ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
いつもの倍はあるぞ、これ……
さて、気づく方もいらっしゃると思いますが、レディアントシルエットのモデルはT○Z-Xの最終話に登場するスレ○のアレです。
剣は別ものですけれども(苦笑
では本編どうぞ。
ハートキャッチミラージュの試練を乗り越えたムーンライト、サンシャイン、マリンの三人は、いつのまにかプリキュアパレスの中央にある、歴代プリキュアの石像が飾られている部屋にいた。
ハートキャッチミラージュの試練を乗り越えたプリキュアは、この部屋に石像が飾られることになっているようだ。
ムーンライトは、ふと周囲を見まわした。
「……薫子さん、セイバーとブロッサムは……」
「セイバーなら、ほら」
と、薫子が部屋の中央を指さすと、大樹の傍らにある石の剣の前に白いマントのセイバーが姿を現した。
セイバーは笑みを浮かべながら、片手を上げた。
「無事に終わらせたみたいだな」
「あなたこそ」
ムーンライトはそう返すと、片手を上げ、セイバーとハイタッチを交わした。
ふと、周囲を見渡すと、ブロッサムの姿がないことにセイバーは気づいた。
「……あれ?ブロッサムは……」
「まだ、みたいね……」
ムーンライトも周囲を見渡し、ブロッサムの姿がないことに気づいた。
マリンとサンシャインもまた、ブロッサムの姿がないことに気づき、周囲を見渡した。
ふと、彼らの視界に、石柱が置かれている台座が入りこんできた。
おそらく、それがブロッサムの石像になる
「……いまは、待つしかないか」
そっとため息をつき、セイバーは力なくその場に座りこんだ。
乗り越えたとはいえ、先代のセイバーと本気で戦ったのだ。
倒れたのはセイバーであったが、それは自分の持つ剣に刃がないがゆえのこと。
最後まで自分の信念を貫き通して戦ったことで、セイバーは無事に試練を乗り越えることができたのだ。
その代償に、少しばかり血を流すことになってしまったのだが。
だが、セイバーはそれを気にしている様子はなく、そっと目を閉じ、ただただ待つことにした。
――ブロッサム、君なら大丈夫。俺は、そう信じてる
心中でそうつぶやきながら、セイバーはブロッサムが無事に試練を終わらせて戻ってくることを信じて疑わなかった。
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少し時間はさかのぼり、プリキュアパレスに到着し、セイバーたちと一緒に試練を受けることになった時。
ブロッサムもまた、自分が試練を受ける場所となった桜の大樹の前にいた。
「ここは……みんなは……マリン?!サンシャイン?!ムーンライト?!セイバー?!」
ブロッサムは周囲に仲間がいないことに気づき、仲間たちを呼んだ。
しかし、それに応える声はなかった。
誰もいないという事実をようやく認識したブロッサムは、そっとため息をついた。
ふと、上空にある日食で黒くなった太陽から、一人の少女が下りてきた。
ブロッサムから少し離れた場所に着地した彼女を見たブロッサムは、その姿に驚愕した。
黒い服に白衣のようなコート、そして長い髪はストレートに伸ばしているという、いくつかの違いこそあるが、そこにいるのは間違いなく、自分だった。
「……あなたは、変わることはできない」
不意に、目の前に現れた
その一言に、ブロッサムの瞳は凍り付いた。
その一瞬の隙をついて、キュアブロッサム・ミラージュは地面を蹴り、ブロッサムに突撃してきた。
ブロッサムはその一撃を受け止めることはできたが、吹き飛ばされてしまった。
だが、キュアブロッサム・ミラージュは執拗にブロッサムへ攻撃を続けた。
「あなたは変わることはできないわ。シャイで引っ込み思案な自分に、さよならしない限り」
「……わたしは……変わるんです!!」
反論しながら、ブロッサムはキュアブロッサム・ミラージュに向かっていった。
だが、キュアブロッサム・ミラージュはなおも悲しそうな瞳を向けながら、ブロッサムの攻撃を受け止め、いなした。
そして、心の花の力を手のひらに集め、手刀のようにしてブロッサムに叩きつけてきた。
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その頃、試練を一足先に終わらせたマリンたちはブロッサムの帰還を待っていた。
だが、思った以上に時間がかかっていることに、シプレはほんの少し、苛立ちを覚えているようで。
「……ブロッサム、遅いですぅ……」
石柱に背中を預けながら、文句を言っていた。
マリンもそれは思っていたようで、自分の石像の近くに腰かけながら、今にも泣き出しそうな顔で空を見上げていた。
「……この試練、乗り越えられなかったら、ブロッサムはどうなります?」
ハートキャッチミラージュに手を触れながら、
薫子は、その問いかけに落ち着いた声で、何も変わらないだけ、と返した。
「ハートキャッチミラージュが与える試練は、自分自身を見つめること……誰だって、本当の自分と向き合うのは不安だわ」
それでも、本当の自分を受け入れ、知る勇気を持ち、自分で何をしたいのか、何をすればいいのかを考えることができれば、誰でも変わることができる。
そうして、歴代のプリキュアは絶望から希望を見出してきたのだから。
「今度はつぼみの番。つぼみが自分で、答えを見つけないといけないの……自分との戦いを乗り越えられるのは、自分だけだから……」
「「チョー心配~~~~~~/ですぅ!!」」
薫子の言葉に、マリンとシプレが同時に叫んだ。
「ブロッサムは弱虫で頼りなくて、最初は最弱のプリキュアとか言われちゃうし!それに、それに……」
「引っ込み思案ですぅ!!」
「あたしたちがいないと、ダメダメなんだから……」
「……まぁ、それがブロッサムだからなぁ……」
マリンとシプレの言葉に、セイバーは苦笑を浮かべながらそうつぶやいた。
だが、セイバーは別段、心配している様子はなかった。
それは、サンシャインとムーンライトも同じだったようだ。
「それでも信じて待ちましょう?わたしたちのブロッサムを」
それしかできないということもあってなのか、マリンも本当はわかっているからなのか、それはわからない。
マリンはそれ以上何も言うことはなく、ただ、石柱に向かって、自分たちが応援しているということを叫ぶことしかしなかった。
その様子を見守っていた薫子だったが、脳裏に警鐘が鳴り響いたことに気づき、叫んだ。
「みんな!!デザートデビルがここに来るわ!!」
「「「「っ!!」」」」
「……まだ、ブロッサムの試練が終わってないのに……」
あまりに早すぎる敵の接近に、マリンは愕然としながらつぶやいた。
だが、いつまでもこうしていられない。
マリンたちはプリキュアパレスの外へと急いだ。
外へ出ると、上空にはデザートデビルと思われる隕石がまっすぐに落ちてきていた。
そして、湖に着弾するとものすごい衝撃波を周囲にばらまいた。
衝撃に耐えていると、マリンの肩に乗っているコフレが突然、悲鳴を上げた。
見ると、隕石が落ちた場所に黒い影がまるで煙のように勢いよく立ち上っていた。
影は徐々に形を作り、まさに
「グォオオオオオオオオオっ!!」
デザートデビルが咆哮を上げると、ゆっくりとこちらへ向かってきていた。
なぜこちらを目指すのか、その目的ははっきりしている。
「デザートデビルの目的は、ハートキャッチミラージュの破壊」
「けど、あんなのどうすれば……」
「大丈夫だよ!!」
サンシャインのつぶやきに、マリンがいつもの調子で返してきた。
「ブロッサムが帰ってくる前に、ちゃちゃっとやっつけちゃお!いくよ、コフレ!!」
「はいですっ!!」
駆けだしたマリンに呼ばれ、コフレは元気に返事をすると、マリンを追いかけ、彼女の肩に乗った。
その瞬間、コフレは青いマントに姿を変えた。
「わたしたちも、行きましょう。コロン!」
「あぁ」
「はい!ポプリ!!」
ムーンライトがコロンを呼ぶと、コロンはマントに姿を変えて、ムーンライトの肩に乗った。
同時にポプリもサンシャインのマントとなった。
セイバーは、右手でエターニアハートを持ち、心の花の力を注ぎ始めた。
「
ある程度、心の花の力が溜まったことを感じたセイバーは、先代から教えてもらった言葉を唱えた。
すると、エターニアハートは緑色に輝くいくつもの刃へと変わり、セイバーの背後に浮かびあがった。
同時に、セイバーの体もわずかながら浮かびあがった。
「……初めて試したけど、案外、うまくいくもんだなぁ……」
試練を終えて戻ってくる前に、先代からエターニアハートが持つ能力についていくつか聞いていたため、さっそく試すことにしたのだ。
それが、この飛行能力だった。
セイバーは初めて空を飛ぶという感覚に好奇心を爆発させそうになったが、今はやるべきことがある、と気を引き締めて、マリンたちの後を追いかけた。
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一方、デザートデビルの接近を知らないブロッサムは、キュアブロッサム・ミラージュの猛攻で、倒れてしまいそうになっていた。
「シャイで引っ込み思案で、すぐに人に頼ってしまう。それが本当のわたしなのよ……」
「わたしは……たしかに、前のわたしはそうでした……でも、わたしは本当にチェンジしたんです!」
「いいえ、今も変わってないわ」
ブロッサムの反論に、キュアブロッサム・ミラージュは即座に返した。
それでも、ブロッサムはまるで駄々をこねている小さな子どものように、変わったんです、と反論し続けた。
だが、キュアブロッサム・ミラージュはそれを聞き入れるつもりはないらしく、ブロッサムの背後に回りこみ、語り続けた。
「そして、それはプリキュアになっても変わらない」
攻撃が来ると判断し、ブロッサムは逃げるようにキュアブロッサム・ミラージュと距離を取った。
ふと背後を振り向くと、キュアブロッサム・ミラージュは追ってきていない。
そのことに気づくと、ブロッサムはまるで逃げるようにその場から走り出した。
だが、いつの間にか、キュアブロッサム・ミラージュはブロッサムの前に回りこんでいた。
「……あなたはわたしを見なくていい。あなたはわたしから逃げていい。そして……あなたは、弱い自分に立ち向かうことをやめて、そのまま、変わらないままでいてもいい」
悲し気な瞳を向けながら、キュアブロッサム・ミラージュはブロッサムに告げた。
「自分が弱いのは、自分のせいじゃないと……
指先に心の花の力をかき集め、刀印を結び、素早く縦一文字に振り下ろすと、その軌跡にそって、心の花の力が衝撃波となってブロッサムに襲い掛かった。
ブロッサムは防御する間もなく、その衝撃波を受けてしまい、背後にあった桜の大樹に背中を叩きつけた。
「くぅっ……うぅ……」
「……もう、わたしとの戦いは諦めなさい。自分は変われないと、認めるのよ!!」
「……わた、しは……」
反論しようと、言葉を紡ごうとした。
だが、キュアブロッサム・ミラージュは、悪魔のささやきのように甘い声でブロッサムに、大丈夫、と告げた。
「お父さんもお母さん、みんなも、そのままのわたしを認めてくれるわ」
変身しなくても、戦わなくても、みんな優しくしてくれる。
たしかに、そうかもしれない。
ブロッサムはそう思った。
けれど、それじゃいけないとも、同時に思っていた。
「それじゃだめなんです……わたしは、シャイで引っ込み思案なわたしが、ただ嫌なだけでした」
立ちあがりながら、ブロッサムはかつて自分が変わりたいと思っていた理由を思い出していた。
ただ、自分が嫌いなだけだった。
けれども。
「けれど、わたしはみんなに出会えました」
ブロッサムの脳裏に浮いてくるのは、いままで出会ってきた同級生や先生、そして、何より。
「強くて優しい、わたしの仲間……わたしは、みんなのことが大好きなんです」
みんながいたから、頑張れた。
みんながいたから、少しずつでも、変わっていけた。そしてこれからも、新しい自分を作っていける。
そう思うだけで、ブロッサムに力が湧いてきた。
キュアブロッサム・ミラージュが地面を蹴り、ブロッサムとの間合いを詰め、攻撃をしかけてきた。
だが、ブロッサムはその攻撃をいなし、キュアブロッサム・ミラージュの背後に回りこんで彼女の手首を捕まえた。
「あなたは、ちょっと前のわたしです。新しく自分を作っていくことに、臆病になっていたわたしなんです……わたし、変わります。チェンジ、するんです」
そう宣言して、ブロッサムは手を離した。
キュアブロッサム・ミラージュは、ブロッサムから間合いを離れ、向き合った。
その瞳には、寂しさのようなものが見えていた。
「……もう、シャイで引っ込み思案なわたしは、いらないのね?」
「いいえ」
キュアブロッサム・ミラージュからの問いかけを、ブロッサムは否定して、そっと彼女を抱きしめた。
「わたしがわたしらしくいるためには、シャイで引っ込み思案なわたしも必要なんです……だから、わたしは、シャイで引っ込み思案な自分も、大好きです」
その言葉に満足したのか、キュアブロッサム・ミラージュはそっと目を閉じ、光へと変わった。
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プリキュアパレスの外は、デザートデビルとの激戦が繰り広げられていた。
初撃をマリンが与えたのはいいのだが、蛇のように目と口を備えたデザートデビルのしっぽから、太陽光線を圧縮したのかと思われるような光線が発射されると、プリキュアパレスの白亜の壁をいとも簡単に貫通してしまった。
その様子を見ていたマリンとサンシャインは、そのあまりにも大きい威力に呆然としてしまった。
だが、ムーンライトとセイバーがその口を蹴り下ろし、無理やり閉ざさせた。
「プリキュアパレスを守りながら戦うのよ!」
「気を引き締めていかないと、一瞬で焼き肉になるぞ!!」
「こんなときに、嫌なことを言わないで!!プリキュア!シルバーフォルテウェーブ!!」
「事実を言ったまでだろ!ユグドフォルテウェーブ!!」
冗談を言い合いながら、セイバーとムーンライトは蛇の頭にそれぞれフォルテウェーブを叩きつけた。
その一撃で、蛇の頭はつぶれ、光線の発射口が減った。
だが、そんな余裕はいつまでも続くわけがなかった。
二人ですらその体格差で徐々に押されていってしまい、プリキュアパレスの壁に叩きつけられてしまった。
「……あたしたち、試練を乗り越えて、パワーアップしたはずじゃなかったの……?」
「「弱音を吐くのはやめなさい/まだ早いぞ」」
マリンの前に立っているムーンライトとセイバーは同時にそう告げた。
そうしている間にも、ようやく破壊した二つの蛇の頭が再生していった。
「……ちぇっ、もう再生した……」
「やはり、みんなの力が一つにならないとだめみたいね」
セイバーがその再生力に辟易しながらつぶやくと、ムーンライトが薄い笑みを浮かべてそう返した。
つまり、デザートデビルを倒すには、五人そろわなければいけないということだ。
それを理解したサンシャインはマリンを励ました。
「ブロッサムが来るまで、頑張ろ!!」
サンシャインからの声援に、マリンは気合いを入れなおし、コフレに声をかけた。
「コフレ!もう一頑張り、いくよ!!」
「合点ですっ!!」
そこから少し離れた塔の上には、
「花よ、輝け!プリキュア!ピンクフォルテウェーブ!!」
ブロッサムが放ったフォルテウェーブは、デザートデビルの顔面に命中した。
フォルテウェーブが飛んできた方向に全員が視線を向けると、ブロッサムがタクトを構えていた。
「お待たせしました!!」
「「……遅かったな/わね」」
セイバーとムーンライトは安心したように微笑みを浮かべたが、ブロッサムにそれを見られまいと背を向け、そう返した。
マリンはようやくやってきたブロッサムに抱き着き、満面の笑顔になっていた。
「いいってことよ!!」
「……さぁ、みんなそろったところで、デザートデビルを倒しましょう!!」
サンシャインが音頭を取ると、デザートデビルが蛇頭のしっぽから大量の光線を吐きだした。
追いかけてくるその光線を、セイバーは回避することなく、背後に浮かんでいる刃のうち、二つをつかみ取り、心の花の力を流し込み、投げつけた。
二つの刃は、意思を持っているかのように動き、セイバーの盾となり、光線を防いだ。
だが、デザートデビルはここで一つのミスを犯した。
セイバーが引きつけ役になっていたおかげで、上空にいたブロッサムたちに注意がむいていなかったのだ。
ゆえに。
「花よ、煌めけ!プリキュア!ブルーフォルテウェーブ!!」
「「花よ、輝け!プリキュア!ピンクフォルテウェーブ/シルバーフォルテウェーブ!!」」
三つのフォルテウェーブが、上空から同時に襲い掛かってきた。
そして、フォルテウェーブが着弾すると、追撃とばかりに、セイバーの背後に立ったサンシャインがシャイニータンバリンを構えた。
「プリキュア!ゴールドフォルテ・バースト!!」
大量の心の花の光がデザートデビルに襲い掛かってきた。
その猛攻に、さすがの巨体も耐えきれず、わずかながら、体勢が崩れた。
それを見逃すことなく、ムーンライトはサンシャインに声をかけた。
「フォルテッシモよ!!」
「はい!!」
「「プリキュア!フローラルパワー・フォルテッシモ!!」」
ムーンライトとサンシャインが同時に叫ぶと、心の花の光をまとい、デザートデビルへと向かっていった。
それを見たマリンは羨ましそうにしていた。
「いいなぁ……ムーンライトとフォルテッシモ!!」
「……わたしたちも」
ふと、背後にきたブロッサムが困り顔でマリンに問いかけると、マリンは目をキラキラと輝かせて。
「フォルテッシモする?!」
と問いかけた。
その問いかけに、ブロッサムは微笑みながら、しましょう!!、と返した。
「よーし!いくよーっ!!」
「おーっ!!」
「「集まれ!二つの花の力よ!プリキュア!フローラルパワー・フォルテッシモ!!」」
今度は
その様子を見送ったセイバーは、やれやれ、と肩をすくめたが、自分だけ置いていかれるというのも面白くないらしく、右手に心の花の力を集め、高速でデザートデビルへと向かっていった。
「心よ、
轟っ、という音とともに、獅子の頭を象った心の花の光が、二つのフォルテッシモとともにデザートデビルを貫いた。
三つのフォルテッシモを受けたにも関わらず、デザートデビルは健在だったが、大きなダメージを受けたようで、その体は大きく揺らいでいた。
その隙を見逃すほど、ブロッサムたちは甘くはない。
五人は、声をそろえて、ハートキャッチミラージュを呼びだした。
「「「「「ハートキャッチミラージュ!!」」」」」
「いまこそ!」
「「新しい力を試す時ですぅ/ですっ!」」
「パワーアップの種でしゅ!!」
コロンとシプレ、コフレが叫ぶと、ポプリがポシェットからパワーアップの種を取り出し、ハートキャッチミラージュにセットした。
すると、ハートキャッチミラージュから光があふれ、五人を包みこんだ。
「「「「鏡よ、鏡!プリキュアに力を!!」」」」
「鏡よ!大樹の騎士に力を!!」
全員がハートキャッチミラージュに祈ると、鏡面に六つの花が浮かびあがり、光を放った。
すると、ミラージュに取りつけられていたピアスとティアラ、そして羽飾りがブロッサムたちのもとへと飛んでいった。
同時に、ブロッサムたちは白い、ウェディングドレスのようなコスチュームへと変わった。
セイバーもまた、その姿が変わった。
鳶色だった髪は金髪に染まり、ムーンライトと同じか、それ以上に長くなり、緑色の羽飾りで一本にまとめられていた。
そして、胸元には黄、袖口に赤、耳に青の羽飾りが取りつけられ、コスチュームもタキシードのようなものへと変わり、マントも前に掛ける部分がなくなっていた。
そして、その手には、二回り以上は大きくなった、淡い紫に輝く大剣が握られていた。
「「「「世界に広がる、一面の花!ハートキャッチプリキュア!スーパーシルエット!!」」」」
「世界を救いへ導く光!ユグドセイバー!レイディアントシルエット!!」
白く輝く五人の姿に、デザートデビルは脅威を感じたのか、身じろいでいた。
その隙を逃さず、セイバーは心の花の力を右手にまとわせ、デザートデビルに突進した。
右の掌底をデザートデビルに当て、背後へと抜けたセイバーはエターニアハートを脇に構え、心の花の力をエターニアハートに込めた。
「俺のすべてで、悪しきを断つ!!ハートライト・レイクエム!!」
心の花の力を込められ、強い光を放っているエターニアハートが、デザートデビルの背後を襲った。
同時に、ブロッサムたちも四人の心を一つに重ねた。
その瞬間、彼女たちの背後に巨大な女神が姿を現した。
「「「「花よ、咲き誇れ!!プリキュア!ハートキャッチオーケストラ!!」」」」
女神は、まっすぐにデザートデビルへとむかっていき、右手を握りしめ、心の花の力をまとわせ、デザートデビルを頭上から殴りつけた。
すると、デザートデビルの背後に四輪の花が浮かびあがった。
女神がデザートデビルを両手ですくいあげると、花はくるくると回り、デザートデビルを浄化の光で包みこんだ。
消えていくデザートデビルを見守りながら、ゆりはふと口を開いた。
「試練を乗り越えて、気づいたことがあるの」
「うん?」
「砂漠の使徒を倒すには、わたしたちがただ協力するだけではだめ。一人一人が成長し、自立したうえで、そのうえで力を合わせないと」
「……そのために、わたしたちは自分自身と向き合う必要があったんですね」
だが、それは単に戦うということではなかった。
自分の負の一面を受け入れ、本当の自分を見つめ直し、成長することでもあったのだ。
ね、とマリンはブロッサムに微笑みかけると、ブロッサムは微笑みを返した。
あとがきの後日談(スキット風)
えりか「にしても……かっこよかったっしゅ……スーパーシルエット」
ゆり「そうね……ところで、つぼみはなんで赤くなっているのかしら?」
つぼみ「ふぇ?!……い、いいいいいいえ、なななななななんでもないでしゅ///」
いつき「なんでもありそうな感じだけど」(苦笑
シプレ「セイバーのレイディアントシルエットがかっこよかったから思い出して赤くなってるんですぅ!」
つぼみ「し、シプレ??!!」
ゆり「なるほどね……たしかに、かっこよかったとは思うわよ?」
菖「なんか、棘のある言い方だなぁ……」(苦笑
えりか「う~む……あれをタキシードと捉えたら、あたしらはウェディングドレスってことになるのかなぁ……」
コロン「だとしたら、セイバーの花嫁は誰になるのかな?」
つぼみ「は、花嫁ですかぁぁぁぁ??!!///」
ゆり「……コロン、少しからかいすぎよ///」
コロン「そうかな?セイバーはどうお……あれ?」
えりか「菖さんだったら、用事があるからって出てったよ?」
ゆり&コロン「「逃げたわね/ね」」
つぼみ「お、お嫁さん……菖さんの、お嫁さん……」
いつき「つぼみ~?帰っておいで~??」