ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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なぁんか、似たようなタイトルになってしまったな……。
というわけで続編。
ぶっちゃけ、かれんのキャラが少しぶれている感じがしますが、まぁ、そこはご愛敬ってことで。


菖さんのストロベリーパイは、甘酸っぱい恋の味?!

ブーケ作りのアイデアを出しあっているつぼみたちの陣中見舞いに、ストロベリーパイを作ろうと考えた菖は、かれんを伴わなって買い出しに出ていた。

だが、運の悪いことに。

「パイ生地が……売り切れ、だと……?!」

「さすがに、わたしも驚きました……」

常連であるかれんも、目を丸くしていた。

「ごめんなさいねぇ。今日はなぜかパイ生地がよく売れちゃって……ほんとのこと言うとね?店長が発注をミスして、いつもより少なくパイ生地を注文しちゃったのよ」

「それは……なんとも……」

パート店員のおばさんが、困ったわねぇ、といいたそうな顔でため息をつきながら、ひそひそと教えてくれたことに、菖は苦笑を浮かべながらひそひそと返した。

その様子に、かれんは何がおかしかったのか、くすくすと微笑していた。

「ところで、パイを作るつもりだったのかい?」

「えぇ。ちょっとストロベリーパイを作ろうかと」

「あら?随分、珍しいものを作るのね?……もしかして、おたく、スイーツ男子?」

「そんな大げさなものじゃないですよ~……まぁ、自作できるものは自作しますが」

立派なスイーツ男子の端くれである。

なお、菖がそう返すと、おばさんはかれんにこっそりと近寄って、耳元でこそこそと話し始めた。

「お料理できるなんて、あなたの彼氏さん、いい物件じゃない?」

「……かっ?!……か、かかかかか彼氏……って、そんなんじゃ……あ、でもそれもいい、かな……」

珍しいことに、おばさんの言葉を真に受けて、顔を真っ赤にして動揺してしまった。

もっとも、かれん本人はまんざらでもないようだったが。

なお、噂されている菖本人は代用となるものを探して、その場から離れていたため、気づくことはなかった。

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材料を買って戻ってきた菖とかれんはナッツハウスにある台所に立っていた。

「菖さん、手際いいですね」

「家だと、基本的に作るのは俺だからね。じぃじはあんまり作らないし」

「そうなんですか?」

「料理は作るんだけど、お菓子の類は作らないなぁ……作っても、おしることかだし」

「……それ、作るっていうんですか?」

基本的に、出来合いの煮豆に砂糖を入れつつ煮込み、焼いた餅を器にいれるだけである。

作る、とは言い難いのだが、仁頼曰く、食材をある程度の過程を経て調理しているのだから、これも立派な料理だ、らしい。

「だから菖さんはお菓子とか作るですね……というか、わたし、必要でした?」

自分が手伝う必要性はどこにいったのか、とかれんはすこししょんぼりした様子で呟いた。

それが聞こえた菖は、苦笑を浮かべて、ごめん、と返した。

おしゃべりしている間に、ストロベリージャムはパイ生地に包まれ、あとは焼くだけとなっていたようだ。

もっとも、菖の場合、焼くというよりも揚げるという感じなのだが。

なお、油がひかれたフライパンを見たかれんは苦笑しながら。

「……カロリー、多そうですね」

とつぶやいていた。

それが聞こえていた菖は、そうなんだけどね、と前置きしてから、反論した。

「そう見えるけど、使ってる油は低カロリーのものだし、揚げるというよりも油で焼くって感じだから、そこまで高くはならないはずだよ?」

加えて、しっかり油抜きをしてから出すつもりでいる。

「まぁ、それなら大丈夫だと思いますけど……」

「本当なら、ジャムも手作りの方が良かったんだけどねぇ」

「そこまでこだわるんですか?」

「普通なら、砂糖を使うけど、俺の場合、ステビアシロップを使うから、すこしカロリーをおさえられるんだよ」

ステビアとは、ハーブティーに用いられるハーブの一つで、強い甘味が出るのだが、糖分は含まれていない。

そのため、糖尿の傾向がある人に進められている。

また、カロリーを気にして、甘いものを満足に食べることが出来ないという人には、ステビアを煮だして作られたシロップを砂糖の代わりに使うことが勧められている。

かくいう菖も、祖父の体を気遣い、砂糖の代わりに蜂蜜やステビアシロップを使うことが多い。

ふと、菖は背後に気配を感じ振り向いた。

そこには、まるでのぞき見るかのようにして菖とかれんを見ているくるみとつぼみがいた。

「……いい匂いがするとおもったら」

「菖さん、何を作ってるんですか?」

「うん?ストロベリーパイ」

「いちごの花言葉にちなんで、ゲン担ぎだそうよ?」

かれんの説明に、つぼみは納得したようだが、くるみは首を傾げていた。

その様子に、つぼみは少し照れたような笑みを浮かべた。

「いちごの花言葉は「幸福な家庭」ですしね……たしかに、ゲン担ぎにはもってこいかもです!」

「……って、かれんが手伝って大丈夫なの?!」

くるみは真っ青になって叫んだ。

その反応に、かれんは顔をしかめたが、くるみはそれに気づくことはなかった。

「ん?まぁ、ほとんどの工程は俺一人でやったし、あとは焼くだけだから。まぁ、おかしなものになりそうだったら全力で止めるし、たぶんだいじょ……」

「いいえ!菖さんはお人よしですから、心配です!ここはわたしもご一緒させていただいきます!!」

大丈夫、と言おうとした瞬間、つぼみが大声でそれを遮った。

心なしか、つぼみとかれんの間に火花が飛び散っているような気がしないでもない。

もっとも、それに気づかない菖は。

「いや、つぼみはりんたちの仕事があるでしょ?」

とツッコミをしていた。

だが、聞き入れていないことを察すると、菖は仕方がないとため息をついて、妥協案を出した。

「なら、かれんもりんの仕事、手伝ったらどうかな?俺一人でも十分な量を作れそうだし」

「そうしたほうがいいわね……というか、そうしてほしいわ。りんとあたしの心の平穏のためにも……」

「……似たようなこと言ってるなぁ……」

その妥協案を是としたくるみが、げんなりとした顔でそう話すと、菖はどこかで聞いたような言葉に、冷や汗を伝わせながら、苦笑した。

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数分して、菖が焼きあがったパイを持って二階に上がってきた。

備えつけられているテーブルを見るに、どうやら、無事にまとまったところらしい。

「お?終わった感じかな??」

「はい!ちょうどまとまりました!!」

「いやぁ……長かった……ありがとね、つぼみ」

りんは疲れた表情でつぼみにお礼を言ったが、どこか満足そうにしていた。

つぼみもまた、にっこりと笑いながら、お役に立ててなによりです、と返していた。

傍から見れば、親友同士のように見えなくもない二人の様子に、菖はほほえましさを覚え、薄く笑みを浮かべた。

「それじゃ、仕事終わりのティーブレイクといこうか?」

「おぉ~!菖さん御手製のスイーツ??!!」

「ぜひいただきます!!」

菖のその一言に、のぞみとうらら(大喰い二人)が食いついてきた。

その口の端には光るものがちらりと。

どう考えても、年頃の乙女としてははしたないのだが、この二人にはまだそのあたりは早かったようだ。

その反応の速さに、菖は思わず身を引いてしまったが、りんとかれんが同時に、少しは落ち着け、とツッコミを入れられ、静かになった。

「……ここに置いたら、のぞみとうららに持って行かれそうだな……ほんとは紅茶も用意しておきたかったけど」

「言うと思って、僕たちで用意しておいたよ」

ふと、階段の方を見ると、ティーポットとカップをお盆にのせて持っている小々田と夏、そして、お皿とフォークを持っているシローがいた。

「お、ごめん。三人とも」

「これくらいはさせろ。どうせ、俺たちの分も焼いたんだろ?」

「まぁね」

「なら、これくらいはさせろ」

無愛想な様子で夏がそう口にするが、彼なりに申し訳ないと思っているのか、何か手伝わないと気がすまないのだろう。

素直じゃない態度に、菖たちは苦笑を浮かべながら、パイを切り分け、皿に盛っていった。

「なんだか、パイっていうより、包み焼きみたいな感じですね?」

「フライパンで揚げ焼きしたから、必然的にそうなるわね」

「それじゃ、早速!いただきま~す!」

口々に感想が漏れる中、のぞみが手を合わせ、フォークを手にした。

シローものぞみに倣い、手を合わせた。

「この世のすべての食材に感謝を込めて、いただきます」

どこかの青い髪の冒険家をコンビを組んでいる料理長のようなセリフを口にして、シローもフォークを手にし、パイを口に運んだ。

菖はパイを口にすることなく、二人の感想が口から飛び出てくるのを待った。

「おいしーーーーーっ!」

「うまいな、これ」

どうやら、好評のようだ。

りんたちもご満悦のようで、目じりが下がっていた。

うまくできたことに安堵した菖は、ほっとため息をついて、自分も食べ始めた。

ふと、くるみは何かに気づいたらしく、菖の方へ視線を向けた。

「これ、パイ生地つかってないですよね?もしかして、小麦粉を練って生地を作りました?」

「あ、よくわかったね?」

「なんとなく、いままで食べてきたパイはサクッて感じだったんですけど、これはどっちかというと、パリッて感じの食感なので」

どうやら、食感のわずかな違いに気づいたらしい。

もっとも、そんなことはまったく気にしていないのもいるようで。

「ん~、おいし~~」

「……のぞみ、あんたもうちょっと味わって食べなさいよ……」

「うふふ……のぞみったら、頬っぺたがリスみたいになってるわよ?」

のぞみは満面の笑みで、パイを頬張り、その様子に呆れながらりんが文句を言い、こまちはのぞみの頬がリスのように膨れている様子を面白がっていた。

ふと、小々田の正面に座っていたのぞみが何かに気づいたらしく。

「ココ、口にジャムがついてるよ?」

「え?どこ??」

「ここ」

そういって、のぞみは身を乗り出し、小々田の口元に指を伸ばし、ジャムをぬぐい取った。

のぞみはそのままぬぐったジャムがついた指をそのまま口に運び、なめとった。

その行為に、やられた小々田と純粋なつぼみは顔を真っ赤にしてしまった。

「あぁ……見せつけてくれるねぇ、お二人さん」

「ちょ!のぞみ!!またうらやま……じゃなくて!!失礼なことを!!」

半分、日常茶飯事になっていることなのか、りんはため息をつきながら茶化し、くるみは顔を真っ赤にしながら興奮した様子で怒鳴った。

一方、その光景を見せつけられたこまちとうらら、そしてかれんとつぼみはというと。

――あんなことを……ナッツさん/シロップ/菖さんにやられてみたい/みたいです

自分の意中の相手に同じことをやられてみたいという願望と妄想で、顔を紅くしていた。

もっとも、その原因となっている三人の二枚目たちはまったく気づいておらず。

「なぁ、なんであいつら、顔を真っ赤にしてんだ?」

「さぁ?」

「俺がわかると思うか?」

わけがわからず、紅茶を口にするのだった。




あとがき代わりの後日談(スキット風)

ゆり「それで?つぼみ、わたしたちに何か言うことはないかしら??」
つぼみ「え?」
えりか「菖さんとデートしたんでしょ?ちゃんと感想、聞かせてよ!」
いつき「内気だったつぼみが、僕たちより先に大人の階段を上るのかぁ……」
つぼみ「ふぇ……ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ??!!ち、ちちちちちち違いますよぉ!」
ゆり「あら?すでにネタは上がってるのよ??二人でサンクルミエールの町を散策したんでしょ?」
つぼみ「お互いのぞみさんたちに用事があっただけです!」
えりか「理由はともかく、「サンクルミエールの町を散策した」って事実は否定しないんだ?」
つぼみ「うぅ……」
ゆり「まぁ、これくらいにしておいてあげましょう?けど、つぼみ?」
つぼみ「……なんでしょうか?」
ゆり「抜け駆けは許さないわよ?もちろん、他の子もだけど」(ボソッ
つぼみ「……っ!!??」
えりか「な、なんかゆりさんが怖いっしゅ……」
いつき「う、うん……なぜか背中に寒気が……」

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