ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
思案中とかいうけど、もう加えちゃおうかなってわりと本気で思っていたりいなかったり……というか、作者の意思はこの話を読んでいただければお察しいただけるかと(-ω-;
まぁ、そんなことはどうでもいい
本編どうぞ
幻影帝国を倒し、地球の神を自称していたブルーと、かつてブルーと共に戦った最初のプリキュアであり幻影帝国の元首あったキュアミラージュが、すべての元凶であった地球の兄弟星、惑星レッドへと向かってから数週間。
戦う必要があまりなくなったハピネスチャージ組だったが、いおなは鍛錬を続けていた。
理由としては、単純に憧れである姉、まりあに一歩でも近づきたいがためだった。
だがここ最近になって、いおなは氷川道場での稽古だけで強くなることは難しいのではないか、と感じるようになっていた。
――お姉ちゃんの強さに追い付くには、どうしたらいいんだろう……
それを考えながら、いおなは空手の型をなぞっていた。
強くなるのに一番手っ取り早い方法は、実戦経験を積むこと。
となると、他流試合ということになるのだが、個人的事情で他流試合をしてくれる道場はあっただろうか。
そこまで思い至ると、一人の青年の顔が浮かんできた。
「……そうか、菖さんに稽古をつけてもらえばいいんだ!」
口にしたのは、ハピネスチャージ組だけではなく、自分たちにとって頼れる兄貴分であり、一部では恋心を抱く相手である光の戦士の名前だった。
以前、幻影帝国の攻撃が続いていた時に、稽古をつけてもらった経験から、もしかしたら、と思い至ったようだ。
善は急げ、とばかりに、いおなは次の休みに希望ヶ花市へ向かう計画を立てた。
むろん、突撃訪問などという無礼な真似はせず、ちゃんと菖の都合を聞くことは忘れていなかった。
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次の休みの日。
いおなは一人、希望ヶ花市に来ていた。
理由は言わずもがな、菖に稽古をつけてもらうためだ。
「すぅ……はぁ……たのもーっ!!」
「いや、そんな気合い入れなくていいから」
「す、すみません、つい……」
春川家の玄関で、いおなが道場破りにでも来たのか、と突っ込まれそうな勢いで声を上げ、それに対して菖が半ばあきれ顔になっていた。
突っ込まれたいおなは顔を赤くしてうつむいてしまった。
苦笑を浮かべながら、菖はいおなの頭をなでて、上がっていいよ、といおなを招き入れた。
一方、頭をなでられたいおなは。
――あ、あ、あ……頭、なでなで、された……
久方ぶりに異性から頭をなでられたことに、若干、いや、かなり混乱してしまい、少しの間、その場でフリーズしていた。
なお、少し遅れてやってきたゆりとつぼみに声をかけられて、ようやくいおなのフリーズは解除されたのであった。
玄関からリビングに三人がやってくると、テーブルには四人分のティーカップが置かれていた。
どうやら、菖が用意してくれていたらしい。
一刻も早く稽古をつけてほしいいおなだったが、せっかくの厚意をむげにはできないため、ひとまず、お茶をいただくことにした。
「……あ、おいしい……」
「ふふふ、今日もいい腕ね」
「はい、とても和みます」
「おほめにあずかり光栄……さてと、それじゃ、いおな。お茶を飲んだら始めようか」
「は、はい!!」
謎の緊張感を覚え、答えながら、いおなはティーカップを手に取り、中に注がれていたお茶に口をつけた。
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お茶会が終了して、いおなは菖とともに春川家の裏にある道場にいた。
道場といっても、ちゃんとした建物ではない。
芝生や雑草に覆われ、極力、石が取り除かれているだけの庭のような場所だった。
その光景に、いおなは唖然とした。
「こ、ここが?てっきり道場があるものかと……」
「逆に、泉地流は道場の中だと危ないことがあるんだ。壁があったりすると特に、ね」
忘れがち、というよりも、目をそらしていることではあるが、武道とその大元となった武術は、元々は効率よく命を刈り取るための技術だ。
故に、柔道の投げ技や絞め技には、一つ違えれば相手の命を奪いかねない危険な所作も存在している。
その意味で、現代の武道は非常に
一方、泉地流はそういった
だからこそ、実戦でも活きる強さがあり、海外の遺跡探検で荒くれ者たちに襲われても無事に帰還することができている。
「……あ、あの、大丈夫、なんですか?」
「大丈夫、ある程度なら手加減するし、板張りの床よりもずっと柔らかいからね、ここの地面は」
「い、言われてみれば……」
はだしの状態で、いおなは足踏みすると、多少、ちくちくするがそれでも菖の言う通り、板張りの床よりも柔らかい感触をあった。
これなら確かに、よほどのことがない限り、大怪我をすることはないだろう。
「んじゃ、軽く準備運動してから始めようか」
「押忍っ!」
その言葉に、両手の拳を握り、腰に添えるようにして引き寄せ、いおなは一礼した。
もっとも、この時のいおなは菖の意外な一面を目の当たりにすることになるとは、思ってもみなかった。
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一方、遊びに来ていたゆりとつぼみは、包帯や湿布薬を用意していた。
用意しているつぼみの顔は、若干、何かを心配しているようだった。
「あ、あの、ゆりさん」
「何かしら?」
「いおなさん、大丈夫でしょうか?」
何が、というのは聞かずともわかる。
慣れない環境、慣れない場所、何より、慣れない相手との一対一での実戦稽古だ。
怪我もそうだが、精神的に追い詰められるようなことはないか。
つぼみはそれを心配していた。
「大丈夫だと思うわよ?」
「相手が菖さんだから、ですか?」
「それもあるけれど、なによりいおなはまりあさんを目指しているんだもの。ここで折れたら女が廃る、とか思うんじゃないかしら?」
「……あの、それは響のセリフかと……」
つぼみは、ゆりの言葉に苦笑を浮かべながらそう返したが、心中では、なるほど一理ある、とも思っていた。
ハピネスチャージ組のなかでも、いおなはかなりの努力家でしっかり者だ。それだけでなく、頑固な一面もあり、ブルーから恋愛禁止令を出されていても、納得いかないことには従いたくない、と反発していた。
それくらい頑固な部分があるのなら、何かをつかむまでは菖に食らいつくだろう。
そしてなにより。
「最近、いおなの菖を見る目がなんとなく、つぼみに似ている気がするのよね」
「わ、わたしにですか?!」
「もっと言うと、ひかりと舞も同じかしら?」
自分やひかり、舞と同じ目、ということが何を意味しているのか、つぼみはすぐに察した。
ゆりも同じことなのだが、要するに、恋する乙女の視線、と言いたいわけだ。
菖も朴念仁、もとい朴念神というわけではないし、ゆりたちが自分に向けている感情をわかっていないわけではない。
が、趣味が趣味なので、万が一、ということがある。
その結果、自分たちを悲しませたくない、という優しさから、敢えて朴念仁のふりをしているというのは、公然の秘密だ。
かといって、このままの距離で満足するようなつぼみたちではない。
「……今度、ひかりと舞といおなも巻き込んでお茶会しませんか?」
「あら、お茶会という名の作戦会議ね?いいわよ」
単語だけならば女子会のような雰囲気なのだが、二人そろってメガネを光らせていたため、パートナー妖精たちはそのお茶会がただの女子会ではないことをすぐに察した。
察したのだが、そこに突っ込むほどの勇気はない。
沈黙は金、とばかりに二人は黙ってその様子を見守るにとどめた。
それから数十分して、菖とボロボロになったいおなが戻ってきたため、呆れ笑いを浮かべながら、治療したことは言うまでもない。
なお、その間のいおなは、ゆりの予想通り、何度倒されようともあきらめずに菖に向かっていったが、一撃を当てるどころかかすらせることもできなかったことに、ふくれっ面を浮かべていた。
「ははは、けど慣れない場所でよくここまでやれたと思うよ、俺は」
「けど一発も当てられてないです!菖さん、休憩が終わったらもう一本お願いします!」
ここまでくると頑固というよりもはや意地っ張りだ。
菖はいおなの頭に手を置いて、優しくなでながら諭すように語り掛けた。
「焦ってもいいことないぞ?特にこういうのは一歩一歩をしっかり踏みしめないと、あとが大変なことになるからな」
「うぅ……」
「さっきの試合だって、前の時と比べたら格段に良くなってるんだ。いおなはまだまだこれからなんだから、あせらずじっくりやればいい」
「……はい……」
頭をなでられながら、いおなは顔を少し赤らめ、素直にうなずいた。
わかればよし、と菖はいおなの頭から手を放し、台所の方へと向かっていった。
いおなは、なでられた部分に手を添えながら、少しばかりだらしない微笑みを浮かべていたのだが、それに気づいたものはいなかった。
あとがき代わりのおまけの話(スキット風)
~いおなの変化~
いおな「……ふふふ……えへへへ……」(///▽///♪
つぼみ「い、いおなの顔がだらしなくなってます……」( Д ;
ゆり「これはもう確定ね……まさかいおなも菖の虜になるなんて……」
つぼみ「ゆりさん、これはお茶会決行ですね!」
ゆり「えぇ……菖に恋する乙女がどれほど強いか、思い知らせてやりましょう」
~無自覚?~
(ぴかりヶ丘、ブルースカイ王国大使館)
ゆうこ「へ~……だから一人で菖さんのところに?」
いおな「えぇ。それだけよ」
まりあ「うふふ、本当にそれだけかしら?いおな」
いおな「へ?」
まりあ「だって時々頭、触って"えへへ~"なんてだらしない笑顔を浮かべてたじゃない」
いおな「そうだった?」
まりあ「えぇ♪」
ゆうこ「(……ねぇ、ぐらさん。もしかしてだけど)」
ぐらさん「(もしかするかもだけど、いまはそっとしとこうぜ。いおなが自覚したらどうなるか、そっちのが見ものだ)」
ゆうこ「(むふふ、ぐらさんは悪ですのぉ)」(-言-
ぐらさん「(ゆうこほどじゃないぜ)」(-言-
ゆうこ、ぐらさん「「ふふうふふふふふふ……」」