ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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忘れがちなことなのかも知れないけど、プリキュアって、最初からプリキュアじゃないんだよね。徐々に「なっていく」ものなんだよね……

まぁ、それがわからないからどっかのドブネズミ(まだ言う)は「プリキュアたるもの、こんなことで泣いたらあかん!!」なんて馬鹿なこと言って、「プリキュアって言っても、14歳の女の子なんだよ!!」って大先輩からお説教されるシーンがあったんでしょうけど

あ、ちなみにタイトルの通り、今回は「二人」に出てもらいます
まぁ誰が出てくるかは、皆さんすでにお察しと思いますが


みんなで歌う、奇跡の魔法~6、無力な自分たち~

自分たちを助けてくれたプリキュアたちが囚われてしまったことを知り、ミラクルとマジカルの心は動揺した。

その隙をつくかのように、ソルシエールが放った敵はプリキュアたちを攻撃してきた。

 

「いい加減、しつっこい!!」

「どうあっても、プリキュアの涙を手に入れるつもりってこと?!」

「まったく!」

「いい加減に、してほしいですわ!!」

 

セイバーがマジカルを守りつつ、プリンセス組が口々にそう言いながら交戦していた。

その攻撃の合間を縫って、ハッピーたちスマイル組が最後に戦ったピエーロを模した敵は執拗にマジカルを狙っていた。

そんな戦闘が続くと、セイバーもカバーしきれなくなり、攻撃がマジカルへとむかっていった。

 

「しま……っ!!??」

「きゃーーーーっ!!」

 

攻撃をまともに受けてしまったマジカルは吹き飛び、背後にあった岩山に背中を打ち付け、地面に落ちてしまった。

偽ピエーロはマジカルにむかって追撃を行った。

その追撃をセイバーはカバー出来なかったため、攻撃がまっすぐにマジカルへ向かっていた。

だが、その攻撃はマジカルに直撃することはなかった。

 

攻撃が命中する寸前に、一筋の白い光がマジカルにむかって飛んでいき、そのまま、直撃地点から離れた場所までマジカルを連れて行ったのだ。

 

「間に合って、よかった」

 

白い光の正体は、マジカルを地面に降ろしながら、そう口にした。

そう口にした彼女もまた、プリキュアだった。

ただし、フローラたちとは違い、よほどのことがない限り戦うことのない、幻のプリキュアであるが。

その幻のプリキュアとは。

 

「想いよ、届け!キュアエコー!!」

 

かつて、世界中を悪意で染め上げようとした悪意の集合体『フュージョン』の欠片、ふーちゃんと『友達』となり、言葉だけで暴走したふーちゃんを鎮静化したプリキュア、キュアエコーだった。

 

「「エコー!!」」

「来てくれたのですね?」

 

彼女の出現に、フローラたちは驚きつつ、嬉しそうに目を輝かせていた。

だが、セイバーは少し残念そうな顔をしていた。

 

「君も来たのか……君がいるってことは、アステアも?」

「うん……でも」

 

と、言いよどむエコーの顔を見て、セイバーもまた、相棒であるアステアとはぐれてしまったことを悟った。

だが、セイバーはそんなエコーに、そうか、と短く返し、マジカルの方へ視線を向けた。

地面に横になったまま、マジカルは起き上がる気配すらなかった。

その様子に、セイバーは苛立ちを覚え、エコーの方へ視線を向けた。

 

「……エコー、その子、頼めるか?」

「え?は、はい!!」

 

セイバーに突然、そう頼まれたエコーだったが、二つ返事で頷いた。

その言葉に、セイバーは感謝しつつ、再びマジカルを横目に見た。

その視線は、どこか冷たく、まるで期待した自分がバカだった、と言外に告げられているような気がしたマジカルは、さらに落ち込んでしまった。

 

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一方、マジカルとはぐれてしまった相棒(パートナー)のミラクルは、西洋的な雰囲気が漂う屋根の上で、ミュージアムの館長の姿を模した敵に防戦一方な状態になっていた。

それを知っていたブロッサムたちは、当然、援護に向かいたかった。

だが、彼女たちの目の前にも、別の敵がいたため、援護に回ることができなかった。

 

「ふんっ!!」

「あぁっ??!!」

 

偽館長のパンチで、ミラクルは吹き飛び、屋根から落ちてしまった。

だが、ミラクルが地面に激突することはなかった。

彼女が地面に激突する前に、一つ筋の銀色の光が、彼女を救い上げ、少し離れた場所に着地させたのだ。

その光の主を、ブロッサムたちは知っていた。

 

「守護騎士、アステア!!」

 

彼は一人の友達を、キュアエコーを守りたいという強い思いから生まれた、もう一人の光の戦士、アステアだった。

どうやら、彼もこの世界に連れてこられてしまったようだ。

 

「大丈夫か?」

「……なんで……」

 

アステアは抱き上げたミラクルを降ろしながらそう問いかけた。

が、ミラクルの口からは、およそ歴代のプリキュアならば出てこない言葉が出てきた。

 

「……なんで、わたしがこんな目に……かなうわけ、ないよ……あんな、怪物……」

 

いままでミラクルはプリキュアとして戦ってきた。

確かに自分とマジカルが一緒に戦ってきた化け物(ヨクバール)は手ごわかった。

だが、それもマジカルと一緒だったから、勇気を出し合って頑張って戦ってこれた。

 

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『立派なプリキュアになる』

 

その想いで、補習授業中であるにも関わらず、特別な許可を得て、ナシマホウ界に来た。

けれど、すぐに戦いに巻き込まれて、完膚なきまでに打ちのめされてしまった。

 

たしかに、自分たちは今まで『ヨクバール』という闇の存在と戦ってきた。

くじけそうになることもあったし、敵うはずがないと思った時もあった。

けれど、そんなときに自分の支えになってくれたのは、マジカル/ミラクルだった。

彼女がいれば、勇気を出して戦うことができる。

選ばれた戦士の輝きを放って戦うみんなと一緒に。

 

けれど、いまの自分は、何の力もなく、世界の隅っこで落ち込んでいるだけ。

相棒がいれば、勇気を出して立ち上がれるのに。

けれど、今はそのマジカル/ミラクル(相棒)が隣にいない。

 

ミラクル/マジカル、どこにいるの?

隣にあなたがいたなら、勇気を出し合い、立ち上がれるのに……

 

奇しくもミラクルとマジカルの胸には。パートナーを求める想いが重なっていた。


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