ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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長くなるから区切りました
ということで、続きます、やっぱりまだ続きます
たぶん、Ep.7までいくんじゃないかなぁ?


永遠のともだち~Ep.5:夢の世界での戦い、やっぱりピンチはお約束~

いつの間にかプリキュアオールスターズとともに、夢の世界に来ていたセイバーだったが、ブラックの合図でプリキュアたちと同時に、悪夢に立ち向かっていった。

千を余裕で超えると思われる数だったが、そこは幾度となくピンチを乗り越えてきた伝説の戦士。

個々人の力と技だけでなく、連携を取りながら、悪夢たちを次々と蹴散らしていった。

そんな中、セイバーは一人、離れた場所にいた。

 

『あくむーーーーーーっ!!』

「我は焔、万物を灰燼に帰す、清めの劫火――清浄なる炎(フォエス・ファイアリ)!」

 

祝詞と古代語を唱えた瞬間、セイバーの周囲は炎に包まれた。

炎が収まると、刀身が紅い、身の丈ほどはある大剣を手にしたセイバーの姿があった。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

セイバーが剣を振りかざすと、刀身から炎が吹きだした。

悪夢たちはその炎に驚き、一瞬だけ怯んだ。

だが、数の有利を思い出したのか、すぐに気を取りなおし、セイバーに向かっていった。

向かっていったのだが。

 

「ぜらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

横一文字に剣を薙いだ瞬間、炎の津波が押し寄せ、悪夢たちを飲みこんだ。

それでも、やはり数は悪夢のほうが上。

炎の向こうから、悪夢たちが飛び越えてやってきた。

だが、セイバーは冷静だった。

 

「其は堅牢なる大地、彩るは早咲きの花――早咲きの大地(ハクディム・ガリア)!!」

 

再び祝詞と古代語を唱えた瞬間、セイバーは白い光に包まれた。

光が収まると、今度は黄色い光をまとった巨大な手甲(ガントレット)をまとっていた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

気迫のこもった雄叫びを上げながら拳を振り下ろし、悪夢たちを殴りつけた。

殴られた悪夢は吹き飛び、その先にいた悪夢たちを巻き込んで、さらに遠くまで飛ばされていった。

だが、セイバーの猛攻はこれで終わらなかった。

 

「空を翔ける翼、其がまとうは約束を運ぶ風――約束の翼(ルウィーユ・フィルク)!」

 

再び祝詞と古代語を唱えると、今度は翡翠に輝く光をまとった旋風が巻き起こった。

旋風の中から、今度は無数の刃を翼のように広げ、宙に浮かんでいるセイバーが姿を現した。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

セイバーが雄叫びを上げ、両手を前にかざした瞬間、背後の刃がまるで意思があるかのように飛びかい、次々に悪夢を切り裂いていった。

いつ終わるかもわからない連撃に、さすがに悪夢たちもひるみ始めたが、セイバーの勢いは止まらなかった。

 

「我は水、罪穢れを洗い清める、清冽なる流れ――水の執行者(アクリア・ルズローシヴ)!!」

 

四度目の祝詞と古代語を唱えると、今度は水柱が立ち、弓を構えたセイバーが姿を現した。

これまでに三回、自分たちがやられていることを考えると、悪夢たちは思わず後ずさりしてしまった。

だが、それで逃げられるほど、セイバーの攻撃も甘くはない。

 

「逃さんっ!!」

 

弓を引いた瞬間、青い光が矢のような形となり、番えられた。

弦を離すと、青い光が分裂し、次々に悪夢たちへと向かっていき、悪夢たちを貫いた。

だが、ここまでの一連の攻撃を受けても、悪夢たちの数は減る気配がなかった。

なぜなら。

 

「……技食らった端から復活するとか、どんだけだよ!」

 

攻撃を受けても、攻撃を受けても、悪夢たちは一瞬でその傷を癒し、再び立ちあがってくるのだ。

ちらっとプリキュアたちのほうへ視線を向けると、状況は彼女たちも同じのようだった。

最初こそ善戦していたが、倒した端から復活してくる悪夢たちに、徐々に戦況は悪化し始めていた。

 

――くっそ!せめて、悪夢を吉夢に変えることができれば!!

 

古来、悪夢を祓うには吉兆とされる吉夢を買うことがよいとされ、凶兆である悪夢を他者から受け付けることもできるとされている。

これを夢買いと呼ぶ。

だが、あいにくとセイバーはそういった類の力は持っていないし、方法もしらない。

こんな時に頼りになる人間は知っているのだが、さすがに夢の中となると干渉は難しい。

どうしたものか、そう考え始めた瞬間だった。

 

「どり~む、どり~む……」

「息吹、息吹よ!この息吹、神の息吹たれ!!」

 

上空から、聞きなれない声と聞きなれた声が同時に聞こえてきた。

見上げると、そこには同級生であり、おそらく世界一人間嫌いの高校生である友人、友護と、いかにもコスプレとしか思えない男の姿があった。

 

「遅いぞ、友護!!」

「うっせぇ、あっさり夢に囚われやがって」

「ふっ……君が口喧嘩とは、よほど仲がいいのだろうな」

「「いや、こいつとはただの腐れ縁だから/なので」」

 

男の問いかけに二人が同時に返すと、友護は手の平の中に光の球を生みだし、セイバーにむかって撃った。

球は、まっすぐにセイバーにむかっていったが、不思議なことに、衝撃や痛みはまったくなく、セイバーの胸に吸いこまれるようにして消えてしまった。

 

「これであいつらを祓えるはずだ。俺たちも加勢する」

「珍しいな、人間嫌いのお前が」

 

セイバーが友護をからかうようにそう聞くと、ちっ、と不機嫌そうに舌打ちを返してきた。

その様子に男は、くくっ、と小さく笑ったかと思うと、真剣な表情に戻り。

 

「事態はすでに、君たちだけの問題ではない、ということだよ」

「……そこまで深刻なのか?」

「あぁ……事態を重くみて、"真昼の月"は俺たちを派遣し、元凶の排除を命じてきた」

 

真昼の月、というのが何を示す言葉なのかはわからないが、とにかく、このままでは自分が思う最善の結果にはならないことは、セイバーもすぐにはわかった。

時間をくれ、そう言おうとしたその瞬間だった。

突然、悪夢たちが地面の中に潜り、姿を消した。

それと同時に、マアムが突然苦しみだし、乗っかっている掃除機から、何かが飛び出てきた。

飛びだしてきたそれは、まるでライオンのような爪と顔を持ち、セイバーと友護のゆうに二倍はあるであろう体格をしていた。

何より、彼がまとう気配に、セイバーと二人の闖入者(友護と男)は眉をひそめた。

その気配は、まるで憎悪や怒りといった負の感情をまぜこぜにしたような、ねっとりとまとわりつく、穢れのようにすら感じた。

 

「……災禍の顕主」

 

不意に、セイバーの口からそんな言葉が出てきた。

その名を聞いた瞬間、彼は――いや、災禍の顕主は天に向かって吠え、まっすぐにセイバーたちにむかってきた。


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