幻想神刀想〜その刀、神に至りし者〜   作:梛木ユー

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完璧な人よりもちょっと残念な位がちょうどいいと思う今日このごろです。


【寺子屋】ちょっと残念な半人半獣

 あれから二時間程経ち、寺子屋での授業も終わり子供達を人里まで送るときの護衛をして寺子屋に上白沢女史(かみしらさわじょし)と共に戻ってきた。因みに人里までの護衛でもう一人白髪の少女がいたが子供達を送るとどこかに飛び去ってしまった。更に因みに何故俺が女史などと敬称をつけているのかと云うと全て彼女のオーラというか雰囲気がそうさせているのだ。あちらでもそういう人物はいたからよく分かる、ああいう人には大抵の奴は頭が上がらなくなる。

 

 

 寺子屋の客間に通され一息つく。さて、ここまで来たわいいが正直聞く事といってもこちらの基礎知識?は賢者の式に教えてもらえたから聞く事はさほどないと言っても過言ではない。せいぜい聞く事とすれば暇つぶしになりそうな場所や人物を聞くくらいだろうか。

 

 

 

 「さて、蒼矢君だったな。君も聞きたいことはあるだろうがこちらの質問にいくつか答えてもらおうか」

 「ええ、問題ないですよ」

 「まず、一つ目今日来たばかりと言っていたがそれは自らの意思で来たのか?」

 「まあ、仕方なしですが少なくとも誰かにさらわれたとかじゃあないです」

 俺の回答を聞くと考える仕草を見せ言葉を続ける。

 「ふむ、二つ目だほかに一緒にこちらに来たものはいるのか」

 「ああ、家族と一緒にね、屋敷ごと来たよ」

 「三つ目だ八雲紫、この名前に聞き覚えは?」

 「ある」

 

 

 

 そう答えるとまた上白沢女史は考える仕草を見せる。四、五分経っただろうか上白沢女史は納得のいったような様子でうなずいた。そこに何の意味があるのかは知らない、けれど何かわかったのだろう。

 「私にこちらの事を聞きに来たはずなのに質問ばかりですまないな」

 「いえ、いきなり押し掛けたこちらが悪いのですから大丈夫です」

 「そうか、今度はそちらの番だ。こちらの事を聞きたいのだろう?私が答えられる範囲でだが答えよう」

 

 

  正直に言ってしまえば聞く事と言えばさっきと同じだが暇つぶしになりそうな場所を聞くくらいだ。

 「なら、まだこっちに来たばかりだから危険な場所や観光出来そうな場所を教えてくれないか」

 

 

 

 

 女史は少し考える素振りを見せ危険な場所から丁寧に説明してくれた。内容は大体賢者の式と同じなのでスルーする。

「………観光出来そうな場所だが基本人里がこちらで一番安全な場所だからな、まあ、半妖の君なら下手な事をしなければ大丈夫だろう。剣の腕もかなりのもののようだし…」

 

「候補としては紅魔館、ここはあまり近づくのを主に面倒な主がいる為すすめないがあの紅い城は一度見てみるといい。門番は気のいい妖怪だから危険も少ないしな。

 妖怪の山もその一つだろう。ここからでも見えるが近くで見たらもっと迫力があって見応えがあるだろう。哨戒の天狗がいるからあまり近づき過ぎても危ないが。

 あと、迷いの竹林も観光目的ならば悪くないだろう。最も名前にある通り迷うから気をつけないと危ないところでもあるけどな。

 本来なら止めるべきなのだろうが君の実力なら今のルールを守らない輩程度は簡単に倒してしまえるだろうからこういうが本心としてはあまり危険な所に言って欲しくはないよ」

 

 

 

 「さて、他にも聞きたいことはあるか?」

 明日以降の暇つぶしが見つかり特に聞くことはあまりないのだが、そうだ。

 「聞きたいことというより頼みたいことなのだけど、俺はまだこちらに来て日が浅いだから、弾幕ごっこのやり方を教えてくれないか?」

 

 

 

 上白沢女史に聞きたいことというか頼みを言ってみたのだが、どうだろうか。寺子屋の教師でもあるから色々と忙しいかもしれないが今後の事を考えたら戦い方位は知っておいても悪くは無い。

 なんでも弾幕ごっこのルールとして美しさが重要なことらしいので実戦的なものではなくなるべくこちらの世界に合わせたやり方を学んでおきたい。

 俺ができるのは実戦的なもののみで美しさを求められてもなかなかどうして難しいものだからだ。それにさすがに姉さんは家で寝ているだろうから今から練習すればもしかしたらもしかしたら姉さんにも勝てるかも知れない分野かもしれないし。

 

 

 

 「時間があるから構わないがその必要はないと思うが必要なのか」

 「どうしても勝ちたい人がいるのでね、それに時間は気にしないでできる場所がある。だから問題ないよ」

 「そんなところがあるのか!それなら私は一向に構わない」

 「じゃあ早速始めようか」

 「え?」

 

 

 

 そう上白沢女史に伝え能力を使う。ありとあらゆるものを断ち斬る程度の能力。その能力を特殊なお札に込め寺子屋の周辺に結界を作り出す。そこには時間、結界外からの他者の認識、他者の結果解除などを断ち斬るようにできている。

 これで準備完了だ、妖力の消費がなかなかだが一度断ち斬れば永続してくれるから鍛錬にはもってこいの空間だ。これでよく姉さんに使わされて一緒に鍛錬したっけ。なんだかよく分からない力でよく分からない技名を唱えながら極大のビームを飛ばすわ、ジャンケンとかいいながらエネルギー弾を飛ばしたりと、全く訳が分からない。

 最もあれは鍛錬という名の虐殺だったが。

 

 

 

 上白沢女史はと言うと、は?え?はわわ…などと実に可愛らしい反応をしている。

 眺めていてもなかなか面白そうだけど目的は弾幕ごっこの練習なので現実に帰ってきてもらう。

 「上白沢女史、大丈夫ですか?初めて来ただろうから慣れないかと思いますけど練習したいので落ち着いてもらえます?」

 「ふぇ?あ、ああ大丈夫だ大丈夫だ、これは夢…これは夢……」

 

 

 

 あ、これダメだ。その時そう思った俺は決して悪くないだろう。やはり常人はこういう反応だろう、時間そのものを断ち斬ったこの世界は元々いた世界とは違う括りで景色などはほぼ同じだが、元々いた世界であって元々いた世界とはまた違うのだ。

 まあ、簡単に言うと何をしても本質が変化することない世界とでも言おうか。細かい理由や構造はまだわからないけど姉さんはそう言っていた。

 

 

 

 この世界を見つけたのは姉さんだった、しかも俺は初めて来た時泣きまくったのにあの人は第一声が、この世界にいたら太らなくね!

 正直普通そこはまず考えないと思う、最も、肉体への変化はある。だから多少の怪我もする、ただし姉さんの言う通り肉体の中身は変わらない。要は太らない。

 しかし外の世界でやるよりは傷が浅いのだ。ちなみにこの世界は初めて来た時に並々ならない違和感を与えてくる。ただの人間が来れば今の上白沢女史よりももっと酷いものになる。少なからずある程度の妖力、霊力、魔力を持たなければ意識などとても保てない。

 大体のやつはパニックになるか、泣くか、と大体症状は決まっている。

 

 

 

 ただ、現実逃避する人は初めてだった。なにせ、そうか、これは夢なのか夢なら早く覚めなくてわな。などと言い寺子屋の壁に頭突きをしている。寺子屋が揺れている気がするのだが気のせいだろう、なにせここは変化を拒む世界なのだから。

 

 

 

 

 体感にして一時間だろうか、最も時間がないから関係ないのだが、上白沢女史をどうにか落ち着かせることができた。

 その時のことは、女史の名誉の為に言わないでおく。

 

 

 

 

 「ふう、さて弾幕ごっこの練習だったな、なに私に任せておけこれでも教師なのだから教えることは得意だからな安心してくれ」

 既に無くした大人の雰囲気をなんとかあらわそうとしているが立ち直る時の状態を見た者はこう思うことだろう。

 なんか可愛いな、と。

 

 

 

 

 

 




次回!ちょっと涙目になりながら蒼矢君に弾幕ごっこについて教える慧音先生…長い長い座学をへてようやく実践!果たして蒼矢は慧音先生にかてるのだろうか!?



ちょっとした次回予告を入れるのも楽しそう。

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