偽装の笑顔〜Dual Personality〜 作:さとそん
なるべく早く投稿すると宣言してから約2ヶ月……ようやく書き終わりました(遠い目)
今度こそ!今度こそ急いで投稿します!
いや、フラグだろとか言わないでっ!本気なんで!
ということで本編入ります()
※後書きにて色々報告がありますので読んでいただけると嬉しいです
「ねぇ……まだ歩くの?」
「んー、もう少しで着くわよ?」
ある日の放課後。変人集団with僕と奥沢さんと松原さんはなぜかめちゃくちゃ歩いていた。たぶん40分くらい。
というか6人中withが3人ってどうなんだろうか。いや、別にあの三馬鹿の仲間入りとかしたくないんだけどさ……。
まぁ奥沢さんの疑問に対しては僕も同感だ。さっきからずーっとだだっ広い豪邸の塀に沿って歩き続けている。普段から散歩は嫌いじゃないけど、これは景色も変わらないしくっそつまんない。早く帰らせて欲しい、別に僕はバンドなんか興味無いし勿論その会議に出席する義理もないんだから。
まぁ、こんなこと弦巻こころの前では考えるだけ無駄なんだろうけど。どれだけ抵抗してもそのお花畑な脳内で自分のいい方に持ってかれてしまう。全く……厄介な人間だ。
「着いたわっ!ここが本日の会議場所よ!」
相当歩いたけれど、やっと着いたみたいだな。長すぎだよホント……っ!?
「「「で、でか……くない!?」」」
僕と弦巻こころ、薫さん以外の3人がいうように、弦巻こころが本日の会議場所と言って指を指した場所はとてつもなく大きな家だった。
敷地の中にはそこらのスポーツ施設よりも広いであろうテニスコート、最新鋭の噴水に、何故こんな場所にあるのかよくわからないバッティングセンターまで設置されている。
アニメでしか見たことのないような、蝶のような文様に彫られている鉄の門、レンガ積みで堅牢に作られた塀。
敷地の設備だけでなく、家自体も相当荘厳な雰囲気を醸し出している。
家、というよりは宮殿と表現した方が正しいであろう純白な壁と綺麗な青い屋根。こんな豪邸の家を持っている人などそうそういないだろう。
「なるほど、君はつまるところ本物のお姫様……ということかな?」
「そっか、弦巻って星の命名権も持ってるって噂の名家か……道理でこんな宮殿みたいな豪邸に住んでるわけだ」
名家、つまり──
「金持ち、か……」
そのとき僕の表情が一瞬曇ったのに気づく者はいなかった。
「……??」
ただ1人を除いては──。
☆☆☆
弦巻こころの実家であるらしい豪邸に連れてこられてから数分経った頃、僕達は普通の家にはあるはずのない広大な会議室にてひとつの席を囲んでいた。
目の前にはこれまた高級そうな電子ホワイトボードが置かれている。
「まず、あたしが考えてきた楽しいことリストを紹介するわね!これで『バンド』をやろうと思うのっ」
おっ、こいつにしては少し考えてきたのか? 思いつきで発言した割にはちゃんとやるみたいだな……と、言おうと思ったが僕は騙されんぞ。正直いって意味がわからなかった。バンドなんて音楽奏でて、はい終了。それだけで充分なのに『楽しいことリスト』などというこれまた脳内お花畑ワードが飛び出してきた。絶対ロクな内容じゃ無いだろうな。
「なになに?……海の砂浜でお城を作る、シロツメクサでかんむりをつくる、流星を探しに山に登る……うん、これ」
「洗いたてのシーツの匂いを嗅ぐ、お腹いっぱいお菓子を食べる……ふふ、これは……」
さすがのはぐみちゃんと薫さんでもこれは酷いと思ったのだろう。だって、これバンドと全く関係n……
「「すごくいいっ!!!」」
「「「……え?」」」
やはりこの三馬鹿に常識は通じないのか……。隣にいる松原さんと奥沢さんも驚愕に目を見開いている。
前半三つはまだわかる。もしPVとか作るならば、むしろアリなんだろう。まぁそんなことまで一介の女子高生バンドがすることは無いだろうけど。
ただ、問題は『洗いたてのシーツの匂いを嗅ぐ』だ。
たしかにいい匂いだけれども、それは女の子の所業ではないだろう。
「こ、こころちゃん!どれも楽しそうだけど、楽器を弾いて歌を歌って曲を演奏しないと音楽をしていることにはならないよ?」
「そうなの?どうしても音楽をしなきゃいけないの?」
「あっ、そうだった!バンドって音楽をするんだよ!」
「えっ?いや、どうしてもっていうか……えっと、だから……えぇ」
なんか幸せそうですねぇ……。
バンドなんだからそりゃあ音楽しなきゃいけないでしょ。
はぐみちゃんはバンドが音楽をするものだって知らないでバンドをやろうと思ったのかな?
お前らは脳ミソ砂糖でできてんのかよ。
こんな話に混ざるのは不毛だし僕は傍観者でも決め込もう。後はもう勝手にやっててくれ。
☆☆☆
今日はときどき寺嶋くんの様子がおかしい気がする……。みんなは気づいてないみたいだけれど、なぜか……そんな気がする。
普段は笑顔で話しているけど、こころの家を見てから、正確にはこの豪邸がこころの家と知ってから急に黙り込んでしまっている。
寺嶋くんだけが頼りなのにこころはずっとテンションハイだし、薫さんとはぐみはそれと一緒でイッちゃってるし、花音さんはネジが外れたロボットみたいになってるし……もう、こりゃだめだな。
「よーし!それじゃあ音楽を始めるわよっ、せーのっ!」
「「「「…………」」」」
「あれ、音楽ってなにすればいいのかしら……?」
「いや楽器持ってないじゃん!!まず普通そこからじゃない?」
ふぅ、せーのと言われた時は焦った……。何をするかも分かんないのにいきなりフラれても困るっての。
「だって!あたしはとにかく楽しいことがしたいのよっ、楽しいことをしなきゃ始まらないじゃない?」
「……!!」
「じゃあその楽しいことを考えればいいんじゃないですか?……って、寺嶋くん?なにかあったの?」
「……あ、あぁいや、なんでもないよ、なんでもない」
いや、絶対嘘でしょ……。この人もなんだかんだいってわかりやすいんだよね、明らかにこころが「楽しい」とか「幸せ」とか使うと途端に顔が強ばっているし。
今だってそう、いつもは快活な声も上ずって少しだけ唇が震えている。脚も微かに貧乏ゆすりを起こしていて、誰が見ても不機嫌であるのがわかる。
「ホントに大丈夫ですか……?」
花音さんも心配そうに寺嶋くんを見つめて声をかける。
しかし──
「大丈夫だって言ってるじゃないですか。僕のことなんかほっといてこの幸せそうな話進めててくださいよ」
「「え……?」」
花音さんの優しい声掛けとは裏腹に、寺嶋くんは怒気が混じった口調で花音さんを突き放す。
「というよりさ、弦巻さん。君はなんでそんなに「楽しい」ことを考えてるの?はっきり言って僕には意味がわからない」
それはまるで二重人格者に見られるもう一つの顔のようで、いつもの朗らかな性格とは真逆なオーラが溢れ出ていた。
「そんなの決まってるじゃない!『世界を笑顔に』したいからよ!そう、私はこのバンドで世界を笑顔にしたいのっ」
「「世界を……」」
「「笑顔に……?」」
薫さんとはぐみが、そして私と花音さんが声を合わせてこころの言葉を反芻する。
なんというか、こころらしい発想だ。決して馬鹿にしてるわけではない。この子は本当に笑顔が大好きで『世界を笑顔にしたい』のだろう。
「そうよ。私はなにより人の笑顔が大っっっ好きなのっ!だから世界を笑顔で溢れさせたいのよ!!」
だけど、『したい』と『できる』は違う。
アニメやドラマで言われる『努力は必ず叶う』なんてものは迷信だ。ホントにそうなら誰だって努力して夢を叶えるのだろう。
だから私はこころに向かって思った通りの言葉を口にする。
「いや、そんなこと出来るわけないでしょ」
自分でもびっくりするくらいバッサリと切ったつもりだった。けれどこんなものでこころは折れるはずがなかった。
「なんでできないって思うの?むしろなんで出来ないの?笑顔になりたくない人がこの世界のどこにいるの?」
「…………」
こころの反論に言葉が出なかった。そりゃあ反論した私も幸せになりたいか?と問われればなりたいと答える。
けれどなにか抵抗したくて必死に言葉を紡ごうとするが言葉が喉に詰まったように出てこない。そして、なんて言おうかと逡巡していたその時──
「……ここにいる」
長い間黙っていた寺嶋くんが怒りを露わにしたような声音でボソッと呟く。
その顔は今までとは違い、親の仇を見るような顔つきだった。
ありのままのぎーのさん、高評価ありがとうございます!
今回はあるお方(私のアニキ)に地の文が少ないとご指摘を頂いたのでいつもより頑張ってみましたがいかがでしたでしょうか……?
感想お待ちしてます!
そして前書きで言っていた報告についてです。
一つ目はこの小説のタイトルを変えます。個人的に少し気になっていたのでとあるアニキに考えていただきました!ありがとうございます。
名前は「偽装の笑顔〜Dual Personality〜」となっております。
変えるのは1週間後を予定しています。
そしてもう一つは自分を含めたハメ作家グループ、その名もN"our"viceを設立しました。
メンバーは
・うぉいどさん
・へびーさん
・イチゴ侍さん
・雪桜(希う者)さん
・5代目の鍵人さん
・夏風 櫂さん
そしてリーダーを務めさせていただいてます、さとそんと申します!
N"our"viceではオリジナル作品で「青春memory」という作品を7人で書かせていただいてます。よければご覧下さい!
長文失礼致しました、それでは次回もお楽しみにっ!