ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
次回はいよいよミラクル・マジカルが合流するんですが……
まぁ、ともあれ本編をご覧ください
相棒と離れ離れになり、自分一人ではどうしようもない敵と戦うことになり、その敵から執拗なまでに攻撃をされ、ミラクルもマジカルも、精神的にもう限界だった。
そんなマジカルに、エコーは問いかけた。
「キュアマジカル、あなたはなんのために今まで戦ってこれたの?」
「それは……」
エコーの問いかけに、マジカルはこの町に来た時のことを思い出していた。
『二人で、立派なプリキュアになる』
それが、ミラクルと、みらいと誓った言葉だった。
けれど、一緒にそう誓ったパートナーはいま、ここにはいない。
「お花見は?」
不意に、フローラがマジカルに問いかけてきた。
こちらの世界に、ナシマホウ界に来た時に最初に出会った彼女たちから、プリキュアに会いたいのなら、と誘われたのだ。
「みんなでお花見にいくんじゃなかったの?」
フローラのその問いかけに、マジカルの目に再び光が灯り始めた。
確かに、約束した。ミラクルと、みらいと一緒にお花見に行くと。
そのためにも。
「そのためにも、そんなところで寝てる場合じゃないだろ?」
いつの間に手にしていたのか、青い弓を構え、矢を放っているセイバーの言う通り。
こんなところで倒れていられない。早く、ミラクルを見つけなければ。
自分がやるべきこと、やらなければいけないことを思い出したマジカルはようやく立ち上がり、セイバーの隣に立った。
「さっさと切り抜けて、みんなを探す……いけるな?」
「はいっ!!」
先ほどの冷たい目とは違う優しい声色で問いかけるセイバーに、マジカルはしっかりと返した。
それを皮切りに、セイバーは口角を吊り上げ、番えた矢を偽ピエーロに向かって放った。
同時に、フローラたちとマジカルも偽ピエーロや偽アクダイカーンに向かっていった。
戦う決意を取り戻したためか、先ほどまでとはまるで別人の動きをするマジカルに圧倒され、偽ピエーロと偽アクダイカーンは吹き飛ばされた。
そのすきを見て、フローラたちはトワの故郷ホープキングダムの城を象ったアイテム、プリンセスパレスにドレスアップキーを差し込み、ロイヤルドレスへとドレスアップした。
「「「「モード・エレガント!ロイヤル!!プリキュア!!グラン・プランタン!!」」」」
「「……ドリーミング……」」
ロイヤルドレスで放たれる最強の浄化技の光を浴びて、偽ピエーロと偽アクダイカーンは浄化され、花火となって消えていった。
「ブルーミング……ごきげんよう」
その瞬間。
『ルララ、ラ、ル~ルラ~♪ラ~ラ~リ、ララ~♪』
不意に、その場にいた全員の耳にか細い歌声が聞こえてきた。
幾度となく聞こえてきたその歌声に、マジカルは疑問を覚えた。
それは、セイバーたちも同じだったようだ。
だが、考察を行うことを許すつもりはないらしく、今度は砂漠の王デューンと、かつてすべての世界を統合し、自分の管理下に置こうとしたスーパーコンピューター・メビウスの偽物が姿を見せた。
「……マジカル。ここは俺らに任せて、君は早く歌の方へ」
「えっ?!で、でも!!」
「手がかりがない以上、あの歌を追った方がこの場にいるよりもパートナーが見つかる可能性が高い」
さすがに分が悪いと感じたのか、セイバーはマジカルにそう言った。
要は、足手まといだから早く行けということか。
そう感じたマジカルだったが、それをエコーが否定した。
「マジカル。セイバーはあなたが邪魔だから行かせようとしてるんじゃないよ?」
「え?」
「パートナーと一緒のあなたなら、きっとソルシエールを止めることができる。だからあなたには先に行ってほしいの」
エコーの言葉に、マジカルは思わずセイバーを見た。
今度は青い弓ではなく、金色の手甲をまとい、偽デューンと偽メビウスと渡り合ってるためか、セイバーはその視線に気づいていないようだ。
「で、でも、セイバーは……」
「ううん、セイバーもね、大事な人たちとはぐれたから、探したいんだよ」
その大事な人たちというのは、キュアハートが言っていたプロポーズした五人であることは言うまでもない。
その五人がこのメンバーの中にいないことは、なんとなく察しがついたが、ならばなぜあれほど冷静でいられるのか疑問だった。
その疑問を察したのか、エコーは苦笑を浮かべながらもさらに続けた。
「『うじうじ悩んでたって仕方がない。戦うしかないなら戦ってみんなを探して助ける』って、セイバーは思ってるんじゃないかな」
「で、でもそれなら戦いながらでも……」
「それに、わたしもあなたならパートナーを見つけて、ソルシエールを止めることができると思う。だって、あの歌は、まるであなたを呼んでいるようだったから」
そう言われてしまったら、もう行くしかない。
マジカルはエコーたちに、また後で、と告げて、歌が聞こえるほうへと走っていった。
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そのころ、ソルシエールが作り上げた世界の外側では、二人の男がベンチに座っていた。
一方は、高校生くらいであるというのに、まったく感情の読めない瞳をした、冷たい印象を受ける青年。もう一方は、眼鏡をかけた疲れた表情のぼさぼさ頭の青年だ。
どちらも、上空のただ一点に視線を集中させていた。
「……あそこだな」
「あぁ……ったく、固有結界か。また大規模な魔術を躊躇なく使いやがって……」
「さっきの話じゃ、この世界の魔術師じゃないんだろ?なら、こっちのルールを知らなくても仕方ない」
「だが、よっぽどじゃない限り魔法や魔術を秘匿することはこっちの世界じゃ絶対条件だ。それをあっさり破ってるんだ。ちょっときつくお灸をすえなきゃいかんよな?」
感情の読めない瞳をした青年が、明らかに怒りを込めた声色で上空を見つめ、呟いた。
どうやら、この青年はキュアマジカル――リコが本来住んでいる世界、『魔法界』のことを知っているようだ。
「なら、早いとこ行こう。良くない気配がどんどん強くなってきてる」
眼鏡の青年がそう告げると、どこから取り出したのか、一振りの杖を取り出し、地面を軽くたたいた。
その瞬間、二人の体は浮き上がり、まっすぐに見つめていた一点に、ソルシエールの城へと向かっていった。
まぁ、誰が乱入してくるか、みなさん、お察しの通りかと(-▽-;
というか、こんな事態になって動かないはずないですからね、この二人が
どんな具合に引っ搔き回すのか、それは次のお楽しみ、ということで