ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
というわけで、ひとまずオリジナルストーリー編の最終回
タイトルの「ついに……」が何を示しているのか、わかる方はわかるはず
まぁどうなるかは読んでみてからのお楽しみってことで
駆け足感半端ない?
まぁ、そのあたりはお許しを
惑星レッドと呼ばれる、地球の兄弟星が地球に急接近するという事件が解決し、ハルモニア王国で開催される春のカーニバルに招待され、ひと騒動があってから数週間後。
日本に、いや、世界各地に住むプリキュアと菖のもとにブルースカイ王国から叙勲式の招待状が届いた。
以前、一度だけプリキュアとセイバーをブルースカイ王国の名誉貴族に叙することが決定されたことを通達する意味も込めた招待状が届けられたが、今度はちゃんと日時と場所を指定されていた。
どうやら、惑星レッドの地球接近とそれに伴い出現した赤いチョイアークたちの事件の後片付けが落ち着いたため、再度、招待状を送付したようだ。
「なるほど、レッドの一件が終わってようやく王国も落ち着いたみたいだな」
「そうね……それで、どうするの?」
「さすがに行かないと不敬だろ」
一緒にいたゆりからどうするのか問いかけられ、行く、と答えた。
「ならわたしも行くわ」
「いや、ゆりは別に大丈夫だと思うが……」
「あら?行かなくても大丈夫なら行っても大丈夫ってことでしょう?」
ゆりのその一言に、菖はそれ以上、何も返せなかった。
こうまでして菖が一人でブルースカイ王国へ渡ろうとしていることには理由があった。
以前にも、ブルースカイ王国が幻影帝国から解放された功績をたたえ、世界各国のプリキュアと、彼女たちに助力する二人の騎士をブルースカイ王国の名誉貴族に叙することが決まり、そのことを伝える書状が届いたことがあった。
だが、プリキュアにしても光の騎士にしても、一部を除いてその正体が高校生や中学生、あるいは小学生であるということは知られていない。
たとえ、一代限りの名誉貴族とはいっても、年端もいかない子供にそんな肩書を与えられれば、よからぬことを企む人間も出てくるだろう。
事件に巻き込まれる可能性をつぶすという意味でも、叙勲式に参加するメンバーは少ないに越したことはない。
最善は誰にも知られることがない、ということなのだが、さすがに王家のメンツとしてそれは許されない。
「せめて、変身した姿での参列が許されればいいんだけど……」
「許されるのかなぁ、それ……」
本来ならば変身する前の姿で正装するべきなのだろう。
このあたりは、ひめがしっかり説明して、国王たちに納得してもらう必要があるのだが、果たして、ひめがうまく説明できるかどうか。
その返事はえりかとつぼみの口からもたらされることとなった。
「菖さん、ゆりさん!朗報です!!」
「ひめちゃんがちゃんと説明して、王様が納得してくれたみたいっしゅ!!」
二人のその報告に、ゆりも菖も安どのため息をついた。
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翌日。
ぴかりが丘にあるブルースカイ王国大使館に集合したオールスターズのメンバーは、どうやってブルースカイ王国に向かうかの相談をしていた。
むろん、変身してから向かう方が面倒は少ないだろう。
だが、プリキュアの姿にしても、セイバーの姿にしても、目立ってしまう。
世界規模での侵略を図っていた幻影帝国のことがあって、プリキュアの存在はいまや世界中の人々に知られるものとなっている。
突然、何もないのにプリキュアが空港に出現すれば、マスコミが押しかけるどころか、何か起きるのではないか、と勘違いしてパニックになることも十分考えられる。
無駄にパニックを起こして迷惑をかけることはしたくないたので、変身してからブルースカイ王国に向かうという選択肢は必然的に消えてしまう。
どうしたものか、と考えていると、ひめから衝撃の言葉が飛んできた。
「王室のプライベートジェットを使ってもいいってことだったから、それを使って入国してもらうことにしようって話してました」
「……え?」
「それから、入城に関しては問題ないと思いますよ?わたしがプリキュアだってことは、お父様もお母様もだけれど、お城の人たちはみんな知ってるし、メイジャーランド王女アコ様も含まれてるから、秘密裏に入れるように配慮するし、叙勲式にも変身して出席していいって」
「それにメディアは一切入れないってことも約束してくれました!」
どうやら、叙勲式のことだけではなく、式典が行われるまでの間のことも考えてくれていたようだ。
さすがに、何か裏があるのではないかと勘繰りたくなってしまうほどの待遇だったが、パルミエ王国の国王付きの侍女だけでなく、メイジャーランドとトランプ王国の王女もいるのだ。
滅多なことをすれば、国際問題、というより世界間の問題に発展するばかりではなく、国際的にも微妙な立場に追い込まれる可能性もあることを考えれば、信用しても問題ないと結論付け、納得することにした。
「空港の代わりと言ってはなんですが、四葉が所有している飛行場を使うことにしましょう」
「おぉっ!助かります!!」
「なら、叙勲式で実際に国王の前に立つのは……ここはやっぱなぎさとほのかの二人か?」
「え……えぇぇぇぇっ??!!な、なんでそんな大役を?!ぶっちゃけ、ありえない!!」
「なぎさ……」
その後も、要求できるかどうかはともかくとして、仮にそうなった場合を想定してどのように行動するか、その打ち合わせを終わらせ、解散となった。
その帰り道。
菖が少しばかり陰鬱なため息をついていることに気付いたゆりとつぼみは、心配そうに顔を覗きながら、大丈夫か問いかけてきた。
「どうしたの菖?」
「あ、あの、菖さん。大丈夫ですか?」
「ん?……あぁ、大丈夫だよ?」
「そうかしら?あなた、さっきからずっとため息ついてるじゃない」
付き合いが長い故か、さすがにゆりも菖が何か心配事を抱えていることはすぐに察したようだ。
「大したことじゃない……わけでもないんだけど、うん……ちょっと心配事」
「その心配事は、わたしたちには教えてもらえないの?」
「う~ん……いや、これは教えてどうこうなるものじゃないからなぁ……」
でも、と菖は二人に微笑みを向けた。
「心配してくれて、ありがとうな」
「い、いえ……」
「当然よ。だって、あなたはわたしにとって、わたしたちにとって大切な人なんだから」
若干、顔を赤くしながら、ゆりはそう返した。
その意味がどういう意味なのかわからないほど、菖も鈍感ではなかった。
そして、ゆりのいう『わたしたち』というのが、自分とつぼみのことだけではなく、別の町に住んでいる仲間のことを指していることも、薄々気づいていた。
ゆりからのその言葉に、菖は一つの決意を固めた。
そして、いよいよ、叙勲式の当日を迎えることとなった。
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叙勲式当日。
無事に入国した菖たちはメディアも関係者以外の野次馬も一切いない状態の空港に降り立った。
そこから王城までのバスに乗り込み、まっすぐに王城へむかうこととなった。
もちろん、窓ガラスには外から見えないようにブラインド加工が施されている。
となると、やはり内側から外の風景を見ることも難しいため、えりかは難しい顔をしていた。
「う~ん……納得はしてるんだけど、やっぱり外を見てみたいっしゅ!」
「我慢なさい。叙勲式が終われば比較的自由になるんだから」
「は~い」
事前に今後の自分たちの安全面のことは何度も話し合っていたので、さすがにえりかも素直に従っていた。
特に反論することもなく、ゆりの忠告に素直に従っているあたり、えりかも正体がばれることはメリットよりもデメリットの方が大きいことを理解しているようだ。
もっとも、それも叙勲式が終わるまでのこと。
叙勲式は変身した状態で出席することを許可されたため、それさえ終われば、あとは変身を解除して観光を楽しむことができる。
もっとも、そうなった場合、えりかならばあっちこっちのファッション関連のお店を視察して回るだろうし、なおやなぎさを中心とした食いしん坊組はレストランなどの飲食店を総なめすることになるだろうことは目に見えていた。
なので。
「叙勲式が終わっても、はっちゃけるなよ?」
と、菖が仏のような笑顔で釘を刺してきた。
もっとも、その笑顔の裏に、不動明王が見えたらしく、えりかたちはこくこくと激しくうなずいていた。
そうこうしているうちに、ブルースカイ王国の王城へ一行は到着した。
めぐみとゆうこは、以前、幻影帝国の占領下にあった時に一度だけ訪れていたらしく、懐かしさを覚えているようだ。
「皆様、ようこそおいでくださいました」
城の中に入ると、正面から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
視線をそちらに向けると、そこには青白いドレスをまとったひめの姿があった。
背筋を伸ばし、凛とした表情で立つその姿は、ぴかりヶ丘中学校二年生の『白雪ひめ』ではなく、ブルースカイ王国の第一王女、ヒメルダ・ウィンドウ・キュアクイーン・オブ・ザ・ブルースカイの風貌だった。
「話は父より伺っております。どうぞ、こちらへ」
そう言ってひめは全員を比較的広い部屋へと案内した。
ぱたり、と戸を閉めると、先ほどの凛とした口調から一転、いつものひめの口調に戻った。
「ここなら、監視カメラとかもないから、変身して大丈夫だよ!」
「おぉっ!さっすがひめちゃん!!」
「なら、あまり時間もないから早く済ませてしまいましょう?」
ゆりの一言に、全員がうなずき、変身アイテムを取り出し、一斉に変身した。
変身を終えると、プリンセスは一人で部屋の外に出て、待機していた衛士に声をかけ、会場である謁見の間までのエスコートを頼んだ。
衛士にエスコートされ、謁見の間に到着すると、周囲にはドレスや燕尾服で着飾った多くの貴族や来賓たちが今回の功労者たちに拍手を送ってきた。
なぎさを先頭に、全員が玉座の前に到着すると、誰からとなしに姿勢を正した。
それと同時に、周囲に控えていた宮廷楽師たちが担当する楽器を構え、音楽を奏で始めた。
それが、叙勲式の開式を告げるファンファーレであることは言うまでもなかった。
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結論から言って、叙勲式は恙なく終了した。
代表として前に出たブラッグが、緊張したせいでガッチガチになってしまい、動きがぎこちなかったことを除けば、何事もなく叙勲式は終わり、現在はブルースカイ王国の復活を祝う祝賀会が催されていた。
並んでいる数々の料理に、食いしん坊組はすっかり夢中になり、ブルースカイ王国とのコネクションを持っておこうと考えているのか、それとも勉強熱心なのか、参列していた貴族や来賓たちと会話をしていたりする中で、セイバーは一人、バルコニーで涼んでいた。
配られたグラスを手に、のんびりと夜空を眺めていると、不意にセイバーの名を呼ぶ声があった。
声がした方を見ると、そこにはムーンライトとブロッサム、ルミナス、イーグレット、フォーチュンの五人がいた。
「ん?どうしたんだよ、みんな」
「貴方の姿がなかったから探しに来たのよ」
「どうしたのかはこっちが聞きたいです」
「ゆりさんやつぼみちゃんたちから聞きましたよ?叙勲式の前からため息ついてることが多いって」
「何かあったんですか?」
「わたしたちにも話してください!相談もなしなんて、水臭いです!!」
ムーンライトたちが口々にセイバーに文句を言ってきた。
だが、セイバーは彼女たちの文句に苦笑を浮かべるだけで、なにも言い返してこなかった。
心配をかけていたのは事実であるし、相談しなかったことも事実なのだから、返しようがないのだ。
「何かあった、というより、踏ん切りがつかないなって感じかな……」
「踏ん切りがつかないって……どういう?」
「……もしかして、クリスマスのときのことかしら?」
五人の中で唯一、セイバーが思い悩んでいたことをいち早く察知し、その答えを本人の口から聞きかけていたムーンライトがそう問いかけてきた。
それがきっかけになり、セイバーは困ったように頭をかきむしると、ため息をついて、ムーンライトたちのほうへ顔を向けた。
「一度しか言わない、というか言えないから、聞き逃さないでほしいんだけど」
「えぇ」
「「は、はい!」」
「「わ、わかりました!!」」
何かを決意したようなその瞳に、ムーンライトたちは居住まいをただした。
そして、セイバーの口から彼女たちが望んでやまなかった言葉が飛び出してきた。
「ルミナス、イーグレット、ムーンライト、ブロッサム、フォーチュン。君たちを一人の女の子として愛しています。こんな俺でよければ……」
「「「「「け、結婚を前提にお付き合いしてください!!!」」」」」
そこから先の言葉を待ちきれず、五人が一斉に叫んだ。
セイバーはその頼みに、もちろん、と答えるのだった。
すると、セイバーがそう答えるタイミングを見計らったように、ホールにいたプリキュアたちがバルコニーにやってきて「おめでとう」と大合唱してきた。
からかわれたり泣かれたりしながらも、仲間たちに祝福されたセイバーたちの顔には、満面の笑顔が浮かんでいた。
おまけ
~聞かれてました~
「……君たちを一人の女の子として、愛しています。こんな俺でよければ……」
「「「「「け、結婚を前提にお付き合いしてください!!」」」」」
ハッピー「う、う、う……ウルトラハッピーだよ!!??」
サニー「お赤飯用意やで、これは!!」
ホワイト「うふふふ♪ビッグニュースね♪」
ブルーム「イーグレット……やったね!!」
サンシャイン「ムーンライト、ブロッサム!おめでとう!!」
ハニー「うふふ♪これはお祝いしないとね?」
テンダー「ふふふ、おめでとう、フォーチュン♪」
ミント、ピース、ロゼッタ「「「うふふふふふふ♪」」」(^▽^
エコー、ラブリー「「……わ、わたしも頑張ろう!!」」(//////
ハート「ん?!なんか幸せの気配が……」
エース「愛の鼓動を感じますわ!」
ピーチ、パッション「「……?なんだか甘酸っぱい気配が……」」
ビューティー「あら?ハッピーじゃありませんが、ウルトラハッピーな気配が……」
食いしん坊組『え?どうしたの??』