ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
ということで、続きます、やっぱりまだ続きます
たぶん、Ep.7までいくんじゃないかなぁ?
いつの間にかプリキュアオールスターズとともに、夢の世界に来ていたセイバーだったが、ブラックの合図でプリキュアたちと同時に、悪夢に立ち向かっていった。
千を余裕で超えると思われる数だったが、そこは幾度となくピンチを乗り越えてきた伝説の戦士。
個々人の力と技だけでなく、連携を取りながら、悪夢たちを次々と蹴散らしていった。
そんな中、セイバーは一人、離れた場所にいた。
『あくむーーーーーーっ!!』
「我は焔、万物を灰燼に帰す、清めの劫火――
祝詞と古代語を唱えた瞬間、セイバーの周囲は炎に包まれた。
炎が収まると、刀身が紅い、身の丈ほどはある大剣を手にしたセイバーの姿があった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
セイバーが剣を振りかざすと、刀身から炎が吹きだした。
悪夢たちはその炎に驚き、一瞬だけ怯んだ。
だが、数の有利を思い出したのか、すぐに気を取りなおし、セイバーに向かっていった。
向かっていったのだが。
「ぜらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
横一文字に剣を薙いだ瞬間、炎の津波が押し寄せ、悪夢たちを飲みこんだ。
それでも、やはり数は悪夢のほうが上。
炎の向こうから、悪夢たちが飛び越えてやってきた。
だが、セイバーは冷静だった。
「其は堅牢なる大地、彩るは早咲きの花――
再び祝詞と古代語を唱えた瞬間、セイバーは白い光に包まれた。
光が収まると、今度は黄色い光をまとった巨大な
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
気迫のこもった雄叫びを上げながら拳を振り下ろし、悪夢たちを殴りつけた。
殴られた悪夢は吹き飛び、その先にいた悪夢たちを巻き込んで、さらに遠くまで飛ばされていった。
だが、セイバーの猛攻はこれで終わらなかった。
「空を翔ける翼、其がまとうは約束を運ぶ風――
再び祝詞と古代語を唱えると、今度は翡翠に輝く光をまとった旋風が巻き起こった。
旋風の中から、今度は無数の刃を翼のように広げ、宙に浮かんでいるセイバーが姿を現した。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
セイバーが雄叫びを上げ、両手を前にかざした瞬間、背後の刃がまるで意思があるかのように飛びかい、次々に悪夢を切り裂いていった。
いつ終わるかもわからない連撃に、さすがに悪夢たちもひるみ始めたが、セイバーの勢いは止まらなかった。
「我は水、罪穢れを洗い清める、清冽なる流れ――
四度目の祝詞と古代語を唱えると、今度は水柱が立ち、弓を構えたセイバーが姿を現した。
これまでに三回、自分たちがやられていることを考えると、悪夢たちは思わず後ずさりしてしまった。
だが、それで逃げられるほど、セイバーの攻撃も甘くはない。
「逃さんっ!!」
弓を引いた瞬間、青い光が矢のような形となり、番えられた。
弦を離すと、青い光が分裂し、次々に悪夢たちへと向かっていき、悪夢たちを貫いた。
だが、ここまでの一連の攻撃を受けても、悪夢たちの数は減る気配がなかった。
なぜなら。
「……技食らった端から復活するとか、どんだけだよ!」
攻撃を受けても、攻撃を受けても、悪夢たちは一瞬でその傷を癒し、再び立ちあがってくるのだ。
ちらっとプリキュアたちのほうへ視線を向けると、状況は彼女たちも同じのようだった。
最初こそ善戦していたが、倒した端から復活してくる悪夢たちに、徐々に戦況は悪化し始めていた。
――くっそ!せめて、悪夢を吉夢に変えることができれば!!
古来、悪夢を祓うには吉兆とされる吉夢を買うことがよいとされ、凶兆である悪夢を他者から受け付けることもできるとされている。
これを夢買いと呼ぶ。
だが、あいにくとセイバーはそういった類の力は持っていないし、方法もしらない。
こんな時に頼りになる人間は知っているのだが、さすがに夢の中となると干渉は難しい。
どうしたものか、そう考え始めた瞬間だった。
「どり~む、どり~む……」
「息吹、息吹よ!この息吹、神の息吹たれ!!」
上空から、聞きなれない声と聞きなれた声が同時に聞こえてきた。
見上げると、そこには同級生であり、おそらく世界一人間嫌いの高校生である友人、友護と、いかにもコスプレとしか思えない男の姿があった。
「遅いぞ、友護!!」
「うっせぇ、あっさり夢に囚われやがって」
「ふっ……君が口喧嘩とは、よほど仲がいいのだろうな」
「「いや、こいつとはただの腐れ縁だから/なので」」
男の問いかけに二人が同時に返すと、友護は手の平の中に光の球を生みだし、セイバーにむかって撃った。
球は、まっすぐにセイバーにむかっていったが、不思議なことに、衝撃や痛みはまったくなく、セイバーの胸に吸いこまれるようにして消えてしまった。
「これであいつらを祓えるはずだ。俺たちも加勢する」
「珍しいな、人間嫌いのお前が」
セイバーが友護をからかうようにそう聞くと、ちっ、と不機嫌そうに舌打ちを返してきた。
その様子に男は、くくっ、と小さく笑ったかと思うと、真剣な表情に戻り。
「事態はすでに、君たちだけの問題ではない、ということだよ」
「……そこまで深刻なのか?」
「あぁ……事態を重くみて、"真昼の月"は俺たちを派遣し、元凶の排除を命じてきた」
真昼の月、というのが何を示す言葉なのかはわからないが、とにかく、このままでは自分が思う最善の結果にはならないことは、セイバーもすぐにはわかった。
時間をくれ、そう言おうとしたその瞬間だった。
突然、悪夢たちが地面の中に潜り、姿を消した。
それと同時に、マアムが突然苦しみだし、乗っかっている掃除機から、何かが飛び出てきた。
飛びだしてきたそれは、まるでライオンのような爪と顔を持ち、セイバーと友護のゆうに二倍はあるであろう体格をしていた。
何より、彼がまとう気配に、セイバーと
その気配は、まるで憎悪や怒りといった負の感情をまぜこぜにしたような、ねっとりとまとわりつく、穢れのようにすら感じた。
「……災禍の顕主」
不意に、セイバーの口からそんな言葉が出てきた。
その名を聞いた瞬間、彼は――いや、災禍の顕主は天に向かって吠え、まっすぐにセイバーたちにむかってきた。