幻想神刀想〜その刀、神に至りし者〜   作:梛木ユー

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【秋符】とある鬼と料理長

 鬼……古来より妖怪の中でも人間たちの恐怖の象徴ともいえた存在、人間を襲い人間と遊ぶ(殺し合う)嘘を嫌う。妖怪の中でも人間とのかかわりがとても強いと言えるだろう。幻想郷にも鬼は存在する、正しくは今は幻想郷の中でその姿を確認しているものはほとんどいない。人間など特にそうで世代交代を重ねるうちに鬼とは伝説上存在とされた。幻想郷に古くから存在する者たち、古参の妖たちなどは例外でかつて幻想郷に鬼という種族が存在していたことを知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 伊吹萃香は鬼だ、それもただの鬼ではなくかつて妖怪の山を統治していた四人の鬼、山の四天王の一人。密と疎を操る程度の能力を持ち地上に現れた鬼。萃香は最高の宴を行うべく鬼の古くからの人間とやり合うための準備、人攫いを行おうとしていた。しかし、なぜだか人を攫うことが出来ないでいた。原因は一人の人間だ、博麗の巫女…博麗霊夢である霊夢の能力かはわからないものの何らかの影響で人間を攫えなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうすべきか悩んでいたら、とても懐かしい存在を目にした。姿はずいぶんと老いたように見えるも直感が伝えていた、懐かしい懐かしい存在。人の身にありながら鬼へと成った存在。

 

 ついつい身体の一部を実体化させて懐かしい()を呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

千方(ちかた)!」

 

 

 

 

 

 そう呼ばれたかつて人間だったものは振り返り萃香をその瞳の中に捉える。その瞳は萃香がかつて見ていた瞳とは少し違い昔より穏やかになったと思うも今はどうでもいいと切り捨てる。

 

 分身としてしか今は忙しく会えないものの向こうも私に気づいてくれたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「萃香か…久しいな。それと私は千秋だ、千方ではない」

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅん、まあいいさわかったよ。千秋は今なにをしているんだい?」

 

 

 

 

 

 

 

「今はとあるお方に仕えている。そういうお前こそお遊び(・・・)は程々にしておけよ」

 

 

 

 

 

 

 

 千秋はそう凄みをきかせ萃香に自身が仕える主を思い脅す。しかし萃香は飄々(ひょうひょう)とかわし軽く笑うだけだ。鬼のなかでも少し異質である萃香にこの程度の脅しでは止まらないだろう。千秋は分かっていたからか気にせず続けて何を言うつもりはない。

 

 彼は彼の主が明日の宴会為の料理を作り置きとしていくつか作り続けるだけだ。萃香はつまみ食いを試みるも千秋がそれを阻み料理に触れない。余談だが、彼の料理の腕前はこの前宴会に来ていた亡霊の姫に気に入られその従者にはうちにこないか?と誘われたほどだったという。

 

 

 

 

 

 

 

「ケチな千秋…ちょっとくらいいいじゃないか。」

 

 

 

 

 

 

 

「鬼につまみ食いを許したらすぐに宴会を始めるだろう、そうしたらすぐに作ってきた料理などなくなってしまう。だからだめだ」

 

 

 

 

 

 

 

「ちぇ………。それと話しを変えるんだけどさ、ちょっと相談に乗ってくれよ頼む!」

 

 

 

 

 

 

 

 千秋は少し悩むそぶりを見せやがて溜息をついてあきらめたようで、今まで動かしていた手を止め萃香に相談の内容を聞く。相談の内容は千秋が想像していた通りで萃香のお遊び(・・・)についてだった。なんでもこの前の宴会中にあった弾幕ごっこにあてられて本気で異変を起こしたくなったようで手っ取り早い話人攫いをして戦おうとしたようだが博麗霊夢の能力かはわからないが影響で人攫いを行えなかったようだ。

 

 そうなってくるとどうしたものかと解決策を求めているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 本当はこうして考えるのは得意ではないのだが古い友の願いなのだから最低限は答えようと考える。一番無難なのは今萃香が行っている異変をさらに加速化させ、霧に妖力でも込めてその妖力を高めていればいずれというかすぐにでも博麗の巫女あたりが解決に乗り出すだろう。でもそれではきっと萃香は望まない。

 

 

 

 

 

 

 

 萃香が望むのはもっと派手で己に立ち向かってくる人間達の姿だろう。ならば考えうる上で派手そうなもの……あるにはある、これを利用すれば萃香が望むお遊び(異変)が行えるだろう。千秋はこの異変で自身の主がもう少し動くようになってくれればと思いつつ萃香に考えた計画を伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 アリスとの弾幕ごっこから三日が経ち今日も今日で宴会が博麗神社で開かれる。結局のところアリスは俺と弾幕ごっこをしてその後に言ったのはたった一言でそれが何を示すのかはわからない。でも、アリスとの弾幕ごっこの後からあの靄がいくらか薄れた気がするのは間違いではないだろう。

 

 アリスから言われた言葉はただ———弾幕ごっこを楽しみなさい。という果たしてそれが解決になるのかと疑ってしまうものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 それでも、一応言われたことなのでこうして適当に道すがらの妖怪や妖精に弾幕ごっこを挑み遊び続けている。なんだか違う気もしなくはないもののこうして勢いだけで今のところ無敗を守り切っている。しかし、あまりにも挑みすぎたのか見かけただけで逃げられるという事態になっている。

 

 

 

 

 

 

 

 宴会が始まるのは夕方からだが今から歩いて行けばちょうど着くくらいなので歩き始める。千秋と姉さんは多分まだ家にいてこれから出発の準備をするのだろう。家のなかでこうして外にでて活動するのは俺くらいで他はみんながみんな家で一日を過ごしている。

 

 別に博麗神社までの道のりにこれといった出来事なんて起こることもなく無事に予想通りの時間にちょうど着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこではすでに宴会が始まりつつあった。魔理沙や姉さん、射命丸など飲み始めており料理も手をつけられはじめている。そのすぐ後に紅魔館と呼ばれる館に住む吸血鬼を筆頭にその従者などが参加し始めた。そうして空が完全に闇に支配されるころになると殆どが揃ったようで、各々が飲み食い始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリスを見かけて杯を片手に近づいていく、向こうも気が付いたようでこちらを一瞥した。なんともそっけないが特に気にはせずアリスのそばの適当なところに座る。すぐそばにいるアリスの人形上海と蓬莱が近づいてくるので何故だか頭を撫でた。特に嫌がる様子もなくおとなしく上海と蓬莱は撫でられている。

 

 

 

 

 

 

 

「なんの用かしら」

 

 

 

 

 

 

 

「別に用はないけど、なんとなくだよなんとなく」

 

 

 

 

 

 

 

 ————そう。そうつぶやくとアリスは黙って静かに酒を飲む。なんとも言えない空気が場を包みしばらく時間が過ぎていく。なにか話そうと蒼矢が声をだそうとしたその時、突如として宴会会場の上空に陰陽玉のような印が現れたと思うと博麗神社周辺を結界が覆いつくしてしまった。それと同時にさらに会場の数人の足元に印が出たかと思うと姿を次々と消していった。もちろんそこには蒼矢も含まれており一瞬にして霧の立ち込める謎の場所に連れ去られてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 そこに居たのは博麗と魔理沙、確か姉さんと同じかそれ以上の胃袋を持つ亡霊の姫の従者で魂魄妖夢とかいうのと吸血鬼の従者の十六夜咲夜、アリス、そして紫色のゆったりとした服装の少女…とそして姉さんだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまでお読みいただきありがとうございます。

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