ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
まぁ、最後の方はわりと適当な終わらせ方になってますが、そこは気にしないでほしいです
なお、菖とラバーズは結婚したあと、という設定になってますのでご了承を
西暦2035年某日。
その日は、日本初の国産ロケットの搭乗員たちが帰ってくる日だった。
帰還する搭乗員たちを出迎えるため、家族や友人たちがその場所に集まっていた。
その中には、菖とゆり、ふたば、小百合の姿があった。
「姉さん、そろそろでしょうか?」
「まだもうちょっとかかるんじゃないかな?」
ふたばと小百合は搭乗員、というよりも大好きな姉と義姉の登場を、今か今かと目を輝かせながら待っていた。
その様子を微笑みながらながめ、ゆりはふと思い出したように菖に問いかけた。
「そういえば、今回のフライト、ひかるも一緒だったわよね?」
「あぁ。ララとユニに会いに行くんだ~ってつぼみと一緒に宇宙飛行士を目指して猛勉強して、まどかの計らいで同じチームに配属されることになったらしい」
菖はゆりの質問に、じゃれついてきているふたばと小百合の頭をなでながら返した。
どうやら、つぼみが宇宙空間でも開花する植物の研究開発を行っていることを知ったまどかが、今回のロケット打ち上げのメンバーに選んだようだ。
むろん、ひかると一緒に宇宙へ行けることに一番驚いていたのはつぼみ本人だったことは言うまでもない。
だが、改善してきたとはいえ、人見知りの激しいつぼみにとって、同じプリキュアであるひかるがいてくれることは非常に心強いことだったらしく、打ち上げ当日まで楽しみで仕方がない、という顔をしていた。
「ふふふ、ちょっとしたサプライズですよ」
「噂をすれば。久しぶりだな、まどか」
「お久しぶりね、まどか」
そんなことを話していると、突然、背後からスーツを着た長髪の美女が近づいてきた。
彼女こそ、宇宙開発特別調査局の若き女局員、香久矢まどかである。
今回の国産有人ロケット打ち上げのプロジェクトリーダーでもある。
「えぇ、お久しぶりです。お二人とも。えれなも来ているのですが、通訳の仕事があるので、今はあそこの施設にいますよ」
「なら、終わったころに顔を出してみるか」
「そうね。つぼみとひかるも一緒に」
ちょっとしたサプライズのつもりなのだろう。
ゆりがいたずら小僧のような笑みを浮かべながらそう提案すると、菖もまどかも笑みを浮かべて同意した。
すると、傍らにいたふたばが突然、空を指出しながら大声をあげた。
「あ!見てください!!」
「あの光……もしかして、あれかしらね?」
「え?でも、なんで光が二つも??」
ふたばの指摘で顔をあげると、そこには赤い光が二つ、こちらに降りてきていた。
だが、本来ならば一つだけであるはずのその赤い光が二つあることに、小百合が不安そうな顔でそうつぶやいた。
そのつぶやきに、菖もゆりもまどかも、たしかに、と首をかしげていた。
ロケットに限らず、宇宙空間から地球に飛来してくる物体は、地球の大気と摩擦を生じることになる。
その摩擦によって生まれた摩擦熱で物体は溶けてしまい、よほどの質量、あるいは耐熱性がなければ地表に届くことなく、空中で消えてしまう。
いま彼らの上空にある赤い光は、ロケットが摩擦熱で真っ赤になっているために発生しているものだということは想像に難くなかった。
だが、問題はその数だった。
打ち上げられたロケットは一台のみ。
本来なら、その光も一つだけのはずなのだが、なぜか二つあった。
それも、ぱっと見ただけではわからないが、目視で確認する限り、同じ高度、同じ速度で降りてきているようだ。
「……まさか、セミみたいな宇宙人とかケロンな宇宙人に鹵獲された、なんてことないよな?」
「なんでそうなるのよ?」
「まぁ、冗談はさておいて……ロケットが空中で大破した、って様子じゃなさそうだな?」
「えぇ……念のため、皆さん、避難……」
してください、と言いかけたその時だった。
まどかが耳につけていたインカムに、突如、通信が入ってきた。
その通信に応答すると、まどかの目は見開き、徐々に潤み始めた。
どうにか泣くことをこらえながら、まどかはなんどもうなずいていた。
「わかりました。では、のちほど」
そう言って通信を切ったまどかは、菖たちの方へ向き直り、衝撃の告白をしてきた。
「菖さん、ゆりさん。ララが、ララとユニが!!」
「……え?まさか、あの光は」
「そういうことかもしれないわね……ふふ、これはとんだサプライズね」
「はい!」
まどかが泣きだしそうになっていた理由。
それは、十数年前に別れた、遠い星に住んでいる友人、サマーン星のララとレインボー星のユニが、ひかるたちが搭乗しているロケットと一緒に地球を目指しており、間もなく、着陸予定であるという連絡が入ったからだった。
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それから数十分後。
ロケットは無事に地球に着陸し、搭乗員たちが次々に降りてきた。
その隣には、まどかとひかる、そして今も施設で通訳を行っているえれなにとって、懐かしい形をしたロケットがあった。
突然、地球に着地したロケットに、見物客たちは好奇の視線を向けたり、不安そうな表情を浮かべたりと、様々な反応を示していた。
だが、帰還したつぼみとともに施設に入っていった菖たちは、同じく帰還したひかると、今回のプロジェクトのチームリーダーであるまどか、そして休憩にはいったえれなとともに、久方ぶりに地球にやってきた遠い星の友人たちとの再会をよろこんでいた。
「久しぶりだな、ララ、ユニ」
「久しぶりルン!!菖、ゆり!!」
「ふふ、ララもユニも相変わらずのようね」
「そう簡単に変わるものじゃないニャン」
呆れた、と言いたそうな顔でユニがそう返してきた。
その返答に菖たちは、たしかに、と苦笑を浮かべていた。
なお、フワとプルンスは現在、小百合とふたばに確保され、モフモフされたりなで回されたりしていた。
一応、菖たちは結婚する際、家族にだけは自分たちがプリキュアとユグドセイバーであることを話していたため、フワとプルンスのことはすんなりと受け入れられているようだ。
もっとも、この二人に関しては、幼少期からシプレたちにおもちゃ代わりの遊び相手、もとい、面倒を見てもらっていたこともあるのだろうが。
ちなみに、言葉が通じ合っているのは、ララとユニが地球の言葉を勉強し続けていたということもあるが、フワの力が戻ってきたからということもあるのではないか、というのがプルンスの見解だった。
本当のところはどうなのかはわからないようだが。
そんなことも忘れて、少しの間、談笑を交わした六人だったが、まどかが不意にララとユニの二人に真剣な表情で話を持ち出してきた。
その表情に、ララとユニもその表情を真剣なものへと変えた。
「ララ、ユニ。わたしは現在、日本にある宇宙開発特別調査局に所属しています」
「もしかしなくても、異星人のわたしたちのことを検査するのかしら?」
「えぇ。とはいえ、お二人は十年前に地球に滞在していたので、さほど時間はかかりません」
さらに、首相となった父に相談し、正式に二人を宇宙開発特別調査局の対異星人の外交顧問として迎え入れたいと話した。
まどかの申し出に、ララとユニは二つ返事でうなずき、細かな調整を行うため、まどかとともに別室へと向かった。
「それじゃ、あたしもそろそろ仕事が始まるから」
「えぇ、お疲れ様」
「あぁ。Adios amigo」
「ふふ、Adios amigo」
スペイン語で「またね」と挨拶を交わし、えれなは再び通訳者が使用する部屋へと戻っていった。
残ったひかるは、このまま菖たちと一緒に食事に行こうとしていたのだが、つぼみにつかまってしまった。
「ひかるさん、一緒に食事に行きたいのはわたしも一緒ですが、まだ報告と健診が残ってます」
「え……えぇ……」
「ほら、行きますよ?菖さん、ゆりさん。もう少しかかりますから、待っててもらってもいいでしょうか?」
「あぁ、大丈夫だ」
「えぇ。フワとプルンスのこともあるしね」
菖とゆりがつぼみのお願いにそう返すと、つぼみはお礼を言って、ひかるとともにロケット搭乗員たちが待っている部屋へと向かっていった。
「……しかし、これが事実上、地球人と異星人のファーストコンタクトになるのか」
「そうね……うまくいくといいのだけれど」
「まぁ、行かなかったら行かなかったで……プリキュアが立ち上がるだけだろ」
あるいは、次期首相としてもっとも人気が高い後輩か、世界経済を動かすことができるほどの力を持っている財閥の会長を務める後輩が動くことになるだろう。
そうならないことを祈りつつ、菖とゆりはつぼみたちが戻ってくるまでまつこととなった。
~おまけ~
~その頃のフワとプルンス~
フワ「ふわ~!くすぐったいふわ~!!」(>▽<
プルンス「ぬわ~!!そ、そこは触らないでほしいでプルンス~~~っ!!」( □ ;
小百合「フワ、もふもふで気持ちい~!」
ふたば「おぁ……このすべすべ感、たまりません!!」
菖、ゆり「「二人とも、ほどほどにな/ね?」」( ▽ ;
~そういえば……~
菖「あ、言い忘れてた」
ゆり「え?……あぁ、そうね」
つぼみ「……?」
菖、ゆり「「おかえりなさい、つぼみ」」
つぼみ「は、はい!春川つぼみ、ただいま戻りました!!」
ララ「オヨ?つぼみの名字って花咲だったはず……」
ユニ「もしかして」
ひかる「うん!二年くらい前に菖さんと結婚したよ!!ゆりさんや舞ちゃん、ひかりちゃん、いおなちゃんも一緒に」
ララ「オヨ~……あ、そういえば多重婚容認法なんてのがあったルン」
ユニ「へ~……あぁ、そういえば同性愛者の結婚も認められてるんだっけ?」
えれな「うん」
まどか「地球も変わり始めている、ということですね」