ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
パルミア王国とメイジャーランド、ホープキングダムは異世界だからしゃあなしとしても……まぁ、子供向けアニメですし?難しい話は置いておこうってことなんでしょうけど
ともあれ、本編どうぞ
まりあがいおなとともに希望ヶ花市にやってきてから数日。
いつものように、温室でお茶会をしていた菖たちだったが、その顔はあまり優れていなかった。
その原因は、希望ヶ花市に、いや、プリキュアたちが住んでいるすべての町に、めぐみたちから一つの知らせが飛んできたことだった。
その知らせとは、ブルースカイ王国からプリキュアオールスターズ全員にむけての叙勲式の招待だった。
ぴかりヶ丘にあるブルースカイ王国大使館に居を構えている白雪ひめ――ヒメルダ・ウィンドウ・キュアクイーン・オブ・ブルースカイの故国、ブルースカイ王国が幻影帝国の侵略から解放され、国王はじめ王国民全員もまた無事に鏡から解放され、元の活気ある姿に戻ったらしい。
ひめからある程度の話を聞いたブルースカイ国王は、ブルースカイ王国を解放するために尽力したハピネスチャージプリキュアだけでなく、世界各国にいるプリキュアたちの働きに敬意を表し、一代限りの名誉貴族の称号を贈ることを決定、叙勲式を行うので、ぜひともブルースカイ王国に来てほしい、ということのようだ。
ちなみに、その通達はひめを通じて行われ、招待状についてはリボンからコロンを経由して手渡された。
「しかし、太っ腹だな、ブルースカイ王国……プリキュアオールスターズ全員を名誉貴族に、だとさ」
「それって大丈夫なのかしら?そもそも、わたしたちのことを知っているのって、めぐみたちだけ……あ、まさか」
菖が妙なところに感心し、ゆりがまゆをひそめていた。
周囲の人々を巻き込まないように、というのと、奇異の目でみられることを避けるために、自分たちがプリキュアであるということを他人に話してはいけない。
ブルーが定めた恋愛禁止の掟ではないが、これがプリキュアオールスターズの暗黙の掟だった。
が、ラブたちとマナはその掟を盛大に破っている。
ラブたちはメビウスとの最終決戦の時に、帰ってこれないかもしれないからという理由で家族にすべてを打ち明け、マナはキングジコチューとの戦いのときに盛大に名乗りをあげていた。
そのため、マナは現在でも総理大臣から人知の及ばない力による災害の処理をマナを経由してドキドキプリキュアに依頼されることがあるようだ。
もっとも、ラブたちはそのことを商店街の人々の心のうちにとどめているため、政府機関からの協力要請を受けたことはないのだが。
ともあれ、おそらく、それらの影響なのか、それともひめが両親である国王と王妃に色々としゃべっているうちに口を滑らせてしまい、プリキュアオールスターズのことやプリキュアの守護騎士のことも話してしまったのか。
いずれにしても、ブルースカイ王国にはプリキュアオールスターズと守護騎士たちの正体も現在の所在地もばれているようだ。
「あ~……ひめって家族大好きだもんねぇ」
「ぴかりヶ丘だけじゃなくて、他にもプリキュアがいることを話しちゃったのかな?」
「で、そんな話を聞いちゃったから、幻影帝国を倒すことに尽力した
「そういうことなのだろうけれど、それもそれでどうかと思うけれどね?まぁ、さすがにわたしたちを軍事利用しようとかは考えない……と思いたいわ」
「そこなんだよなぁ……」
つぼみの疑問に返しながら出てきたゆりの指摘に、菖は眉をひそめた。
一代限りの名誉貴族とはいえ、貴族の位を叙されている以上、ブルースカイ王国のために働くことは当然のことである、と過激な思想を持っている人間であれば言いかねない。
もっとも、プリキュアの力も、守護騎士の力も破壊よりも浄化に重きを置いているものであるため、兵器利用は当然できないのだが。
それはともかく。
「まぁ、叙勲式についてはメディアを一切介さないってことにすれば大丈夫なんじゃないか?」
「……だといいのだけれど……あるいは叙勲式の時だけは変身させてもらう、とか?」
「そのへんはひめやみんなと相談だなぁ……まぁ、最悪、俺一人だけ身バレさせてってのも……」
「それはだめです!」
「そうっしゅ!菖さんばっかり目立ってずるいっしゅ!!」
「えりか、そういうことじゃないと思うけど……」
菖が代表で一人を選出する方法にどんな意図があるのか察しきれなかったえりかがそんな反論をすると、いつきは苦笑しながら否定した。
突然否定されたことに、えりかは怒りながらその理由を問いただすと、ゆりが額に青筋をうっすらと浮かべながら笑顔で解説を始めた。
「いい?えりか。もしあなたがプリキュアだってことが世界中の人たちに知られたらどうなるかしら?」
「え?そりゃいろんな人から注目されるんじゃ」
「そうね。そして家族も巻き込まれて、ありもしない誹謗中傷を書かれることにつながるかもしれない」
「もっと言えば、名誉とはいえ貴族だからな。家族を誘拐して身代金をせしめたり、それこそ何か軍事的なことに利用しようとしたりするんじゃないか?」
それだけならばまだしも、非人道的な研究を平気で行う連中や世界征服を目論む連中にその存在を知られ、拉致される可能性もある。
だからこそ、正体がばれないよう変身した状態で参列するか、仲間たちが物量に物を言わせて強制的に沈黙させることができるよう正体を明かすのは一人だけ、という制限を設けることを考えたのだ。
決して、一人だけ目立ちたいからではない。一人に危険が集中するように仕向けるための提案なのだ。
それを自分にすればいい、と菖が口にすれば、当然、つぼみは黙っていない。
ゆりは沈黙しているが、当然、そんなことをさせるつもりはない。
おそらく、同じ話をすれば、ひかりと舞、そしていおなも同じように否定する。
それだけ、彼女たちにとって菖の存在は大切なものなのだから。
「とはいえ、叙勲式はまだしばらく先のようだし、ひめたちとゆっくり調整していきましょう?」
「だな。さすがに国内がまだごたついてるだろうし」
いつまで経っても結論が出ないという気配に、ゆりがそう提案すると、菖はそれに同意した。
実際問題、鏡に閉じ込められていただけとはいえ、どのような被害があったかの把握や復興の必要性の有無など、国として行わなければならない諸々は存在する。
それらの把握を行わないことには、叙勲式はまだ先になるだろう。
現に、ひめはそのことを理解し、国王に進言したため、叙勲式自体はまだしばらく先になることをリボンに言づけていた。招待状自体は用意してしまったため、持っておいてほしいということなので手渡されてしまったが。
ひとまず、これからのことを考えながら、叙勲式をどう乗り切るか、なぎさたちも交えて相談することにした菖たちだったが、この時は、まさか幻影帝国の裏に今回の戦いを仕掛けた黒幕がいることなど、まして、戦いがまだ終わりを迎えていないということなど知る由もなかった。
おまけ
~貴族になったとして~
ゆり「それで?名誉貴族になったとして、みんなは何がしたい?」
えりか「もっちろん!あたしプロデュースのドレスや服をはやらせるっしゅ!」(-H-
いつき「う~ん、わたしは孤児院とかの支援を積極的にしたいかなぁ」
つぼみ「ここはやはり、貴重な植物の管理を!!」
菖「ぶれないなぁ……」(-▽-;
ゆり「そういうあなたは?」
菖「ん~……まぁ、文化財保護とかかなぁ?あとは……いや、これはいうのはやめておく」
ゆり「あら?気になること言うのね?」
菖「まぁ、うん……(まだ言えるかよ、ゆりだけじゃなくてつぼみも舞もひかりも嫁に迎えたい、なんてさ……)」