彼の2度目の事故は思いがけない出会いをもたらす。 作:充電器
初投稿です。
拙い文章ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
それではどうぞ。
「は〜〜……」
修学旅行の翌日の土曜日、沈んだ気分を抱えながら新作のラノベでも買おうと外に出てみたものの、修学旅行の最終日前夜に取った自分の行動を思い出してしまい、つい溜め息が漏れてしまう。
あの時取った自分の行動は別に間違っているとは思ってない。
時間が無い中、良くやった方だと自分でも思う。
あの2人が何に怒っているのかすらわからない。
雪ノ下は、俺に任せると言った。だからあの方法を取った。そしたら、俺のやり方が嫌いって言われた。そんなことを言うなら自分でやってくれよ。
由比ヶ浜は、人の気持ちもっと考えろと言った。じゃあお前は、海老名さんの気持ちを考えたのか。あんな事をしなきゃならなかった俺の気持ちを考えた事が一度でもあったのか。
本当に馬鹿だった。あの2人なら、何も言わなくても分かってくれるんじゃないか、なんて甘い考えを抱いてしまった自分に腹が立つ。
もうこれで俺の欲しかった物は多分手に入らない。
此の期に及んでまだ『多分』なんて言葉を使うなんて、諦め切れていない証だろう。
そんな事を考えていながら歩いていたら、目的地である本屋に到着した。
そして、早速目当ての本を探す。欲しい物はすぐ見つかった。
「残り一冊だったのか。ついてるな」
「あっ」
本を手に取ったら、すぐ後ろから声が聞こえた。思わず振り返ってしまう。そこに居たのは、俺と同い年ぐらいの女だった。
「えっと……もしかしてこの本欲しかったの」
「えっ、あっ、はい」
そうして俺は、女と本とで視線を行ったり来たりさせる。
そして、本を彼女に差し出す。
「じゃあ、これどうぞ」
「えっ、良いんですか」
「要らないんだったら、俺買いますけど」
「あっ、買います買います」
彼女はそう言って、俺から本を受け取って一言礼を言った。
「本当にありがとうございます」
「いえ。じゃあ俺はこれで」
「あっ、本当にありがとうございました」
俺は彼女に軽く会釈をして、その場を離れた。
☆☆☆☆☆
「あの〜すいませ〜ん」
本屋を出て、家に帰るかと考えていたら、後ろから声が聞こえる。
聞いたことのある声だったので振り返ってみると、本屋で出逢った女がこちらに向かってやって来た。
「あの…もし良かったら、そこのカフェでお茶でもどうですか。ほら、本を譲ってくれたお礼ってことで」
「いえ、別に良いです。そこまでしてもらうような事はしてませんし」
というか、早く家に帰りたい。
こっちが断ってるっていうのに、彼女はまだ俺をしつこく誘ってくる。ここまで来ると、こいつ俺のこと好きなんじゃないかって勘違いしそう。まぁ、しないんだけど。
☆☆☆☆☆
本屋で出逢った女をどうにか振り払った後、本屋から程近い公園にやって来てそこのベンチに座っている。
真っ直ぐ家に帰ると小町に会ってしまう。今小町と会話をしたら、俺の中の沈んだ気分を間違い無く小町に察されてしまう。そうしたらあいつの性格上、必ず追求してくるだろう。それを避ける為だけに、別に来たくもない公園にやって来たって訳だ。
「はぁ〜〜……」
高2に成ってからの事を振り返ったら、思わず溜め息が溢れてしまった。
「はぁ〜〜……」
週明けの月曜日、どういう顔をしてあいつらに会えばいいのかわからない。
せめて、葉山グループはいつも通りであって欲しい。
ていうか、そうじゃ無いと困る。俺があそこまでした意味が無くなる。
今日は溜め息ばっかり吐いてるな。幸せが逃げそう。
ていうか、そもそも、俺にとっての幸せって何なんだろう。本物と呼べる存在を手に入れること、とかかな。ていうか、本物って何だ。そんな物そもそも存在し得るのか。本物を手に入れられそうだったのに、そのチャンスを自分から潰した俺に本物なんて手に入るのだろうか。仮にまたチャンスが回って来ても、自分で台無しにしそうだな。
「あっ、さっきの人」
「あ」
またあの女に会った。よく会うな。
さっきあんなに頑張って振り切ったてのに、全く。
またあんな絡みをされたらたまったもんじゃ無い、立ち去ろう。
道路に出る。
あの女もついて来る。
鬱陶しい。
構わず歩き出す。
「ちょっと待ってよ」
うざかったから一言言ってやろうと思い、女の方を振り向くと目の前の光景に絶句した。
トラックがこっちに向かって突っ込んで来ているのだ。
明らかに速度オーバーだ。
目の前の女はまだこのことに気付いてない。
このままでは轢かれる、そう思った俺は彼女を公園に向かって思いっ切り突き飛ばした。
「キャッ」
突き飛ばして悪い、なんて呑気な事を考えながら、俺もトラックから逃げようと必死に走る。
「ちょっと、何すんのよっ」
うるせぇな。
今こっちは必死になって逃げてんだ。少しは応援でもしたらどうなんだ。
後ろを振り返る。
どんどんトラックが近づいて来る。
間に合わない、そう思った瞬間、身体が宙を舞う感覚に包まれ、俺は意識を手放した。
意識を手放す寸前、女の悲鳴が聞こえたような気がした。
いかがだったでしょうか。
結構暗い感じになっちゃいました。
次回からちゃんとオリヒロと八幡とで絡ませていきたいと思います。
誤字脱字などご指摘の程よろしくお願い致します。
今週中には2話目を投稿したいと思います。
それでは、また。