物理攻撃なら全て跳ね返せる件について ~仲間を守るためなら手段を選ばない~   作:虎上 神依
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第1章 12話 攻防戦の幕開け

「フローラ! 大丈夫か!?」

「え、ええ! ありがとうね。」

「ジャストタイミングだ、リュウヤ! 君の反射神経には心底驚かせられたよ。」

 まんまと奇襲を防がれてしまった襲撃者は瞳に怪しげな光を宿らせながらこちらの様子を伺っていた。
 殺気こそ感じられないが、そいつは明らかに邪悪なオーラを纏っているのが見て取れる。
 エリナは派手に舌打ちする前に踏み出して怒声を張り上げた。

「一体どーいうつもりだ、アリーナ! アンタの仕事はネックレスを買い取る、それだけだったはずじゃねーか!!」

 アリーナと呼ばれたその女はエリナを一瞥すると、あの鋭い鎌を構え直す。

「確かにそうよ、でも持ち主を連れてこいとは一言も言ってないわ。それに挙句の果てには取り返されちゃってるじゃないの。」

「ま、まさかアンタこの場にいる人全員を血祭りにあげようとしているんじゃねーだろうな!」

 声を張り上げているのとは裏腹にエリナの顔は徐々に青ざめていった。相手は余程の危険人物なのだろう、そうでなければそんな顔をするはずがない。
 そんな彼女の恐怖に満ちた顔を見てアリーナは愛おしそうに微笑む。

「勿論よ、一人部外者がいるみたいだけどこの場にいる関係者は皆殺し、そして最後にネックレスを回収する。どちらにせよ、貴方達は始末する予定だったから少し前倒ししたっていいわよね?。」

 フローラとエレナを交互に見ながら酷薄かつ冷酷に告げた。

「貴方達は私達、イゼラエス団にとって邪魔な存在なの。今すぐにでも消えてもらうわ。」

「イゼラエス団って――」

「うん、フローラの考えてる事で間違いない。あのアリーナって奴は残酷で最悪な殺人鬼グループの一員だ。」

「あら、知っていたのね。とても光栄だわ。せめて楽に殺してあげる。」

 イゼラエスというワードを聞いた瞬間、フローラとカリフの表情が険しいものへと変化した。
 エリナの表情も苦痛なものへと歪んでいった、それは丸で絶対なる恐怖怯えているようにも見えた。
 だが、この場で一人、未だに冷静さを保つ人物が居た。

「なあ、エリナ。コイツがフローラのネックレス強奪を依頼した犯人か?」

「あ? ま、まあそうだが……。」

「それでイゼラエス団ってのは推測するに世界をも脅かす殺人鬼グループなんだな。」

「……、そう。奴らは目的の為には手段を選ばない。ゴメンな、迷惑かけちまったみたいでさ。だけど――」

「どうせ逆らえなかったとか金物欲しさみたいな理由だろ。安心しろ、攻めるつもりは全くない。それに俺もこの件に関しては無関係じゃないからな。」

 リュウヤはアリーナを睨みつけると羽織っているブレザーを脱ぎ、ネクタイを外して部屋の隅、即ちリュックサックのある場所に投げた。
 そして壁に偶々立て掛けてあった両手剣を二本ほど頂戴する。
 平凡たるもの、如何なる時も感情をコントロールす。今は超絶冷静さを保たせております!

「フローラ、カリフ。やるぞ。」

「えっ、うん。」

「ああ、鼻からそのつもりだよ。」

 再び、周囲の気温が急激に下がっていくのが感じ取れた。だが、こんな緊迫した場面で身震いするつもりはない。するとしてもそれは武者震いだ。
 そして無性に込み上げてくる感情を押さえ込みながらもトーンを下げて彼は言い放った。

「――事情は知らねえが、ふざけんじゃねーぞ。」

 リュウヤの言葉に反応してアリーナは殺意に溢れた様な瞳をこちらに向けてくる。だが、顔には少しばかり驚きの感情も含まれている様な気もした。
 それはフローラ、カリフやエリナも例外ではない。
 人生で一度しかキレた覚えがない彼だが、これで異世界転移初日から二回キレたこととなる。

「人の恐怖を駆り立てて遊んでんじゃねえよ。ドSだが何だか知らねえけど、人をいじめて喜ぶとか頭おかしいんじゃねえか? 大体、予定狂ったからって人殺して解決しようとか発想が完全にガキそのものだな。俺は命を大切にしないやつは嫌いだ。」

「へぇ? 加護も無いくせして随分と強気なのねぇ。そう言うのも私、好みよ。」

「あらそうですか程度の感想しか思い浮かばねぇな。大体、その殺意からして気持ち悪いんだよ。全くテンション抑えるだけでも体力全部使いそうだぜ。あーもう自分でも何言ってるのかわかんなくなってきたぁ!! 少なくともこれだけは覚えておけ。こいつらは誰一人として俺が殺させないからな――!!」

 腰を低くして二本の両手剣をゆっくりと構えた、途中からほぼ怒り任せに喋ってしまったが冷静さだけは失わないようにと気をつける。

「本当に威勢がいいのねぇ。でも、私も一人でその精霊使いに勝てるとは思っていないわ。」

「お嬢さん、それはどういう意味だい?」

 カリフが空気をひび割らせながら物理的にも張り詰めた雰囲気を演出しながらアリーナを睨みつける。
 そんな大精霊を見てアリーナは小さく吐息し――

「グリセルド、出番よ!!」

「アイアイサーッ!!!」

 怒号とも変わらるや太い声が部屋に響き渡った、次の瞬間――
 部屋の天井がバリバリとひび割れ、一人の男が上から飛び降りてきた。
 その男はガンッと重そうな斧を床に叩きつけ、不敵に笑う。床は天井と同じように割れ、そのひびはリュウヤの足元まで迫ってきていた。
 天井の一部が崩れ落ち、暗くなりかけている空が見える。その御蔭で部屋の中は更に明るくなり、辺りの様子を確実に捉える事が出来るようになった。

「……、わざわざ天井割って入ってくる必要性無いわよね。」

「その方が楽なだけだ姉さんよぉ!」

 その男、グリセルドは身長が低く、160センチ前後だった。しかし、かなりの巨漢で茶色と黒を貴重とした盗賊らしき装束を着ている。頭には所々凹凸がある金色の兜を被っていて、髪は生えていない様だ。目は三白眼の鋭い目で、瞳は茶色。
 見てくれから彼の凶悪さが滲み出ている。武器も150センチほどあるデカい斧で力もかなり強そうだ。

「仲間がいたか……。フローラとカリフはあのサディスティック女を頼んだ! 俺はエリナを守るようにうまく立ち回りながらあのオッサンを倒す。」

「ほ、本当に大丈夫なの!? そんな役、リュウヤにはキツ過ぎるよ!」

「問題ないさフローラ、二刀竜と恐れられた天宮竜也様を舐めてもらっては困るぜ。」

「剣を両手持ち――俺初めてみやしたぜ姉さん。」

「ふふっ、あの子面白いわね……、何の魔力や加護も感じられないと言うのに何処か強そうな力を秘めているみたいで――。何だかゾクゾクしてきちゃったわ。」

 後ろにいるであろうエリナをチラッと確認すると、彼女は部屋の端で怯えてながらも静かにこちらの様子を見ていた。
 エリナに戦闘能力はほぼ無いだろう。そう考えると形勢は三対二で、数的にはこちらが少し有利だ。
 だが、リュウヤは確かに感じ取っていたあの二人の強さの異常さを……。

 ――だけど、こんな所で死ぬわけにもいかない。それにあの惨劇を……、もう目にしたくはない。
 だから容赦しない、たとえ力が無かろうと俺は全力で戦い抜く――

「行くぞ――フローラ、カリフ!」

「ええッ!」

「お嬢さん、申し訳ないけどこの場で逝ってもらうよ。」

 掛け声をあげると共にリュウヤは床を力任せに蹴った。
 そして、彼の目には見えていなかったが後ろからとてつもない数の氷刃と水球がアリーナに向けて砲撃されていた。



確かにフローラとカリフは強いです。強いですけれども……






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