ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
変わり目、ということもありますけど、みなさん、油断なされないように……かくいう私も下手したら風邪引きさんになりそうですけど(--;
というわけで、今回は菖に風邪を引いてもらいます。
タイトルには「みんなで」ってありますけど、あくまでもハートキャッチ組のみんなで、って意味ですのでご容赦を。
要望によってはゆりさんやつぼみにも風邪を引いてもらうかもしれないです。そうなったら、どっちかがヒロインかくて……え、ちょ、ちょっと待って?お、おおおおお落ち着いて、ね??そんなことしたってなんのかいk……うわあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
ムーンライト「さてと、それじゃ」
ブロッサム「本編、どうぞ!!」
その日、菖は部屋の布団の中でおとなしく眠っていた。
時刻はすでに十時を超えている。もう学校へ行っていなくてはいけないのだが。
「……げほっ……うぅ~……」
菖は風邪を引いてしまっていたようだ。
別に夜遅くまで薄着でいたわけでも、滝行をして体を冷やしてしまったわけでもない。
少し暖かいから、と油断してしまい、寝間着を一枚、少なくしていたため、体を冷やしてしまったのだ。
そこに加えて、ここ最近は研究書を読むことに没頭してしまっていたことで、知らず知らずのうちに疲労が蓄積していたようだ。
――季節の変わり目とはいえ……これはちときついなぁ……
心中でそうつぶやきながら、菖の意識は再びまどろみの中へと落ちていった。
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その頃、明堂学園では。
「え?菖くんが風邪??」
「えぇ……珍しいこともあるものね」
ゆりがももかに菖が欠席となった理由を話していた。
「ふ~ん……なんとかは風邪引かないっていうのにね」
「……それだと、菖がそのなんとかに当てはまるような言い方ね」
「だってそうでしょ?少なくとも歴史に関しては」
あっけらかんとした態度でももかが返してきた言葉に、ゆりは、そうだった、と顔を覆ってうつむいた。
それはそうと、と、ももかはゆりに問いかけた。
「どうするの?」
「何が?」
「菖くんのお見舞い」
何を聞いているのやら、とでも言っているかのようにため息をつき、ももかはゆりの問いかけに返した。
だが、それこそ愚問というもので。
「当然、行くに決まってるでしょ」
「んじゃ、わたしも行く~♪」
ゆりの返しに、ももかはにっこりと笑いながら答えた。
その答えに、ゆりは怪訝な顔をした。
「あら?行っても菖はかまってくれないわよ?」
「チッチッチッ!重要なのは、菖くんにかまってもらうことじゃないんだな~」
「……なら、何が目的なのよ?」
「ゆりが菖くんの寝込みを襲わないように見張るのよ♪」
その一言に、ゆりは顔面を真っ赤に染めた。
「ふ、ふざけないで!」
「わ~い!ゆりが怒った~♪」
微笑みを浮かべながら、ももかはゆりから逃げていき、ゆりはその後ろを追いかけていった。
その珍しい光景は、しばらく学校中で話題になったとかならなかったとか。
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放課後。
ゆりはももか、えりか、つぼみ、いつきの四人と一緒に菖の家に来ていた。
つぼみたち中学生組は、どこで聞きつけたのか、菖が風邪を引いたと知り、お見舞いに行く予定だったらしく、菖の負担になるから、とゆりとつぼみの提案で一緒に行くことになったのだ。
なお、ゆりの手には黄桃の缶詰が入った袋が、つぼみの手にはレトルトのおかゆとスポーツドリンクが入った袋があった。
どうやら、見舞いの品のようだ。
「にしても、菖さんが風邪引いたなんて……ちょっと意外っしゅ!」
「そうだね……もしかして、頼まれごとを断り切れなくて無理しちゃったのかな?」
お人よしが服を着て歩いていると言われているほど、人がいい菖は、二つのあだ名を持っている。
一つは、彼の趣味にあやかり、有名なハリウッドのアクション映画「インディ○・ジョーンズ」から、「明堂学園のインディ○・ジョーンズ」。そしてもう一つは、頼まれ事は断らないことから、「断れない男」である。
おそらく、風邪を引いたということは、後者のあだ名が災いしたのではないか。いつきはそう推測しているのだ。
もっとも、それはゆりとももかに否定された。
なぜなら。
「菖は自己管理ができないほど馬鹿じゃないわ」
「体調をが悪い時は、また今度にしてくれって必ず言うもんね」
そう、どこかの生徒会長や男装の麗人のように、菖は体調が悪い時でも人助けをしようとするほど人がいいわけではない。
むしろ、そのせいで体調を悪化させて、迷惑をかけることが嫌なので、自己管理はしっかりと行っている。
そのため、付き合いの長いゆりは、大方の予想がついていた。
「たぶん、季節の変わり目だから油断したんじゃないかしら?ここ最近、暖かいことも多かったし」
「な、なるほど……」
「まぁ、そのあたりは菖さんに直接聞いてみるっしゅ!!」
会話をしながら歩いていると、いつの間にか、菖の家の前に到着していた。
勝手知ったる人の家状態であるゆりは、何の断りもなく玄関を開けて、菖の名前を呼んだ。
「菖?どうせ、起きてるんでしょ?入るわね」
「ちょっ?!ゆりさん??!!」
「勝手に上がっちゃって大丈夫なんですか??!!」
ゆりの突然の行動に、えりかとつぼみが驚愕の声を上げたが、奥の方から弱弱しくはあるが菖の声が聞こえてきた。
「大丈夫~……上がってどうぞ~……」
一応、菖の許可を得たため、ゆりたちは遠慮なく菖の家に入っていき、菖の声が聞こえてきた方へ向かっていった。
「……けほっ……よ、揃い踏みのようで……けほっけほっ……」
「こ、こんにちは……じゃなくて!何やってるんですか菖さん!!病人はおとなしく寝ていてください!!」
「病人ってほど大げさじゃないよ。熱も下がったし、朝から何も食べてないから腹減って腹減って」
よく見れば、菖の手もとには果物ナイフと皮がむかれているリンゴがあった。
「……なら、それはわたしがやっておくから、あなたは寝ていなさい」
「いや、けど……」
「寝ていなさい」
「だから……」
「寝・て・い・な・さ・い!」
「……はい」
ゆりが威圧感をたっぷり漂わせて菖に詰め寄ると、菖はとうとう折れた。
蚊帳の外に置かれてしまっていたつぼみたちはその時のゆりを、まるで般若になったようだ、とのちに語っていた。
あとがき代わりの後日談(スキット風)
~翌日の通学路~
ゆり「……おはよう、菖」
菖「おはよう。昨日はありがとうな」
つぼみ「おはようございます!」
えりか「お!菖さん復活っしゅ!!」
いつき「おはようございます、菖さん、ゆりさん」
菖「おはよう、昨日はみんなありがとう」
つぼみ「いえ、普段お世話になってますから!」
えりか「そうそう!こういう時こそ助け合いっしゅ!」
ゆり「えりかの場合、何か企んでいるようにも思えるのだけれどね」
いつき「あはははは……」
菖「ははは……なら、今度お礼にごちそうするかなぁ」
えりか「おぉっ!高級満漢全席!!」
つぼみ、いつき「「調子に乗らない!」」
ゆり「えりか、あなたは菖から風邪のウィルスをもらった方がよかったんじゃないかしら?」
えりか「……冗談だから、本気にしないでください……」
菖「はははは……平和だなぁ……」