ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
賛否両論あったけど、私は好きだったなぁ
魔法使い組がオトナになったらどうなるのか、楽しみではありますけど、やっぱり寂しさが……
「それでは! プリ……ティーだったわたしたちと、セイ……悍になった菖さんとの再会に!」
『
サンクルミエール市。かつて、五人の中学生がプリキュアとなって、二度も闇の勢力と戦った町。
その町の一角にあるカフェバーに、小学校教師となったのぞみと、中学校教師となったれいか。そして、特定の大学に籍を置かず、考古学の非常勤講師として教鞭をとる菖がいた。
「しかし、こういうこともあるんだな」
「えぇ。まさか、研究授業と反省会でお二人とお会いするなんて」
「ね。ほんとびっくりだよ!」
三人とも別の場所に住んでおり、中学生や高校生の頃はともかく、大学を卒業してからはほとんど交流がなかったのだが、のぞみの職場で行われた学校間合同研究授業でばったり再会したのだ。
その流れで、そのままのぞみとりんが行きつけにしているカフェバーで食事をしようということになり、今に至る。
なお、妻帯者である菖はすでにゆりたちに連絡をしていたのだが、妻たちからは『ずるい』という文句のメッセージが届いており、少ししたら合流すると言ってきていた。
のぞみの方も同じらしく、りんたちも遅れて合流するそうだ。
「みゆきさんたちが来られないのは、少し残念ですが」
「まぁ、今回はたまたまが大きいからな。次の機会ってことで」
「そうそう! まぁ、わたしは今も時々、咲ちゃん舞ちゃんと飲んでたりしてますが」
「……え、それ初耳」
「ふふ~ん。まぁ、ほんとのところは舞ちゃんから折を見て話すって言われてたから、黙ってました」
たははは、と苦笑しながらのぞみは弁明する。
のぞみ曰く、咲と舞は数か月ほど前からこの店を時折利用しているらしい。
そのときにのぞみたちと再会し、仕事終わりにこの店でお酒と食事を楽しむようになったそうだ。
その話を聞いて、菖は。
「あぁ~、そういやここ数週間、ちょっと帰りが遅くなるようなことあったな……咲と一緒だから別に大丈夫かなぁって思ってたけど」
あっけらかんとした態度で返してくる。
その言葉に、のぞみはにやにやと少しばかり意地悪そうな笑みを浮かべ。
「え~? 菖さん、それ旦那さんとしてどうなんですかぁ?」
と、菖をからかってきた。
だが、そんなのぞみの言葉にも。
「あんまり干渉するのはよくないだろ? 結婚したといっても、相手も一人の人間なんだから」
と、笑みを浮かべながら返してくる。
この態度は菖が高校生だった頃からのものではあるが、当時とまったく変わらない優等生な回答に、のぞみは。
「うわぁ、あいかわらず気障なセリフをポンポンと……」
「いや、ほんとに思ってることなんだけど? てか、そういうのぞみはどうなんだよ?」
「どうって??」
「小々田先生とのこと」
「ギクッ??!!」
仕返しとばかりに、菖はのぞみが一番つつかれたくはないであろう話題について、あえてつついていた。
一応、大学受験の時期は家庭教師をしてくれたり、大学生になってからも勉強を見てくれたり、隣の部屋に住んだりしていた時期もあり、現役中学生の頃よりも親密な付き合いをしていたのだが、関係が進展したという報告は受けたことがない。
これはもしやからかいのネタになるか、と菖は期待を込めて聞いてみたのだが。
「じ、じつは……数か月前にココと結婚しまし、た」
顔を真っ赤にするのぞみから告げられた答えは、二人を驚愕させるに十分なものだった。
「け、結婚っていつのまに??!!」
「お、おめでとうございます!!」
「あ、ありがとう……えっと、お知らせしなかったのはすみません」
どうやら、気恥ずかしさというよりも、交流が少なくなってしまったために菖やれいかに結婚したことを報告することが遅れてしまったらしい。
おそらく、このことを知っているメンバーはりんやうらら、こまち、かれん、くるみの五人だけで、しばらく一緒に行動していた咲と舞も知らないはずだ。
そうでなければ、舞の夫である菖が知らないはずがない。
「これはあれだな、改めてお祝いしないといけないかもな」
「そうですね……みゆきさんたちにも声をかけてみます」
「ちょ、そ、そこまでしなくても」
「いんや、するね。やっとゴールインしたんだから、そりゃ祝わせてもらうに決まってんだろ」
断ろうとするのぞみに、菖はそう続ける。
なにせくっつきそうでくっつかず、なかなかじれったい状態が長く続いた二人だ。
ようやくのゴールインにお疲れ様といままでのもやもやをぶつける意趣返しという意味で、お祝いをするつもりらしい。
なお、このメンバーのもとに届いた結婚報告は、いまのところ、はるかとカナタ、はなからのものだけであり、学生の頃からじれったい空気を流していた未来とあゆみ、めぐみと誠司、結と拓海からはまだ報告が来ていないということも手伝っているのだろう。
そうこうしているうちに。
「らっしゃい!」
「いらっしゃいませぇ」
店主と奥様が入店してきた客に挨拶をする威勢のいい声が聞こえてくる。
ちらりと、視線を向けると。
「すみません、5人で待ち合わせているんですけれど」
「あ、ゆりさん。いましたよ!」
見知った黒髪と桃色の髪の毛をした美女が目に入る。
二人を目にした瞬間、菖は入店してきた二人とその背後にいるほかのメンバーに向けて。
「マスター、奥さん。俺の連れです。ゆり、つぼみたちも。こっちこっち!」
やってきたメンバーは菖と結婚した、自分たちと同じ、かつてプリキュアだった少女たちだった。
「のぞみさん、お久しぶりです!」
「れいかも、ご無沙汰ね。元気そうで何よりだわ」
「つぼみちゃん、ゆりさん!」
「ひかりさんもいおなさんも、お久しぶりです」
久方ぶりの再会に、しばらくの間、菖たちが座っていたテーブルの一角は賑やかな笑い声で満たされる。
なお、それから数分後、たまたま帰り時間が重なったりんたちと舞が入ってきたため、その賑わいは、さらに大きくなっていくのだった。