 

《大した事はねぇが無駄に数が多いなっ!》

 

すでに外回りのエミヤとクー・フーリンは対処しているようで、無線機越しで何かが空気を切り裂く音が聞こえていた。

 

「マシュ、坊主には悪いが目を覚ませてやれ、マスターとして仕事だ」

 

「わっわかりましたセンパイッ!センパイッ!!すみませんが戦闘ですっ!!!センパイ——」

 

「事前に仕掛けたトラップで地上はほぼ問題無いが流石に空中まではな。

この中でワイバーンを相手取る自身があるのは……」

 

「私くらいだろうな」

 

マシュがバシバシ藤丸を叩く中、騎士王だけ手を挙げる。

 

「僕等は前線は張れないからね、支援なら任せてくれ」

 

「そうねー、私も惹きつけるくらいなら出来るわ〜」

 

「ではお二人は私がお守りします」

 

そんなこんなで頭を抱えながらもただならぬ気配を感じて目を覚ます藤丸。

そして、その予感が当たっていると告げるマシュ。

 

「…うっ……!緊急事態ッ!?」

 

「夜ですがおはようございます先輩、そしてその通りですマスター」

 

「お目覚めだな、とりあえず目の前の事態にまずは対処するぞ坊主」

 

「すでにエミヤさんやクー・フーリンさんが迎撃してますがワイバーンが何体か逃したと連絡がありました」

 

「っ…………ならアルトリアさんが先鋒で!

戦う場所は周りが暗いからここからあまり離れ過ぎないように、他の人は基本的にアルトリアさんの支援で!」

 

「おやっ、思った以上に出来るマスターだね、これは僕も負けてられないぞー」

 

「もう人としてあなたは負けてるわよ、アマデウス」

 

「うん、知ってた」

 

《来るよ!ワイバーン、三体だ!》

 

 

ロマンが通信機から再び叫ぶと、その通りの数のワイバーンを焚き火の僅かな光のおかげで捉えた。

 

 

「援護する、真ん中に突っ込め」

 

「言われるまでもない」

 

 

その瞬間にスネークは背負う銃(M16)の銃口をワイバーンの目に向け2発発泡した。

 

フルオートモデルのアサルトライフルから放たれた弾丸は焚き火によって僅かに照らされた夜空を飛び出し、その空を飛ぶワイバーンの目を貫いた。

 

目を潰されたワイバーンが暴れながら墜落する、その仲間がやられたからなのか、はたまた威嚇のためなのか、残る二体のワイバーンがスネークや藤丸たちがいる焚き火に向かい吠える様に唸る…… が、そこに聖剣を握る騎士だけが居なかった。

 

「失せろ」

 

かの騎士王はその体を同じ夜空に浮かせ、

 

しかし弾丸と違いワイバーンに対して致命的な一撃を与えんと右手に夜空よりもはっきりと黒いその聖剣を

 

未だ飛ぶワイバーンのうちの一体の頭部へ真正面から叩き込む。

 

さらにそこから振りかぶった勢いに合わせ自身の魔力放出によって加速し、頭部に叩き込んだ剣を軸にワイバーンの頭部に難なく乗り、首から喉へ突き刺した。

唸り声も出せずに2体目のワイバーンも墜落しはじめる。

 

その間に初手と同じ要領で3体目のワイバーンも片目をやられるも、さすが竜種の亜種と言うべきなのか、

同じ手は喰らわんと弾丸は回避していた……が、焚き火から今度は同じ髪色を持つ確かな英雄が消えていた。

 

「さすがに仕留めきれませんが…… 」

 

そう言いながらもジャンヌは自身の持つ旗で器用に飛び移り、頭を揺らしながら引きはがそうと暴れるワイバーンを無視し、残ったその目を手に持つ旗で潰し飛び降りた。

両目を失ったワイバーンはやはりすぐに墜落し、それでもなお暴れるがやがて夜より黒い剣がその首を断つように地面に振りかざされると、頭部がゴトッと重い音を立てながらも地に落ち、切り離された下部も数秒後には力尽き動くことをやめた。

 

「お見事です、流石に旗で首を落とすことはできませんから」

 

「そう言う貴様も田舎娘の割にはずいぶん器用だったな、騎乗スキルがある訳でもあるまい?」

 

「アハハ、なんと言いますか……馬に乗る感じでいけるかなぁ〜と」

 

「……馬に乗った経験があるのか?」

 

「無いですね、元帥がよく乗ってたので見よう見まねです」

 

「……それ以上にワイバーンの首を切って目を抉るなんて事をアッサリやった彼女たちの方が怖いんだけど」

 

「ああ、俺らはいらない気がしてきたな」

 

最初にスネークが落としたワイバーンは地上に残っていたアマデウスやマリー・アントワネット・マシュで文字通り囲んで殴っていた訳だが、その間にジャンヌが目を抉り騎士王であるアルトリアは2匹も切り倒した訳である。

単純な効率を考えれば彼女たち2人に任せていた方が早かったかもしれない。

というか早い。

 

「そんな事は無いと思います、最初にワイバーンが倒されたお陰で他のワイバーンは動きがわかりやすくなってますし、いくらアルトリアさんでも3匹をまとめて相手にすれば無傷では無かったでしょうし」

 

「うん、俺もそう思うよ、今いる人たちの中でちゃんとした遠距離攻撃が出来るのはスネークさんだけだし、魔術的な援護はアマデウスさんだけだから」

 

「そう言われれば俺もやりがいがある、ありがとうなマシュ」

 

「っいえ、あくまで私が感じた事です!」

 

「・・・あ〜、これ面倒かも」

 

そんな男衆……といっても2人だけだが、そんな2人を励ますマシュと藤丸。

いくら傭兵と作曲家という一癖も二癖もある人間でも素直な言葉は無視できない、それが少年少女の物ならなおさらである、もっとも音楽家の方は照れているように感じるが。

 

「あらアマデウス、素直じゃないのねぇ」

 

「ああマリア、それより優雅で素晴らしい言葉の続きを聞く暇はなさそうだ」

 

「ん?それはどういう……っ何か後ろから来るぞ」

 

何かアマデウスの様子がおかしいとスネークが思った直後iDroidが罠の作動を報告する。

それはエミヤやクー・フーリンらがいる方向とは真逆の方向に設置したものでもあった。

 

《っ大量のモンスターとは真反対から反応が2つ!しかもサーヴァント!?》

 

「なるほどな、これは確かに面倒だ」

 

「だろ?」

 

「わかったのか?」

 

「これでも音楽を作ってただけで英霊になったらしい僕だよ?

数キロ先の音を聞き取る事くらい訳ないさ、それこそ女性の息遣いなら尚更ね」

 

「……変態だな、情報としては信用できそうな分なおさらだ」

 

「しょうがないわ、彼にとってその変態な耳と感性が彼そのものだもの」

 

「あの……敵のサーヴァントがもの凄い勢いで迫っているのですよね?

ゆっくり話していて大丈夫なんでしょうか……?」

 

「女で反応2つならまぁ相手は絞り込めた、真名はわからんがこれだけ居ればどうにかなるだろうしな。

油断出来んし見知らないサーヴァントの可能性もあるが……」

 

《こっちの観測データからだとあの場にいたサーヴァントと同じ反応はしているよ。

もっとも確定できないしもう直ぐそばまで来てるんだけどねぇ!!》

 

「だそうだ、そう心配するなマシュ」

 

「は、はぁ……」

 

スネークが何故か心配そうに聞くマシュに問題ないと答える。

アマデウスの変態性を抜きにして相手が女で反応が2つなら、昼間襲って来たアサシン・ライダーにほぼ間違いない。

セイバーの可能性も否定出来ないが。

 

「私の啓示スキルが反応したのですが……」

 

《っものすごい魔力反応!間違いなく宝具だぞ!?》

 

「・・・前言撤回だな」

 

「あー派手なのが1発来るのかぁ……」

 

「っマシュ!!」

 

「了解ですっ!宝具展開します!!」

 

男2人が何故か頭を抱える中、藤丸がマシュの名前を叫びそれに答え彼のサーヴァントとして宝具を発動する。

その姿を後ろからみる王妃様、その顔は好みの花を見つけた時の少女の様に華やかだった。

その隣にいるジャンヌは対照的に、一切油断せず前方から来るであろう敵とその宝具を警戒する。

 

「仮想宝具 疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)!」

 

愛知らぬ哀しき竜よ(タラスク)!」

 

マシュの宝具展開から一瞬の間を置いたかと思われた時、

 

焚き火の光が届かない暗い森の一部から突如巨大な物体がカルデア一行にブッ飛んで来た

 

そんな物が宝具として飛んで来るとは思いもしなかったのかマシュは一瞬怯むも、

手応えからその物体自体が自身の宝具を貫通するほどではないと判断すると宝具展開を維持する。

その間にアマデウスは最後方へ下がり、スネークが僅かな光の中でその物体が何か観察する。

 

「こいつは……カメにも見えるが……」

 

「DDなオンラインで見たことあるニャ、もう少しデカかった気がするけどニャー」

 

「ああ、詳細までは語れそうに無いな」

 

「ニャー」

 

いつのまにかちゃっかりとスネークの足元に現れたトレニャー。

その右前では結構余裕が無いように……と言うより宝具で防げるとはいえ、飛んで来た物体にメンタル的に余裕が無いため盾の後ろで顔を地面へ背けているマシュだ。その様子がキツそうに耐えている様に見えるだけだ、まぁ耐えているのは確かだが。

だがそのカメの様な何かもトレニャーが現れてすぐに、英霊が霊体化した時の様に消えてしまった。

 

「っタラスクがさっさと逃げるなんてどうして……まあ良いわ、こっちももう限界だし」

 

そして消えた先から、焚き火の光でギリギリ判別出来る程度の距離に露出の多い修道女が立っていた。

その手には相変わらずデカい杖が有るが、それと同じくらい籠手も目につく。

 

《反応が1つになった、どうやらさっきの生き物が彼女の宝具の様だ、それに——》

 

「タラスクと確かに言ったな、それに修道女……と言うよりキリスト教関連と言えば、マルタ以外に思いつかないが」

 

「ええそうよ、私はマルタ。こっちとしては余裕が無いのだけれど」

 

「開幕から宝具を向けて来る時点で余裕があるとも見えなく無いんだがな」

 

「いいえ、違うのよそこのヒゲの人、私はあとはあなたと・・・戦うだけ、それだけっ——!」

 

そう言うが早く、6本の足と硬い甲羅をもつドラゴンを従える修道女……否、聖女マルタが突っ込んで来た。

真っ先にターゲットになったのは先頭にいたマシュ……ではなくそのやや後ろでタラスクを観察していたスネークだった。

宝具を解放した直後だったからか、自身を守るために盾を構えていたマシュは反応が遅れスネークのカバーに入れなかった。

 

 

だがそれが致命的な失敗になることはなかった

 

空中から拳を振り下ろそうとしている聖女を捉えつつ、前方に飛び込みその拳を回避する

 

それと同時にマスターに向かって叫ぶ

 

 

「マスター!セイバー下がらせてアーチャーの奴を呼んでこい!!」

 

「っわかった!」

 

 

振り下ろされた拳は地面を陥没させていたが、そこから今度は杖を掲げ何かを呟いている

 

それを見てすぐに左腰からハンドガンを取り出し一発撃つ

 

マズルフラッシュが僅かにマルタの顔を見せるもそれは一瞬であり、彼女は気にもせず杖をスネークにかざす

 

その姿を見てすぐにまた駆け出す……も、スネーク自身の周辺が爆ぜた

 

・・・が、それは大盾によって防がれた

 

 

「よりにもよって魔術かっ……助かった、マシュ」

 

「スネークさん、援護しますっ!」

 

「時間を稼ぐぞ、俺らは下地を作る」

 

 

初撃を許したとはいえ、シールダーである彼女にすればスネークを守るのは当然だ

 

幸いマスターである藤丸はいまジャンヌや他のサーヴァントに守られている

 

その事実について心で引っかかるものが彼女にはあったが、それについて今彼女は気にしない

 

2発目の魔術を打とうと杖を構えているマルタに向かい走り出すマシュ

 

その後ろに隠れ同じように馳けるスネーク

 

また同じように杖を掲げた途端、今度はマシュ自身が爆ぜた

 

・・・その様に見えるも、実際にはマシュの持つ盾の周辺が爆発しただけであまりダメージは無かった

 

 

「随分と頑丈ねっ」

 

「ハアアァァ!!」

 

 

その爆ぜた爆風から手に持つ盾を正面に思いっきり押し出すマシュ

 

その向かいにはマルタが居る

 

だがそれを見ても特に驚くこともなく当然のように、

 

杖を地面に突き刺し、それを取っ掛かりにそのシールドバッシュを回避する

 

その回避先に向かって再びスネークは近距離で発砲する

 

・・・だがそれも対して気にすることも無く

 

マシュの左側面に回っているマルタは杖をそのままに思いっきりその側面へ飛び込む

 

 

「セエェィッ!!」

 

 

だが、

 

側面に回り、

 

飛び込まれる、

 

それはマシュがすでに何度も訓練した、させられた事だ。

 

 

聖女とは思えぬ拳が自身の側面突き出された瞬間

 

マシュは左に向かって盾を振りかざしその拳の軌道に合わせる

 

そのタイミングは完璧であり、盾は人体でも脆い箇所である手首を狙っていた

 

「ッ!」

 

僅かに目を見開いたマルタ

 

だがそれは驚きでは無かった

 

自身の拳の軌道をズラし、振るわれた盾と自身の籠手を合わせる

 

「ッ!?」

 

「っ!」

 

普通ならそれでも手首は壊れる

 

だが英霊が、英霊が身につける籠手が普通では無いのは当然で

 

止められた時点で引くべきマシュは一瞬ながら固まった

 

 

だが一瞬の隙があれば英霊にとっては十分

 

 

 

互いに息を飲んだ

 

 

 

一方は驚きで、一方は・・・踏み込むために

 

 

 

ガラ空きになっていたマシュの右側に容赦なく足が食い込む

 

 

その見事な足蹴りはモロに彼女の体へ入り、蹴りの勢いそのまま飛ばされた

 

 

しかし相手は1人では無い

 

飛んだマシュを見送る事なく杖のそばに立ち“相手”を確認するマルタ

 

同様にマシュの状態を気にする事なくただ相手に銃口を向けたままのスネーク

 

互いに一歩踏み込んでも拳は届かない空間が広がっている

 

 

「彼女の心配はしないのかしら、味方でしょう」

 

「だからこそだ、蹴りで沈むほどヤワじゃ無い」

 

「そう……私もそのオモチャで死ぬことは無いわよ」

 

「みたいだな」

 

 

そう言いながらも銃口は向けたまま

 

だが事実、これまで2発発砲したものの一切のダメージを与えていない

 

それどころかマルタ自身何も感じていない

 

聖女マルタというサーヴァントが持つスキルによるものだろうとあたりを付けるスネーク

 

たしかにオモチャ呼ばわりも仕方がない

 

 

「聖女っていうのは思ったよりヤンチャなんだな」

 

「そんな事はありません」

 

「少なくとも彼女を吹っ飛ばしたあの蹴りは見事の一言だ」

 

「それはどうも」

 

 

藤丸たちは飛ばされたマシュの方に集まっている。

一応王妃様と音楽家の2人がこちらを見守ってはいるが、介入する気はなさそうで、マシュの方に意識は向いていた。

もっともスネークにすればその2人に介入されても手間がかかるのみで、マルタからすれば対して手間は変わらないと捉えていた。

 

 

「……頃合いだな」

 

「随分と余裕そうですね、もっともそうでなければ困るのですが」

 

「そうか……まあそうだろうな、なら出向いてきた相手に答えてやるのが順当だろう」

 

 

その言葉に疑問を感じるも気にすることでも無いと油断せず構えるマルタ

 

 

だが対するスネークは・・・銃口を自然と下ろした

 

 

ごくごく自然な動作で武器を下ろした

 

その行動に驚く……こともなく、より警戒し構え直すマルタ

 

だが構え直すあいだに目線を落とし銃をいじったスネークはやる事を終えた

 

顔をマルタの方に上げ右手から何かを放り投げる

 

焚き火の漏れ火だけが唯一の光源であるこの森の中

 

マルタは物体を見て、認識して、すぐ右に避けた

 

投げられた物体は緩い弧を描き彼女の顔があった所を通過する

 

その間も決して油断せず向かいにいる男を見ていた

 

 

 

・・・ハズだった

 

 

 

だが実際には姿そのものを見逃していた

 

 

 

視界の左側から違和感

 

顔を向けるとそこにいた、立っていた

 

 

「ッ」

 

 

すぐに牽制のために左ジャブを放つ

 

 

その左腕は弾かれ 体も僅かにつられ右に傾く

 

 

重心がズレたお陰で体重が乗った右足を軸に左足で蹴り回す

 

 

スムーズな流れで力の乗った左足は遠心力も加わる

 

 

その足先は寸分の狂いもなく側頭部を直撃する

 

 

 

確かにそう見えた

 

 

 

瞬間

 

 

 

彼女自身の足先と相手の側頭部に僅かな空間が“あった”

 

 

 

その隙間に相手の右腕が入り込む

 

 

 

そして自身の左足は完全に止まった

 

 

視界が回る

 

背中に衝撃

 

聞こえる炸裂音と見える火花

 

 

「下地は完成だな、悪いがここで一旦区切らせてもらうぞ」

 

「っそんなオモチャ……で……?」

 

「頃合いだな、投げ飛ばされても立とうとする女は初めて見た」

 

「な……んに…………よ…………」

 

 

視界が狭く、より黒く、暗くなる

 

頭をやられたのだと思い全身に力をいれる

 

それすらも出来ない体になっていた

 

 

「……すま・・な・・ら・・・ろ」

 

 

 

何か言われているようだがそれも聞き取れない

 

 

 

ただ暗い視界の中で

 

 

 

 

火花を見て

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・そこまでが、

 

ただそれだけが、

 

彼女が、マルタが認識できた事だった。

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

 

「……アレッ!?スネークさんもう倒したの!?」

 

「ん、ああ、こっちの準備は整った。

マシュの方はどうだ、心配するほどヤワじゃないのは知ってるが結構な勢いで吹っ飛んだからな」

 

「私はこうして無事です、問題ありません」

 

こうして、外野が目を離している隙に敵であったマルタを倒したスネーク。

マシュの無事も確認し終えると同時にセイバーがお使いから帰ってきた、その騎士王の後ろには確かにアーチャーであるエミヤがおり、共に外周で迎撃していたクー・フーリンの姿もあった。

 

「おいマスター、アーチャーを呼んできたぞ」

 

「うん、ありがとう……って言ってももう終わっちゃったけどね」

 

「いいや、生憎私の仕事はここからなんだよ、マスター……とは言え、駆け付けたにも関わらず敵が倒れていると言うのは何とも言えない物だがね」

 

「悪いな、だがこれが一番手っ取り早い、適材適所だ」

 

「ふっ、その台詞をあなたから頂けるとはね、まぁこちらとしても異存はない訳だが」

 

「……ホント、テメェがその口調になると気味が悪いな」

 

「だろうな、私はお前にこの言葉は使わないようにしているしな」

 

「言ってろっ」

 

何だかんだ言いながら気があう紅茶と青タイツ。

確かにいつもと違う言葉使いの彼に違和感はあるが不自然ではない。

……客観的に見れば青タイツの方はケルト神話における無双の戦士であり、伝承通りの力を発揮すれば掛け値無しで最強と呼べる英雄なのだが…………

 

「……それで、何で彼女は消えてないのかそろそろ誰か説明してくれない?」

 

「そうだな、これ以上掘り下げると色々と……まぁ何だ、面倒というか、理不尽な気分になりそうだしな。

とりあえず、お前たち2人には説明する必要はあるか」

 

「……なんだか君とは会話しているように見えて、実は別のことを気にしているような気がするんだけど」

 

「気にするな。おい坊主、この2人に説明してやれ」

 

「そうっだね、ぜんぜん話して無かったし……って言っても、エミヤさんから話した方がいい気が……」

 

「構わない、むしろマスターとしてちゃんと役目を果たした方がいいのでは?」

 

「……わかった、じゃあ説明するね」

 

自身のサーヴァントの手の内を他のサーヴァントに説明するマスターとはこれいかに。

そんな視線をアマデウスがエミヤ当人に向けるも、その本人はフッという顔で頭を横に振るばかり。

その顔は一瞬、かの音楽の天才をも殺意の波動に目覚めさせるものだったが、それも一瞬。

表情から分かる情報としては、こんなマスターだから諦めろ、ということらしい。

 

「えっと、この森に入ってくる途中でジャンヌさんがわかったことを教えてくれたんだ。

その内容が、あの黒いジャンヌに従ってるサーヴァントは全員狂化スキルを付けられてる……とか?」

 

「……なんで君、疑問形なのさ」

 

「悪いね、生憎私たちのマスターは最近まで魔術も知らなかった素人なんだ、むしろ良く適応できてると私は思うが」

 

「そいつに関しては俺も同感だなっ、中々面白いマスターだぜ?」

 

「ハハハ……力不足で申し訳ない」

 

「……うん、僕は一応キャスターだけど、生前含めてここまで素直な子も珍しい、ていうか見たことないよ。

……単純でわかりやすい奴なら知ってるけど」

 

「あら、それは一体誰のことかしら〜?」

 

「少なくとも君の事じゃないよマリア、っていうか君は単純だけどアクティブ過ぎて逆にわからないさ」

 

『・・・あぁ〜』

 

単純なのにわからないとはこれ如何に……と、言いたいが。

見知らぬ相手から可愛い、という理由だけでササッと相手から可愛い奴を盗む位にはアクティブ、しかも理由は単純だ……それを予想できたらむしろ才能である。

 

「……そろそろ話を戻そうか」

 

「そうだね。

えっと、それで狂化スキルが付けられてるから本来なら味方にすることはできないって話だったんだよ」

 

「まぁそうだろうね、出来るなら縛り付けておく方法くらい施すよね、僕でもするくらいだ」

 

「けど、だった、という事はその対策があるのよね?」

 

「それが彼ってことかい?」

 

「ああ、その通りだ」

 




ちなみに、スネークさんがマルタに投げたのはマガジンです。
そして薬室に装填してあった物を発砲、その後リロードして最後に1発撃ちました。

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