ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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斗真「……Merry X'mas」
ゆり「元気がないわね?」
菖「まぁ、気持ちはわからんでもないけどな」
斗真「年末、忙しい……仕事……」
ゆり「……ご愁傷様」

というわけで、みなさま改めましてメリーです。
100話目ということで、今回は本編、でもって時期が近かったので、クリスマス回です。
とはいえ、アニメとはだいぶ違う流れになりますけど、まぁ、そこはそれ、漫画版の流れで構成しているので、許してください。



聖なる夜の贈り物!今夜はすてきなクリスマスです!!

季節はすでに秋を過ぎて、冬。

冬を迎えるとやってくるイベントの一つがクリスマスである。

その時期になると、製菓会社を筆頭に様々な企業がクリスマス商戦と称して、聖夜らしからぬ激しい戦争が繰り広げられる。

つぼみの実家である「HANASAKIフラワーショップ」もまた、クリスマス限定の聖戦の舞台となっていた。

「お待たせしました!ご注文のフラワーギフトです」

「クリスマス限定のプリザーブド・アレンジメントはいかがでしょうか?」

「小花を集めて作ったラブリーなリース!女の子が大好きなハート型です!」

「フラワーケーキもお勧めだよー!」

「こちらのポインセチアは、プレゼント用にお包みしますか?」

フラワーショップでは、えりかたちも一緒になってつぼみの手伝いをしていた。

この時期になると、菖は仁頼の手伝いで神社の大掃除をすることになっているのだが、珍しく菖の両親が帰国していたため、そちらに押しつけるから、友達の手伝いをして来いと許可をもらったため、こうしてつぼみたちの手伝いをすることができたのだ。

なお、本人は無自覚だが、菖はそれなりに顔が整っているため、多くの女性客が立ち寄ってきていた。

そのため、フラワーショップは今年一番の売り上げとなっていた。

閑話休題(それはともかく)

客足が徐々に収まってくると、店の奥から、花咲夫妻(陽一とみずき)が顔を出し、手伝ってくれたえりかたちにお礼を言ってきた。

「みんなが手伝ってくれて、大助かりよ。ありがとうね?」

「いやぁ、クリスマスがまさかこれほど忙しいとは……」

「クリスマスデートに恋人に花束をプレゼントして、想いを伝えるって人、多いみたいだからな」

「まさに、心を伝える美しいメッセンジャー、ですね!」

菖のつぶやきに、いつきが微笑みを浮かべながらそう返すと、つぼみが同意した。

「はい!大切な想いを託したお花で感動のイブを過ごしてほしいです!」

それに、とつぼみは笑みを深めた。

「クリスマスは、一人で過ごすことが多かったけど、今年は……大好きなお花と、みんなに囲まれて、幸せいっぱいです!」

「そっか」

つぼみの言葉に、菖は少しばかり寂しそうな笑みを浮かべた。

それに気づいたつぼみは、どうしたのか問いかけてきた。

「あの、菖さん?どうかしましたか??」

「うん?……いや、俺もそう言えば、クリスマスを友達と過ごすってこと、なかったなぁと思ってさ……」

「「「え?」」」

「……あぁ、そういえば、そうね……」

菖のその意外な一言に、中学生三人組と幼馴染でそれぞれ違う反応を示した。

聞いていいのかどうかわからないため、つぼみといつきは問いかけるべきかどうか迷っていたが、好奇心旺盛なえりかは恐れることなく問いかけてきた。

「え?どして??ゆりさんやもも姉ぇがいるじゃん」

「俺の両親、考古学者で海外を転々としてるだろ?で、必然的に残るのはじぃじと俺の二人。そこまでは大丈夫か?」

「はい」

「でもって、じぃじの仕事は神社の管理」

「……あ、なんとなくわかりました」

要するに、クリスマスとはいえ年末であるため、年始に備えての様々な準備を手伝うことになっているのだ。

そのため、友達とクリスマスを過ごすということが今までできずにいたのだ。

そこまで話すと、菖は暗い笑みを浮かべ。

「ふふふふ……自分たちがクリスマスだイブだって能天気に楽しんでいる裏じゃ、それを支えて、クリスマス(楽しみ)を棒に振って汗水流して働いている人たち(労働者)がいるのさ……それに気づいていない連中は、所詮、企業の思惑に乗せられているだけで信仰心の欠片すらない愚か者(哀れな連中)にすぎないのさ」

菖がぶつぶつと不穏なことを呟いている様子を見て、えりかは自分が聞いてはまずいことを聞いてしまったことに気づき、涙目になりながら、戻ってきて、と叫んでいた。

その様子を見かねたゆりは、ため息をついて、菖の頭に手刀を叩きつけた。

「いい加減になさい。それとも、蠍の一刺しを御所望かしら?」

「……ごめん、謝るから勘弁して」

「わかればよろしい」

ゆりにどつかれて素直に戻った菖は、苦笑しながら返した。

その様子を見ていた三人は、しっかり手綱を握られている、と思ったのだが、自分たちに飛び火することを恐れて、何も言えずにいた。

なお、つぼみだけは、菖とゆりのそんなやりとりを羨ましいと思いながら見ているのだった。

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それからしばらくすると、来客が完全にいなくなると、みずきが店の奥からクリスマスケーキとコーヒーカップを持って来て、休憩にしようと提案してくれた。

その提案に乗り、休憩に入ると、えりかは何気なく店内を見まわした。

「それにしても、すっごい売れたね。ポインセチア……あんなに入荷したのに、もう残りわずかだよ」

「クリスマスの定番の花ですから」

えりかの言葉に、つぼみが微笑みながら返した。

ポインセチアは、赤く大きい、花びらのように広がった葉が特徴的な花で、クリスマスリースに使われることが多い花だ。

なお、ポインセチアの花は赤い葉の中央にある小さな実のような形をしているのだが、それを知っている人はあまり多くはいない。

閑話休題(まぁ、それはそれとして)

ゆりはティーカップを手に、ポインセチアへと視線を向け、優しい笑みを浮かべた。

「花言葉は「祝福」、「聖なる願い」、「私の心は燃えている」……燃えるような赤は、まさに「情熱的な愛」ね」

「情熱的な愛……憧れます……わたしもいつか、素敵な人から心ときめくお花をもらって、情熱的に愛を確かめ合って……」

うっとりしながらゆりの言葉に返すつぼみの脳裏には、このメンバーの中で唯一の異性である菖の笑顔が浮かんでいた。

それがわかっていたゆりは、小さく微笑み、つぼみの耳元でこっそりと告げた。

「菖にはそんなことを期待しないほうがいいわよ?彼、そんな甲斐性はないから」

「なっ?!なんのことでしょうかぁ……??」

視線をゆりからそらしつつ、つぼみはひそひそと返した。

そんな二人の様子を見ながら、えりかはからからと笑っていた。

「まぁまぁ……というか、つぼみ。花屋の娘に花束贈る男なんていないって!」

だからわたしたちが代わりに、とまるで示し合わせたように、えりかたちはつぼみにリボンで装飾された箱を手渡した。

その箱の中身は、貯金箱や菜園セットなど、つぼみが欲しかったものが入っていた。

「わたしが欲しかったものばっかり!みんなで選んでくれたんですね!ありがとう!!」

満面の笑みを浮かべながら、つぼみはみんなにお礼をいった。

その様子に、プレゼントを贈ったえりかたちは微笑みを浮かべた。

だが、ふと、えりかたちの視線は菖の方へと向けられた。

「……菖さん?」

「菖さんの分のプレゼントって……」

「……まさかと思うけれど、用意していない、なんてことはないわよね?」

つぼみの手の中にあるプレゼントは三つ。

そして、この場にいるつぼみの仲間は、四人。

菖の分だけ、プレゼントがないことになる。

だが、菖はいたずら小僧のような笑みを浮かべていた。

「誰も用意してないなんて言ってないぞ?」

そう言って、菖はベルトに取りつけられたポーチから四つの小袋を取りだした。

袋にはそれぞれ、桜、コスモス、向日葵、百合のシールが貼られていた。

「つぼみだけじゃなくて、みんなにも……まぁ、つぼみのはえりかたちと比べたら小さいものになっちゃったけど」

苦笑しながら、菖はプレゼントを手渡した。

袋の中には、手作りの髪留めが入っていた。

「おぉ~!!」

「わぁ!!可愛い!!」

「すごい……これ、手作りですか?!」

「確かに、可愛らしいわね……けど、半人前の半人前、四分の一人前の出来、ってところかしら?」

「ひどい評価だな、それは。店に出すわけでも、まして職人になるわけでもないんだから、それくらいでちょうどいいと思うけど」

ゆりの評価に苦笑を浮かべながら、菖はそう返した。

だが、辛口な評価をしたゆりではあるが、その顔は優しい笑顔が浮かんでいるので、贈り物は気に入ってくれたようだ。

髪飾りはそれぞれ、桜、コスモス、向日葵、百合の装飾が施されていた。

どうやら、つぼみたちがプリキュアに変身したときのイメージに合わせて作ったようだ。

「気に入ってくれたかな?」

「「はい!ありがとうございます!!」」

「大満足っしゅ!!」

「えぇ、とても。ありがとうね、菖」

菖からの贈り物に、四人が笑みを浮かべてお礼を言うと、くすくす、とみずきが微笑んだ。

「よかったわね、つぼみ!男の人から贈り物をもらえ、て……」

そう言いながら、突然、みずきは顔を青くして、その場に座り込んでしまった。

あまりに突然のことに、つぼみと陽一はみずきの名を呼びながら駆け寄った。

ひとまず、病院へ行った方がいいと判断し、陽一は車の助手席にみずきを座らせ、病院へ向かった。

小さくなっていく車を見送りながら、つぼみは祈るように、お母さん、とつぶやいていた。

その様子があまりに痛々しく、菖とゆりはつぼみの肩に触れ、元気づけるように声をかけた。

「きっと大丈夫。だから、今は信じて待とう」

「そうよ。気をしっかり持って……隙を見せないためにも」

誰に、というのは言うまでもない。

こんなときに、じっとしているほど、砂漠の使徒はおとなしくはない。

そして、ゆりのその予感は的中してしまった。

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希望ヶ花市某所。

そこには、ひときわ大きなクリスマスツリーがライトアップされていた。

周囲はカップルや家族連れ、あるいはたくさんの仲間たちでにぎわっていた。

だが、悲劇というのは突然やってくるものだ。

突然、その場を通行していた二人の人間が光に包まれて姿を消した。それからほどなくして、人々の中心にあったクリスマスツリーが、異形の怪物へと姿を変えてしまったのだ。

その怪物の頭上には、クモジャキーとコブラージャの影があった。

「幹部二人の闇の力で生みだしたデザトリアン……確かに、パワーはそれなりぜよ」

「あぁ。だが、問題はプリキュアどもとセイバーに太刀打ちできるかどうか」

「関係ないぜよ!サソリーナの敵討ち、今度こそさせてもらうきん!!」

「……熱いねぇ、君は」

一人で意気込むクモジャキーに、コブラージャは呆れたと言いたそうにため息をついたが、その顔はどこか笑みが浮かんでいるようにも見えた。

 

一方、場所はフラワーショップ。

車で出発したみずきと陽一を見送ったつぼみたちは、閉店準備を終えて、陽一からの連絡を待っていた。

が、ただでさえ、気が滅入っているというときに限って、空気を読まない連中(砂漠の使徒)が騒動を起こすわけで。

「「「「砂漠の使徒ですぅ/ですっ/でしゅっ/だっ!!」」」」

「ちっ!こんな時に……」

「あぁ、もう!ちょっとは空気読めっての!!」

「とにかく行きましょう!薫子さん、留守をお願いします!!」

「わかったわ!みんな、気を付けて!!」

妖精たちの反応に、つぼみたちはデザトリアンが出現した場所へと向かっていった。

が、つぼみの心は依然として不安定なままだった。

そんなつぼみを見かねたシプレは、つぼみの顔に勢いよく張りついた。

「むきゃっ??!!し、シプレ!なにするんですか!!」

「しっかりするです、つぼみ!!つぼみが踏ん張らないで、誰がお父さんとお母さんを守るんですか!!」

「っ!!」

つぼみは目を見開いた。

――そうだ、いまわたしがやらなきゃいけないのはお父さんとお母さんを守ること!こんなところでくじけていられません!!

シプレに励まされ、つぼみの瞳に光が灯った。

どうやら、つぼみの心の迷いが晴れたようだ。そして、先に向かっていた仲間たちは変身アイテムを持ったまま、待っていてくれた。

「いくわよ、つぼみ」

「さっさとクリスマスには場違いなこいつら片付けて、陽一さんたちの帰りを待とう」

「はいっ!!」

ゆりと菖に元気よく返事をすると、つぼみも変身アイテムを取り出した。

そして、全員そろったところで。

「「「「プリキュアの種!いくですぅ/ですっ/でしゅ/ぞ!」」」」

「「「「プリキュア!オープンマイハート!!」」」」

「心力解放!ユグドセイバー、スタートアップ!」

五人そろって、変身した。

「大地に咲く、一輪の花!キュアブロッサム!!」

「海風に揺れる、一輪の花!キュアマリン!!」

「陽の光浴びる、一輪の花!キュアサンシャイン!!」

「月光に冴える、一輪の花!キュアムーンライト!!」

「大樹の騎士!ユグドセイバー!!」

「「「「ハートキャッチ!プリキュア!!」」」」

セイバーを除いた四人は高らかに名乗ると、クリスマスツリーを模したデザトリアンへと向かっていった。

セイバーもエターニアハートを引き抜き、四人のあとに続いた。

「現れたな、プリキュア!そしてセイバー!!」

「今日こそ君たちを倒してあげるよ!!」

「たとえどのような障害があろうと、わたしたちは負けません!!」

シプレには発破をかけられた影響か、ブロッサムがいの一番にデザトリアンへとむかっていった。

だが、デザトリアンはそのブロッサムにむかって吹雪を吐き出した。

もともと、冬に似つかわしくないデザインの衣装であることも手伝ってか、ブロッサムの体はいとも簡単に凍り付いてしまった。

「ぶ、ブロッサム??!!」

「つ、つめたい、です……」

かろうじて口は動くが、ブロッサムは寒さで体が思うように動かず、身を縮みこませて震えていた。

「あのブリザード、厄介ね」

「なら、冷気には炎だ!!」

ムーンライトのつぶやきに、セイバーはエターニアハートを構え、目を閉じた。

その瞬間、セイバーの体は赤い光に包まれ、周囲の雪が溶け始めた。

清浄なる炎(フォエス・ファイアリ)!」

古代語を口にした瞬間、エターニアハートは赤い光をまとい、一振りの剣へと姿を変えた。

いままでのエターニアハートとは違い、白い輝きを放つ、セイバーの身の丈ほどはある長剣がその手にはあった。

よくよく見れば、刀身には炎のような紋様が描かれている。

「……いつも思うけれど、あなたのその剣、ほんとに反則よね」

ムーンライトは半眼でセイバーの方を見ながら、そんなことを口にした。

なにしろ、ムーンライトにしてもブロッサム(後輩)たちにせよ、扱える武器は一つしかない。だが、セイバーは古代語さえ唱えることができれば、エターニアハートを様々な形状に変えることができるのだ。

つまり、扱うことができる武器が実質的にプリキュアよりも多く存在しているということになる。

扱える武器の多さは戦術の幅に直結する。その点において、セイバーはプリキュアよりも戦術の幅が広いということになる。

そこに触れて、ムーンライトは『反則』と呼んでいるのだろう。

そんなムーンライトに、セイバーは苦笑を浮かべた。

「といっても、それなりに負担はあるんだけどな……いくぞ!」

セイバーは炎紋の剣を構え直し、地面を蹴り、デザトリアンとの距離を詰めた。それに続き、ムーンライトとサンシャインも並走した。

マリンは一人だけ氷漬けにされてしまったブロッサムを守るため、すぐ近くで待機していた。

が、デザトリアンの戦闘力はこれまでのものと比べて高くなっているらしく、セイバーとムーンライト、サンシャインの三人が一斉にかかっていっても、なかなか倒れる気配がなかった。

加えて、すでに二人でダークブレスレットの力を使って合体をしていたため、戦いの流れはデザトリアンの側にあった。

「ふんっ!花だ、愛だの浮かれておって!!」

「消えてしまえ!!」

コブラージャとクモジャキーがデザトリアンに合体した状態でそんなことを叫びながら、広場にあったツリーを踏みつぶし始めてた。

ツリーが踏みつぶされる音や、避難している最中だったカップルや通行人の悲鳴が聞こえてくると、ブロッサムの体が震え始めた。

「聖なる夜を、花を、想いを……汚すことは、許しません!!」

ビシッ、ピシッという音を立てながら、ブロッサムは立ち上がり始めた。

「わたしの……わたしの心は、燃えています!!堪忍袋の緒も、切れちゃいます!!」

その雄叫びとともに、ブロッサムの体を拘束していた氷がすべて壊れ、はじけ飛んだ。

「あまり時間をかけていられません!みなさん、ここは"あれ"を使いましょう!!」

「うん!」

「おっしゃ、やるっしゅ!!」

「「了解/よ!」」

戦線復帰したブロッサムが四人にそう告げると、妖精たちはハートキャッチミラージュを呼び出し、パワーアップの種を取りだした。

「「「「鏡よ、鏡!プリキュアに力を!!」」」」

「鏡よ、大樹の騎士に力を!」

五人が一斉にミラージュに祈りをささげると、鏡面から光があふれ、五人を包みこんだ。

その光の中で、五人の衣装は純白のものへと変わっていき、セイバーの手にあった剣は、本来の姿である薄紫の刀身を持つ両刃剣へと変化した。

「「「「世界に輝く、一面の花!ハートキャッチ・プリキュア!スーパーシルエット!!」」」」

「世界を救いへ導く光!ユグドセイバー、レイディアントシルエット!!」

スーパーシルエットとレイディアントシルエット、プリキュアとユグドセイバーの最強シルエットに変身を終えると、ブロッサムたちは自分たちの武器を掲げ、心の花の力を集めた。

その瞬間、四人の背後に白いワンピースをまとった女神が姿を現した。

同時に、セイバーはエターニアハートを構え、デザトリアンに突進していった。

「俺の全てで、悪しきを断つ!!ハートライト・レイクエム!!」

「「「「花よ、咲き誇れ!!プリキュア!ハートキャッチオーケストラ!!」」」」

スーパーシルエットとレイディアントシルエットの必殺技が同時にデザトリアンに向けて放たれ、デザトリアンは浄化された。

早々に決着をつけることができたためか、それからあまり時間を置くことなく、広場は再び賑やかさを取り戻すのだった。

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その後、フラワーショップに戻ってきたつぼみたちは、陽一たちからの連絡を待っていた。

ふと、フラワーショップの前に停車する車の影が見え、つぼみは、陽一たちが帰ってきたのではないか、と思い、店の外へと飛び出した。

するとそこには、つぼみの予想通り、陽一とみずきの姿があった。

「お母さん!!よかった、なんともなかったんですね!!」

何事もなかったかのように笑顔を浮かべているみずきの姿を見たつぼみは、みずきと陽一に抱きついた。

その様子にみずきは、心配かけてごめんね、と謝ってから、笑みを深めた。

「それとつぼみ、うれしいお知らせがもう一つあるのよ?」

「え?」

みずきの言葉に、つぼみはきょとんとしたが、薫子は何かを察したらしく、目を見開いていた。

「あら、もしかして?」

「はい、お義母さん。二人目です!」

二人目、つまり、つぼみに妹か弟ができた、ということだ。

そこまで聞けば、さすがにアホの子という位置づけが定着しつつあるえりかもわかったらしい。

もちろん、えりかがわかったのだから、つぼみがわからないはずがなかった。

「二人、目?……あ、あ、赤ちゃんですね!!」

「やったじゃん、つぼみ!!」

「最高のクリスマスプレゼントだね!!」

「「みずきさん、陽一さん、薫子さん。おめでとうございます」」

驚愕しながらも喜びを隠せないつぼみに、えりかといつきは祝福を贈り、菖とゆりはみずきと陽一を祝福した。

「つぼみ、これからはお姉さんだな」

「頑張ってね?お姉さん」

「はいっ!わたし、頑張ってすてきなお姉さんになります!!」

大好きな二人(菖とゆり)からそう言われたつぼみは、満面の笑みを浮かべながらそう誓うのだった。




あとがき代わりのその後の話(スキット風)

~花咲家からの帰り道~
ゆり「めでたいことよね?新しい家族ができるなんて」
菖「そうだな……やっぱり、ちょっと羨ましかったりするのか?」
ゆり「……羨ましくない、って言ったら嘘になるけれど……」
菖「けれど?」
ゆり「つぼみもえりかもいつきも、わたしにとっては妹のようなものよ?あの子たちが笑顔なら、わたしはそれで十分」
菖「ははは。頑張れ、お姉さん」
ゆり「あら?それを言ったら、あなたはお兄さんじゃないかしら?」
菖「……それもそうだな」
ゆり「うふふ♪失念してたわね」
菖「否定はしません……あ、ちょっといいか?」
ゆり「ん?構わないけれど、どうしたの?」
菖「いやさ……ほれ」
ゆり「……ホットコーヒー?」
菖「ちょっとドタバタしてたからさ、ちゃんとできてないだろ?お決まりの」
ゆり「……それもそうね。フライングだって、えりかに怒られそうだけれど」
菖「言いかねないな……なら、二人の秘密」
ゆり「……えぇ、構わないわ♪」
菖「それじゃ」
ゆり「えぇ」
菖、ゆり「「メリークリスマス」」(カツンッ

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