ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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というわけで、いよいよクライマックス直前。
今回はできればEp.5までいくつもりではあるんですが……もしかしたら6とか7までいくかも?
まぁ、そんときになってみないとわからないですが。

なお、今回登場してもらったのは、テイルズオブシリーズ、Zの主人公とBの主人公です。
主人公のモデルがモデルだし、Zについては、ね?
ってことで、こうしました。
あと、予告しておきますが、次回もテイルズオブシリーズから一人、ナイトウィザードから一人、出演してもらう予定です。
誰になるかはお楽しみに

というわけで、本編どうぞ


永遠のともだち~Ep.4:夢の世界での出会い~

その日の夜。

希望ヶ花市にある、神社の敷地内にある一軒家の一室に、一人の青年がいた。

ふと、青年は窓から部屋の外へ視線を向けた。

すると、月明かりが夜空を照らしているにも関わらず、力強く瞬いている星が一つ、また一つと増えていった。

 

――やれやれ、期待してはいなかったが、まさか本当に占の通りになるとはな

 

青年はそっとため息をつき、携帯を取り出して、ある男へ電話をかけた。

数秒のコール音のあと、男が電話に出ると、青年は二、三、言葉を交わして電話を切った。

そして、再び空を見上げ、ため息をついた。

 

「……まったく、こればかりはどうあがいても防ぎようがないから、大目に見ておくが……俺に手だしさせた代償は高いぞ?春川、月影」

 

同級生である二人の名前を、なぜか呟くと、青年は不敵な笑みを浮かべながら月を見つめ。

 

「騒がしくなってきたな」

 

と呟くのだった。

 

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菖が目を開けると、視界には果てしなく続く青空と草原が広がっていた。

自分が布団に入ったことと、目を開けるまで寝返り以外の動きをしていないことを自覚していた菖は、これが夢の光景であるということをすぐに理解できた。

 

「……けど、この夢にいったいどんな意味が?」

 

そうつぶやくと、突然、突風が吹き抜けてきた。

思わず、腕で顔をかばい、目を細めた菖だったが、風はすぐに通りすぎていった。

再び目を開けると、風が吹く前にはいなかった二人がいた。

一人は、ゆりと同じかそれ以上に長い髪をたなびかせている女性。もう一人は、ユグドセイバーと同じ、不思議な文様が描かれている白いマントをまとった青年だった。

 

「……あ、あの」

「鳥は……」

「へ?」

 

ここがどこなのか、問いかけようとした瞬間、女性が口を開いた。

 

「鳥はなぜ空を飛ぶんだと思う?」

「それは……」

 

鳥が空を飛ぶようになったこと。

それは地球の長い歴史の中でそうなるよう、進化をしてきたからだ。

だが、なぜか菖はその答えではだめだ、と直感していた。

答えを悩んでいると、時間切れだ、とでも言うかのように、女性が答えを口にした。

 

「誰かに命じられたからじゃない。そうしたいからそうしているんだ……」

「え、えっと……」

「ははは、まぁ、突然そんなこと言われても戸惑っちゃうよな」

 

女性の言葉に戸惑っていると、今度は青年が苦笑しながら口を開いた。

 

「え、えっと?」

「なんだか、ちょっと悩んでいるような声が聞こえたからさ。ちょっと退屈してたし、話を聞いてみようと思ったんだよ」

「は、はぁ……」

 

何を言っているのかまったくわからない、という顔を浮かべたが、青年はなおも人懐っこい笑顔を向けていた。

残念ながら、逆光で顔はよく見えなかったが。

 

「で、君はどんなことで悩んでいるのかな?」

「えっと……」

 

菖は青年に自分がいま抱えている当面の悩みを打ち明けた。

友達の母親が、とある事件を引き起こしていること。事件を終わらせるには、母親を浄化する(倒す)ことが一番手っ取り早く、確実であること。それはわかっていても、自分がそれをしたくないと思っていること。

それら全てを、青年も女性も黙って聞いてくれていた。

全てを話し終えて、最初に口を開いたのは女性のほうだった。

 

「……一つ、聞いていいか?」

「え?」

「全と個、どちらか一方しか取ることができないとしたら、お前はどっちを取る?」

 

大げさに言えば、それはつまり、個人を取るか世界を取るか、ということのようだ。

だが、菖はまったく迷うそぶりを見せずにあっけらかんと。

 

「個を取ったら、全にならない?」

「……どうやら、こいつはお前と同じ思考回路をしているようだな。導師」

「正直、ここまで俺と似ているとは思わなかったよ」

 

導師、と呼ばれた青年は、女性の言葉にそう返し、菖へ視線を向けた。

その瞬間、光は弱まり、導師の顔がはっきりと見えるようになった。

はっきりとした導師のその顔に、菖は目を丸くした。

そこにあったのは、菖とまったく同じ顔だったのだから。

 

「俺からは何も言わない。君と俺は同じみたいだから、俺が言いたいことはたぶんわかってると思うから」

 

導師がそう語ると、徐々に菖の意識が遠のき、瞼が閉じ始めた。

必死にこらえようとするが、その意思とは逆に、瞼は重さを増していった。

 

「どうやら、俺たちとの会話はここまでみたいだな」

「そのようだ……お前は、お前が正しいと信じた道を行け。その先にある結末、見届けさせてもらうぞ、夢を挟んだ向こう側の世界からな」

「どうか、君が納得できる答えを導きだせることを祈っている」

 

二人が菖にその言葉を送ったと同時に、菖の瞼は完全に閉ざされ、意識も闇の中へ落ちていった。

だが、睡魔が襲ってくることはなかった。

その代わりに、何か固いものが足に触れる感触を覚え、目を開けた。

見渡せば、そこは以前訪れた夢の世界だった。

そして、周囲にはプリキュアオールスターズが集結していた。

加えて、なぜか自分の姿もユグドセイバーの出で立ちになっていた。

 

「……ん?なんで俺、またここに??てか、いつのまに変身したんだ??」

「え?えぇっと……なんて説明したらいいのかな?プリンセス?」

「わ、わたしにふらないでよ!!」

「……まぁいいや。状況もだいたいわかったし」

 

必死になって答えようとしていた見知らぬプリキュア二人に、そっけない態度で返し、菖はまっすぐにマアムが呼び出した悪夢たちに視線を向けた。

しばらくにらみ合いが続いたあと。

 

「みんな、いくよ!!」

 

ブラックの合図で、全員、一斉に駆け出し、悪夢たちに向かっていった。


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