幻想神刀想〜その刀、神に至りし者〜   作:梛木ユー

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【剣符】白玉楼の庭師の実力

 昼食を終え少し落ち着き此処に来た経緯を簡単に説明する。魔理沙が鴉天狗(射命丸)を探している為居そうな場所を当たっている。そう言うと幽々子は何故と興味を持ち聞いてくる。特に隠す理由もないので正直に話す。私達は(主に魔理沙が)鴉天狗(射命丸)の新聞に文句を言いたいだけ、と。もちろんそこら辺の話は魔理沙に全て説明させた、無理やり連れてこられた仕返しにもならないだろうが気分の問題なので問題はない。

 それを聞くと幽々子はあまりにもくだらなさ過ぎたのか笑い始めた。その反応に魔理沙はこっちは真剣なんだ、と憤慨していた。しかし、二人のやり取りを見ていて思うのが幽々子はつい最近異変を起こしたばかりで魔理沙もその解決に来たと聞いているのだが随分と仲が良さそうに見えるのは気の所為だろうか?

 

 

 

 「そうねぇ…。生憎とその天狗さんの居場所は知らないわ。あれは春雪異変?っていったかしら、それが終わって暫くたった頃に取材に来たっきり此処には来てないわ。ねぇ、妖夢?」

 

 

 

 「はい、あの件以降姿を見たことはありません」

 

 

 

 

 どうやら、というか予想はしていたが無駄足だったようだ。魔理沙もそれなら仕方ないと立ち上がり帰ろうとする。しかしそこに幽々子は待ったを掛けてきた。

 

 

 「あら、もう帰るの?もうちょっとゆっくりしていけばいいのに…。それにお昼を食べていったのだからそのお返しはあってもいいんじゃないかしら?」

 

 

 

 「お返しって言われてもなー生憎今は持ち合わせがないんだぜ。また今度じゃダメなのか?」

 

 

 

 そうねぇと悩むような素振りを見せる幽々子はチラッとこちらを見てくる。一体何を求めているのかは分からないがこれは俺が何か言わないといけないのだろうきっと。

 

 

 「俺も持ち合わせがないができる範囲でならなんでもしよう」

 

 

 幽々子はその言葉を待ってましたと言わんばかりに嬉しそうに手を合わせた。魂魄がそんなことを言って大丈夫なのでしょうか?と言った様にこちらを心配そうに見てくる。多分、大丈夫だろうが不安は尽きない。

 

 

 

 「それなら、せっかくだし妖夢の相手をしてもらいましょうか」

 

 

 「ゆ、幽々子様?!」

 

 

 

 「だって妖夢最近、鍛錬でちょっと行き詰まってる様だったじゃない。せっかくだし相手をしてもらいなさいな」

 

 

 

 「何故それを…。はい、分かりました…」

 

 

 

 「よし、それじゃあ決まりだな。弾幕ごっこではないだろうけどこれはこれで面白そうだぜ」

 

 

 

 「蒼矢さんすいません」

 

 

 

 

 申し訳なさそうにする魂魄だが別に俺自身は元々1度くらいは戦って見たいとは思っていたから特にいうことは無いので問題ないことを魂魄に伝える。そして魔理沙これは今持ち合わせのないお前の代わりに試合をやるってことを理解しているのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白玉楼の中にある広めの庭で俺と魂魄は互いに得物を構え戦闘態勢に入る。観戦者は魔理沙と幽々子と幽霊達。娯楽の少ないであろうこの冥界での試合ともなれば人…基幽霊が沢山集まるのも納得がいく。

 魂魄は緊張しているのか雰囲気が伝わってくる。もちろん俺だって緊張している人間以外を相手に試合なんて初めてなのだから当然だ。負けるつもりはない向こうでは姉さん以外に負けたことは数少ない。

 何度も繰り返したこの構えも意識などしなくとも構えるのは容易だ。

 

 

 

 

 「さて、用意はいいか?」

 

 

 

 

 「ええ、魂魄妖夢問題ありません!」

 

 

 

 

 「「いざ!!!」」

 

 

 

 

 魂魄は自身の愛刀である白楼剣と楼観剣を構えこちらへと駆けてくる。その速度はかなりのもので通常の姉さんの五分の一近くの速度で迫ってくる。そんな魂魄に対してこちらも踏み込み自分の利き手に収まる愛刀を右に薙ぎ払う。それに対して魂魄は二刀を前に出し受け止める。それは悪くないがダメだ。

 受け止めようとした魂魄だが予想以上に衝撃が強かったのか後ろに弾き飛ばされる。

 

 

 何故受け止められなかったのか?という驚きの顔が魂魄から見えるが説明するつもりはなく続けざまに魂魄へと迫る。上段からの振り下ろしに対して魂魄は二刀を交差させ受け止める…様に見せかけそれを受け流す。そして受け流した後反撃とばかりに二刀による連続攻撃を放ってくる。それをどうにか致命傷だけは避けるように捌いていく。

 

 

 

 

 「流石だな…向こうだったら今の二撃で大抵の奴は倒せてたのに…少し侮っていたみたいだ」

 

 

 

 

 「いいえ、それはこちらもです。さっきの連撃を全て捌かれるとは思ってませんでしたから」

 

 

 

 「そんなことないさ、ほらこの通り傷を負ってる」

 

 

 

 「でも、致命傷になりかねないものはありませんよね?」

 

 

 

 「……」

 

 

 

 「沈黙は肯定と見なしますよ?」

 

 

 

 

 そこから暫く互いに決め手となるものも打てずただただ互いの愛刀がぶつかり合う音が白玉楼に鳴り響くだけだった。打ち合ってどのくらいたっただろうか…。そんなにたってないようでそれなりにたったのではと思いながらも決め手に欠ける打ち合いを始めて白玉楼の主である幽々子からそこまでっ!という声がかかる。

 元々目的が魂魄の相手をすることであり倒すことでもなかったので試合中は能力は一切使っていなかった。幽々子が止めたということは魂魄にとって何らかの糧になったということだろうか…。それならなによりと愛刀を鞘へと収め魔理沙の元へと戻る。戻ると魔理沙は魂魄と俺の打ち合いに驚いたのかやや惚けた顔をしていた。仕方ないような気もする、何せスペルカードルールとはまた違うものだから驚いたのだろう。それなりに腕はいい方だと自負しているので驚いてもらえて何よりだ。

 

 

 

 「ほら、魔理沙どうしたんだそんな惚けた顔をして。ま、そうやって驚いてもらえて剣士冥利に尽きるってやつかな」

 

 

 

 「……妖夢の奴あんなに凄かったんだなそれに蒼矢も」

 

 

 

 「それは魂魄だって俺だって剣を扱う者として修練は怠ってないからな。スペルカードルールとはまた違ったろう?」

 

 

 

 「ああ…全く違った、ううん。スペルカードルールを美しさとするならさっきのは…」

 

 

 

 そう、魔理沙がさっきの試合を表現しようとしていると魂魄がやって来て試合に対する礼を言ってきた。魔理沙の感じたものも気になるが俺たちの目的を忘れてはいけないのでさっさとお暇することにする。

 

 「蒼矢さん。ありがとうございましたお陰様で少し悩んでいた部分が解消できた気がします」

 

 

 

 「ああこっちも楽しかったありがとう。それと役に立てたならよかった。ほら、魔理沙次に行くぞ?早くしないと日が暮れる。じゃあ魂魄またな」

 

 

 

 「あ、ちょ蒼矢まてって」

 

 

 

 「はい、また是非いらしてくださいね」

 

 

 俺たちは次の天狗がいそうな場所へと向かうのだった。




ここまでお読みいただきありがとうございます。
やはり戦闘シーンは難しく練習しようと思いました。
次回は今回みたいに長く開けないようにしたいです…。

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