「どの様な勝負であれ、私は一歩も引かぬ!」
「やりますね、先程のキャスターに引けを取らぬ食べっぷりだ。然し私とて腹ペコ王の称号を持つ身、全力で参る!」
「魔貌の騎士殿、速いペースでスタートを切りました!槍の騎士王殿もリードを守ろうと必死にドラゴンステーキを食しておりますが、私の眼には魔貌の騎士殿が追いすがっている様に見受けられます!解説の魔術師殿、この勝負ひょっとしたらひょっとするのではないのでしょうか!」
「ちょっとどうかな、さっきのジルみたいに直ぐ交代、なんて事態も考えられるし」
チームアルトリア対チームアルテラのドラゴンステーキ大食い対決、互いに5人目となり勝負は後半戦に入ったが、此処でチームアルテラ側の5番手で登場したディルムッドが快調な滑り出しを見せた。
その食いっぷりに期待を寄せる呪腕のハサンに対して立香は、顎力はともかく胃力はどうなんだと疑問を解かない。
が、
「お代わりをお願いします!」
「私もお代わりを頼む!」
「なっ!?もう此処まで来たと言うのか…!?」
「おぉっとぉ!残り2時間半、槍の騎士王殿がテーブルに着いてから1時間近くが経ちましたが、チームアルトリアとチームアルテラ、共に46枚!魔貌の騎士殿が、槍の騎士王殿を遂に捉えました!」
「す、凄いなディルムッド、これは本当にひょっとしたらひょっとするんじゃないか…?」
「どうした槍の騎士王、それでは腹ペコ王の名が泣くぞ!」
「何の!勝負はこれからです!」
チームアルトリアの5番手であるランサーアルトリアを数十分もペースを崩すことなく追いかけ回し、11枚ものステーキを平らげつつ追いついたのを見たら、流石に感嘆せざるを得なかった。
その姿には流石に焦りを覚えたか、ランサーアルトリアもまたペースを上げ、追い付かれまいと必死になってドラゴンステーキを口に放り込んでいくが、
「腹が厳しくなって来たか…!
騎士王の息子?いや娘か?後は頼んだ!」
「くっそろそろ顎が厳しいですね…!
セイバーの私、お願いします!」
「此処で両チーム、ほぼ同時に交代!チームアルトリアからは騎士王殿、対するチームアルテラからはその息子?いや娘でしょうか?反逆の騎士殿にチェンジとなります!残り時間2時間、枚数は両チームともに51枚!これ以上にない熱戦が繰り広げられているこの場面で因縁のカードが組まれました!このカード、出来ればアンカー勝負の場面で見たかったのですが…」
「おっしゃぁ!負けねぇぞ、父上!勝ちを掴んで、腹ペコ王の座は俺が貰う!」
「いや、その座を狙ってどうするんですか、モードレッド卿…」
互いに譲らず更に数十分が経過、共に限界が来た為に交代となった。
「こんなもん使ってられるか!」
「何と反逆の騎士殿、ナイフもフォークも傍らに追いやり、手づかみでドラゴンステーキにかぶりついています!勝負の為には、腹ペコ王の座を掴む為には、手段を選ばないという事なのか!?」
「な!?一体何を考えているモードレッド卿!騎士としての規律を、テーブルマナーを忘れたか!」
「うるせぇ!勝負にマナーもモナーもオプーナも関係あるか!今もアメリカで活躍している大食いプリンスだっけか?あいつも何時だったか、大食い勝負の時、ステーキを手づかみで食っていたんだぜ!」
「いや何でオプーナ!?」
その1人、チームアルテラの6人目であるモードレッドは、テーブルに着くなり奇想天外な策に出た。
何とナイフもフォークも使わず、素手でドラゴンステーキを、熱々の鉄板に乗せられて運ばれたドラゴンステーキを食べ始めたのだ。
そのテーブルマナーも何もあった物じゃない野蛮な姿に、チームアルトリアの6人目であるアルトリアが苦言を飛ばすも、当のモードレッドは意に介す事無く、ドラゴンステーキを貪り食っていた。
「お代わり頼むぜ!」
「反逆の騎士殿、熱さをもろともせずに、かなりのスピードでドラゴンステーキ1枚食べつくしました!」
「くっ止むを得ません!それが貴殿の信念というのなら、私も乗るしかあるまい!」
「あぁっとぉ!此処で騎士王殿もナイフとフォークを置いて、ドラゴンステーキを掴んだ!此処からの勝負は正に、野獣同士の、いやライオン同士の決闘!野蛮を通り越して一種の気高さ、誇りの高さすら感じますな、解説の魔術師殿!」
「本当にそれだよなハサン、さっきモードレッドが取り上げていたあの場面、あれには格好良さすら感じたからなぁ」
その野獣の如き気迫に流石のアルトリアも負けていられないと、自らもナイフとフォークを置き、手づかみでドラゴンステーキを食べだした。
実況を担う呪腕のハサンと、解説を担う立香の2人のコメントを他所に素手でドラゴンステーキにかぶりつく2人、勝負はいよいよ、最終局面へ…!