ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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タイトルの通り、今回はファントムの権能の一部が発揮されます
とはいえ、原作よりも少し改造されているかもですが
なお、次回で決着の予定です


再戦、ユグドセイバーvsプリキュアハンター!~2、ファントムの隠された能力~

「貴様の相手は、貴様自身だ!ユグドセイバー!!」

「コピー能力か?……さすが、鏡の力を使うだけはある」

 

ファントムが化けた姿に、目の前に現れたもう一人の自分に、末恐ろしいものを感じながら、セイバーはエターナルハートを構えた。

同じようにファントムもエターナルハート、と呼ぶにはあまりにも禍々しい、赤い光を反射している剣を引き抜き、構えた。

 

「その武器だけは変身前と変わらないんだな」

「これが俺の愛刀だからな。お前と俺、どちらが本物か、試そうじゃないか」

生命(いのち)あるものに本物も偽物もない」

 

ファントムの言葉にぴしゃりと言い返し、セイバーは心の花の光をエターナルハートに宿した。

挑発のつもりだったのだろうが、冷静に言い返されたことであてが外れたのか、ファントムは舌打ちをした。

だが、意外にも先に仕掛けてきたのはセイバーの方だった。

 

「なっ?!」

「ただでさえお前には腹立ってんのに、俺の恰好されたら余計に腹立った」

 

普段のセイバーであればあり得ない、冷たい声でそう言い放ち、剣ではなく、蹴りでファントムを攻撃してきた。

鋭い蹴りがファントムの腹に向かっていったが、間一髪、腕でガードしたため、内臓に直接ダメージが入ることはなかった。

だが、それでも衝撃は強く、少しばかり吹き飛ばされてしまった。

 

「ぐぅっ!!」

「まだまだ!!」

 

間髪入れず、今度は首筋にエターナルハートが振り下ろされた。

だが、ファントムは振り下ろされる腕をつかみ、背負い投げの要領でセイバーを投げ飛ばした。

そのまま地面に倒れてくれれば楽なのだが、とファントムは思っていたが、同時にそう簡単に思うようにはいかないということもわかっていた。

セイバーは空中で体をひねって着地し、エターナルハートを振るった。

 

「セイバーショット!!」

「ちぃっ!!」

 

振るわれたエターナルハートの軌跡に沿うように、心の花の光が三日月の刃となって飛んできた。

その刃を受け止め、はじき飛ばしたファントムは赤黒い光を全身にまとわせ、セイバーに突進してきた。

突進と同時に振り下ろされた剣を回避し、ファントムの背後に回り込むと、セイバーは手のひらに心の花の力を集め、ファントムの背に触れた。

 

「セイバーインパクト!!」

「がはぁっ?!」

 

心の花の力が衝撃波となり、ファントムの背中に強い衝撃を与えた。

そのダメージに、ファントムは肺に残った空気を悲鳴とともに吐き出し、恨めしそうにセイバーに視線を向けた。

その視線の先には。

 

水の執行者(アクリア・ルズローシヴ)!!」

 

澄んだ水のように青く輝く弓を手にし、矢のように細く束ねられた心の花の光を番えたセイバーの姿があった。

その姿を確認した次の瞬間、ファントムに向かって大量の光の矢が襲いかかってきた。

さすがに、今の姿では(・・・・・)それらすべてに対処することはできない。

そう判断したファントムは、自分がセイバーの姿だけを写し取ったわけではないことを証明するかのように、高らかに祝詞を唱えた。

 

早咲きの大地(ハクディム・ガリア)!!」

「なにっ?!」

 

さすがにセイバーは驚愕の声を上げた。

目の前に現れたのは、色合いこそ違うが確かにファントムが装備しているものは、エターナルハートが変化する武器の一つ、巨大な手甲だった。

放たれた矢を、手甲で弾き飛ばしたファントムは地面を蹴って距離を詰め、その拳を振り上げてきた。

だが。

 

約束の翼(ルウィーユ・フィルク)!!」

 

セイバーは再び祝詞を唱え、弓となっていたエターナルハートを数本の翡翠に輝くナイフへと変化させ、宙に舞った。

回避されたファントムの拳は、地面に向かって振り下ろされ、小規模ながらクレーターを作り上げた。

さすがに、ミルキィローズのような巨大なクレーターを作ることはなかったが、それでも規模としては十分すぎた。

 

「ちっ……敵に回すとこうも厄介か、セイバーの力ってのは!!」

「まだまだこれだけではないぞ!水の執行者(アクリア・ルズローシヴ)!!」

 

さらに追い打ちをかけるように、ファントムは別の姿へと変わり、追撃してきた。

ムーンライトから、少し反則、と言われるほどの力を秘めた剣を相手にすることがどれだけ厄介なことか、痛感させられたセイバーだったが、それを気にしている暇はない。

ファントムに向かって突撃しながら、セイバーは背後に待機させている短剣の一振りを手に取り。

 

「「清浄なる炎(フォエス・ファイアリ)!!」」

 

ファントムと衝突する寸前、炎の大剣へと変化させ、横凪にその剣を振るった。

だが、セイバーの剣がファントムを捉える前に、ファントムもまた弓を大剣に変えていた。

二振りの炎をまとう剣がぶつかり合い、さらに激しい炎を生み出した。

周囲を炎が包む中、二人の剣士は互いの剣を激しくぶつけ合い、切り結んでいた。

切りつけては回避され、切りつけては受け止められ。そんなやり取りを何度か繰り返すうち、セイバーとファントムはどちらからとなく間合いを取った。

 

――レイディアントシルエットだったら切り抜けることもできるんだろうけど……

 

周囲で燃え滾る炎のせいもあって、体はやけに熱くなっている一方で、頭のほうはいたって冷静だったセイバーは打開策を見いだそうと思案していた。

だが、最強フォームであるレイディアントシルエットは、ハートキャッチミラージュがなければなることができないし、下手をすればブロッサムたちがいなければなることができない可能性もある。

何しろ、あの鏡は「プリキュア()ユグドセイバーに力を」与えるものなのだ。

セイバー一人では、うまく機能しないことだってありえる。

 

――だったら、エターナルハートの力をあてにしない!純粋に俺自身の力でぶつかってやる!!

 

最強フォームになることはできない。かといって、形状を変え(フォームチェンジし)ただけではじり貧になる。

ならば、もう純粋な実力で勝負するしかない。

そう判断し、セイバーはエターナルハートを通常の姿に戻し、その刀身に心の花の光をともした。

ファントムもまた、セイバーのその姿を見て、同じ土俵で戦うことにしたのか、それとも単になめてかかっているのか、最初の姿に戻り、同じように赤黒い光を刀身にともした。

 

そのまま、両者はまったく動かず、互いに隙を探り合った。

不意に、風が二人の間を吹き抜けた。その風に運ばれて、どこからか飛んできた木の葉が二人の間を通り抜けた。

それと同時に、セイバーとファントムは地面を蹴り、雄たけびを上げながら互いの距離を詰めた。




次回、ついに決着!

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