ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
いよいよア・ラ・モード、映画公開ですねぇ……スイーツがテーマだからしゃあなしですけど、ハートキャッチの舞台再びとは……
まぁ、見に行けるかどうかわからんのですけどね(苦笑
ある日、菖は夕凪市に来ていた。
夕凪市周辺の遺跡はほぼ調べつくしてしまったのだが、両親からその遺跡についての資料と写真、そして名物である「大空の樹」がある森の写真を撮ってきてほしいと頼まれ、こうして再び夕凪市を訪れたのだ。
現在、遺跡の写真はすべて撮影を終わらせ、残るは大空の樹とその森の様子を写真に収めるだけだった。
それだけだったんだけどな、と大空の樹の根っこに腰かけ、心中でつぶやき、菖は文庫本を手にしながら、自分の膝の方へ視線を移した。
そこにはいつのまにか眠っている舞の愛らしい寝顔があった。
なぜ、菖がこのようなうらやま……もとい、珍しい状況になってしまったのか、それは時計を少し巻き戻す必要がある。
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~三十分ほど前~
菖は両親からの頼まれごとで、大空の樹がある森へと来ていた。
森の木々は、まるで菖を歓迎するかのように優しい風をさわさわと森中に吹かせていた。
菖もこの森の木々にもう一度会えたことがうれしいのか、にっこりと微笑みを浮かべ、大樹のもとへと向かっていった。
歩くこと数分。
菖は無事に大空の樹のもとへたどり着くことができたのだが、そこにはすでに先客がいた。
大空の樹の根元に腰かけ、スケッチをしているポニーテールをしたつり眼の少女。
その姿が舞のものであることは、菖はすぐに認識できた。
「お~い、舞~」
「……え?……しょ、菖さん??!!な、なんでここに??!!というか、いつから??!!」
「両親からこの大空の樹とこの森の写真を撮ってきてほしいって頼まれてね。ここに来たのはついさっき」
顔を真っ赤にしながら問いかけてくる舞に、菖は淡々と返して、そういう舞は、と逆に問い返した。
「わ、わたしはいつも通り、絵を描きに……ね、チョッピ?」
あたふたしながら舞が
が、すぐに大きなあくびをして、そのままうつらうつらと眠ってしまった。
「ははは、気持ち良くて寝ちゃったのか」
「……みたいです。ごめんなさい、なんだか」
「気にしない気にしない……ここはそれだけ、優しい場所ってことなんだからさ」
謝罪する舞に、菖は微笑みながら返し、隣に座ってもいいか問いかけた。
舞はすぐにうなずき、少し体を動かし、スペースをつくった。
「ありがとう」
「い、いえ……けど、森の写真も撮ってきてほしいなんて、変わったこと頼むんですね」
「たぶん、日本に生息している樹木が恋しくなってるんじゃないかな?いま、二人ともアフリカの砂漠地帯にいるみたいだから」
「へ、へぇ……」
菖の両親が考古学者で、世界中あちこち飛び回っていることはすでに知っているのだが、まさかアフリカまで行っているとは、さすがの舞も想像できなかったようだ。
そうこうしている間に、菖はデジカメを取りだして、大空の樹の根元からの風景を次々に写真に収めていった。
――さてと、森の様子はだいたいこんな感じで大丈夫かな……あとは、大空の樹の写真を
と思った瞬間、菖の肩に重みがのしかかってきた。
まさか、と思い、ゆっくりと肩の方へ視線をむけると、そこには可愛らしい寝顔で静かに寝息を立てている舞の姿があった。
――よっぽど疲れてたんだろうな……ん~、けどこのままここに置き去りってのも薄情だし、どうしたもんかなぁ……
眠っている舞を放っておくわけにもいかず、かといって起こすのも可愛そうだと思っている菖は、ひとまず、舞の頭を肩から自分の膝に移し、なるべく舞が起きないように気遣いながら、持ってきていた文庫本を取り出し、眠り姫が起きるまで読書にいそしむことにした。
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そして現在。
あれから舞が目を覚ます様子はなく、かといって、持ってきた文庫本は読み終えてしまったため、さて、どうしたものかと思案していると。
「……ん……あれ?わたし……」
「おはよう、眠り姫」
舞が目を覚まし、寝ぼけ眼であたりを見まわす姿を眺めながら、菖が口を開いた。
「……え?……えぇっ??!!しょ、菖さん??!!」
「おいおい、寝ぼけてるのか?さっきから一緒にいただろ」
「……あっ!そうだった、わたしいつの間にか寝ちゃって……ご、ごめんなさい!!」
「別に謝ることないよ。寝てる女の子を一人にしておくわけにいかないからな」
慌てふためいている舞の様子に苦笑を浮かべていると、舞は顔を真っ赤にしてうつむき、ありがとうございます、と小さくつぶやいた。
「ははは。それよか、舞」
「は、はい!」
「俺の両親に送る写真を撮りたいんだけど、スケッチ、続ける?もしかしたら写っちゃうかもだけど」
さすがに、人が写りこんでしまう可能性がある以上、事前に言っておく必要があると判断したのか、菖は舞にそう頼んできた。
舞はその頼みに微笑みながら、大丈夫ですよ、と返した。
「ありがとう。それじゃ、ちょっと失礼するよ」
菖は舞にお礼を言って、デジカメを手に立ち上がり、大空の樹から少し距離を取った。
そんな菖の様子を眺めながら、舞はスケッチブックにペンを走らせ、スケッチを再開した。
ふと、舞は自分が眠っている間のことを思い出した。
――そういえば、寝ちゃってた間、なんだかあったかい感じがしたような……あったかい?……ま、まさかわたし、菖さんに膝枕してもらってたの??!!
そう推測した瞬間、舞は首筋まで真っ赤になってしまった。
その様子に気づいたチョッピは、心配そうに舞の顔をのぞき込んできた。
「舞、大丈夫チョピ?顔が真っ赤チョピ」
「だ、大丈夫よ、チョッピ……」
口では大丈夫と返したが、本当のところはあまり大丈夫ではない。
あまりの照れくささで、菖の顔をまともに見ることができないどころか、いまなら菖のことが話題に上がった瞬間、顔が真っ赤になってしまうという謎の確信が舞にはあった。
もっとも、そうさせてしまった本人はまったく気づくことなく、写真撮影に没頭するのだった。
あとがき代わりの後日談(スキット風)
~『PANPAKAパン』にて~
咲「そういえば、舞」
舞「何?咲」
咲「最近、菖さんのことが話題になるとすぐ顔真っ赤になるけど、なにかあった?」
舞「な、なななな何もない!!何もないわよ!!」Σ(///□///
咲「ふ~ん?」(・∀・
満、薫「「ほんとに~?」」(・∀・
舞「も、もう!!ほんとに何にもないったら!!……ただ、ちょっと膝枕してもらっただけで……」
咲、満、薫「「「ほぉほぉ、菖さんに膝枕を」」」(・∀・
舞「はっ!!……はうぅぅぅぅぅぅぅぅ」(/// ///
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菖「へっくしっ!!」
ゆり「あら、どうしたの?菖」
ももか「風邪?」
菖「いんや……この感じ、誰か噂してるな……」