脱落者の生理現象   作:ダルマ

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プロローグ

 昔々、二つの巨大な勢力が互いの存亡をかけて争っていた。

 長い年月を浪費し一進一退の攻防を続ける両勢力は、次第に開戦の理由すらも分からなくなる程に泥沼の戦争を演じ続けていた。

 しかし、いつ終わるとも知れないそんな状況に終止符が打たれる時がやって来る。

 

 停戦、それが意味するところは、恒久的な平和を実現する為などではない。長きにわたり疲弊した両勢力が次に来たるべき時に向けての充填期間、所詮は仮初の平和でしかない。

 それでも、そんな仮初の平和に喜ぶ人々がいるのもまた事実。戦争が日常の一部となっていたものが、ある日を境にそれが非日常へと変わる。これ程の変化に反応を示さないものがこの広い宇宙にどれ程いようか。

 いや、いるのである。例え戦火が途絶えても、地獄と化した大地に生きる人々がいる。彼らにとっては、停戦などさして気になる話題ではない。

 彼らにとっては、今日を生きるだけの食糧をいかにして確保できるか。それこそが、もっとも重要な事であるのだから。

 

 

 アストラギウス銀河と呼ばれる銀河の中には有人無人問わず無数の惑星が存在している。そんな銀河の何処かに、惑星ゾーラと呼ばれる惑星が存在していた。

 アストラギウス銀河にある多くの惑星が大なり小なり先の戦争の影響を受けている例にもれず、この惑星もまた戦争の爪痕を残す惑星であった。

 かつては文明の栄えていたであろう大地は戦争の影響により荒廃し、もはやその面影は廃墟の中の僅か一部にしか見いだせない。

 大地に根付いていた生態系は崩れ、死滅し或いは偉業の変化を遂げて生き残っているものもあった。

 

 そんな戦争の傷跡を残すこの惑星にも人間達は暮らしていた。と言っても、かつての人口と比べると比較するまでもない数ではあったが。

 戦争によって死に体となった星を見限り財ある者達は一目散に星を後にした。残って努力する者もいたがそれもやがて無駄な足掻きと分かるや星を後にした。

 星から出る力のない者達は少しでも生きながらえる為に死した大地を捨て、比較的戦争の傷が少ない大地へと移動し命の連鎖を保ち続けた。

 

 だが、星から出る事の出来ぬ全ての者が比較的安全な大地へと移動できた訳ではない。

 取り残された者、あえて残った者、残らざるを得なかった者。少なくはない者達が地獄と化した大地に残り、そこで命の連鎖を続けている。

 

 

 かつて名付けられた名を無くしたその不毛の大地の名はウェイストランド。

 人の過ちが繰り返されるその地獄の大地で、今日も人は生き残る為に、過ちを繰り返す。




読んでいただき、どうもありがとうございます。

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