「ど、どういうことだ元親、ワシが四国を攻めた?」
「そうだ、俺が戻ると野郎共の死体の回りには徳川軍の旗が落ちていた」
元親が武器を握る手に力を込めた。
「元親、誓っても良いワシは四国を攻めてはいない」
「本当か?お前の名誉に誓えるか?」
「ワシの名誉などどうでも良い、お前との絆に誓う」
元親の問いに答える家康の眼には嘘を言っている目ではなかった。
「そうか、分かったすまねえ家康」
「いいんだ元親」
家康と元親は固く握手をした、すると今度は華林が信玄に近づいた。
「貴方が武田信玄ね、是非会いたいと思っていたわ」
「ほう、曹孟徳にそこまで言ってもらえるとはな、儂もまだまだ捨てたものではないな」
(謙信公と同じぐらい凄いものを感じるわね、それにこの男と会ってから謙信公の眼が変わった、あれが本当の軍神の目なのね)
華林と信玄が握手していると謙信が近づいて来た。
「謙信・・・」
「信玄・・・」
「御主との決着は必ずつける、どんな世界でもな」
「ええ」
謙信は信玄と短い言葉を交わすと離れていった、次に信玄に近づいたのは義弘だった。
「おお、島津の」
「おいは、心配ばしちょらんかったよ、虎が病に負けるはずなか」
「ふっ、しかし島津の、御主が劉備に付くとはな」
「まあ、桃香どんもそうじゃがおいはあん男が気になったのよ」
「あの、別世界の日本から来たと言う小僧か?」
義弘の言葉を聞いて信玄は一刀に近づいた。
「おい、小僧」
「は、はい」
「名は確か北郷一刀だったな」
「はい、武田信玄公ですね御逢いできて光栄です」
「なるほどその眼、島津のが興味を持つわけじゃ、小僧精進する事を忘れるでないぞ」
信玄も謙信や義弘と同じで一刀に何かを感じ挨拶を終えると一刀から離れた、信玄が離れると家康が一刀に近づいた。
「やあ北郷殿、ワシは徳川家康だよろしくな」
「俺は長宗我部元親だ、よろしくな北郷」
家康と一緒にやって来た元親も一刀と握手をした。
「慶次から聞いたぜ面白い奴だってな、ダチのダチはダチだ一刀って呼んでもいいか?」
「構わないよ、じゃあ俺も元親って呼ばせてもらう」
「ならワシも一刀と呼ばせてもらうよワシの事は家康で構わない」
同じ年頃で妙に気が合う三人だった、戦国の者も三国の者も時間を忘れて語り合い、気がつけば夜はふけ皆は解散しそして次の日の朝になった。
「さあ、桃香様ご主人様はお下がりください、先鋒は私と鈴々と星で請け負います」
愛紗たちが先陣を切ろうとすると義弘が待ったをかけた。
「頼みがあるんじゃ」
義弘の言葉に劉備軍の誰もが驚いたが、義弘は決意を曲げなかった、所変わって汜水関の前には連合軍が揃っていた、すると先陣を任されていた桃香の軍から義弘が一人で出てきて汜水関の目の前で止まった、汜水関の中では指揮官の華雄が義弘を見ていた。
「何だ?あの老人は」
桃香は祈るように義弘を見ていて義弘の頼みを思い出していた。
「頼みってなんですか?」
「この戦、このままいけば多くの犠牲を出すのは明白よ、じゃどんおい一人でいかせてくれんね」
「な!?島津殿正気か?一人で汜水関を落とすと言うのか?いくら貴殿でもそれは」
愛紗の言葉を遮ったのは一刀だった。
「義弘さん」
「一刀どんおいを信じてくれんね」
一刀は義弘の目を見るとコクりと頷いた。
「汜水関に籠る将兵よおいの名は島津義弘、今から一太刀で汜水関を斬らせてもらうど」
義弘が汜水関の中にまで聞こえるくらいの大声で言った、すると汜水関に籠る兵士たちはそんなことができるわけ無いと笑っていたが華雄だけは真剣な表情で義弘を見ていた。
(何時もなら私も笑うとこだが、何故だろうあの老人嘘を言うようには見えない)
連合軍の者たちも義弘の言葉に驚きを隠せない。
「忠告はしたど」
義弘は最後にそう言うと自家製の焼酎を飲み剣の柄に吐き掛けた、そして青嵐を力強く握り青嵐を高く上げ剣に闘気を込めた、それを見た華雄は部下の兵士たちに叫んだ。
「お前らー、今すぐ反対側の虎牢関側の出口から出るんだ!!上にいるものは虎牢関側に飛び降りろ!!」
華雄は義弘の眼と剣に集まる闘気を見て、この太刀を受けてはならないと判断し兵士たちを撤退させようとした、兵士たちも華雄の表情を見て即座に汜水関から撤退した。
「示現流、断岩」
義弘が勢いよく青嵐を降り下ろした、砂塵が舞いその砂塵が晴れるとそこに立っていたのは一匹の鬼と縦に真っ二つに斬られた汜水関だった。
一刀両断まさしくその言葉が似合うのは島津のじっちゃんですねじっちゃんならこれくらいやるかなと思って描きました、それではまた28話でお会いしましょう、感想評価お待ちしています。