ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
というわけで、こんな寒い日の話題を。
その日は、秋に入ったばかりにも関わらず、冷たい風が吹き荒れていた。
普段よりも肌寒くはあるが、菖とゆりは相変わらず、二人並んで登校していた。
「
「そうね」
「……全然、寒そうに見えないんだが、それは俺の目の錯覚か?」
「えぇ、その通りよ?」
菖の問いかけに、ゆりはあっけらかんと返してきたが、カバンの中からコロンが反論してきた。
「いや、これでもゆりは今日、少し多めに着ているよ?」
「コロン、カバンの中にいる間は黙っててほしいって言ったわよね?わたし」
「周りには誰もいないんだから、いいじゃないか……それにしても、寒いね、ほんと」
カバンの隙間から顔をのぞかせながら、話しかけてくるコロンに同意するように、菖とゆりはうなずいた。
ちなみに、現在の菖の装備は制定品のコートに紺色のマフラー。ゆりは制定品のコートに白いマフラーと耳当てをつけて、黒のストッキングである。
ちらり、と菖は隣を歩くゆりの方へ視線を向けるとゆりは視線で、どうしたのか、問いかけてきた。
「いや、いつもの恰好じゃないからさ、つい」
「……似合ってないかしら?」
「そんなことはない。似合ってるから、ちょっと見惚れた」
若干、顔を赤らめながら、菖は視線をそらした。
それが照れているからだということをわかっているゆりもまた、顔を若干赤らめ、視線をそらした。
「……ありがと」
小さくつぶやくようにゆりはお礼を言った。
聞こえていない、と思ってはいるが、それでもやはり気恥ずかしいものは気恥ずかしいのだろう。
もっとも、菖はゆりがお礼を言っていることがわかったので、余計に気恥ずかしくなり、寒さで赤くなっていた顔が余計に赤くなってしまっていた。
そんな二人の様子など知ったことではないというように、元気のいい声が響いてきた。
「菖さん、ゆりさん!おはようございます!!」
声がした方を見ると、そこにはコートとマフラーに身を包んだつぼみの姿があった。
ミトンの手袋をしているあたり、かなりの重装甲だ。
「おはよう、つぼみ」
「おはよう」
ふと、ゆりはつぼみの隣にえりかがいないことに気づいた。
「えりかはどうしたの?いつも一緒に登校してるわよね?」
「はい……えりか、夕べ風邪を引いたらしくって」
おおかた、寒いというのに夜遅くまで暖房をつけるのも忘れて、ファッションデザインに没頭していたのだろう。
なお、いつきは風邪を引いたというわけではなく、引退した身であるにも関わらず、生徒会からの依頼で少し早めに学校へ向かったのだそうだ。
「いつきもいつきで大変だな」
「そうね……というか、生徒会もだらしないわね。いつきがいなくてもちゃんと機能するようにしないと」
ゆりの容赦のない一言に、つぼみは苦笑を浮かべたが、実のところ、つぼみもそう思っているので、あまり強く否定はできなかった。
----------------------------------
菖、ゆり、つぼみは三人で並んで通学路を歩いていると、突然、強い向かい風が吹いてきた。
その強さに、思わず三人は足を止め、身震いした。
「……寒っ」
「……冷えるわね」
「さ、寒いですっ!!」
三者三様の悲鳴の上げ方だったが、つぼみは本当に寒かったらしく、ガタガタと震え始めた。
その様子が不憫に見えたのか、ゆりは申し訳なさそうな表情をした。
「カイロでも持ってくるべきだったかしら?」
「……だなぁ……こういう時、人肌恋しくなるっていうけど、こりゃまじだな」
マフラーを口元まで引き上げ、ポケットに手を突っ込み、できる限り肌を外に出さないようにしながら、菖はそう返した。
その言葉に、何を考えたのか、ゆりは菖にぴったりとくっついてきた。
「へ?どうしたんだよ、ゆり??」
「寒いんだもの。あなたをカイロの代わりにすることにしたわ」
「だからってひっつくか、普通?」
頬を赤くしながら、菖は困惑した様子でゆりに反論した。
が、反論されている方もやはり恥ずかしいらしく、誰の目から見てもわかるほど真っ赤になっていた。
もっとも、そんな状況を許せるつぼみではなく。
「わ、わたしも寒いので、しょ、菖さんに温めてもらいます!!」
顔を真っ赤にして、ゆりと同じように、菖にひっついてきた。
「おいおいおいおい……」
美少女二人に抱き着かれ、さすがの菖も動揺してしまったらしい。
顔を真っ赤にして、おろおろし始めていた。
そんな羨ま……けしからん光景を見た同級生たちから、三人ともからかわれたことは言うまでもない。
あとがき代わりのその後の話(スキット風)
~教室にて~
明「さて、春川」
君尋「ちょぉっと顔かしてくれ」
菖「……俺はアンパンから生まれたヒーローじゃないんだけど?」
静「そっちじゃないだろ」
明「学園一の才女に抱き着かれた感想は?」
菖「……それを聞くか」
明「当たり前だ」
君尋「正直に話しちゃった方が、身のためだぜ?」
静「さっさと
菖「……黙秘権を行使させてもらいたい」
明「おいおい、お前も男だろ?白状しちまえよ」
菖「やなこった。特に御剣、お前には絶対言いたくない」
明「ちぇっ!つまんねぇな」
----------------------------------
ひまわり「それで、月影さん?」
ゆり「何かしら?九軒さん」
ひまわり「意中の男の子は暖かかった?」
ゆり「……な、何を言っているのかしら?」(/// ///
ひまわり「いま校内もちきりだよ?月影さんが春川くんとついにくっついたって」
ゆり「……誰かしらね、そんな噂を流したのは」
ひまわり「さぁ?」(^^
ゆり「……はた迷惑な話ね」
ひまわり「うふふ♪」