幻想神刀想〜その刀、神に至りし者〜   作:梛木ユー

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第二章 幻想萃夢想
【始苻】人形の魔法使い


 幻想郷…忘れ去られた者達の楽園と呼ばれる理想郷に春夏冬という銘の者達が移住してきて数週間、幻想郷の各勢力は各々の判断の元春夏冬に接触を計っていた。

 

 

 紅い吸血鬼の勢力は春夏冬の料理長と気のあった自身の特別なメイド長に関わりを持たせ半ば放置している。吸血鬼の当主は今は博麗の巫女にご執心の様で判断を後回しにしているようだ。

 妖怪の山の天狗は特に関わろうとはせずに静観を決め込んでいる。最も烏天狗の一人は自身の新聞の為にと断られてもめげずに取材をしている。

 冥界の亡霊姫とその半人前従者は主に亡霊姫が当主と関わりを持とうとしているようだ。

 

 

 

 

 

 

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 幻想郷の境目ともされる場所にある博麗神社…ここでは最近三日おきに宴会が行われていた。そこにいる面々はとても楽しそうに宴会を楽しんでいるものの一部の者達は既にこの状況が異変であると見抜いている。見抜いた上で静観しているのは、結局のところ博麗の巫女が動かない…この一言に尽きるだろう。

 

 

 幻想郷のバランサーでもある博麗の巫女は異変が起きたら異変を解決すべく動く。つまり逆に捉えれば巫女が動かなければ異変であっても異変ではないのだ。巫女が動くのは幻想郷に危険が及ぶ可能性があるからであり、動かない異変など異変であっても程度が違う。よって一部のものが気づきつつもそれを放置しているのである。

 

 巫女には一切伝えずに…伝えれば巫女はなんだかんだ言いながらも最終的には動くだろう。それではこの楽しい宴会に終わりが来てしまう…それは嫌だ。というのが気がついている者達の中の大体の意見であった。誰でも祭りは楽しみたいのであえて放置しているのだからなかなかどうして巫女からしたら迷惑だろう。

 そんな自由気ままな幻想郷の住民は今日も気ままに宴会をする。

 

 

 

 

 

 

 そんな宴会の席に幻想郷の新参者の半妖の青年は一人月見酒をしていた。(現代)ではまだ飲酒してはいけないはずなのだが此処(幻想郷)では気にするものはあまりいない、すべて自己管理しなくてはならない…というのは言い過ぎだろうが自身の行動に責任が付いてくる。最も見た目がまだ十代後半だとしても過ごしている時はそこら辺の人間の倍くらいだろう。彼と彼の姉は彼の能力を利用して時間を断った空間でかなりの期間修練をしていた。どこかのバトルマニアな戦闘民族あたりが聞けばさぞうらやましがるだろう、なにせその中では肉体的な老いは来ないのだから。

 

 

 

 姉さんは宴会の中心で知り合ったばかりの(主に人外)と共に宴会を最も楽しんでいる。元々姉さんは人づきあいがうまかった、大体の人間とは初対面でもすぐに仲良くなり遊び回っていた。対照的に俺は人見知りが激しく友達も数が少なかった。別に友達が少ないことに対しての嫉妬とかはないのできにはしていない。

 そうしていると宴会の中心から俺とは別に離れたところに金髪のまるで人形のような少女が一人外れて宴会を眺めていた。その様子がなんだか気になりその少女の元へと向かった。近づけばさらに人形のように見えてしまいとても整った容姿をしていることがうかがえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その容姿は金髪のショートで赤のヘアバンドのようなリボンをしている。瞳の色はまるでガラスの水晶を思わせる深みのある青色で、服装は青のワンピースのようなノースリーブにロングスカートを着ている。その方には白を基調としたケープを羽織っていた。まるで人形のようできっと少女が身動きを微塵もしなかったら本当に人形と見間違えるだろう。

 

 

 

「君は混ざらないの?」

 

 

「私は別に…あなたこそどうなのよ。あなたのお姉さんは混ざっているわよ」

 

 

「…俺は…いいんだ、空気が俺には合わないから」

 

 

「そう…ならなぜ私にかまうのかしら?」

 

 

「それは…」

 

 

 

 言葉に詰まる…。何故と聞かれてもなんとなく気になったからであって特に何がどうと言う事はない。でも彼女はそんな答えは求めていないような気がした。あの日魔理沙に負けたあの日からどことなく自身の思考に(もや)がかかっていた。だからか人里の慧音にこの間の事を改めて謝ろうとした時も心配されてしまった。こんな時、俺の数少ない友達…親友と呼べる彼奴がいたなら彼奴はきっと思いっきり励ますなり何なりとしてくれただろう。こんなことを答えてくれるのは家にはいない。姉さんなんて持ってのほかだし、あいつらはきっと立場を考えて深くは答えてはくれない。

 …だからだろうか彼女なら答えてくれるのではないのかと、淡い希望のような勘が働いた。

 

 

 

 

 適当にごまかしてもいいことはないので思っていた通りの事を素直に告げる。もちろん相手からしたらそんな思いははた迷惑で答える義理もない。だから断られても、怒られても仕方ないと覚悟していた。しかし、それは杞憂に終わる。

 そのガラスの水晶を思わせる深い青色の瞳に俺はとらえられる。その瞳から感情をうかがうことはできず、今彼女が何を考えているのか俺には分からない。

 しばらく見つめられていると、彼女は突如として笑い始めた。その笑い方さえも上品でやはり人形のような印象を与える。

 

 

 

「ふふ…あなた、面白いのね。此処(幻想郷)でそんな考えをしている人は少ないというのに、ふふ。」

 

 

「ひとついいことを教えてあげるわ。ここではそんなに悩むくらいなら簡単な解決方法があるわ」

 

 

「それは、」

 

 

「焦らないの、第一名前も知らないような人には簡単には教えられないわ」

 

 

 

 そういわれて彼女に自身のな()を伝えていないことに気が付く。

 

 

「春夏冬蒼矢だ。宜しく」

 

 

 

「アリス・マーガトロイドよ、アリスでいいわ。宜しくね蒼矢」

 

 

「さて、その解決方法だけど…それを教える前に私と弾幕ごっこをしてくれないかしら?そうしたら教えてあげるわよ?」

 

 

 

 

 どうする?と聞いてくる彼女…基アリスは自身の周囲に人形を漂わせいつでも弾幕ごっこができるようにと準備している。ここで受けなければアリスはきっと答えてはくれないだろう。だとしたら答えるべきだしここで答えなかったら先に進むこともできない。アリスの誘いに答える様に俺は少し距離を取り刀を構えた。

 

 

 

 

 

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 宴会会場である博麗神社の上空で二つの人影が弾幕ごっこを始めた。一人は人形を操る少女で周囲に漂い弾幕を展開する人形たちはとてもじゃないが人形だとは思えないほどの精巧さだ。最も彼女の生い立ちを少なからずしる私からしたら笑い話だ。人形の少女(神の玩具)人形(完全な人)を作ることを目指して奮闘しているとはこれほどおかしな話はないだろう…。人形少女もなかなか面白いがこちらの少年…青年もまたなんとも笑わせてくれる境遇なのだから面白い。

 

 

 

 ()というまじない(呪い)に捕らわれたなんとも愚かな一族だ。姉の方は姉の方で気になるけどあれはなんというか今少女と戦っているやつ(青年)とは中身が違うというのだろうか、私の能力があるからこそ分かる。そういうレベルだ、多分私の知ってる中でこのことに気づけるのはごくわずかだろう。例えばあのうさん臭いスキマ妖怪とかスキマ妖怪とかスキマ妖怪とか…。

 

 

 

 

 にしてもいい戦いをする。私も混ざりたくなっちゃいそうだよ………。やっぱりいいねぇ、人間ってのは。最もどちらもその半端者だけどもイイ、最高だよ。私の中に流れる鬼としての血が古来より続いた戦い(死合い)を求めた。もうこうなったらただただ眺めているだけなんて我慢がならない。身体のいたるところが疼いて今にも暴れ出しそうだ。

 

 

 

 そうだ!どうせ殺るなら最高の舞台を整えようじゃあないか!人と妖の宴会それを飾る最高の(生贄)。なに私の能力にかかれば簡単だ。なんたって集める()のは私の領分なのだから。

 宴会会場に潜む鬼がイレギュラーである銘の一族の出現によって【原作】と呼ばれた話からずれ始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




ここまでお読みいただきありがとうございます。
二章突入致しました。ちょっとどころではないかも知れませんが幻想神刀想のちょっと変わった萃夢想編をお楽しみください。

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