ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ 作:風森斗真
ある意味、これは伏線です
その回収は……どんな形になるかは日曜の更新をお待ちください!
それでは本編どうぞ
アリスが帰国してから数日。
少しばかりさみしさは残るものの、つぼみたちは変わらぬ日常を過ごしていた。
もっとも、すでに季節は初夏のころ。この時期に学生たちに襲いかかってくるものがあった。
それは……。
「「うわ~~~~~~んっ!中間テスト/試験やだよ~~~~~~~~~っ!!」」
「あきらめろ、来海姉妹」
「えりかもももかも、往生際が悪いわよ?」
「え、えりか、わからないところは教えますから、頑張りましょう?」
「あははは……」
勉強が苦手なえりかとももかにとって、いや、全国の学生たちに平等に訪れる試練。
それが定期試験だった。
特に、菖たち高校生にとって、この定期試験は次の進路を決定づける重要な指針になるため、気合を入れなければならないものだった。
「ほれほれ、文句言ってないで、手を動かす」
「うぅ~……明くんが久しぶりに鬼畜ドSモードにぃ……」
恋人の容赦ないスパルタに、涙目になりながらシャーペンをせわしなく動かしていた。
そんな中で、菖と小狼はさくらとひまわりに英語を、君尋はえりかといつきに古文を、ゆりと静はつぼみに理科を教えていた。
その中でももかが、そういえば、と手を止めて口を開いた。
「今朝のニュース、見た?」
「今朝の?」
「……あぁ……たしか、一定以上の所得税を納めるだけの経済力がある奴は五人まで婚姻オーケーってやつだったか?」
「そう、それ!」
ももかが話しているニュースとは、少子化対策の一環として、一定以上の所得税を納めるだけの経済能力がある場合のみ、複数人との婚姻を認める「一夫多妻、多夫一妻制に関する法案」、通称「ハーレム法」が提出された、というものだ。
複数人といっても、五人までの人数制限が課せられているし、その人数を超えて異性と親密な関係になることは禁じられているし、仮にそうした場合、問答無用で厳罰が課せられることになっている。
加えて、現在も人権問題や母体となる女性の健康への配慮など、話し合う余地があるため、そう簡単に可決されないだろうと、世間では言われている。
なお、あくまで「可能とする」法案であるため、一夫一妻を貫いても問題はない。
要するに、合法でハーレムと逆ハーレムが可能になるかもしれない、という話題は、当然、多感な時期の高校生たちの話題になっていた。
ももかもそれにひっかかった一人なのだろう。
だが、ここにいる男子たちはあまりいい顔をしていなかった。
「要は少子化対策なんだろうけど……いや、けどそれってどうなのかね?」
「男ならまだしも、女性の負担とかもなぁ」
「むしろ、経済活動をどうにかしないとなんじゃないか?あるいは子どもの養育を政府が負担するとか」
「それこそ無理だろ」
「やっぱまずは景気対策だろうなぁ……いっそ、働ける年齢を下げるとかすればいいんじゃないか?」
なぜかハーレム法でどんなハーレムを築くか、というよりも法案の粗探しとその法案が生まれた背景についての話し合いが始まっていた。
どうやら、ここにいる全員、ハーレムを築くつもりはないらしい。
むしろ、この法案を歓迎しているのは。
――この法案が通れば、誰とも争わずに菖を共有財産にできるのだけれど……
――もしこの法律が成立すれば……誰とも喧嘩せずに菖さんと結婚できるのでは?!
プリキュアであり、共に戦う中で菖に対して特別な感情を抱くようになったゆりとつぼみだった。
ちなみに、菖に特別な感情を抱いているのはこの二人だけではない。
他の町にも二人、菖に対して特別な感情を抱いているプリキュアがいるのだ。
もちろん、喧嘩などしたくはないので、菖の選択に従うことで一応の決着がついているのだが、この法案が成立すれば、誰も脱落することなく、菖のお嫁さんになることをができる。
できれば、みんな一緒にゴールインしたいと考えている二人だからこそ、この法案は賛成だった。
もっとも、気恥ずかしくて声を大にしてそれを主張する勇気はないのだが。
「……ま、考えてても仕方ない、いまは勉強勉強!」
「うっ……うまく話をそらせたと思ったのに……」
「はっはっは!あまいぞ、ももか!!」
「てかやっぱりそれが目的か……」
「油断も隙もないわね……」
どうにかして勉強から逃げようとするももかに、菖とゆりはため息しかでなかった。
だが、この時の彼らは、この話題に出てきた法案が可決され、このメンバーの中から法案の恩恵を受けることになるものが二人ばかり出てくるとは、思いもしなかった。
なお、試験結果としては、この場にいた全員、上位にランクインし、ゆりと菖、明の三人で一位争いが行われ、ゆりが見事に一位の座を勝ち取ったのであった。