ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
というより、『ブレイドナイト』のカップリングに関する話となります
微エロです、嫌いな方はご注意を
ファントムとの戦いが終わって数週間が経った。
あの戦いの後、当然のように、自分たちを呼ばないで戦ったことに対して、つぼみたちからお説教を受けたことは言うまでもない。
特に、ゆりとつぼみは涙目になり、今にも泣きそうな声色で、自分たちはそんなに頼りないのか、とか、もう無理はするな、とか色々と言われてしまったことは言うまでもない。
もっとも、出会って即戦闘になってしまったために連絡する暇すらなかったため、仕方ないといえば仕方ないのだが。
それはともかくとして。
その日はいつものように、いおなが希望ヶ花市に遊びに来ていた。
だが、今回は少しばかり違う点があった。
一つは、いつものように泉地流の稽古場ではなく、明堂院流の道場に来ているということ。
もう一つは、いおなが一人の女性を連れてきていた、ということだ。
その女性はというと。
「はぁっ!」
「ぐぉぁっ?!」
明堂院流の門下生を相手に地稽古をしていた。
が、その実力はあまりにも高く、明堂院流でもなかなかの使い手であるはずの熊本が軽々と敗北してしまうほどだった。
「く、熊本さん?!」
「すげぇ、体格が頭一つ分くらい違うのにふっとばしちまった……」
「さすが、いおなのお姉さんね……」
「ふふふ」
熊本があっさりと吹き飛ばされたことに驚愕している菖と明の横で、ゆりがそんな感想を漏らしていると、いおなは自慢げに笑みを浮かべていた。
そう、いま熊本を吹き飛ばした人物こそ、かつてはぴかりが丘で戦っていたが、ファントムに敗れ、行方不明となっていたいおなの自慢の姉、氷川まりあその人である。
あれから、めぐみたちハピネスチャージ組のもとにファントムが現れ、戦いを挑んできたのだが、撃退に成功し、いままで捕らえられていたプリキュアたちも解放することができたそうだ。
その中には、かつてぴかりヶ丘で最強を誇っていたプリキュア、キュアテンダーこと氷川まりあも含まれていた。
今回の出稽古は、復帰したまりあのリハビリも兼ねてのことのようだ。
なお、菖たちはすでにブルースカイ王国復活を祝っての祝賀会に招待されたときにまりあと顔合わせは済んでいる。
済んでいるのだが、彼女のその実力まではいおなの話でしか知らなかったため、こうして目の当たりにしたことで改めて、ぴかりヶ丘最強の称号は伊達ではないことを理解した。
「ふふ、さて次はどなた?」
「なら、俺が」
まりあの問いかけに名乗りを上げたのは、明だった。
さきほどのまりあの腕前を見て、スイッチが入ってしまったのだろう。その顔には、獰猛な笑みが浮かんでいた。
「あぁ……明の戦闘狂スイッチ、入っちまったか」
「ま、まぁ、こうなるのも仕方ないかと……」
「正直、わたしは明さんとだけは稽古したくないです……」
「たぶん、それはここにいる全員が思ってるな」
学園でこそ、超高校級のイケメンだとかみんな振り向くあんちくしょうなどともてはやされている明だが、当然、欠点が存在する。
その欠点が、人をからかって遊ぶことを好んでいるということと、戦闘狂である、ということだ。
そのため、菖とゆりを見かけるたびに、戦いたくて仕方がない、という衝動に襲われるらしい。
そのことを聞いた時、
それはともかくとして。
互いに向かい合い、礼をして、明とまりあは身構えた。
その瞬間、開始の合図が響き、明とまりあは互いに激しい攻防を繰り広げた。
ごっ、とか、べしっ、みしっ、という、普段の稽古ならば絶対に聞こえてこない音が二人の間に響いていた。
その間、両者とも一歩も引かないどころか汗一つかいている様子がなかった。
「さすが、希望ヶ花最強の高校生と氷川道場最強の門下生……」
「正直、わたしでもあれを捌ききるのは無理ね……まったく勝てる気がしないわ」
「いやいや、希望ヶ花最強の二人が何を……」
菖とゆりの発言に、いつきは苦笑を浮かべながら、反論した。
なお、いつきが言うように、菖とゆり、明の三人は希望ヶ花市の三強として、不良たちや武道を嗜む人々から恐れられており、"三匹"とまで呼ばれることもある。
さすがにゆりがいるうえに、全員が高校生であるため、その後ろに「おっさん」はつかないのだが。
それはともかくとして。
明とまりあの激しい攻防を見守っていた菖たちだったが、不意にいおなが口を開いた。
「けど、ちょっと羨ましい」
「何が羨ましいんだ?いおな」
「お姉ちゃん、すごく楽しそうにしてる」
背後から何か黒い靄のようなものを漂わせ、今にも包丁を持ち出しそうな表情をしながらいおなはそう返してきた。
いおながまりあが大好きであることは、彼女との交流が始まってしばらくしてから知ったことだが、まさか稽古相手にまで嫉妬するほどとは思っておらず、菖とゆりは若干引き気味になっていた。
なお、いつきは、いおなほどではないにしても、お兄ちゃん大好きっ子であるためか、苦笑を浮かべながらその様子を見守っていた。
それはともかく。
一進一退の攻防を繰り広げる明とまりあだったが、流れは徐々に明の方へと向かっているように見えた。
が、それは明の性格が攻めの性格だからそう見えるだけであり、決して、まりあが劣勢というわけではない。
現に、まりあはすべての攻撃を捌きながらもその場から一歩たりとも動いていない。
その胸部装甲とは真逆の、絶壁ともいえる守りを披露していたまりあだったが、長い間、鏡の中で眠っていたことが災いしたらしく、徐々に疲労が見え始めていた。
その疲労から生まれた隙を見逃すほど、明は甘くはない。
「せりゃっ!」
気合一閃。
みぞおちめがけて、明は掌底を突き出した。
掌底が突き刺さるその一瞬前に、まりあは明の腕を蹴りあげた。
だが、それはある意味で悪手だった。
全身全霊を込めていたのか、それとも膂力の差があったのか、まりあの蹴りでは明の掌底の軌道を体から完全にそらすことができなかった。
みぞおちから狙いが逸れた明の掌底はまりあの体を捉えたままだった。
狙いが逸れたが、明の掌底は勢いをそのままにまりあに向かっていき。
むにゅん。
「……あ……」
「……な……」
「へ……?」
「え……?」
「………………」
「……え?……」
胸に当たった。
あまりに意外なその結果に、観戦していた一同は目を丸くし、現在進行形で触れている装甲の柔らかさゆえか、それとも想定外の展開に驚いてか、あるいはその両方か、明は呆けた顔になっていた。
一方、いまだ特定の相手がおらず、当然、家族以外の異性に肌を触れるこそすら許したことがないまりあは徐々に顔を真っ赤に染めていき。
「……き……きゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
涙目で悲鳴を上げながら明の顔にビンタを浴びせていた。
あまりの早業と想定外の事態に反応が遅れてしまったのか、それとも乙女の柔肌に触れてしまったことへのせめてもの償いか、明はその一撃を回避することなく、甘んじて受け止めた。
「……な、なんというか……災難だな、明のやつ」
「……御剣くんのえっち……」
「……よし、もごう。いますぐもごう」
「い、いおな?!ちょ、ちょっと落ち着いて??!!」
その一部始終を見ていた菖は、明に同情のまなざしを向けながらそう呟き、ゆりは顔を赤らめながら、自分が被害を受けたわけではないのに胸をかばいながら明を非難していた。
一方、大好きな姉を辱められたいおなは、その瞳から完全に光が消え、右手を握ったり開いたりしながら物騒なことをつぶやき、いつきがそれをどうにか止めようとするのだった。
なお、この手合わせの結果はまりあの張り手を思いっきりもらい、気を失った明の負けという判定になったことを補足しておく。
おまけ
~熊本さん敗北(別ver.)~
まりあ「はぁっ!!」
熊本「ぐはぁっ!……や、やられたぜぇ……よぉ……」
明「おいおい、熊本さん、レイヴンになりきれてねぇぞ?」
菖「いや、何を言ってんのかわかんないぞ、明」
~菖とゆりの場合~
菖「せぃっ!」
ゆり「はぁっ!!」
菖「……そこだぁっ!!」
ゆり「くっ!!させない!!」
(がっ!ふにゅん)
菖「……あ」
ゆり「え……?……い、い……いやあぁぁぁぁぁっ!!!!!」
菖「ひでぶっ!!!(……や、柔らかかった……けど、まじでごめん、ゆり)」
ゆり「……菖のえっち……」(///H///メ
~その後の明とまりあ~
まりあ「……むぅ……」(///H///メ
明「え、えぇと……まりあ、さん?」
まりあ「むぅ~~~~……っ!!」(///H///メ
明「……なんか、甘いもの、ごちそうします。それで許してください」
まりあ「……と……」
明「ん?」
まりあ「一日デート!そうでなかったら、お姉さん、許しません!!」
明「あ、はい」
まりあ「ん!よろしい!!」
明(……なんか、謝罪にかこつけて、デートこじつけられたような?)