ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~   作:風森斗真

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まぁ、タイトルの通り、我らがイケメン五人衆が一人、明さんのお仕事の物語です
まぁ、このお話でさらに明さんにホの字になる乙女が二人出てくるわけですが……
誰になるかは本編をお楽しみに


明さんのお仕事

その日、希望ヶ花市に多くの少女たちが集まっていた。

その理由は、現役女子高生モデルの来海ももかと、フランスで最も有名なファッションブランド『ボアンヌ』の専属モデルである天の川きららがコラボすることになったためだった。

当然、ももかから招待されたゆりと菖、えりかとつぼみ、いつきはもちろんのこと、ももかの専属BGである明もその場に居合わせていた。

 

「すっげぇ人だかり……さすが、現役女子高生モデルと海外ブランド専属モデル」

「ですよね!ほんと、ももかさんもきららちゃんもすごすぎます!!」

 

ももかときらら見たさに集まってきた群衆に、菖がそうつぶやくと、聞き覚えのある声が背後から聞こえてきた。

振り向くと、そこには菖たちの後輩プリキュアであるはるかとみなみ、トワの三人がいた。

 

「お?久しぶりだな、はるか、みなみ、トワ」

「あら?やっぱり来ていたのね」

「お久しぶりです、はるかさん!」

「「「ごきげんよう、皆さん」」」

 

はるかもみなみもトワも、ノーブル学園流のあいさつで返してきた。

生まれた時からお嬢様であったみなみとホープキングダムの王女であるトワはともかく、はるかもその所作が洗練されてきているように感じた菖とゆりは、温かなまなざしをはるかに向けていた。

 

「あ、あの?菖さん?ゆりさん??どうしたんですか??」

「……いや?はるかがトワの義姉になる日はいつなのかなぁって思っただけだよ」

「ふふっ、そうね。すっかり『お姫様(プリンセス)』らしさに板がついてきたようだしね」

「……っ??!!」

 

くすくすと笑みを浮かべながらはるかの問いかけに返してきた菖とゆりの言葉に、はるかは小規模な噴火を起こした上に、首筋まで真っ赤になっていた。

トワの義姉ということは、すなわち、ホープキングダムの王子であるカナタと夫婦になるということである。

 

『信じればお姫様になれる』と、幼い日にカナタに言われたことがきっかけで、プリンセスになることを目指し、励ましてくれたカナタにあこがれていたはるかにとって、それは望むべきものであり、できることならかなえたい夢でもあるのだが、いざ他人にそのことを指摘されると、やはり羞恥心がこみあげてくるらしい。

はるかは顔を真っ赤にしたまま、うずくまり、うなってしまった。

 

「は、はるかさん……」

「はるか……」

「菖さん、ゆりさん?お二人とも、お義姉さまをからかいすぎですわ」

「はははは……って、トワ、お前もちゃっかりはるかを「義姉(あね)」呼びしてんじゃん」

「トワ、あなたもいい性格してるわね……」

 

意外にもちゃっかりしているトワの発言に、菖もゆりも苦笑を浮かべながらそう返していた。

だが、トワはそんなことは意に介す様子もなく、首をかしげていた。

そうなるであろうことは、二人ともわかっていたことなので、あまり気にしている様子はなかった。

不意に、いつきが周囲にいる人々が視線を向けている場所と同じ方へ視線を向けた。

いつきの目に、見知った顔の少女二人が姿を見せると、いつきは菖たちに声をかけた。

 

「あ、きららちゃんとももかさんが出てきたみたい!」

「お、来たな」

 

いつきが指し示す方へ視線を向けると、そこには今回のファッション誌に掲載される予定のコーディネイトの服を着たももかときららが並んでいた。

撮影が始まると、警備員たちが群衆の前に等間隔で立ちふさがり、スタッフたちの邪魔にならないようにしていた。

その中に、明とまりあの姿があった。

 

「……あれ?あれって、まりあさん、だよな??」

「そうね……もしかして、ボアンヌ側の警備スタッフかしら?」

「あぁ、そういやいおながそんなこと話してたような?」

 

そういえば、まりあの妹であるいおなからそんな連絡があったような、と思い出しながら、菖はそうつぶやいていた。

その美貌とスタイルの良さから、モデルとしても活躍できそうではあるのだが、なぜかまりあは身辺警護人という職場を選んでいた。

もっとも、それは恋心を抱いている明と職場が一緒になる可能性があるため、という下心からなのだが、そんなことは菖たちはまったく知らない。

 

「……あれ?ね、ねぇ、菖さん、ゆりさん。そこにいる男の人……」

 

不意に、いつきがそう言いながら、一人の男性の方を指さした。

指さす方へ視線を向けると、そこには鋭い目つきの男が一人、懐に何かを隠している様子で群衆の中を歩いていた。

 

「……まずいかもしれないな」

「どうするの?」

「……素人の俺たちが手を出すわけにもいかないから、ここは」

 

そう言って、菖は明の方へと歩んでいった。

菖の姿に気づいた明ではあったが、仕事中であるため、あちらから声をかけることはなかった。

だが、そんなことはお構いなしに、菖はハンドサインで不審者がいた方向を指さした。

明は指さされた方へ視線を向け、菖の意図を理解したようだ。

 

「協力、感謝する」

 

菖の耳元でひそひそとそうお礼を言って、不審な男がいた方へと向かっていった。

明が向かっていく姿を見送ると、菖はその場を離れていき、もといた場所にとどまっていたゆりたちと合流し、イベントが終了するまでの時間、ももかときららの仕事ぶりを遠目から見学していた。

 

なお、余談だが、あの時の不審な男はきららをストーキングしている男だったらしく、警備の網に引っ掛かり、暴れだしたところ、明が鎮圧し、警察に引き渡した。

その姿に、恋人のももかはもとより、護衛対象であるはずのきららと警備員であるはずのまりあが若干、顔を赤くしていたらしい。


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