ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
それだけじゃなくて、正式なカップリングもどうするか……
……というか、今回のでほぼ固まっちゃうような気がするんですよねぇ……
……オリキャラ、もう一人出すかぁ……
「点心華心」を出て、湊は自宅へと足を向けた。
すると、ちょうどあゆみも戻ってきたらしく、後ろ姿が目に入った。
「お~い、坂上~!」
「え……?あ、未来くん。よかったぁ……ごめんなさい、途中で置いて行っちゃって」
「気にしないで大丈夫。俺こそ、見失って悪かった」
あゆみの謝罪に、湊はすまなさそうにしていると、突然、向かいの家で飼われている犬が吠えだした。
その声にあゆみがおびえると、ブレスレットに化けて巻きついていたフーちゃんが元の姿に戻り、吼えてきた犬を威嚇し始めた。
「フーッ!フーッ!!」
「ウゥーーーーッ!!」
しばらくの間、フーちゃんと犬は互いに威嚇合戦をしていたが、それは唐突に終わりを告げた。
「モモ、ステイ!!」
「キュ~ン……」
湊の鋭い声に威圧されたのか、モモと呼ばれた犬はすぐにしゅんとなり、その場に伏せた。
その隙に、あゆみはフーちゃんを抱えて、マンションのエントランスホールへと入っていった。
湊もそれに続き、一瞬遅れて、あゆみたちと合流した。
「ふぅ……怖かった」
「フ~……」
「ありがとう、フーちゃん、未来くん」
「フ~♪」
「どういたしまして」
助けてくれたことにお礼をいうあゆみに、フーちゃんと湊はにっこりと笑みを浮かべた。
でも、とあゆみはフーちゃんをなでながら忠告した。
「フーちゃん、小さいだからあんな大きな犬に近づいたら危ないよ」
その言葉をあゆみの手の中で聞いていたフーちゃんは、一つの結論に達した。
小さいから危ない。それなら、大きくなればいい。
だから、集まれ。集まって、大きくなる。早く、早く。
フーちゃんのその想いは街に響き渡り、異変を起こし始めた。
だが、このとき、あゆみも湊も、そんなことは知る由もなかった。
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その頃、点心華心では名物ウェイトレスのファウナに匂いを嗅がれていた二人が紅茶とケーキを楽しんでいた。
「ほんと、おいしいわね」
「だろ?」
「これを作っている人は、よほど腕のいいパティシエなのね……どんな人なの?」
少し興味を持ったのか、ゆりがそう問いかけると、菖はちょうど通りかかってきたもう一人のウェイトレスに声をかけた。
「フローラさん。今日、夢路のおっちゃんは?」
「夢路さんなら、今、新作作ってるはずよ?呼んできましょうか?」
「できれば……って、新作?……まぁた変なの作ってるんじゃ……」
「変なのたぁご挨拶じゃねぇか、坊主」
フローラの「新作」という言葉に冷や汗を伝わせて菖が返すと、野太い声が聞こえてきた。
そちらへ目を向けると、手ぬぐいを頭に巻いた作務衣姿の男性がボウルと泡立て器を手にした状態で立っていた。
無精ひげを生やしているその顔に似合わず、フリルのついたエプロンをかけていることに思わず、ぎょっとしたゆりだったが、菖はどうやら見慣れているらしく、特に何の反応もしめさなかった。
「ちわっす、おっちゃん」
「おぅ。元気そうだな、坊主……って、そっちの美人さんは?」
ゆりの方へ視線を向けた夢路は、お前のこれか、と泡立て器をボウルに入れたまま、小指を立てた。
そのしぐさが意味するものを知っているゆりは首まで真っ赤になってしまった。
一方、菖も顔を紅くして夢路から視線をそらし、沈黙した。
「おいおい、だんまりかよ。まぁ、いいけどよ」
かっかっかっ、とひょうひょうと笑いながら、ゆっくりしていけよ、と厨房へと姿を消した。
なお、それから数分しても、菖とゆりは顔を真っ赤にしたまま、互いの顔を見ることができず、待ち合わせていたつぼみとえりかといつきがやってくるまで、一言もしゃべることができなかったそうな。
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その夜。
加音町に住むプリキュア、スイートプリキュアたちがキュアハッピーと一緒にコンテナ置き場でフュージョンの欠片と戦闘を繰り広げていたことを知らなかったあゆみは、湊に拵えてもらったフーちゃん用のベッドを机に置き、自分のベッドの中で熟睡していた。
だが、フーちゃんは眠ることなく、ベッドから抜け出し、向かいの家にいるモモに視線を向けていた。
フーちゃんの脳裏には、昼間、あゆみが言っていたことを思い出していた。
『いっぱい食べれば、大きくなれるよ』
それなら、もっと手っ取り早く大きくなる方法を取ればいい。
――いっぱい食べれば大きくなれる……いっぱい、食べれば
フーちゃんは窓ガラスをすり抜けて、ゆっくりとモモのほうへと降りていった。
翌日の朝。
「あゆみ、あゆみ」
あゆみは自分を呼ぶ声に気づき、起き上がった。
周囲を見ると、ドアのあたりに少し大きくなった黄色いフニフニしたものが浮かんでいた。
「あゆみ」
「フーちゃん?」
「フーちゃん、あゆみ」
フーちゃんは自分を指さして『フーちゃん』と呼び、あゆみを指さして『あゆみ』と呼んだ。
その光景に、あゆみは目を丸くした。
「しゃべれるの?」
「しゃべれる。いっぱい食べて大きくなった」
まさかたった一晩で大きくなるとは思わなかったあゆみだったが、そんな疑問は続くフーちゃんの言葉で吹き飛んだ。
「あゆみ、友達」
「友達?」
あゆみの問いかけに、フーちゃんはうなずいた。
「あゆみ、フーちゃん助けてくれた。だから友達」
「……うん!友達!!」
あゆみはうれしくなってフーちゃんの腕を取った。
友達の笑顔を見ることができ、嬉しいと思ったのか、にっこりと笑みを浮かべた。