物理攻撃なら全て跳ね返せる件について ~仲間を守るためなら手段を選ばない~   作:虎上 神依

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第1章 2話 イケメンの力は計測不可

 目の前に一人の男が立っていた。

 落ち着いているのにも関わらず何故か威厳のある青色の頭髪。

 その下には迷いが見られない深緑色の双眸、それは彼の生き方その物を表しているようであった。

 そして幼さを感じさせることのない整った顔立ちも彼の雄々しさをより感じさせている。

 一目見るだけでも彼が並の人間では無いことが分かる。細い体つきであるのにもかかわらず尋常でない威圧感を放っていた。

 何処かの兵の制服らしき白い服と白色のローブでその体を包み、腰に眩い輝きを放ちつつもシンプルな装飾が施されている剣が下げられていた。

 一言でまとめればバリバリ強そうな雰囲気を漂わせているイケメンだ。

 

「あ、あぁ……。」

 

 リュウヤはその青年の容姿に見とれ、言うべき言葉さえも失ってしまった。

 正直、異世界に来ていきなりこんなイケメンと出会わせられてもただただ困るだけだ。

 

「ほ、本当に大丈夫かい? 目が死んでいるみたいだけど……。」

 

「シレッと酷いこと言うなよ! い、いや、ちょっと今俺が置かれている状況に絶望していただけだ。あ、後、俺別に怪しい者でもないからな! その服見た限り、警備隊かなにかだろ?」

 

「君の言う通り僕はこの王国の衛兵さ。まあ、今日は非番だから軽く街を見回っていただけだけどね。」

 

「非番中に街をパトロールって相当仕事熱心だな……、と言うか爽やかすぎだよ!」

 

 顔、振る舞い、声、殆どにおいてイケメンが持つべきスペックを満たしている。だが、最初の言葉でちょっと減点判定といった所だろう。

 目が死んでいるって言われると流石のリュウヤも少し傷つく。しかし、そのような目であったことは事実なので反論はできない。

 

「僕はオズワルド、君は?」

 

「俺は天宮竜也だ、リュウヤで構わない。所で変なことを聞くようだが今日って何月何日だ?」

 

「今日……、14月15日だね。」

 

 ――いや、いつだよ!?

 

 リュウヤは内心でオズワルドに対して物凄い突っ込みを入れた。しかし、世界が違うのだから暦が違うのも当たり前である。

 それよりも何月何日で通じたのだからそこを喜ぶべきだろう。

 

「それにしても絶望か……。後、リュウヤはその髪型、服装からしてこの国の人ではないみたいだけど……。どこから来たんだい?」

 

「サラッと呼び捨て!? 何処からか……、その手の質問は正直答えづらいな。やましい事はないんだけどさ……。」

 

 一応、相手は衛兵なのだからここで怪しい行動をすれば直ぐに捕まってジ・エンドだろう。

 それにこの国と言っている時点で恐らく入国手続きなど色々あるはずだから、それをせずに王国のど真ん中に飛ばされてたリュウヤにとっては尚更厄介だ。

 が、オズワルドの反応は意外なものだった。

 

「まぁ、何かしら事情があるのだから深くは聞かないことにするよ。」

 

「えっ、良いんだ……。」

 

「それにリュウヤからは何の悪意も感じられないし、誤魔化してるってわけでも無さそうだしね。取り敢えずそこの所は伏せておこう。」

 

「優男だな! ホント、頭から爪先まで対応がイケメンなのな! 逆に怖いわ!」

 

 ここまで優しくされるとフラグ立ちそうなのでここらで一旦へし折っておくべきだろう。

 それにしても見れば見るほど惚れそうな美男子だ、もはやこの異世界で一番と言っても過言はない位。

 これは本人も困るぐらいにモテるだろうな……。

 

「とにかく、何か困っているんだろう? 僕で良ければ手伝うけど……。」

 

「手伝うって、オズワルドさんは今日非番なんだろ? 状況に絶望しているとはいえ流石にそんな申し訳ない事は出来ないぜ。」

 

「オズワルドでいいよ。でも、見た感じ相当困っているみたいだったからね……。」

 

「そりゃ絶望しているからな。だがこれは俺の問題だ、オズワルドまで巻き込む訳にはいかないさ。……その代わりと言っては何だけど一つ聞いていいか?」

 

 リュウヤは自分の横に置いてあるリュックサックを拾い上げて背負うとオズワルドに向き直る。

 オズワルドは爽やかな笑顔で頷いた。

 

「この街の事であれば基本何でも聞いて、でも世間に少し疎いかな。」

 

「大丈夫だ、大したことじゃない。この近くに物を買い取ってくれる鑑定屋みたいな物はあるか?」

 

「鑑定屋……。ああ、この商い通りの先を真っすぐ行って3番目の角を右に曲がって5件目の建物だよ。」

 

「そうか、助かった! それじゃ俺はその鑑定屋に行く事にするよ。」

 

 そこでスマホまたはノートPCを売ることが出来れば多分、数日間は暮らせる資金を得られることだけは間違いないだろう。

 問題があるとすればこの機械の価値をどう鑑定屋の人に説明するかだ……、コレばかりは自分のコミュ力と説明力に掛けるしか無いだろう。

 

「どうせならそこまで案内しようか?」

 

「いやいや、流石にこれ以上の迷惑を掛ける訳にはいかないさ。俺の道は俺が切り開くべきだしな。」

 

 オズワルドは顎に手を当てながら静かに考え込んでいた。余程困っている人を放っておけない性格なのだろうか、そんなイケメン的正確には心底驚かせられるばかりだ。

 見た感じ、オズワルドはかなり良い家柄で育っていそうだが流石にイケメンの家の厄介者になる訳にもいかない。

 

「そんなに生活に困っているなら……。」

 

「断る! 性格上から何を言うか直ぐに分かったぞ!」

 

「そうか、なら温かく見守らせて貰うよ。所で変な事を聞くようだけど何を売るんだい?」

 

「ああ、疑っている訳ではないけど絶対に取るなよ? これは俺の人生に関わるんだからな。」

 

 イケメンに頼まれるとなると何故かやらなければならない強制イベントの様な気がしてならない。

 リュウヤは彼のブレザーの胸ポケットにしまってあるスマホを取り出しオズワルドの前に突き出した。

 オズワルドは初めて見るその機械に首を傾げる。

 

「見たこともない物だね。武器か何かなのかい?」

 

「まあ見てろって。」

 

 リュウヤはスマホを片手で軽く操作するとカメラモードを起動し、オズワルドを画面におさめ写真を撮る。

 流石、イケメンだけあって良い絵になっている。因みに肝心のイケメンはただただ唖然とした表情でリュウヤを見つめていた。

 

「今、音がなったけど何かしたのかい?」

 

「いい感じに時間を止める事が出来たぜ。」

 

 軽く冗談を混ぜながらも先程撮った写真をオズワルドに見せつける。

 不思議そうな眼差しでスマホの画面をマジマジとまたオズワルドは「おお!」と感嘆の声を上げた。

 当たり前だ、機械が存在しないのだから写真を撮る技術もこの世界には存在しないはずなのだから。

 予想通りこのスマホはかなりの価値が付くに違いないだろう。

 

「僕の顔が鮮明に写っている……、一体どんな仕組みなんだ?」

 

「いや、ちょっとばかしここらの時空をこの画面におさめたまでよ。俺らのせか……、国ではかなり珍しいものなんだぜ。」

 

 つい「俺らの世界では流行っている」と口を滑らしそうになり、慌てて言い直す。

 そして元の世界ではよくやった自撮りをすると再びその画面をオズワルドに見せる。

 勿論、その画面にはリュウヤの顔が鮮明に表示されていた。

 

「僕は鑑定とかには疎いけど、コレは確かにかなりの価値が付きそうだね。」

 

「だろ? 今の俺は一文無しだしどうせなら売ろうかなとね……。」

 

「そろそろ行くのかい?」

 

「ああ、色々と世話になった。本当にありがとうな。またいつか何処かで会えると良いな。」

 

 リュウヤは本気でそう思った。

 何故かは分からないが、オズワルドとはまた会わなければならないような時が来ると感じだのだ。

 味方としてか敵としてかは分からないが……、その剣を振るう姿を見る時がいつかくる。

 彼の勘がそう言っていた。

 

「衛兵の詰所で僕の名前を出してもらえば会えるさ、非番の日はこうして街を見回っているけどね。」

 

「お仕事お疲れ様です。それでは……」

 

 大きく手を振りながら走り始めるとオズワルドは爽やかな笑顔で見送ってくれていた。

 イケメンに元気づけられるのは癪に障る事だが、今回は本気で助かったとリュウヤは心から感謝するのであった。

 

 

「不思議な人だね……。」

 

 リュウヤが見えなくなった所でオズワルドはそう静かに呟いた。




取り敢えず、流れ的にはいい感じかな? 多分シナリオ的に途中までとある作品と類似してしまいますけどご了承下さい……。

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