ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
とはいえ、ハートキャッチ組のメンバーは菖以外登場しませんが(-▽-;
ついでに、誠司といおな以外、ほとんど空気状態ですが、そこはご容赦を
あ、ちなみに時系列的には、フォーチュンがメンバー入りして少ししたあたりって感じです
ので、まりあさんはまだ復活してません
菖の元に、その二人は突然やってきた。
「「たのもーっ!!」」
「……って、なんだ、誠司といおなか……どうしたんだよ?」
「兄貴に鍛えてもらいたくて来たんだ!」
「菖さんに他流試合を申し込みに来ました!!」
道場破りが言いそうなセリフと一緒に、菖の目の前に誠司といおなが現れた。
何を思っているのか、そればかりは菖もわからないが、どうやら、思うところがあって、二人だけで他流試合を挑んできたようだ。
もっとも。
「「「おはようございま~す!」」」
ハピネスチャージ組の他の面々もやってきていたようだ。
とはいえ、いおなと誠司の二人ほど、気合いがはいっているわけではなく、どちらかというと、二人の付添人、という印象すら受けた。
菖にとって、誠司はもう一人の弟分でもあり、いおなは妹分。どちらも可愛いと思うからこそ、協力するのもやぶさかでないのだが、菖がこういうときに返す答えは決まって。
「悪い、無理」
だった。
それを聞いた瞬間、いおなと誠司は、目を丸くして。
「えぇぇぇぇぇっ??!!」
「ここは普通、弟分と後輩のために一肌脱ごう!、ってカッコイイセリフをいうところじゃないんですかっ??!!」
「やだよ、面倒くさい。というか、
「い、いま面倒くさいって言いましたぞ?!」
「菖さんの口から、その言葉が出るとは思わなかったなぁ……」
菖の口から、面倒くさい、という言葉が出てくるとは思いもしなかっためぐみたちは、驚愕で目を丸くしていた。
だが、それでも菖の答えも、誠司といおなの決意も変わることはなく。
「「お願いします!」」
「だめ」
「「お願いします!!」」
「やだ」
と、意味のない応酬が続いていた。
ちなみに、応援団三人はその様子を見ながら、いつ終わるのだろうか、と苦笑を浮かべていた。
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十分ほど、不毛なやり取りを繰り返していたが、とうとう菖の方が折れ、ひとまず、五人を部屋に上げることにした。
「……はぁ……ったく、強くなりたいってのはわかるけど、なんで俺なんかを?」
「いや、兄貴以外にいないだろ?!」
菖がため息交じりにそう話すと、誠司が驚いたように返してきた。
基本的に、泉地流は他流試合を好まない。
理由は定かではないが、仁頼が言うには、力を求めすぎる結果になりかねない、ということらしい。
力は争いを引き寄せ、争いは流血を招く。流血は穢れを呼び、穢れはやがて澱みとなり、よくないものを引き付ける場となる。
そもそも、泉地流は剣で狩りを行うための技術と、護身のための体術が混ざり合い、生まれた流派であるため、ひっそりと受け継がれていくことが一番、なのだとか。
争いをよく思わない菖としても、仁頼のこの教えに従うことにまったく違和感がなかった。
もっとも、剣術である以上、精神鍛錬の面も備わっているため、それなりに修業はしていたし、仁頼も何かと理由をつけて明堂院流との他流試合を行わせていたことは公然の事実であるのだが。
「強くなりたいって理由だけで稽古に励むのは別に悪いことじゃないと思うけど、なら手に入れた強さで何をしたいんだ?」
「それは……」
「わたしは、プリキュアハンターを倒して、一刻も早くお姉ちゃんを取り戻したい!」
菖の問いかけに、いおなは即答した一方で、誠司は口ごもってしまった。
その答えに、菖はそっとため息をついた。
「……俺もそこまで深いわけじゃないけど、誠司。今のお前に稽古をつけることが危険だってことくらいはわかるぞ」
「なっ?!なんでだよ、兄貴!!」
「……厳しいことを言うようだが、構わないか?」
「あぁ!」
さすがに、二人目の弟分、それも菖と湊とは違い、一般人の域を出ないからこそ、菖はあえて厳しい言葉をぶつけることにした。
「前に、強さって何か、聞いたこと、あったよな?」
「あ、あぁ……」
「俺が思うに、強さってのは『信念』とか『覚悟』なんじゃないか?」
「信念と覚悟?」
オウム返ししてきた誠司の言葉に、菖はうなずいた。
「覚悟が備わっていれば、さっきのいおなみたいにすぐに言葉に出すことができるはずだ。そして、強い信念があれば、たとえ世間一般では悪とみなされても、それを貫くことや夢に向かって突っ走ることだってできるはず。要は周りから何と思われようとも貫き通すって意思や心ってのが、強さだと俺は思うわけよ」
その言葉を聞いて、誠司はうつむいてしまった。
なぜなら、誠司が力を欲している理由は、幼馴染の、めぐみの力になってやりたいがためだった。
だが、めぐみの力になる、ということが、果たして、戦いにおける強さを指すのだろうか。
プリキュアに並ぶ戦士になれない自分には、戦う力ではなく、もっと別の方法があるのではないか。
そんな考えが、ここ最近では渦を巻いていて、それが「迷い」となっていた。
その迷いのせいで、先ほどの質問に即答できなかったのだ。
「迷いが生じるってことは、その程度の信念だったということか、貫き通す覚悟が足りないってことだ。そんな状態で力を付けても、中途半端なものになってしまう」
そこまで言って、菖は鋭い視線を誠司に向けた。
「誠司、力が欲しい、力を得たいと思うのは勝手だ。めぐみたちと一緒に戦おうが、対決しようが、はっきり言ってどうでもいい。だがな……中途半端にかかわるな!」
一瞬、ビリッ、と空気が震えた。
思わず、その場にいた全員が菖を見て、目を疑った。
そこにいるのは、たしかに自分たちの頼れる兄貴分、春川菖だ。だが、いつもの穏やかな雰囲気はそこにはなく、まるで敵と対峙しているかのような雰囲気すら感じられた。
「中途半端な覚悟で身につけた力ほど弱いものはない!そんな力でプリキュアと一緒に戦おうなんざ、片腹痛い!!」
それは、自分が経験しているからこその言葉だった。
誠司と菖は、年齢こそ違うが、置かれている状況はまったく同じだ。
大切な幼馴染がプリキュアとして、世界を守るために戦っている。
それを黙って見ていることができるほど、二人とも大人ではないし、彼女が大切だからこそ、力になりたい、隣で戦いたいと思っていた。
幸いにして、菖にはその機会があったが、誠司にはそれがない。だからこそ、誠司は焦っているのだろう。
そして、焦っていることはいおなも同じことだ。
だが、何事も焦りすぎることはよくない。
一度立ち止まり、頭を冷やす必要があると感じたがために、あえて厳しく当たったのだ。
そして、それは功を奏したらしい。
一刻も早く力を付けたい、稽古をしたい、と思っていた二人の心が落ち着いたようだ。
「……さて、それがわかったんなら……さっさと着替えろ。ほかの三人も一緒だ」
「「「わ、わたしたちもですかっ??!!」」」
「「え?だ、だって他流試合は……」」
「基本的には、な?俺とゆりの知り合いが直接申し込んできた場合は受けて構わないって言われてるんだよ」
と、いたずら小僧のような笑みを浮かべて驚愕する五人に返した。
どうやら、言葉遊びでだまされたらしい、ということにきづいたいおなと誠司は、盛大にずっこけ、脱力したのだった。
あとがき代わりのその後の話(スキット風)
~稽古後~
誠司、いおな「「……ぜぇ、ぜぇ……はぁ……はぁ……」」( □ ;
菖「まったく……ちとだらしなくないか?」(-ω-
誠司「い、いや、兄貴……そうはいうけど、なんだよ、さっきの」
いおな「掌底だけで一気にわたしと相楽くんを一緒に吹き飛ばすなんて……なぎささんじゃないけど、ぶっちゃけ、ありえないですよ……」
菖「あぁ……うん、これは泉地流の技じゃなくてさ。ちょっと知り合いから教えてもらった」
いおな「……変身もしてないのにそんな芸当できるなんて……」
誠司「……言っちゃ悪いけど、兄貴、人外に片足突っ込んでないか?」
菖「よ~し、誠司はこのままもう一本いこうか~?」(^言^
誠司「うぇっ?!」Σ( □ ;
菖「男の子だろ?まだいけるよなぁ?」
誠司「い、いや、あの……さすがに限界……」
菖「人のこと化け物呼ばわりしたんだからそんくらいの覚悟はできてるよなぁ?」(^言^メ
誠司「か、勘弁してくれーーーーーーーーっ!!」
いおな「……いっそそのままめぐみに看病してもらうコースに入っちゃえばいいのに……」