カルデア笑劇場!   作:不知火新夜

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始まりの夜(?)

何やら如何にもそうだと言いたげな魔法陣が描かれた舞台、其処では、

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ――

降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する…

――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に。我は常世全ての善と成る者、我は常世全ての悪を敷く者!」

 

黒髪をツインテールにし、赤いシャツに黒のミニスカート、黒のニーソックスという服装の少女が、何やら呪文らしき物を唱えていた。

 

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――!」

 

その詠唱も大詰めを迎え、最後の一文が唱えられたその瞬間…!

 

「サーヴァント、アーチャー。召喚に応じ参上した。君が、私のマスターかね?」

「何か後ろからキター!?」

 

黒を基調とした服装の上に赤い外套を纏った、白髪で褐色の肌の男――アーチャーが、舞台の上に立った、何故か魔法陣からではなく、少女の背後から。

 

「え、ええ、そうよ。私の名は遠坂(とおさか)(りん)。貴方のマスターよ」

 

その余りに想定外な登場の仕方に驚き、動揺しながらも、少女――凛は、己の左手に刻まれた令呪を掲げながら、アーチャーに自己紹介した。

 

「凛、か。成る程、その可憐な名は、君によく似合う」

「な、か、可憐って、おだてたって何も出な、

 

わしじゃ!」

 

その名を聞いたアーチャーが凛をべた褒めし、それに照れて蹲る凛、だが次の瞬間、凛が身に纏っていた服装が軍服らしき物に変わり、ツインテールに纏めていた髪はほどかれ、その頭には豪奢な飾りが付いた士官帽を被った、と、如何にも軍人な姿に変化した!

 

「騙されおったな、エミヤよ!」

「凛では無い!?全く気付かなかったぞ!一体何者だ、貴様は!?」

 

突如として変貌した凛、ではない少女に驚きを隠せないアーチャー――エミヤ、一体何者かを尋ねるその問いに少女は、

 

「ほう、恐れ多くもこのわしの名を問うか。良かろう、ならば聞くがよい!」

 

と、尊大な口調で応じ、

 

「空前絶後のォ、超絶怒濤の戦国大名ォ!」

 

そう、かなりのテンションで自己紹介を始めた。

 

「革新を愛し、革新に愛された女ァ!三千世界(さんだんうち)、鉄船、天下布武。全ての革新の生みの親ァ!そう、わしこそはァァァァァ!桶狭間、姉川、長篠!あの日本一ぐだぐだなサーヴァントを決める大会、ぐだぐだグランプリのファイナリストォ!そう、このわしはァァァァァ!身長152センチ、体重43キロ、と言ってもスキル『魔王』がAランクだからここら辺、変幻自在なんだよネ!『天下布武』はAランク、究極の相性ゲームという戦略を授けようぞ!『対魔力』『単独行動』『戦略』『カリスマ』これら全てBランク!え、カリスマはむらっ気があってマイナス補正付き?ま、是非もないよネ!そう、全てをさらけ出したこのわしは、第六天魔王、織田『ボン!』信長!」

 

そして少女――信長は身体を反らせ、『魔王』スキルによる物か胸を巨大化させながら自らの名を声高らかに宣言し、

 

「イェェェェェェェイ!

 

ジャスティス!」

 

と、決めポーズをしながら叫んだ。

 

「暇を持て余した」

「サーヴァント達の」

「「遊び」」

 

そして並び立ったエミヤと信長、2人が何処か神々しいポーズを取りながらそう言い残し、舞台を去って行った。

 

「なんか、色々と訳が分からなかったな…」

「混ぜこぜ過ぎて、何処で笑えば良かったんでしょうか…?」

「何なんでしょう、このグダグダなショートコント…?」

 

観客席に残された立香とマシュ、総司の言葉に答える者は、この場にはいなかった…


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