幻想神刀想〜その刀、神に至りし者〜   作:梛木ユー

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【萃符】鬼の四天王

 謎の霧に包まれた空間に強制的に召喚され何が起きているのか確認しようとしてところで霧の奥から少女…ではなく幼女が現れた。薄い茶色のロングヘアーを先っぽのほうで一つにまとめており、真紅の瞳を持ち、その頭の左右から身長と不釣り合いに長くねじれた角が二本生えている。服装は白のノースリーブに紫のロングスカートで、頭に赤の大きなリボンをつけ、左の角にも青のリボンを巻いていて三角錐、球、立方体、の分銅を腰などから鎖で吊るしている。

 彼女の頭に生える二本の角が鬼という種族であることをうかがわせる。

 

 

 

 

「ようこそ、人間達!私の宴へぜひとも楽しんでいってくれ(死んで逝ってくれ)!」

 

 

「お前は誰だ!」

 

 

「ふっ、ふっふ。よくぞ聞いてくれた!私の名前は【〔神霊〕夢想封印!!!】うわっ!いきなりなんだい人の名乗りを最後まで言わせないとは」

 

 

「うるさいわねぇ、私は今さっきまで楽しくお酒を飲んでいたっていうのに邪魔をして、あんたがこの異変の元凶でしょ!今すぐこの変な空間から私達を返しなさい!」

 

 

 

 

 そう鬼にスペルを飛ばしなおかつ鬼を脅すというなんとも博麗らしい姿に一瞬全員が動けずにいた。さすがにあまりにも鬼が不憫だ、という本来連れ去られた側であるのにおかしな思いが博麗と鬼を除く全員が思った。最も鬼を不憫にこそ思えども今までの異変(三日おきに宴会が行われる)の首謀者と思われる為すぐさま戦闘準備だけは行っておく。

 

 

 

「まあまあ、霊夢そうあわてるなよ。別に帰してもらうのにそいつを頼る必要もないだろう?何せここにはかなりのメンツがいる。とすればだやる事と言ったらここでこいつを倒してそれから帰ればいいだろ?」

 

 

「魔理沙さん!そうは言いますけど多分相手は鬼ですよ?ここに居る皆さんの実力を疑うつもりはありません。でもそう簡単にいくでしょうか?」

 

 

「そうね、鬼程度私だけでも問題ないのだけど、どんな能力を持っているかもわからないしここもどういうところかもわからない以上うかつには動けないわよね」

 

 

 

「同感よ、魔理沙どうするにせよこの空間での事はそこの黒幕さんに聞かないと」

 

 

上から、魔理沙、魂魄妖夢、十六夜咲夜、紫の少女だ。いきなりの出来事だというのに全員すでに脱出の事まで考えているあたり普通とは違うのだろう。姉さんはというとこんな状況にもかかわらず両手に持っていた宴会にでていた料理を食べている。アリスは静かに鬼と思われる幼女に対して警戒を強めている。

 ポツンと放置されていた幼女は先ほどまでポカンとしていたのだが意識が戻ってきたのだろう、突っ込みから入ってきた。

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと待ちなよ。なんでまだ私と戦っていないのにまるで終わりが確定したようにはなしているのさ!それに自己紹介位させろよな!て、なんで私が突っ込まないといけないのさ!!————ほんとはもっとかっこよく名乗るつもりだったのになんでこんなことに………」

 

 

 

 

「ま、まあいいさ。改めて名乗るよ、私の名前は伊吹萃香(いぶきすいか)お前たちの言う通り鬼さ。最もただの鬼だとは思わない方がいい、なにせ私は『山の四天王の一人なんですよね!!知ってますよ!ほかにも星熊勇義が四天王の一人でしたっけ?あれ?違ったかな?』なんでお前がそれを知っているんだい?お前さんたちはつい最近来たばかりだろう?」

 

 

 

 そう伊吹萃香と名乗った幼女の言葉を遮ったのはあろうことか姉さんだった。魔理沙や魂魄妖夢は、そうなのか!?と姉さんに聞くもほかのメンツは姉さんが何故そんなことを知っていたのかと疑いのまなざしを向けている。姉さんはそれに気づいているのかいないのかわからないものの魔理沙や魂魄妖夢が真相を聞こうとしているのを笑顔ではぐらかしている。

 

 

 「まあ、そんなことは追々聞くとさせてもらうか。とりあえず君たちをここに閉じ込めたのは私だ、そして最近の三日おきに宴会を起こさせていたのも私だ。そして帰りたければ私を倒すがいいさ、最もさすがに一度に全員の相手をしてあっけなく終わらせてしまうのはつまらないからちょっとした試練を受けてもらおう」

 

 

 

 「そんなくだらないことに私たちを巻き込まないでくれるかしら」

 

 

 「まあまあ、パチュリーそうあわてるなよ、結局のところ萃香を倒してから帰るのだからちょっとした試練位大した問題じゃないだろう?」

 

 

 

 魔理沙にパチュリーと呼ばれた紫の魔法使いっぽい少女はけだるそうに伊吹に向かって答えた。魔理沙は試練については気にしていない様でからからと笑う。パチュリーと呼ばれた少女は不服そうにしているものの帰るには鬼の話を聞くしかないと考えたのか黙り込む。こちらとしては早く戻りたいのでさっさと済ませてほしいと思うものの、萃香が鬼ということはそれだけ強いと言う事で時間はかかることが予想される。

 

 

 

 

 「なんにせよ、鬼の試練を乗り越えれば解放してもらえるのでしょう?ならとっとと終わらせてしまえばいいじゃない。それにお嬢様をあまり待たせてはいけないし」

 

 

 

 「そう…ですね。この白玉楼庭師兼剣術指南役、魂魄妖夢に乗り越えられない試練など…あんまりありません!!」

 

 

 

 

 「はっはは。妖夢は気合十分みたいだな。普通の魔法使いは例え鬼だろうと何だろうと売られた勝負は買っていく主義なんだぜ!」

 

 

 

 「とにかく私は早く戻って宴会料理で元を取らないといけないの、鬼の試練なんて知ったことではないけど終わらせるわよ」

 

 

 

 「まったく、これだからこうしたところに来たくなかったのに…。」

 

 

 

 

 「面倒なことになったものね」

 

 

 

 

 「そーや!!お姉ちゃんの代わりに精一杯がんばるのよーーーー!!」

 

 

 

 

 「いや、自分で動けし!!!」

 

 

 上から、十六夜、魂魄、魔理沙、パチュリーと呼ばれた少女、アリス、そして姉さんだ。全くほぼ全員がやる気を見せているというのになぜうちの姉はこうもさぼりたがりなのだろうか。隙さえあれば何か食べ物片手に休憩と称してさぼる姉さんだ、素直にこういう時位は働いて欲しい。

 そして、やる気にあふれているのはいいのだが萃香の話を聞いてやってほしい、もらなんかもう泣きそうな顔をしているだろ。あまりにも鬼というところに驚かれなかったのとさっきから誰一人としてまとまりを見せていないからか主犯なのに蚊帳の外状態だ。

 

 

 

 

 「ま、まあ。やる気があるのがいいだろうけどまずは試練の内容だとかいろいろ聞かないと」

 

 

 「そ、そうだよ。これから説明するからよく聞くがいいさ」

 

 

 

 助け舟を出したからかとても感謝を込められたまなざしで見られたが正直のところ早く話を進めたいからであるので何とも言えない感じだ。そしてその試練とはまあ、何とも脳き…コホン、正統派なもので、単純に萃香の

用意した相手を倒して最後に萃香と戦うというものだ。特に批判もなく、萃香にさえ勝てれば帰されるので全員心配などはしていない。最ももし帰れなくともその時はその時でどうにかするつもりなのだろう。

 

 

 

 

 「————————————というわけだ、せいぜい私を大いに楽しませてくれ………」

 

 

 

 

 そう言い残し萃香は霧に紛れるかの様に姿を消していった。それと同時に八つの門が現れ各人は誰がどこになどと言う事もなくほぼ同じようなタイミングで全員が門をくぐっていく。その時の俺は早く終わればいいかな、などととても適当な考えをしており後で後悔することとなったのは少し先の話。

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまでお読み頂きありがとうございます。

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