ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
いや、まさか猫娘があんなことになるとはまったく予想外です……(白目
というわけで、何気に出てこなかった猫娘さん、登場です
……………………そろそろ、まなも出そうかなぁ……………………
では、本編どうぞ
その日、菖はゆりと二人だけで街に出かけていた。
傍から見ればデートをしている光景なのだが、そんな色っぽいものではない。
偶然、出かけた先でばったり出会い、そのまま一緒に行動することになった、というだけだ。
もっとも、二人ともまんざらでもない様子ではあるのだが。
「あら?菖じゃない?」
「ん?……あぁ、猫娘の姐さんか。珍しいな、お前さんから声をかけてくるなんて」
「ま、あんたは知らない仲じゃないしね……で、お隣のその人は?恋人??」
「そうだったら光栄なんだけどね」
「……ね、ねぇ、菖……この人は?」
すっかり置いてけぼりにされてしまっていたゆりは、半ば呆然としながら菖に問いかけた。
そこでようやく、菖はゆりに目の前の女性を紹介した。
「あぁ、ごめん。この人は……人、でいいのかな?……って、見えてるの?!」
「え?えぇ……女の人、よね?」
「……人かどうかは、微妙なところね。あたし、人間じゃなくて妖怪だし」
「……え?」
女性から返ってきた答えに、ゆりは目を丸くした。
菖が人ではないものを見ることのできる、見鬼の力を持っていることは知っているし、その力でいわゆる「妖怪」と呼ばれる存在と交流を持つことができたことも知っている。
だが、普通、妖怪は夜行動するものであり、昼間に行動するとは思えない。加えて、人間とまったく変わりない姿を取っていることにも驚かされていた。
いや、それよりなにより、プリキュアではあるが、見鬼や霊力のような力は一切持っていない自分が、妖怪を見ていることに驚いていた。
「え、えっと……妖怪、なんですか?」
「えぇ、まぁ……本当に見えてるのね……あぁ、なるほど。菖の影響を受けてるわけね」
「かもしれないですね……こいつ、ゆりとは幼馴染で付き合いも長いので」
そう返して、菖はゆりに女性を紹介した。
「ゆり、いつだったか話した鬼太郎の友人で、猫娘だ。姐さん、こっちは月影ゆり、俺の幼馴染です」
「よろしくね、ゆり」
「えぇ、こちらこそ」
ゆりは猫娘から差し出された手を握り、薄く微笑みを浮かべた。
猫娘はその笑みに返すように笑顔を浮かべると、菖のほうへ視線を向けた。
「ていうか、菖。あんたまであたしを姐さん呼ぶのはやめてくれない?」
「いや、姉御よりはいいかなぁと」
「どっちもよくないわよ……」
ため息をついて、猫娘は文句を言った。
だが、もはや諦めているらしく、それ以上、このことについて追及してくることはなかった。
「そういえば、あんたたちはどうしてここに?」
「そりゃこっちのセリフ」
「あら?女の子はおしゃれをしたいものよ?たとえ妖怪でもね」
あっけらかんとした顔で、猫娘はそう答えてきた。
言われてみれば、コートやマフラーの類を身につけていることもあったな、と菖は思い出して、失礼しました、と謝罪した。
「それで?菖はその子とデート中ってわけかしら?」
「だから、俺なんかにゆりはもったいないですって」
「……相変わらず自己評価低いわねぇ……まぁいいわ。なら、ちょっとこの子、借りるわよ?」
「えっ?!あ、あの、ちょ……」
ゆりの文句を聞き入れるつもりも、菖の意見も聞くつもりも一切ないらしく、猫娘はゆりの手をつかみ、そのままショッピングモールのほうへ姿を消した。
当然、ゆりはなすすべなく
「……えぇ~……」
その鮮やかすぎる手腕に、菖はただ呆然とするだけだった。
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菖から半ば無理やり引き離されて、ゆりは猫娘と呼ばれた、自称妖怪と一緒にショッピングモールをめぐることになった。
もっとも、本当に服が目的だったらしく、回った店のほとんどがファッション関連であった。
現在、二人は近くの喫茶店で休憩という名のティーブレイクタイムに入っていた。
ちなみに、猫娘は猫舌らしく、アイスミルクティーを、ゆりはストレートティーを注文し、それぞれ楽しんでいた。
「で?」
「え?」
「本当のところ、どうなの?菖との関係」
「んぐっ?!……………………けほっ、けほっ……………………」
あまりに唐突な質問に、ゆりは思わずむせてしまった。
その反応に目を丸くした猫娘は、大丈夫、と問いかけたうえで、謝罪してきた。
ようやく落ち着くと、ゆりはじとっとした視線を猫娘に向けながら、問いかけた。
「なんで、そんなことを?」
「……………………あいつ、なんというか危なっかしくて放っておけないのよ。それこそ、人間側に重しがないと、そのうちふらっと
「それは…………………………」
猫娘の言葉に、ゆりは少しばかり、心当たりがあった。
菖を通じて知り合った同級生の一人、友護もそうなのだが、菖もどこか人間に対して諦めのような感情を見せるときがある。
おそらく、それは菖の見鬼の能力が故なのだろう。
見えざるものを見る力。それはたしかに、人間から見れば妖怪と同じ、バケモノだ。
だから、重しなのだろう。
菖を人間の側にとどめておくための。
けれど。
「……………………たぶん、わたしはまだ、彼の重しにはなれてないのだと思います」
「……そう」
「けれど」
ゆりは手にしたティーカップを置いて、まっすぐに猫娘を見つめた。
「絶対、彼をあなたたちの側へ行かせません」
たしかに、自分は、いや、自分たちはまだ、菖の重しになることはできていない。
けれど、そうやすやすと手放すつもりはないし、手放させるつもりもない。
その決意が、ゆりにはあった。
いや、おそらく、これは自分の妹分たちも同じことだろう。特に、自分やつぼみ、舞たちのように、菖に特別な感情を抱いているのならば。
「……………………そう。それなら、ちょっとは安心かな」
「ふふ……優しいんですね、あなたは」
「そうかしら?……………………まぁ、放っておけないっていうのはそうかもね」
ゆりの言葉に、猫娘は若干、顔をそらした。
そのしぐさを愛らしく感じたゆりは、くすくすと微笑みを浮かべた。
あとがき代わりのその後の話
~置いて行かれた菖は不機嫌に~
ゆり「ご、ごめんなさい、菖……」
菖「…………」
猫娘「お、置いていったことはほんとにごめんって……」
菖「……………………別に、気にしてないですよ?」
猫娘「そ、そう……ね、ねぇ、ゆり。もしかして、だけど」
ゆり「えぇ……これ、気にしてますよ。ものすごく……」
猫娘「……………………ほんと、こいつ、いつからこんな面倒くさくなったのよ……………………」
ゆり「知りませんよ!……………………けど、そんなとこが可愛いって思うんです、最近……………………」
猫娘「……………………はいはい、ごちそうさま」