ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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もはや、タイトルは適当です。
今回はリクエストに応じて、リコパパことリアン氏と菖のお話。
といっても、菖がリアンと接触したときのエピソードってだけですが。
なお、今回のあとがき代わりのスキットは後日改めて執筆します。
……だって、浮かばなかったんだもの(´・ω・`)

2017/8/11 あとがき追記


えぇっ?!菖さん、リコのお父さんを知ってたの??!!

その日、菖はリコの誕生日パーティーに招かれ、四葉グループのホテルに来ていた。

パーティーと言っても、公式のものではないし、身内(オールスターズ)だけで執り行うため、フォーマルな格好をする必要はなかった。

が、それでもやはりパーティーなので、いつもの青いシャツの上に、紺色のジャケットを着ていた。

なお、ゆりたちも同じようなもので、フォーマルドレスではないが、少し上品な格好になっていた。

「それでは、ちょっと早いけど!」

「リコ!!」

「誕生日!!」

『おめでとう~~~~!!』

リコ以外の面々からの祝福の言葉と同時に、クラッカーが鳴り響いた。

祝福されたリコは、少しばかり照れたように顔を伏せて、ありがとう、とか細い声で返した。

そこからは無礼講となり、みんなそれぞれに別れて談笑を始めた。

菖は出された料理に舌つづみを打ちながら、寄ってきたことはとみらいの相手をしていた。

「はーっ!菖お兄ちゃん、久しぶり~っ!」

「菖さん、お久しぶりです!!」

「うん、二人とも久しぶり」

元気いっぱいに挨拶してくる二人に、菖は微笑みながら返した。

少しの間、二人と談笑しているとみらいが、そういえば、と思い出したように問いかけてきた。

「菖さんって世界中にある遺跡を探検したことがあるんですよね?」

「世界中ってわけでもないけど、海外の遺跡も見てきたことはあるよ」

「それじゃ、もしかしてリアンさん……リコのお父さんに会ったことありますか?!」

「……へ?リコのお父さんって、魔法(マホウ)界にいるんじゃ……」

みらいからの突然の質問に、菖は目を丸くした。

「実は、校長先生の依頼で、ナシマホウ界(こっちの世界)にあるプリキュアに関する遺跡を調査してたんです」

「……もしかして、モノクルをかけた口ひげがダンディな人?」

「「はい!」」

菖は「プリキュア」という自分たちにとってのキーワードから、一人の男性を思い出し、みらいに確認した。

案の定、みらいとことはは満面の笑みを浮かべてうなずいて返してきた。

「……あるな、確実に」

「その話、本当ですか?!」

まさかの菖の返答に、みらいは目を丸くした。

その反応を無視して、菖はリアン氏との出会いを語り始めた。

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それは、菖とゆりがユグドセイバーとキュアムーンライトとして復活するより少し前のことだ。

コロンを失って以来、菖はどうにかしてコロンを蘇らせることができないか、プリキュアのパートナーとなった妖精について何かわからないか、必死に考えていた。

そのとき、ふと、「Precure」とアルファベットに似ている古代文字が記された石碑のことを思い出し、もしや、そこに何かのヒントがあるのではないかと思い至り、世界各地の遺跡を巡ろうと決意した。

むろん、普段は自分が今まで集めた資料での検証や、心の大樹の力を借りての実地調査を行う必要があったのだが、基本的には長期休みに両親の調査に同行する形をとっていた。

その日、菖は両親とともに砂漠地帯にある遺跡に来ていた。

だが、菖はいま、両親がいる場所から少し離れた場所にある壁画の前にいた。

――まただ……この壁画にも「Precure」とも読める文字が書かれてる……それに、この配列、やっぱりローマ字に似てる

以前にも、菖はアルファベットに似ている文字が刻まれた壁画や石碑を見かけたことがあった。

そして、そこには必ずローマ字と思われる配列がされた文字や「Precure」とも読める文字列が存在していた。

そこか考えられるのは、いままで見てきたそれらの遺跡はすべて一つの文明とつながっているということだ。

だが。

――けど、ここにある遺跡と前に見た遺跡は海を隔てたうえに、かなり離れた場所にある……この遺跡の時期から考えても、航行技術があったとも思えない

今でこそ、世界中を飛行機で行き来することができるが、科学技術が発達する以前の人間の移動手段はごく限られていた。

その中には船舶での移動も含まれている。

だが、現代ならばともかく、古代では船の旅というのは、死と隣り合わせの危険なものだった。

そして、現代ならばともかく、古代の船旅はかなりの時間を有するものだ。

それこそ、年単位という長い時間だ。

加えて、この地域と菖が発見した遺跡があった地域の間に交流があったという歴史的証拠は存在しない。

だというのに、まるで昔から交流があったかのように、この文字が存在しているのだ。

「……う~ん?これはいったいどういう……」

「おぉ、ここにも……うん?君は??」

ぼそぼそとつぶやいていると、背後からモノクルをかけた青い髪の男性が声をかけてきた。

菖は一度振り向いて会釈はしたが、すぐに壁画の方へ向き直った。

だが、男性の口から出てきた言葉に、菖は再び男性の方へ向き直ることになった。

「……もしや、君もこの文字が読めるのかい?」

「読めるかどうか、といわれても……アルファベットに似ているし、配列がローマ字だから、なんとなくは読めるんですが、本当にそれが合っているかどうかなんて俺には……」

「ふむ、そうか……ひとまず、ここは私が調べるので、君はあちらの方を」

「いえ。俺も同行させてください。この文字は俺も何度か見たことがあるんで、気になっていたんです」

菖は男性をまっすぐ見てそう返した。

何か、この壁画に関して隠したいことが、この男にあるのかもしれないということは、さきほどからのやりとりで察していた。

だが、だからといって、引き下がるわけにはいかない。

もし、菖の予想が正しければ、この壁画に記されているものは、自分とも関わるものだ。

ならば、関わらない理由がない。

「……わかった。ただ、これから起こることは他言無用で願うよ」

「無論です」

菖の瞳に根負けした男は、そっとため息をついて、同席を許可した。

同時に、菖は男が他言無用と言ったわけを理解した。

「キュアップ・ラパパ!メモ!」

突然、男は杖のようなものを取りだして、突然、奇妙な言葉を口にした。

その瞬間、男の目の前にメモ帳と羽ペンが出現し、さらさらとひとりでにメモを取り始めた。

その光景に、菖は目を丸くした。

いわゆる、視える体質であるため、大抵のことには動揺しない自信がある菖であるが、さすがに「魔法」や「魔術」と呼ばれる類のものをお目にかけたことはない。

「……まさか、魔法、ですか?」

「うむ……まぁ、だから他言無用で願いたい」

「えぇ、それはいいんですが……一つ、聞いても?」

「何かね?」

壁画の方から視線をそらすことなく、男は菖の問いかけに応えた。

菖はその態度を気にすることなく、男に問いかけ続けた。

「壁画にある文字の一節、もしかしてこれは「プリキュア」と読むんじゃないですか?」

「……っ??!!」

菖の問いかけに、男は目を白黒させた。

その眼はまるで、なぜその言葉を知っている、とでも問いかけたそうだった。

その表情を見て、菖はようやく、自分の願いを叶える手がかりを得た、と思った。

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それから少しして、日陰になっている部分で男と菖は「Precure」と記された石碑や壁画についての議論を始めた。

菖が期待していたプリキュアのパートナーについての情報は一切得ることはできず、結局、なぜ、あの壁画に「Precure」と書かれていたのか、そして、それらが世界各地に散らばっているのはなぜなのか。

謎が深まるばかりだった。

だが、収穫がなかったわけでもない。

「ふむ……なるほど。つまり、君がプリキュアの存在を知っているのは、四百年前から続いている戦いのただなかにいて、プリキュアの隣で戦っていたから、なんだね?」

「はい。けど、俺が知っている伝承とかなりのずれがあるんです」

「数千年以上の差がある、という点だね」

「えぇ」

菖が知る限り、プリキュアが初めて登場したのは四百年前。

だが、目の前にある壁画や以前に発見した石碑は、紀元前のものだ。

周囲の遺跡の年代から、それは間違いない。

「……推察するに、プリキュアが誕生したのは四百年前であり、それ以前からプリキュアという言葉自体(・・・・)は存在していた、というところではないかな?」

「ということは、プリキュア、というのはあくまで概念的なものであった、というですか?」

「そう考えるのが自然だろう」

菖と男は長い時間、この謎の石碑や壁画に記された文字列について議論を交わし合った。

この議論は、菖にとってとても有意義なものとなった。

なにせ、長年の間、気にかかっていた文字列が魔法文字と呼ばれるものであり、アルファベットと同じ扱いであることがわかったのだ。

これだけで、今まで見つけた石碑や壁画に記された文字を日本語に翻訳することが出来る。

むろん、そこから解釈をしていかなければならないのだが、菖にとって、まず翻訳することが第一だった。

だが、時間は有限であるため、長い間議論を交わしていると。

「……む。いかんな、すっかり日が暮れてしまった」

「わ、ほんとだ……すみません、長々と」

「いやなに、私も有意義な時間を過ごさせてもらったよ。ありがとう」

謝罪する菖に、男は笑顔を向けて握手を求めた。

菖は右手をぬぐい、男と握手を交わし、その場を離れていった。

それ以後、菖はその男と会うことはなかった。

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「これが、俺とその考古学者さんの話だ」

菖が話し終わると、みらいとことはは苦笑を浮かべていた。

どうやら、時間を忘れるほど議論を交わしていたことに呆れてしまったらしい。

もっとも、菖の遺跡好きと考古学への情熱はプリキュアたちはすでに知っていることだし、自分たちも菖と同じく、それだけ熱い情熱を傾けることができるものがあるので、あまりとやかく言うことはないのだが。

「みらい、はーちゃん。どうしたのよ?菖さんと随分話し込んでたみたいだけど」

「あ、リコ。実は、菖さんにリアンさんと会ったことがないか聞いてたの」

オールスターズのメンバーとの話が一段落したのか、リコがみらいたちのもとへとやってきて、不思議そうに首を傾げていた。

みらいが事情を説明すると。

「あぁ……お父様が話していた若い考古学者さんって、やっぱり菖さんのことだったんだ……」

どうやら、リコもリアンから菖のことを聞いていたらしい。

「リコ、リアンさんは菖お兄ちゃんのことなんて言ってたの?」

「わたしたちとあまり年は離れてないのに、熱心な若者だったって言ってたわ。ナシマホウ界の人間でなかったら、ぜひとも弟子にしたかった、って言って残念がってたわ」

「ははは……光栄だけど、俺は師事したい人がいるから、誘われても断ったと思うよ」

菖はリコの言葉に、申し訳なさそうな笑みを浮かべて、そう返した。

その反応に、リコは目を丸くして、なぜなのか問いかけた。

「そうなんですか?」

「あぁ……恩義を感じてないわけじゃないんだ。リアンさんの紹介で、俺はある魔法使いにコロンを蘇らせる方法を教えてもらうことができたんだ。といっても、世界の理をゆがめることはできないから、黄泉返りっていうのとは違うけど」

忘れがちだが、コロンはプリキュアのパートナーとなる妖精の中で唯一、死を経験している。

いまは実体を持って行動しているが、それは菖がリアンに紹介してもらった魔法使いに、その方法を教えてもらったからだ。

死んではいないが、生きているわけでもない。

そんな中途半端な存在が、今のコロンというわけだ。

「へぇ……会ってみたいわね、その人」

「ははは……」

リコの反応に、菖は苦笑を浮かべながら、心のうちで、無理だろうな、と思っていた。

その魔法使いは菖と同い年であるにも関わらず、なぜか人間を毛嫌いし、嫌悪感すら抱いているような印象を受けた。

菖がリアンと同じ、特殊な人間であることを知ると、ややその態度は軟化したのだが。

――そのうち、お礼参りに行かなきゃかなぁ……

リアンと同じく、もう一人の恩人のことを思い出しながら、菖はそんなことを思うのだった。




あとがき代わりのその後の話(スキット風)

リコ「そういえば、お父様が菖さんに会ったら伝えてほしいことがあるって言ってたわ」
菖「へぇ?で、リアンさんはなんて?」
リコ「今度、ぜひ遊びに来てほしいって。案内はわたしたちが頼めばいいって……ちゃっかり、人をこき使おうとしてるんだから、まったく……」
菖「ははは……」
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リズ「そういえば、お父様。以前、ナシマホウ界に行ったときに出会ったっていう人はどんな方なのかしら?」
リアン「ふむ。リコとあまり年は変わらないというのに、なかなか見どころのある青年だった……ナシマホウ界の人間でなければ、ぜひとも弟子にしたかったよ」
リズ「あらあら……そういえば、"彼"を紹介したそうね?」
リアン「うむ……なんでも、どうしても助けたいものがいたそうでね。つい、気圧されてしまったよ」
リズ「……うまくいったんでしょうか……」
リアン「さて……そのあたりは、リコが彼を連れてきたときに聞くとしようか」

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