ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
それはいいんですが……どうしようかなぁ、が一つ。
まぁ、それは次回をあげるまでに考えておきましょう(オイ
湊にかばわれ、あゆみとフーちゃんは住んでいるマンションに戻ってきた。
だが、ここまで走ってきたため、あゆみの息はすっかり上がっていた。
それを心配そうにフーちゃんが見上げた。
「あゆみ、大丈夫?」
「大丈夫……大丈夫だよ、フーちゃん。わたしが、わたしと湊くんが守ってあげるからね……」
「フーちゃんも、あゆみと湊を守る」
あゆみからの言葉に、フーちゃんが答えるとリビングからお母さんがむっとした形相でやってきた。
「あゆみ!急に飛びだしていったら心配するじゃ……」
叱られる。
そう思ったあゆみは、反射的に身をすくませた。
だが、そこからさきの言葉が続かなかった。
恐る恐る、お母さんの方へ視線を向けてみたが、そこに母親の姿はなかった。
その時、あゆみの脳裏にプリキュアたちが言っていたことが浮かび上がってきた。
『それはこの間、街を襲った怪物――フュージョンの一部なの』
まさか、そんなはずはない。
そう願いながら、あゆみは恐る恐る、フーちゃんに問いかけた。
「フーちゃん……お母さん、どこ行ったか、知らない?」
「フーちゃんが消した」
帰ってきた返事に、あゆみはフーちゃんのほうへ振り向き、どうしてしんなことをしたのか問いかけた。
「あゆみを叱った。あゆみの敵だ」
「敵?」
「あゆみを悲しませるのも敵、怖がらせるのも敵だ」
その言葉に、あゆみは目を見開いた。
そして、思い出したことがあった。
今朝は、湊が隣にいたとはいえ、今朝、モモに吼えられていなかった。
まさか、隣の犬もフーちゃんが。
あゆみがそう思い、問いかけようとした瞬間、フーちゃんはわけのわからないことを言ってきた。
「フーちゃん、いっぱい食べて大きくなった。だから、あゆみの願い、叶えることができる」
「何それ……望みなんて、なにも」
ないはず、そう思っていた。
だが、フーちゃんは、いや、フュージョンはそうは思っていなかったらしい。
「お母さん、嫌い……学校、嫌い……この街も、大嫌い。全部、なくなっちゃえば、いいのにな」
それは、さっき思わず口に出したことだった。
本当にそう思っていたわけではない。だが、フーちゃんはその言葉が、あゆみの望みだと思ってしまった。
それが、あゆみの願いだと。
だから。
「あゆみの願い、叶える!!」
「ま、待って!フーちゃん!!」
だが、あゆみの制止もむなしく、フーちゃんは姿を消してしまった。
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その頃、赤レンガ倉庫の屋根の上では、
「フュージョンは友達……あの子たち、そう言ってたよね?」
「本当なのかしら?」
フュージョンがどのような存在かを知っているからこそ、そう思えてならない。
そもそもフュージョンは、この世界を支配しようとしていた全ての悪意が混ざり合った存在。
友達になれるとは、とても思えない。
だが、本当にそうなのかどうかはこの際、どうでもいい。
「たとえ本当でも、放っておくわけにはいかないわ」
ミューズがつぶやくと同時に、、不気味な声が響いてきた。
「リセット……リセット……」
その声が響き続けると同時に、各地に散らばっていたフュージョンが、次々に建物を消去し始めた。
あゆみのために、全てをリセットする。
たった一つのその想いのために、街は、消えようとしていた。
リセットされなかった街の住人たちが逃げ惑うなか、あゆみはフーちゃんの姿を探して走り回っていた。
その途中でハッピーたちスマイル組の姿が目に入った。
ハッピーたちもあゆみの姿に気づいたらしく、二人と合流した。
「あ!あんた、フュージョンと一緒にいた子やんか!!」
「あなたのフュージョンはどこ?!」
「あの塔のてっぺんにいるのがそうなの?」
矢継ぎ早に飛んでくる彼女たちの質問に、あゆみは一切答えず、走り去ろうとした。
だが、その背中を、ハッピーが呼び止めた。
「あゆみちゃん!わたしたちに言いたいこと、あるんじゃない?だから来たんでしょう?」
その言葉に、あゆみは少しだけ、迷った。
けれど、このままではフーちゃんを、友達を助けることができないということもわかっていた。
だから。
「お願い、助けてください……フーちゃんを止めて!!わたし、全然、そんなつもりなかったのに……全部なくなっちゃえばいいなんて、本気で言ったんじゃないのに……フーちゃんはわたしの望みを叶えるって……誤解なのに!!」
「それじゃあ、あなたのために?」
「フーちゃんは悪い子じゃないの!悪いのは、全部、わたしなの!!」
泣きながら、そう懇願するあゆみに、ハッピーは微笑みを向けた。
「じゃあ、本当のことをフーちゃんに言おう!誤解だって、フーちゃんに言いに行こう!!」
「そ、そんなの無理!!」
「どうして?」
「だって、何度も呼びかけたのに、全然、届かないみたいで……」
それは事実だった。
何度、フーちゃんと呼びかけても、まったく答えがなかった。
ここにいるのは、フーちゃんと同じ、フュージョンの欠片のはずなのに。
「だったら、もっと大きな声で言ったらえぇやん!あんたの気持ちが届くまでさ!!」
「伝えたいことは、ちゃんと言わないと伝わらないよ?」
「わたしは、あなたたちと違うんです……あなたたちは、プリキュアだから……」
強いから。
だが、あゆみのその言葉はすぐに否定された。
「わたしたちは強いからプリキュアになったんじゃない。大切なものを守りたい、だからプリキュアになれたの」
「大事なのは、ハートってこと……フュージョンは、あなたの大切な友達なんでしょ?」
そう言われて、あゆみの脳裏にフーちゃんと過ごした時間が浮かびあがってきていた。
「友達が悪いことをしたり、間違ったことをしたら、それを止めるもの友達だと思うよ!」
「……わたし……」
メロディにそう言われて、あゆみは、自分が本当はどうしたいのか、ようやく口に出すことができた。
「わたし、フーちゃんに言いたい。わたしの気持ちをちゃんと、伝えたい」
「伝えに行こう!わたしたちが手伝うよ!!」
「一緒に、頑張ろ!」
ハッピーとメロディにそう言われ、あゆみは彼女たちに頭を下げた。
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その頃、湊もまた、フーちゃんとあゆみの姿を探して街を走り回っていた。
だが、一向に二人を見つけることができずにいた。
――くそっ!二人とも、無事でいてくれよ……
襲ってくるフュージョンの欠片を回避しながら、湊は二人の無事を祈っていた。
だが、いつまでもやみくもに走っていても、見つかるものも見つからない。
湊は深呼吸しながら、どうすればいいのか思考を巡らせた。
街にこの怪物たち、おそらく、フュージョンが出現してから何か変化はなかったか。どこか、襲われていなさそうな場所はないか。
それを考えながら周囲を見回すと、かなり離れた場所にある塔のてっぺんが、奇妙な光を放っていることに気づいた。
――もしかして、あそこを目指していけば……
最近、引っ越してきたばかりのようなものとはいえ、湊はあゆみよりも長く、ここに住んでいる。
だからこそ、普段の街の姿はだいたい頭に入っている。
塔の上の光は、湊が記憶している普段の姿にはないものだった。
ならば、あそこにフーちゃんがいる可能性もあるのではないか。
そう考えて、湊は塔へ向かって走りだした。
奇しくも、その方向はあゆみとプリキュアたちが向かっている方向と一緒だった。