ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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初詣ネタをもう一発。
今回は高校生組ですが、最初に断っておきます。
ア・ラ・モード組はいません、希望ヶ花市在住の彼らだけです。
初詣って、本来、土地の神様へのご挨拶ですからね、ご容赦を(-ω-;


高校生組の初詣

それは、三が日のある日のこと。

希望ヶ花神社の社務所で、ゆりと菖は菖の両親と並んでお守りやおみくじの販売をしていた。

「本年もよろしくお願いいたします」

「五百円です」

「こちらですね」

「お気を付けて」

次々にやってくる参拝客をさばきながら、新年の挨拶を交わしていると、菖とゆりの目の前に見覚えのある顔がいくつか出てきた。

「よっ!おめでとうさん」

「「「明けましておめでとう/ございます」」」

「「今年もよろしく/な」」

「あっけおめ~!」

「「謹んで、新年お慶び申し上げます」」

明堂学園高等部の美男美女揃い踏みである。

ちなみに、女子はさくらとひまわり晴れ着。ももかと男子はそれぞれコート姿である。

「おぉ、ゆりが巫女服だぁ!!」

「とっても似合ってるよ、ゆりちゃん」

「うんうん!本物の巫女さんみたい!!」

「うふふ、ありがとう。さくら、ひまわり」

女子は女子で、ゆりの巫女服姿を褒めていると、男子たちは菖の袴姿を珍しく思い。

「へぇ?馬子にも衣裳ってか?」

「おいおい、本職のやつにちと失礼じゃないか?」

「似合っているな。四月一日に割烹着着せているような雰囲気だ」

「んだと、てめーっ!!」

「おいおい、ちったぁ静かにしてくれや」

冗談を交えながら、そんなやりとりを繰り広げていた。

順番待ちの参拝客は、苦笑いを浮かべながら新年早々、にぎやかな九人やりとりを、苦笑しながら見守っていた。

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それから少しして、菖とゆりは友達と一緒に参拝してくることを許され、君尋たちと一緒に拝殿の前に並んでいた。

ちなみに、ゆりは巫女服、菖は袴姿のままである。

もっとも、首にマフラーは巻いているのだが。

「寒くないか?ゆり」

「大丈夫……ありがとう、菖」

とはいえ、寒いことに変わりはないうえに、マフラー以外の防寒具を身に付けていないため、菖はゆりにそう問いかけたのだが、ゆりの生来の我慢強さがここで出てきたらしい。

とはいえ、参拝客の熱気のおかげか、確かにさほど寒さは感じないのも事実なのだが。

「ねぇねぇ、ちょっと聞きたいんだけど」

「ん?」

突然、一緒に並んで歩いていると、ももかが問いかけてきた。

「参拝の手順って、どうやるんだっけ?」

「「「「……おいおい」」」」

ももかのその言葉に、菖と静、そして君尋と小狼は呆れたといわんばかりのため息をついた。

だが、少なくとも君尋はひまわりの一言で態度を変えた。

「あ、それわたしも知りたい」

「もっちろん!丁寧に教えてあげるよ~♪」

「……ももかはともかく、ひまわりもだったか……」

「いかにも、現代の若者だな」

二人して参拝の作法がわからないという事態に、菖と静はさらに深いため息をついていた。

そんな二人をよそに、君尋は小狼を巻き込んで、参拝の作法を説明し始めていた。

「まず、鈴を軽く鳴らすんだ。あんまりガラガラいわせちゃだめだよ」

「そうなの?」

「呼び鈴と同じだから、あんまりうるさいと神様に迷惑かかるだろ?」

「あぁ、なるほど!」

「そしたらお賽銭を投げて、二回お辞儀をする。そしたら、二回手を叩いて、もう一回お辞儀」

いわゆる、二礼二拍手一礼、という作法である。

「なるほど!よくわかったわ♪」

「ありがとう、四月一日くん、李くん♪」

「「どういたしまして」」

二人にお礼を言われて、君尋と小狼は微笑みを浮かべて返した。

なお、小狼が親友とはいえ他の女の子に微笑みを浮かべていることに、少なからず嫉妬している少女が一人いたことは、言うまでもない。

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拝殿の前にようやくたどり着いた九人は、それぞれ一列に並んでいた。

なお、鈴は三つしかないため、三人でそれぞれ綱をつかみ、鳴らしていたことは言うまでもない。

鈴を鳴らして、お賽銭を入れ、二回お辞儀をして、二回手を叩いて、一回お辞儀をする。

完璧なまでにその動きはシンクロしていたのだが、それは置いておく。

参拝を終えた高校生組は、拝殿の前から立ち去り、少し離れた場所にむかった。

「で、お前ら、何をお願いしたんだ?」

「……唐突だな、明」

唐突に、明がそう問いかけてきた。

その問いかけに、菖は苦笑しながら返した。

「なんだよ?大事だろ、これ」

「いやいやいや」

「口に出したら、ダメなんじゃなかったけ?」

明のその返しに、君尋とさくらは否定的な答えを返した。

が、二人のその意見に、菖が追い打ちをかけた。

「いんや、別に口に出しても大丈夫だぞ?」

「そうなの?」

「まぁ、うん……ただな、初詣って氏神様にご挨拶って意味合いのほうが強いんだよなぁ」

勘違いしがちではあるが、初詣は本来、その土地の神様に新年の挨拶に伺うという意味合いのほうが強い。

そのため、変に願い事をするのではなく、今年一年もよろしくお願いいたします、という気持ちで臨んだ方がいいのだ。

とはいえ、そんなことは知ったことではないのが高校生組。

何を願ったのか、言うか言わないかでもめ始めた。

そんな様子を見ながら菖は、今年もにぎやかになりそうだ、という感想を抱くのだった。




あとがき代わりのその後の話(スキット風)

~結局、何を願ったの?~
明「で、君尋は何を願ったんだよ?」
君尋「……結局、言わなきゃいけないのかよ……てか、俺は何も願ってないぞ?今年一年もよろしくお願いしますってしか思ってない」
明「……まじで?」
静「それが初詣の本来の作法だからな。たぶん、菖も同じなんじゃないか?」
菖「まぁ、そうだな」
ゆり「御剣くんだけ、ちょっと欲深なのね?」
ももか「けど、そこがいい♪」
ひまわり「いまどき珍しい、肉食男子ね♪」
さくら「ほ、ほえぇぇぇ……」
小狼「あははは……」
明「……泣けるぜ……」

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