ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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久方ぶりに新キャラ登場!
今回出てくるのは、"高校生組とかかわりが深い人"です

ちなみに作者は高校時代、武道の時間は剣道の授業でした

菖「無双って程じゃないにしても、かなりよかったんだろ?」
ゆり「さすが、経験者ね」
斗真「にょっほほほ~」(-▽-

基本、体育は嫌いなんですがね、この時ばかりは大暴れしてた記憶がありますよ


とある日の体育の授業

学校の授業というのは、文部科学省が定めた規定により、ある程度、決まっている。

その決まりを示すものが、「学習指導要領」と呼ばれるものだ。

この学習指導要領は各教科各科目ごとに用意されており、教職課程を取得している学生たちには必須のアイテムとなっている。

 

その中で、体育の学習指導要領には、武道に関する項目が存在している。

武道を学ぶことで伝統を重んじることや、相手を尊重する心を磨くことが目的となっている。

だが、その目的とは別に、純粋に「武道そのもの」を楽しんで授業に臨んでいる生徒が、ここ明堂学園にいた。

その生徒とは。

 

「御剣、お前の相手は俺だ」

「お、黒鋼先生か!よろしくお願いします!!」

 

明堂学園が誇るハイスペックチート男子、無駄にイケメンな漢、みんな振り向くあんちくしょう。

様々なあだ名を持つ、明堂学園イケメン五人衆の筆頭、御剣明である。

二人のやり取りを見ていた菖と君尋、小狼は苦笑を浮かべながら。

 

「うわぁ……怪獣大決戦だな、これもう」

「あるいは最強決定戦?」

「言いえて妙だな」

 

と、好き勝手なことを言っていた。

とはいえ、彼らの発言はこのクラス全員が抱いている感想でもあるため、誰も非難することはできないでいた。

何しろ、御剣明といえば、希望ヶ花が誇るイケメン男子ナンバーワンであると同時に、最強の二つ名を冠するほど武芸に長けている。

もっと厄介なのは、その強さゆえにより強いものとの戦いを好んでおり、強者と戦いたいという衝動を常に抱えているということ。

つまるところ、戦闘狂であるという点だろう。

 

そんなわけで、個人の人格はともかく、その衝動を常に抱えているような人間は最初からお断り、と泉地流の稽古場に足を踏み入れることはおろか、菖との交流試合すら行ったことはない。

もっとも、泉地流の技を使わない、という条件下で何度か試合をしたことはあるが。

 

それはともかくとして、実のところ、明堂学園には明と同じような気質の人間が一人いた。

それがいま明の目の前にいる男。保健体育担当の黒鋼先生だ。

彼は剣道部の顧問でもあり、様々な伝説を持っている教師でもある。

 

曰く、古流剣術のすべてだけでは飽き足らず、槍、杖、鎖鎌、手裏剣、弓、体術、果ては忍術まで習得したとか。

曰く、教師はかりそめの姿で、実は日本政府お抱えの暗殺者だとか。

曰く、実は四葉財団や海藤グループなどの大企業のSPを歴任したことがあるとか。

 

ともかく、こと荒事に関して様々な噂を持っている。

どれも噂の域を出ないが、細身ながらもしっかりとした体躯に短く刈りあげられた髪、鋭い視線と不敵な表情を見れば、あながち噓ではないのかもしれない。

もっとも、真実のほどは定かではないが。

 

それはともかくとして。

そんな戦闘狂二人が武道の授業という、正々堂々と相手と戦うことができる場面に出くわせばどうなるか。

火を見るよりも明らかなことだった。

 

「おーい、みんな、少し離れるぞ~」

「巻き込まれっぞ~」

「春川、李!審判頼んだ!!」

「なんかあっても骨は拾ってやるからな!」

「……春川はいっそのことそのまま巻き込まれちまえ」

 

クラスの中で明に次ぐ腕前をしている菖と小狼に白羽の矢が立ち、審判を押し付けられてしまった。

もっとも、その中には少し、いやかなり無礼なことを言ってくる声もあったため、菖は声がした方へ視線を向けながら、不機嫌そうな声で返した。

 

「あ?そんなこと言うんだったら今年度中はお前たちからの頼み事、全部拒否すっぞ?」

『ひぃっ!!』

「だ、誰だよ、春川巻き込まれちまえとか言った馬鹿は!!」

「謝れ!てか詫びの印になんかもってこい!!」

「それじゃ足りねぇ!指詰めろ!!」

「腹切って詫びろ!!」

「なんでそうなるんだよ、物騒なっ!!」

 

だが、普段から雑事を頼み、快くはなくとも最終的に受けてくれる人の良さから、菖に対してそんな嫉妬を抱くのも馬鹿らしいと思っている生徒のほうが多く、くだらないことを口にした生徒に対しての激しい、いや、物騒なバッシングが始まった。

だが、忘れてはいけないのは、現在進行形で体育の授業は続いているという事実。

そして授業中に騒げば、当然降り注ぐのが。

 

「やかましい!貴様ら黙ってろ!!」

 

教師からの叱責である。

黒鋼のそのひと吼えに萎縮してしまった生徒たちはしーんと静まり返った。

だが数秒とせず、黒鋼は明を試合コートに招き、菖と小狼、静に審判の役を押し付けた。

逆らえない、というよりも武道を嗜むものでなければ審判が難しいと判断していた菖たちは、素直にコートに近づいた。

三人いる審判の内、主審を菖が務めることが決まると、菖は準備を始めた。

明と黒鋼はすでに準備を終わらせていたため、審判たちの準備が終わると、互いにお辞儀をしてコートに足を踏み入れ、三歩のすり足で所定の位置まで進み、竹刀を抜き、蹲踞(そんきょ)の姿勢をとった。

 

「始めっ!!」

 

二人がその位置に来て、蹲踞の姿勢に入ると、菖は高らかに試合開始を告げた。

同時に、声も出していないのにびりびりとした何かが肌に伝わってきた。

その何かを、武芸者は剣気だとか殺気と称するのだが、そんなことを知っているのは泉地流継承者である菖と李家のたしなみとして中国拳法を学んだ小狼くらいなものだ。

 

それは横に置いておくとして。

試合開始が宣言され、序盤は互いに竹刀の先端を動かし、どうにか相手の中心を捉えようとしていた。

しばらく、静かな攻防が続いたが、一瞬の隙を見つけたのか、明が先に動いた。

明堂院流の稽古でも見せたことのない、まさに風と表現できるほどの素早い動きで黒鋼に迫った。

だが、黒鋼はその動きをあざ笑うように向かってきた明の竹刀を弾き、切り返してきた。

 

だが、明の負けず嫌いの性格がここで活きた。

床を蹴って後退し、黒鋼の竹刀をギリギリで回避したのだ。

だが、回避するだけで終わらなかった。

剣道には後ろに下がりつつ、一本を狙う引き技が存在する。

明が狙っていたのは、引き面だったようだ。

しかし、有効範囲の外にまで引いてしまっていたため、剣先が面のふちに当たっただけで、一本にはならなかった。

 

それからも高校の授業とは思えない攻防を繰り広げた二人だったが、突然、甲高いホイッスルの音が鳴り響いた。

それに一拍遅れて、菖が両手を上げ、止めっ、と号令を出した。

その号令とともに、二人は最初の位置へと戻っていった。

 

「引き分け!」

 

本来、剣道の試合において、引き分けという判定は、個人戦には存在しない。

だが、今回はあくまでも授業であり、全体の流れ、というものがある。

制限時間になっても決着がつかなければ引き分け、となってしまうのは道理だった。

なお、それがしかたないことと理解しているため、両者とも大人しく退場したが。

 

「「いつかこの決着をつけてやる」」

 

と物騒なつぶやきが審判三人はおろか、その場にいた全員の耳に入ったとか。




あとがき代わりのおまけの話

~昼休み~
ももか「それで、明くんと先生、決着つけるの?」
ひまわり「果し合いになっちゃったりしない?」(-ω-;
君尋「……否定できないなぁ……」
静「黒鋼先生、あれでかなりの戦闘狂だからな」
小狼「試合会場がもつかどうかが疑問だ……」
さくら「そ、その前にどっちかが倒れたりとか……」
ゆり「まぁ、御剣くんが負けるなんてところ、あまり想像できないけれどね」
静「……最悪、どっちか入院なんてことに……」
ももか「…………にゅ、入院…………」(;ω;<ぶわっ
明「おいおい、大げさだぞももか」
君尋「つか百目鬼、お前、来海さんを不安にさせるようなこと言うんじゃねぇ!!」(ーДー#
菖「いや、案外とこれが正しい反応なんじゃ……俺だって黒鋼先生とやり合いたくないし」(-Д-;

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