ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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今回は一日遅れのヴァレンタインということで……
あとはわかるな?
なお、個人的に私は海外形式のヴァレンタインの方が好みです。
なんでかって?お返しの品のこと考えなくていいから

……あ、ちなみに今回、えりかといつきは出てきません(というか余裕がなかったです


とある放課後の菖とつぼみ

乙女の祭典(ヴァレンタイン)

言い換えれば、それは乙女の聖戦でもある。

特に日本は製菓会社の商法戦術により、世界各国から見ると少しばかり異質な形のヴァレンタインとなっている。

その最たる理由が。

「御剣くん!」

「このチョコレート」

「受け取ってください!!」

「……あ、あぁ……ありがとうな」

甘くてほろ苦い恋の味、チョコレートを想い人に手渡すという行事になってしまっているからであった。

なお、海外では主にヴァレンタインカードを友人に送ることが一般的となっており、別に愛の告白を行うことが一般的というわけではない。

もっとも、起源をさかのぼれば、日本の形もあながち間違ってはいないのだが。

閑話休題(それはともかくとして)

ここにも、そんな乙女の聖戦に参加している少女が、二人いた。

「……ゆ、ゆりさん」

「何かしら、つぼみ?」

「きょ、今日は、そ、その……」

「……大丈夫よ。別にわたしが送ったからって、貴女が送ることを遠慮しちゃだめよ?」

「は、はい!!」

菖の幼馴染として一緒にいることが当たり前のゆりと、菖と一緒に過ごすうちにその優しさと強さに心惹かれているつぼみ。

二人のカバンの中には、(想い人)に向けて送るチョコレートが入っていた。

「とはいえ、菖の場合、日本のヴァレンタインをあまりよく思っていないから、素直に受け取ってくれるかどうか」

「そうなんですか?」

「えぇ……」

菖の考古学への情熱は、幼い頃から強く、長期の休みには両親がいる海外の国へと飛んでいたこともある。

そのため、海外の文化に触れる機会が多く、海外発祥の行事については、外国に合わせることが普通になってしまっていた。

「だから、今日はたぶん、菖からも贈り物があるはずよ」

「……もしかして、ヴァレンタインカード、ですか?」

「えぇ」

ヴァレンタインカードとは、海外で一般的なヴァレンタインの贈り物である。

友人に感謝の想いを乗せて、カードを送り合うのだが、日本では友チョコに近いのかもしれない。

そんな話をしながら登校していると。

「おはよう、二人とも」

背後から菖に声をかけられた。

「おはよう、菖。ごめんなさいね。先に出ちゃって」

「お、おおおおおお、おはようございます!」

「いんや。だいたい事情はわかってるから……てか、つぼみ、なに緊張してんの?」

「な、ななな、なんでもないです!」

顔面を真っ赤にしながら返すと、菖は微笑みを浮かべて、自分のカバンに手を入れ、何かを取りだした。

菖の手の中には、桜のイラストが描かれたカードと、百合の花が描かれたカードがあった。

「こっちはゆりに。こっちはつぼみに」

「あら、ありがとう」

「あ、ありがとうございます!」

「Happy Valentine、二人とも」

菖が満面の笑みを浮かべると、つぼみもゆりも一瞬で真っ赤になり、小声で同じように返した。

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放課後になり、菖は一人、植物園に向かっていた。

なおいつもならばゆりが一緒にいるのだが、植物園で待っている、と少し顔を赤くして足早に下校してしまったのだ。

それだけならばいいのだが、色々あれこれと頼まれごとを引き受けているうちに、少しばかり遅くなってしまったのだ。

――さてと、さっさと行かないと、ゆりの機嫌が急降下しちゃうな

そう思い、さっさと植物園に向かおうとした矢先。

「しょ、菖さん!」

背後からつぼみに呼び留められた。

「お、つぼみ。つぼみもいま帰りか」

「はい!植物園に寄っていこうと思いまして」

「へぇ、奇遇だな。俺もこれから植物園に顔出しにいく予定なんだよ」

その理由の半分はゆりで、もう半分は薫子とコッペにヴァレンタインカードを贈ることがである。

もっとも、そんな事情をつぼみに話しても仕方がないので、黙っていることにしたのだが。

「あ、あの、菖さん……」

「うん?」

「こ、こここ、これ!う、ううううううう、受け取ってくだしゃい!!」

ところどころかみかみになりながら、つぼみは菖に小包を突き出した。

勢いのあまり、菖のボディにむかったそれだが、みぞおちにクリーンヒットすることなく、両手におさまっていた。

いや正確には、小包を持つつぼみの両手ごと、菖の両手が小包をつかんでいたのだが。

両手を菖につかまれている、という事実を感覚で認識したつぼみは、一瞬で顔面を真っ赤にし、頭から湯気を出してしまった。

「お、おい、大丈夫か?!」

「は、はひぃぃぃ……」

どうにか倒れずに済んではいるが、あまり意識ははっきりしていない。

原因は自分がつかんでいるこの両手にあることは、菖もわかったのだが、かといって、下手に手放すとそのまま地面に倒れてしまいそうな気がして、さてどうしたものかな、と菖は困ったような微笑みを浮かべるのだった。

なおその後、それから五分とせずにつぼみは回復し、二人並んで植物園にむかったのだった。




あとがき代わりのその後の話

~植物園到着~
菖「こんにちは、薫子さん」
つぼみ「おばあちゃん!来ました!」
薫子「あら、いらっしゃい」
菖「はい、薫子さん。これ」
薫子「あら、ヴァレンタインカードね?」
菖「えぇ。一枚はコッペ様に」
薫子「ありがとう。さ、ゆりちゃんが上でお待ちかねよ?」
菖「おっと、いけない」
つぼみ「はい!それじゃ、菖さん。行きましょう!」
菖「……わかったから、引っ張らないでほしいなぁ……」
薫子「あらあら♪」

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