慧音と別れ家へと向かう俺と博麗は終始無言で空を飛んでいた…。別に何を話すわけでもなく、また話す必要もないと思われているのか、それとも口下手なのかはわからないが博麗は無言で飛んでいる。
俺はと言えば、何故か博麗と同じ…かはわからないが少なくとも特に話そうとは思わず無言を貫いている。因みに、飛んでいると妖精やら妖怪やらがたくさんよってくるのだが、それを片っ端から博麗が弾幕で撃ち落としている。弾幕ごっこはとても強い部類にはいるのだろう。
今の俺には空中でそこまで器用な動きはできないがまあ、練習すればいつかは上手くなるだろう。
そうして飛んでいると家が見えてきて、家の付近に何やら白黒の魔法使い…と思われる人物と、あれは天狗というのだろうか、それらしい人物と二人が家に張ってある結界の前で立ち往生しているのがわかる。
それと同時に博麗からため息が聞こえた気がしたが、きっと気の所為なのだろう。ある程度近づくと向こうも気がついたようでこちらによってくる。多分博麗の知り合いなのだろう、霊夢ーと手を振りながら近づいてきている。
一人は全体的に白と黒のカラーリングのいかにも魔法使いが着そうな服にこれまた魔法使いの特徴でもある黒のとんがり帽子をかぶっている。髪型は、ウェーブのかかった、金髪のロングヘアーの少女が箒に乗っている。
もう一人の少女は、黒いフリルの付いたミニスカートと白いフォーマルな半袖シャツ。赤い靴は底が天狗の下駄のように高くなっている。
瞳の色は赤で、髪型は黒髪のセミロング。頭には赤い山伏風の帽子(頭襟)をかぶっている。天狗と思われるのはこちらの方だ。
しかし天狗の方は何やらカメラを取り出ししきりにこちらを撮ってくる。何がしたいのだろうか…。そして、第一声を放ったのは白黒の魔法使いと思われる少女だった。
『いやー霊夢久しぶりだな、いつもは出不精のお前がこんなところにいるなんて珍しいじゃないか。その後の男は誰だ?もしかして外来人か?いやでも外来人は飛べないか…』
「マリサあなたが言う久しぶりとはつい昨日あったばかりの相手に言うことなのかしら、それに出不精は余計よ。私は
するとマリサと呼ばれた少女は、納得したようでしきりに首肯を繰り返している。しかし、博麗は出不精なのか…神社で満足…俺なら外に出たがるがそういうのもいるものか、いや出不精という所は冬摩と似ているのかもしれないな。そして天狗と思われる少女が続いて博麗にではなく俺に対して質問をした。
『あややーどうやら天は私を見捨ててなかったようですね。はじめまして私伝統の幻想ブン屋こと清く正しい射命丸文と申します。早速ですけど取材…させてもらってもいいですかね?』
「取材?いやそんな大層な
『ふむふむ…性格は幻想郷にはなかなかいない部類の方ですか…なるほど…で、人里の慧音さんとは一体どういった関係で?』
驚愕…と共に射命丸への警戒心を一段階あげた、慧音とは知り合ってまだ二日しかたっていない。なのに俺と彼女との関係を聞いてくるということはどこかで見ていたということ…少なくとも俺が人里に入った頃から見ていたのだろう。
「………何のことかな、それに取材は受けないと言ったはずだよ。それにこれから博麗に家の食材をわけなければならないから何を言っても無理だよ」
『でしたら!ぜひ私もつれて「断る」即答ですか…というか最後まで言わせてくださいよ』
ぶーぶーと文句を言っている射命丸はほおって置いてマリサと呼ばれた少女に視線を向けここに来た理由と目的を聞く、内容によっては家にあげるのもやぶさかではないし。多分こっちの天狗よりかはましだと思いたい。
「マリサ…だったかな君はどうしてここに?何か目的でもあるの?」
『ああ、自己紹介がまだだったな普通の魔法使いの霧雨魔理沙さんだぜよろしくな。どうしてと言われてもな適当に飛んでいたらそこの天狗が居て面白そうだから一緒に行動していたというわけだ。目的…特にないがお前の家に魔道書とかあれば(死ぬまで)借りていきたいぜ』
「そうか、魔理沙よろしく。俺は春夏冬蒼矢だ、魔道書はあるかはわからないがなんなら家を見ていくか?」
『いいのか?』
「ああ、そこの天狗を連れていくよりはマシだと思ったからな、それに(ある程度の期間)借りていく程度なら問題はないかなと思ったからな」
すると、魔理沙は言質をとったと言わんばかりの勢いで俺に迫り早く家に行こうと急かしてくる。きっと妹とかいたらこんな感じなのだろうなと思いつつ博麗もついて来るように促して家へと向かう。
家の前まで来て後ろからついてきている二人に札を取り出し手渡す。魔理沙は疑問なのか頭の上に?マークを浮かべているような気がする、
博麗は特に疑問は無いようでで早くしろと言わんばかりにこちらを見てくる。
「魔理沙それはな、家に張ってある結界を通れるようにするための札なんだよ、だからポケットか何処かにでも突っ込んで置いてくれ」
なるほどなーと言うと自身のポケットに札を突っ込んだ、博麗も同じように巫女服のポケットに札をしまった。端の方にいる天狗…基射命丸の分も用意してそこら辺に落としておく。きっと勝手に入って千秋あたりから手痛いお仕置きをくらうことだろう。
「さあ、行こうか」
そう言って家の門をくぐる。魔理沙は門をくぐってからキョロキョロと周囲を見回している。博麗は特に興味がないのか視線を周囲に移すことは無い。
少し進んで玄関付近まで来ると千秋がどこからともなく現れて一礼して挨拶をする。まるでここに二人が来るのが分かっていたようだ。使い魔でも使って見ていたのだろうか…。
『博麗様に霧雨様ですね、博麗様の分の食材は既にご用意しております。案内はこちらのものにさせますのでどうぞ、霧雨様は少々お待ちください』
そう言うと千秋は使い魔の小鬼を呼び出し博麗の案内をさせる。俺は魔理沙と共に客室に向かう。そこでも魔理沙はキョロキョロと周囲を見ていた。
客室でしばらく待っているとボロボロになった射命丸を片手に千秋がやってきて、ポイッという音が聞こえそうな感じで射命丸を床にほおり投げた。どうやら奥の方へと行ったようだ、家には家宝…春夏冬の家の初代とも言われる人物が使っていた刀が眠っている。それを使えるのは当主のみで俺でも見たことは無い。噂では、初代は刀の中に眠っているとか言われているが実際どうなのかはわからない。
あそこの警備はとても厳重で千秋の能力と冬摩の結界術で守護されている。とてもじゃないが突破できない。まあ、妖怪の賢者あたりならできる気がするが、それほど厳重なのだ。天狗一人では突破すらできず千秋に見つかり仕置きをされる。
魔理沙は何事かと驚いているが、千秋はそれを流し魔理沙の目当てである、魔術書を持っているであろう可能性のある冬摩の元へと案内する。俺は射命丸が起きるのを待つと魔理沙に言うと千秋と共に冬摩の元へと向かって行った。
「起きているのだろ、そんな寝た振りなんかするなよな」
そう言うと観念したのか射命丸は身体を起こし、たはは。と笑う。魔理沙は気づくことは無かったがこいつは始めから気がついていた。千秋もそれに気づいていたしそれをあえてほおって置いている気がした。
『流石ですね、いつからです?』
「そんなの最初からだよ。で、何のようだよわざわざ千秋に捕まって回りくどい方法で俺と話すつもりなのか?あんたなら捕まらないように調べることはできたはずだし」
『鋭いですねぇ、でしたら!取材…受けてくれますよね?』
先程とは違う、永きを生きた妖怪を思わせる雰囲気を纏い一切の断りを言わせないように射命丸は言ってきた。
『そうや〜なさけないわねぇ〜その程度
その聞きなれた声を聞いたと同時に意識が戻る。確実に俺は呑まれていた、
「姉さん…どうしてここに…いつもなら寝てるか寝てるか寝てるか何か食べてるか、しかしてないのに…」
『貴方…ずいぶん余裕あったのね、姉に対してそんなこと言ってられるようなら』
「でも、事実だろう?」
『それは!そうだけど…もう、蒼矢のせいで折角の登場が台無しじゃない』
先程までのシリアスな雰囲気はどこの吹く風、姉さんもいつもの駄姉さんだ。射命丸も馬鹿らしくなったのか笑い始めた。
『なるほど、なるほど、わかりました。貴方がたがどういった目的で
射命丸は何やら納得がいったのか警戒を解いた。しかし上に報告ってやっぱり天狗が差し向けたものだったのか…しかし、何を納得したのかはきちんとOHANASIしなくてはならないようだ。主に姉さんがだったが。
博麗達が戻ってくるまでOHANASIはずっと続いた。