恋姫バサラ 蜀編 大陸に呼ばれし老鬼と御遣い   作:双龍

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申し訳ありません、執筆に長い時間をかけてしまいました、これで次から赤壁に移行したいと思います、それでは五十三話をお楽しみください。


53話

義弘たち殿を引き受けた三人は佐助の手引きにより、幸村たちが籠城している江陵の城にたどり着き幸村たちとの合流に成功した、そこには幸村だけではなく井伊直虎 甘寧 呂蒙 黄蓋たちもいた、だがいずれの武将たちも長い戦いで疲弊しており疲労の色が隠せていなかった。

 

「お、お館様!?それに島津殿や上杉殿まで、なにゆえこのような死地にお出でになられたのですか」

「幸村よお主等をこの様なところで失うわけにもいかんからな」

「ゆ、幸村のため死地へ・・・お、おやがだざばー!!」

「泣くな幸村!!男児が軽々泣くものではないわ」

「おまはんらは良く戦った、ここからはおいたちが戦を預かる、安心して船で逃げるがよか」

「待て」

 

義弘のたちの言葉を甘寧が止め言葉を続けた。

 

「貴殿の顔には覚えがある汜水関を斬った島津殿、しかし貴殿等は蜀軍、なにゆえ呉の戦に首を突っ込む?」

「この度蜀は呉と同盟を結ぶことに相成りました、そして同盟の最初の仕事として若虎たちを救うことになり、私たちが殿を引き受けたのです」

「お館様殿の役目この幸村も御伴しとうございます!!」

「幸村お主たちはお前もう限界じゃ、長き戦いを良く戦い抜いた、後はワシ等に任せおけ」

「そう言うわけね甘寧どん納得したとね?」

「ああ、悔しいがここは貴殿等に頼るしかないようだ」

 

すると直虎が信玄に近づいて来た、そしていきなり剣を信玄に向けた。

 

「武田、貴様に助けてもらうだと?、そんなことされるぐらいなら私はここで魏に突撃して死を選ぶ!!」

「つまらん意地よ、一国主のすることとは思えんな、それと蓮華からお主に手紙を預かっておる」

「蓮華から?」

 

蓮華は直虎との親交が深く信玄とのことも聞いていた、だが此度は信玄たちの力がなくては直虎たちを救うことは出来ないと思い、信玄の援軍を直虎が断った時のために一つの手紙を信玄に預けていた、そして信玄はその手紙を直虎に渡し直虎は手紙を読み始めた。

 

(直虎、貴女の事だから信玄公が援軍に行くとなれば命を捨てることをしかねないと思いこの手紙を預けたわ、貴女は私に国主になるための大切な事を教えてくれた大切な親友よ、私はもっと貴女と一緒にいたいの、だから信玄公との因縁は知っているけど援軍を受け入れて欲しい)

「蓮華・・・」

 

手紙を握る直虎の手の力が強くなるのを見ると信玄が言葉を続けた。

 

「小娘よ蓮華の気持ちを組んでやれ、ワシを倒す事は生きてなければできんぞ」

「くっ・・・分かったここは蓮華に免じてお前の手助けを受けよう」

 

信玄が直虎と話をしている横で義弘は黄蓋と話をしていた。

 

「貴殿汜水関での活躍は見ておった、とてつもない武を持っておるようじゃな」

「呉の宿将の黄公覆にそう言ってもらえるとは嬉かね」

「お主と信玄殿の実力は知っておるが、もう一人のあの男はどのぐらいできるのかの?、中々の実力者と見たが」

「軍神どんは強か、なんと言っても甲斐の虎の宿敵でもあるからの」

「なるほどあの男が信玄殿がいつも言っている上杉謙信殿か・・・ふっ、これほどの武人が殿を引き受けてくれるとは頼もしい限りじゃ、だが悔しいのう貴殿等の戦いを見れないとは」

「ガハハハ蜀と同盟を組んどるんじゃ、おいたちの武を見る機会はまた訪れるじゃろう」

「それもそうだのう」

 

二人は笑い合い城内に笑い声が響いた、そして謙信は呂蒙と話をしていた。

 

「貴女が呂子明殿ですね?」

「は、はい」

(この人が信玄公が宿敵と仰っていた上杉謙信公、信玄公とはまた違った気迫を持っている)

「大丈夫ですか?呂蒙殿」

「は、はい、貴女が上杉謙信公ですねお会いできて光栄です!!」

「それは私も同じです、貴女は武官から軍師になったのでしたね」

「はいよく知っておられますね、孫権様のお計らいで軍略を勉強させていただきました」

「ここまで皆が無事であったのも貴女の策によるところが大きいでしょう」

「い、いえ私など他の皆様の頑張りのお陰かと」

 

すると壁に寄りかかっていた甘寧が謙信と呂蒙に近づいてき話に割り込んだ。

 

「胸を張れ亞沙、お前がいなければもっと犠牲者が出ていたのは確実だ」

「し、思春殿」

「甘寧殿がここまで言うのです、誇りなさい呂子明、貴殿の軍略を、そして更に研鑽を積むのです」

「はい謙信公ありがとうございます、それに思春殿も」

「私は当然の事を言っただけだ礼を言われることなどない」

 

次に謙信は呂蒙から甘寧に目を向けた、すると甘寧も謙信の目を見つめた。

 

「静かな闘志ですねまさしく明鏡止水、私に近いものを感じます」

「謙信公程の方にお褒めいただけるとはとは嬉しい限りです」

「貴殿等の戦いを無駄にはしません、殿はお任せなさい」

「「はっ!!」」

 

謙信の言葉に呂蒙と甘寧は力強く頷くと撤退する船の準備が出来たと兵士が皆に知らせた。

 

「さあ皆のもん急いで退却するんじゃ殿はおいたちに任せんしゃい」

 

城に残る将兵たちが船に乗るなかで幸村は最後まで信玄に着いていかせてくれと頼んでいた。

 

「お館様何卒この幸村も連れていってくださいませ!!」

「ダメだと言っておろうがしつこいわ!!」

 

信玄は幸村を全力で殴り飛ばした、いつもの幸村ならここから反撃をするところだが、長い戦いの疲労は幸村にも出ておりそのまま気絶ししまった。

 

「見よ幸村、この程度の攻撃もたえらぬではないか」

「怪我人じゃ言うとるのに怪我を増やしてどげんするとね」

「まあ大人しくなったことですしこれで良いでしょう、若虎も一緒に運んでください」

 

すると退却中の兵士二人が幸村の両手両足を持って船に乗せた、そして全員を収納した船は出港し、義弘たちはその出港を見届けると城門を開け魏軍を迎え撃つために魏軍先陣に向かった。

 

義弘たちが馬を飛ばし一刻が過ぎた頃先陣では夏候姉妹と親衛隊の許褚と典韋が指揮を執っていた。

 

「ここまで来れば後は包囲するだけだな秋蘭」

「油断は禁物だぞ姉者、敵はなんと言ってもあの精強な呉の将兵に加え真田たちなのだから」

「真田か、江陵の最初の戦いで武器を交えたが、政宗が宿敵と言うに相応しい奴だった、確かにこの戦最後まで気は抜けんな」

 

姉の強者に対する高揚勘を感じた夏候淵はやれやれといった表情で首を横にふった、すると先見をしていた許褚が伝令を伝えた。

 

「春蘭様前方から砂塵が見えます」

「籠城を諦め野戦でもする気なのか?」

「それにしては砂塵が小さい、呉の兵はまだかなり残っていたはずだが、全軍戦闘体制を整えろ!!、寡兵とて油断はするな、季衣と流琉は我らの補佐を頼む」

「「はい‼」」

 

夏候淵の一言で魏の兵士たちは武器を持ち来るべき敵に備えた、夏候惇と夏候淵も武器を構え何時でも戦える準備をした、すると少ししてその砂塵を出していた者たちが魏の先陣の前に現れた。

 

「な!?あの者たちは」

「凄い陣容を揃えてきたな」

 

夏候姉妹は目の前に現れた甲斐の虎 武田信玄、越後の軍神 上杉謙信、そして鬼島津の異名を持つ最強の武人 島津義弘の三人を見て驚愕した。

 

「夏候惇どん久しぶりね」

「鬼島津殿・・・」

「鬼島津殿、上杉殿貴殿等は蜀軍の筈だ、呉は蜀と手を結んだと言うことだな?」

「そうじゃおいたちは呉と手を結ぶことにした、これからはおいたちもおまはんらの敵、ちゅうことになるの」

「厄介なことになった」

「しかし島津殿とまた戦える、悪い事ばかりでないぞ秋蘭」

「姉者何を呑気なことを言っておるのだ、異世界の中でも指折りの実力者たちなのだぞ」

「ああ、ワクワクするな」

 

姉の顔は新しいおもちゃでも見つけたかのように笑っていた、夏候淵はその姉の姿を見て自分の中にも沸き立つ血のたぎりを感じていた。

 

「姉者の言うとおりかもしれないな、私もあの者等と戦うと思ったら、少し血が沸いてきた」

「そうこなくてはな、義弘殿全力で行かせてもらうぞ!!」

「無論じゃ手加減などおいたちには無用よ、二人とも準備は良かね?」

「何時でも」

「準備は出来ておるわ」

「全軍戦闘準備!!」

 

夏候惇が全兵士に聞こえるように号令すると兵士たちは武器を構え何時でも攻撃出来るようにした。

 

「弓兵構えー!!」

「まずは弓兵の攻撃ですか、流石は夏候妙才、戦を知っていますね」

「ワシが行くか?」

「いや、甲斐の虎が出るまでもなかおいが行く!」

「撃てー!!」

 

夏候淵が弓兵に号令し百本の矢の雨を義弘たちに降らせた、それを迎え撃つべく義弘は一歩前に出て剣を構えた。

 

「矢じゃろうが砲弾じゃろうが、纏めておいが斬り潰す!!」

 

義弘は渾身の力を込めた一振りを地面に向けてはなった、すると激しい風圧が巻き起こり百本全ての矢が風圧により折れ地面に落ちた、弓兵たちはその義弘の行動に驚愕していたが夏候淵は違った。

 

「やはりこの程度では傷も与えられないか」

「秋蘭次は私が出る!!、季衣援護頼んだぞ!!」

「分かりました春蘭様!!」

「姉者・・・分かった、しかし無理だけはするなよ」

「季衣も必ず帰ってきてね」

「分かっている!!」

「勿論だよ!!」

 

夏候惇は馬に騎乗し騎馬隊の一番前に布陣した、そして許緒ともに義弘たちに突撃を仕掛けてきた。

 

「今度は姉の登場か、退け島津のワシがやろう」

 

そう言うと義弘と交代して前に立ったのは信玄だった。

 

「ワシに騎馬で向かってくるその粋や良し!!、じゃが千年早いわー!!、うぉぉぉぉ復活の虎、猛るは必定っ!!」

 

信玄は全身に気を巡らせた、すると夏候惇の目に信じられないものが写った。

 

「なっ!?何だあれは・・・」

「しゅ、春蘭様・・・」

「皆の者全力で避けろー!!」

 

信玄は空から隕石の雨を騎馬隊に向かって降らせた。

 

「これで終わりではないぞ!!」

 

更に信玄は隕石の雨が降る敵陣に突っ込み敵の騎馬を斧でどんどん打ち倒していった、夏候惇と許褚は隕石を斬ったり、叩き落としたりしながら何とか交わしたりしていたが他の兵士たちは皆ことごとく信玄によってやられてしまった。

 

「流石は夏候元壌よ、ワシのあの攻撃を躱せるとわな、わっぱ主もやるのう」

「ハアハア、あれは私も危なかった、伊達や他の異世界の者たちと戦っていなければ死んでいただろう、だが私はこの程度で終わるつもりはない!!、季衣私は死地に入るお前は秋蘭たちの所に戻れ」

「ハアハア、嫌です僕も最後まで春蘭様と一緒にいます」

「ハアハア・・・分かった、構えろ季衣」

「はい!!」

 

夏候惇は許褚の目を見ると止めても無駄だと思い剣を構え自分の剣に炎を宿した、許褚も自分の武器の岩打武反魔を構え鉄球に雷を宿した、それを見て信玄はニヤリと笑った。

 

(武骨ゆえに真っ直ぐ、幸村によう似ておるわ、もう一人のわっぱもあの年にして立派な武人の目をしておるわ)

(私は武人としていや、華琳様のためにもこんなところでは負けられない)

(流琉ごめん約束守れないかもしれない、でも春蘭様の為に僕は命を懸ける)

 

姉と親友が信玄と戦うのを見て夏候淵も典韋も武器を持った、そして一人の伝令兵に伝えた。

 

「おいお前この事を華琳様に伝えよ」

「はっ!」

 

そして秋蘭は横に立っていた典韋を見つめた、自分を慕うこの少女を共に死地に連れて行くべきではないと考え典韋に話しかけた。

「流琉お前は」

「秋蘭様、私は春蘭様たちを見捨てて逃げたりはしません」

 

その言葉と決意を秘めた目を見た秋蘭は姉と同じ結論にいたった、そして姉と共に戦おうと姉の隣に立った、典韋も許褚の隣に立ち、すると信玄の後ろから謙信が現れ秋蘭たちに話しかけた。

 

「夏候淵殿貴殿の相手は私がしましょう」

「願ってもないことだ」

(軍神と謳われ、信玄殿の宿敵と称される謙信殿が相手か、これは私も命がけだな)

「名に怖じけることはありません、貴殿の武を見せていただきましょう」

「分かった、全身全霊を持ってお相手させていただく」

 

秋蘭が謙信と戦うことを決めると典韋は秋蘭の補佐をするために隣に立った。

 

「私は姓は典名は韋、上杉さん私も貴方のお相手をさせていただきます」

「貴方があの悪来典韋殿でしたか、良いでしょう二人とも参りなさい」

 

ここに武田信玄対夏候惇、許褚、上杉謙信対夏候淵、典韋の勝負の火蓋が切って落とされた。

 

それから少しして伝令兵は馬を走らせ曹操軍の本陣に到着していた、そして曹操たちがいる天幕に飛び込んできた、そこには机が一つあり政宗と華琳が席に座っていた。

 

「た、大変です曹操様!!」

「おい、落ち着けどうした」

 

政宗は飛び込んできた兵士に駆け寄り肩を叩いた。

 

「筆頭もいらっしゃったんですね、先陣に新たな敵が現れました」

「今までの呉の奴等じゃないのか?」

「はい、新たに現れたのは呉と蜀の混成軍です」

「やはり蜀が助けに入ったな・・・で数は?」

「さ、三人です、しかしその三人に先陣は総崩れとなっています」

「待ちなさい」

 

すると今まで座って聞いていた曹操が立ち上がり兵士に駆け寄った。

 

「三人に総崩れ?、先陣には春蘭と秋蘭そして親衛隊の季衣と流琉も一緒にいた筈よ、四人はどうしたの?」

「方々は皆はご無事です、今はその三人と戦っておられる筈です」

「その三人とは誰?」

「一人は呉の孫策と同盟を組んでいる武田信玄」

「まあ真田はいたし呉の大将と同盟組んでるならあのオッサンが出てくるのは当然か、で後の二人は?」

「はい、後の二人は蜀の二代軍神の一人の上杉謙信、もう一人は鬼島津と恐れられる島津義弘です」

「なるほどな軍神に鬼まで来ちゃ総崩れにもなるか」

「これはマズイいわね」

「ああ、下手をすると春蘭たちが死ぬな」

「こんなところであの娘たちを失うわけにはいかないわ、誰かある!!」

 

曹操の声に反応し外に控えていた兵士が天幕に入ってきた。

 

「はっ、曹操様何か」

「利家と長政を呼びなさい」

 

すると兵士は天幕を出て行った、そして少しすると利家と長政が天幕に入ってきた。

 

「どうしたんだ華琳?」

「某たちになにか用か?」

「ええ、先陣に島津義弘 上杉謙信 武田信玄の三人が殿として現れたそうよ」

「あの三人が手を組むとはな」

「武人としては何方も立ち合ってみたい相手ではあるが、その三人が殿とはまずい展開だな」

「私はあの三人が私を呼んでいるように思うの、だから私は先陣に向かうそこで貴方たちに本陣の指揮を任せるわ、全ての判断を貴方たちに任せる」

「独眼竜も行くんだな?」

「ああだから二人とも頼んだぜ」

「分かった」

 

曹操たちは本陣を長政と利家に任せると先陣に向かって馬を走らせた、するとほどなくして先陣に到着し華琳たちは陣の状況を判断するため見下ろせる場所で馬を降りた、下を見ると無数の兵士たちの死体があり、そしてその中にまだ余裕のありそうな義弘たちとボロボロの夏候惇たちが武器を構え立っていた。

 




終わらせ方が下手になってしまって申し訳ありません、赤壁からはオリジナルのストーリーを展開いたします、それではまた五十四話でお会いしましょう、感想、評価お待ちしています。

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