ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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今週頭の大雪を見て思いついたお話。
たぶん、これが今年最後の投稿になるかと。
みなさん、来年もよろしくお願いいたします。


とある雪の日の五人組

それは、とある寒い朝のことだった。

「……寒いと思ったら……じぃじ!これ雪かき必要だよ!!」

菖は玄関のドアを開けて、外の景色に愕然としながら中にいる仁頼に声をかけた。

目の前に広がっていたのは一面の雪景色だった。

関東から少し遠い位置にある希望ヶ花市ではあるが、一面銀世界になるほどの降雪はめったにない。

そうなると、神社の管理を任されている一家の人間としてすぐに思い浮かぶのは、雪の中での力仕事なのだった。

そして、菖にとって一年間を通じて、最もやりたくないと思う苦行でもあった。

「……やるか」

だが、そんな苦行でもやらないわけにはいかない。

菖はため息をついて、雪かき用のスコップを取りに向かうのだった。

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「お~~~~~っ!!雪だ、雪だ~~~っ!!」

「一面真っ白……すごいですっ!!」

「ほんと、ここまで降るのは久しぶりだね」

一方、別の場所では中学生組がはしゃいでいた。

特に、遊ぶことに関しては全力全開になるえりかのはしゃぎようは、すごいものがあった。

もっとも、そのはしゃぎっぷりから発生するお約束というものは必ずあって。

「ふべっ!!」

足を滑らせて、えりかは雪道に顔面ダイブしてしまうのだった。

つぼみといつきは、やると思ったらしく、その様子を見て、ただただ呆れたといわんばかりの表情を浮かべていた。

ふと、さくさく、と雪を踏む音が聞こえてきて、つぼみといつきは音の方へ視線を向けた。

そこには、マフラーとイアーマフで完全武装をしたゆりの姿があった。

「「あ、ゆりさん!おはようございます!!」」

「おはよう、二人とも……えりかははしゃいで転んだのかしら?」

「その通りです」

「はい……」

「まったく……もう少し落ち着きを持ちなさい?」

ずっこけたままのえりかに向かって、ゆりが警告すると、えりかは力のない声で返事をして、ゆっくりと立ち上がった。

ふと、菖の姿がないことに気づいたのか、えりかは周囲を見まわし、首を傾げた。

「あれ?菖さんは??」

「菖なら神社の方じゃないかしら?この雪だもの。参道や階段の雪かきをしているはずよ」

菖の行動パターンを把握しているあたり、さすが幼馴染といったところか。

そして、菖が仕事をしていることを聞いて、何もしないで遊んでいるほど、つぼみたちは薄情ではない。

「なら、菖さんのお手伝いに行きましょう!!」

「うん!いい鍛錬になりそうだしね!!」

「……って、いつきは結局そこなの?」

ここに来てまで鍛錬のことを考えているいつきに、えりかは驚愕と呆れが入り交じった顔で突っ込みを入れるのだった。

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それから少しして、つぼみたちは菖がいるはずの神社に到着した。

鳥居の向こうには、ゆりが言っていた通り、参道の石畳に積もった雪を雪かき用スコップで集めている菖の姿があった。

「菖!手伝いに来たわ!!」

「サンキュー!拝殿の脇の倉庫にまだスコップあるから、それ使ってくれ!!場所はわかるだろ?」

ゆりが菖の姿を見つけるなり、大声で呼びかけると、菖もまた大声でそう返してきた。

むろん、何度か手伝いに来ているゆりは倉庫の場所もしっかり把握していたため、迷うことなくスコップを取りに向かい、つぼみたち中学生組の分も手渡した。

「ほら、あなたたちの分よ」

「「ありがとうございます!」」

「おっしゃあ!頑張るっしゅ!!」

ゆりからスコップを手渡された中学生たちは、やる気十分といった様子を見せた。

見せた、のだが。

「……も、もうだめです~……」

「こ、これ……いつまで続くのぉ……」

つぼみとえりかはものの数十分でダウンし始めていた。

下地が違ういつきは、まだ余裕はありそうだが、それでもやはり疲労の色が濃いようで、くじけそうになっているつぼみとえりかを応援することは難しいようだった。

だが、ゆりと菖はいまだ黙々と作業を続けていた。

「……ふ、普通、ここまで黙々とできる?」

「ゆりさんはともかく、菖さんはわたしたちの倍以上はやってますよね……?」

優秀な人材であることは知っているが、ここまで化け物じみた体力と集中力を見せられると、つぼみとえりかは二人の、ある種の異常さに驚きを隠せないでいた。

そんな二人を横に、菖とゆりは黙々と作業を続け、数十分後には雪かきは完了していた。

「こんなものでいいんじゃない?」

「そうだな。ありがとうな、四人とも。中でじぃじが御汁粉作ってるはずだから、中で食べて温まってくれ」

菖が社務所を指さしてそう告げると、一番早く飛びついたえりかが猛烈ダッシュで向かっていった。

そのはしゃぎぶりに、残されたメンバーは呆れながら苦笑を浮かべていた。




あとがき代わりのその後の話(スキット風)

~足もと注意~
ゆり「それじゃ、わたしたちも入りましょう」
つぼみ、いつき「「はい!」」
菖「あ、雪かき終わったからって走ると……」
つぼみ「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ??!!」
いつき「う、うわわわわっ??!!」
菖「すべるぞ……って、もう遅いか」
ゆり「まったく……もう少し落ち付いて行動できないのかしら?」
菖「まぁ、元気なのはいいことじゃないか」
ゆり「そうね……ところで、菖?」
菖「うん??」
ゆり「転ぶと危ないから、手をつないでもらってもいいかしら?」
菖「お安い御用」
ゆり「あ、ありが、とう……」(/// ///
菖「お、おう」///)
えりか「うん?!なんかラブロマンスの匂いがするっしゅ!!」

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