ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
アンケートにお応えして、ちょっとしたファンタジーなお話を。
といっても、枠組みとしてはオールスターズ編に組まさせていただくわけですが。
今回はその序章ということで。
次回以降、のんびり気まぐれにやっていきます。
なお、シリーズとしてはタイトルの通り、「時を超えるセイバー」としておきます。
……セイバーってみると、なぜかFate/の最優のサーヴァントクラスを思い浮かべてしまうあたり、私はFateにはまってしまっているのだろうか……
あ、あとがき代わりのスキットはありませんのでご容赦を。
とある休日の夕方近く。
その日も、菖は遺跡探検をしていた。
希望ヶ花市の近くの山中にある洞窟の中にある遺跡で、昔、それこそ幼少時代にも訪れたことがあるうえに、地形的に何かトラブルの種になるようなものは見当たらなかったため、無事に終わると思っていた。
だが、不可思議なことというものは、いつ、どこで発生するかわかったものではない。
一通りの調査を終わらせ、帰ろうとしていた菖はいま、ブラックホールのような穴に吸いこまれようとしていた。
「くっそ!!冗談じゃないぞ!!なんなんだよ、これは!!」
射出ワイヤーを近くにあった岩に巻きつけ、この現象が収まるまで待機しようと考えた。
緊急避難としては、当然のことなのだが、今回の菖は不運が重なる日だったようだ。
ワイヤーを巻きつけた岩が濡れていて滑りやすくなっていたのか、ワイヤーが外れてしまい。
「なっ??!!」
菖は空中に放り出され、穴の中へ吸いこまれていった。
「ちょ、ま……嘘だろーーーーーーっ??!!」
穴に吸いこまれ、その中へ消えていった菖の絶叫が、洞窟の中に響いた。
だが、その叫びとともに、穴は忽然と消え、後に残ったのは菖が調査資料として持って来ていた書籍と、いくつかの調査道具だけだった。
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人が忽然と消えていなくなる、という怪奇現象がある。
その現象を、日本では「神隠し」、イギリスでは「
その世界へ足を踏み入れた人間がどうなったのか、それは誰も知らない。
いや、戻ってきた人間がいないのだから、知る由もない。
消えてしまった人間がどうなるのか、それはまさに「神のみぞ知る」というところだ。
これより語るは、
不可思議な穴に吸いこまれ、時を超え、幼き日の
そして同時にそれは、菖にとって忘れられない経験でもあった。
もっとも、落ちた先で出会った彼女たち――プリキュアたちは、その時の記憶がほとんど抜け落ちてしまっているため、覚えていないのだが。
それでも、記憶の奥底に、その時に出会った青年のことは刻まれている。
菖と同じ、歴史や伝承が好きで、遺跡についての見識が深く、穏やかな青年と過ごした時間が。
これは、プリキュアたちの過去の物語。
彼女たちの記憶の底に眠る、一人の青年との物語。