ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
この二人、ぶっちゃけ、一次創作で見習い陰陽師が主人公の作品を書いている私個人の非常に個人的な感情と感想を語らせるためだけに出しました!
まぁ、世界が闇にのまれる、なんて危機にこの二人どころかほかのウィザードたちやカミガカリたちも立ち上がらないわけがないので!
ミラクルとマジカルは先輩プリキュアたちに後を託され、歌が聞こえてきた方へと走っていた。
だが、二人の耳にはすでに、先ほどの歌は聞こえていなかった。
それでも、マジカルは歌が聞こえてきていた方へ走り続けていた。
すると。
『ラ~ラ~リ~ララ~♪』
ミラクルの歌声がマジカルの耳に届いた。
まさかと思いながらも、マジカルは走りながら、先ほど聞こえてきた旋律を口ずさんだ。
「ルラララ、ル~ルラ~♪ラ~ラ~リ~ララ~♪」
やがて、マジカルの口ずさむ旋律は、ミラクルの歌声と重なった。
その瞬間、もともとこの歌を歌っていた女の子の声が響いてきた。
同時に、上空に一筋の光が現れた。
「あの光は……!」
マジカルは意を決してその光に向かって飛び込んでいった。
光の先は、まるで宇宙にでもいるかのような細かな光にあふれた空間だった。
その空間の先には、自分が探していた大切なパートナーの姿があった。
「マジカル!無事でよかった!!」
「ふふっ、当たり前でしょ!楽勝よ!」
実のところ、さっきまでいっぱいいっぱいだったというのに、いつものように強がりを言って、ミラクルに微笑みかけた。
二人は手をつなぎ、先ほど飛び込んだ光とは違う、もう一つの大きな光の方へとむかっていった。
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その頃、ソルシエールの
ソルシエールに見つかり、回れ右して逃げようとしたが、トラウーマが先に背後に控えていたため、逃げられずにいた。
「もう逃げられませんよ!!」
トラウーマは逃げ惑う三匹の妖精にそう告げた。
だが、工房にある鏡からミラクルとマジカルが飛び出してきたことで、そちらに意識を持っていかれてしまった。
「魔女ソルシエール!」
「プリキュアのみんなを、返してもらうわ!!」
最初に目を付けた二人のプリキュアが、まさか工房までたどり着くとは思わなかったのだろう。
だが、感情というものが欠落しているかのように冷静なソルシエールは、相変わらず抑揚のない声で、淡々と告げた。
「言っておくが、もう助けは来ないぞ。ほかのプリキュアも、二人の守護騎士もすでに捕らえたからな」
「ほぉ。そいつぁ好都合ってもんだ。余計な邪魔が入らなくて済む」
驚愕するミラクルとマジカルのものではない、明らかにこの場にいないはずの人間の声が、工房に響いた。
さすがにそのことにはトラウーマも驚いたのか、慌てた様子で呼びかけた。
「何者です?!プリキュアと守護騎士以外にこの場に来られるものなど、ナシマホウ界には……」
「いるんだな、これが」
「……ま、お前らにも知られないように存在しているから、知らないのも無理はないが」
トラウーマの呼びかけに答えるように、工房の床に突然、真円に五芒星が記された魔法陣と目玉のような記号が記された魔法陣の二つが出現した。
その魔法陣から、錫杖を手にした三白眼の眼鏡の青年と、感情が一切読めない青年の二人が姿を現した。
「初めまして。世界結界の守護者から派遣された魔法使いです」
「君たちの行動があまりにも目に余る……よって、君たちを制裁することになった。恨んでくれて構わない。が、これも僕たちの仕事だ」
「世界結界の守護者……?」
そんなものは聞いたことがないといわんばかりの態度で、ソルシエールは問い返した。
が、二人のうちの一人をよく知っているマジカルは、目を丸くして問いかけてきた。
「って、ちょ、えっ?!ま、まさか友護さん?!お姉さまのライバルだった友護さん??!!」
「お姉さま?……あぁ。リズのことか?」
リズ、というのはマジカルの、リコの実の姉のことだ。
魔法学校を首席で卒業し、現在は魔法学校の先生となるために勉強をしている、とても優秀で、リコにとって自慢の姉だった。
その彼女に心当たりがあるということは、間違いない。
だが、彼から返ってきた言葉は、そんなリコの印象とはまったく真逆のものだった。
「ライバル?あんなのが??魔法界じゃたしかに、一、二を争う強者かもしれんが、神秘が薄れたこっちの世界で磨かれた魔法を学んできた俺としては、正直、子供じみてたから相手にならなかったけどな」
手加減することの方が大変だった、とでも言いたそうに問いかけに答えてきた青年の言葉に、マジカルは固まった。
だが、同時に、その辛辣さから、彼が姉から聞いていたナシマホウ界の魔法使い、桜森友護で間違いないと悟った。
リズやマジカルたち魔法界の魔法使いを擁護すると、彼女たちは決して弱者というわけでも、修行が足りないというわけでもない。
だが、科学技術に居場所を奪われ、それでもなお生き残りをかけて磨かれてきたナシマホウ界の魔法と比べれば、魔法が当たり前に存在している魔法界の魔法のほうが数段劣ることは当然のことだ。
だから友護は、魔法界の魔法使いたちを『腑抜け』と称し軽蔑しているのだ。
もっとも、それは魔法が偏在する世界に生まれた彼女たちへの羨望と嫉妬が混ざっているためとめ言えなくはないが。
「よくはわかりませんが、ソルシエール様の邪魔をしようとしていることはわかりました」
そんなやり取りをしている彼女たちを横目に、訳が分からない様子でソルシエールとは異なり、トラウーマだけはソルシエールの魔法を邪魔しに来たと察知し、身構えてきた。
「ならばあなた方はわたくしめがお相手いたしま……」
「術力強化」
「縛っ!」
トラウーマが乱入者二人に宣言しかけた瞬間、メガネの青年は杖をもう一人の魔法使いにむけ魔法を放った。
魔法をかけられた青年はトラウーマに向かって一枚の札を飛ばし、力強く一言だけ口にした。
その瞬間、札から光のロープが伸び、トラウーマに絡みつこうとした。
だが、さすがに馬の姿をしているだけあって、動きは俊敏で、なかなか捕獲できなかった。
乱入してきた二人の魔法使いがトラウーマを相手にしている一方で、ミラクルとマジカルはソルシエールと戦っていた。
だが、彼女自身も魔法使いとしての実力はかなり高いらしく、何もない場所からいきなり自分のカチューシャの飾りと同じ、割れたハート形のはさみを呼び出し、ミラクルとマジカルを挟み込んだ。
大きさもそうだが、挟む力も大きかったらしく、二人の変身は解除され、地面に倒れてしまった。
だが。
「モフルン!」
「もう一度、変身よ!!」
「モフゥッ!!」
ふらふらしながらも立ち上がり、近くにいたモフルンに呼びかけ、二人はモフルンと手をつないだ。
「「キュアップラパパ!サファイヤ!!」」
変身の呪文を唱えた瞬間、二人はモフルンと一緒に光に包まれた。
光がおさまると、先ほどまでの紫とピンクのコスチュームではなく、二人ともそろって青を基本とした天女のようなデザインのコスチュームへと変身した。
「姿を変えたところで同じこと!」
ソルシエールは再び、同じ魔法で二人に攻撃を仕掛けた。
だが、先ほどのコスチュームと違い、このコスチュームは飛ぶことが出来るらしい。
二人は空中に逃れ、最初の魔法を回避したが、再び同じ魔法を今度は二人の背後に出現させた。
当然、その襲撃を受けた二人は再び床に倒れ、変身が解けてしまった。
だが。
「「キュアップラパパ!!」」
再び二人は変身し、ソルシエールに立ち向かっていった。
その姿に、トラウーマは最初に出会った時と何かが違うことを察した。
それはソルシエールも同じらしい。
「なぜ何度も立ち上がる?」
「伝わったのよ、みんなの想いが」
「諦めない、強い心が」
プリンセスプリキュアやキュアエコーだけではない。
ハピネスチャージプリキュアのみんなや、ピーチ、ブロッサム、メロディ、ハッピーそしてセイバーは、さっきまでの戦いで決して折れることはなかった。
自分たちは折れてしまったが、約束を守るためにもう一度立ち上がることができたし、もうあきらめないと誓った。
だから。
「この思いがある限り!!」
「わたしたちは!!」
「「絶対にあきらめない!!」」
プリキュアといっても、彼女たちはまだ二十年も生きていない、女の子だ。
けれど、みんなと一緒にいて、わかったことが二人にはある。
それは、不屈の心。
どんなことがあっても、どんなにつらい思いをしても、決してあきらめずに前に進む心。
ミラクルとマジカルは、先輩プリキュアたちから、そして、二人の守護騎士から、その心を受け取った。
だからこそ、目の前にいる強大な敵に立ち向かうことができるのだ。
「……まれ……黙れっ!!」
その瞳の輝きが気に入らないのか、ソルシエールは再び、自身が身につけているカチューシャと同じ形の鋏を虚空から呼び出し、二人に向けて飛ばした。
だが、ミラクルとマジカルは、それをはじき返した。
ソルシエールが弾かれた鋏を回避し、空中に飛び上がると、埃の中から、同じく飛び上がってきたミラクルとマジカルが手をつなぎ、二人の合体技をお見舞いした。
「「プリキュア!トルネード!!」」
二人で作り出す渦が、ソルシエールに襲いかかり、ソルシエールはなすすべなく吹き飛ばされ、背後にあった本棚に背中を打ち付け、地面に倒れた。
まさか、自分の主が負けるなどと思ってもいなかったトラウーマは、その光景を見て、口を開き、呆然としていた。
そのすきを見逃すほど、乱入してきた二人の魔法使いは甘くはなかった。
「行動制限!」
「オンキリキリ、カラカラ、シバリ、ソワカ!!」
魔法使いたちの鋭い詠唱が聞こえた瞬間、トラウーマの体は光の環で拘束された。
ナシマホウ界の存在だから、と甘く見ていたためか、トラウーマはそのまま床に倒れてしまった。
ついでに、もうこれ以上喋るなと言わんばかりに、光の鎖がトラウーマの口を縛り付けた。
「ルラララ、ルルラ~♪ラ~ラ~ル~ルラ~♪」
すると、突然、工房の隅の方からミラクルとマジカルは何度も聞いた歌声が聞こえてきた。
歌が聞こえてくる方へ視線を向けると、そこには本棚に寄りかかりながら歌っている大きなハート飾りのカチューシャをつけた、小さな女の子がいた。
「やめろ!そんな歌など、聞きたくもない!!」
歌が聞こえてくると、突然、ソルシエールが歌声を拒絶し始めた。
何度となく聞こえてきた歌声と、歌が聞こえるたびに姿を現した小さな女の子に、マジカルは疑問を覚え、何かを知っているような風であるソルシエールに問いかけた。
「あの子は、いったい?」
「……お前たち、心は伝わると言ったな……」
マジカルの言葉に返ってきた言葉は、衝撃の言葉だった。
それは、ソルシエールの哀しい過去に、そして、彼女がプリキュアの涙を求めた理由だった。